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Tales Of The Abyss 〜Another story〜

作者:じーくw
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#16 チーグルの森


 
それは次の日の事。

 朝起きてみると、何やらイオンがいなかった。
 そして、ジェイドもいない。2人とも、朝早くに何処かへと行ってしまった様だ。とりあえず、昨日の夜に『村を出ないように』と一言だけ言われて。ジェイドとイオンが一緒に出て行ったのだろうか? 或いは別々に出て行ったのだろうか……? どちらなのかは判らない。……それに、アニスもいない。

 つまり、自分以外は この宿屋から皆いなくなった、と言う事だ。

「まあ…… 大体どこにいったかは想像がつくけど……。特にイオンは」

 色々と考えて、イオンが何処へ言ったのかは、直ぐに判った。昨日から、イオンはある事(・・・)を気にし続けていたからだ。

 一先ず、アルは、宿屋の部屋を出るとこの村の村長の家へと向かった。

 

〜エンゲーブの村・村長の家〜


 宿屋から、村長の家へと向かった。幸いな事に出かけてたりはしてなくて、家にはいた様だ。ここへ来たのは、この辺りの地理について、アルはよく判らなかったから、確認したい事があったからだ。

「なるほど…… この村から北の方角に向かった先の森林地帯が《チーグルの森》なんですね……。どうも、ありがとうございました」

アルが訊きたかった事、それは《チーグルの森》の位置だ。比較的近い位置にあるのを訊いて、俄然チーグルが犯人の可能性は上がった。それなりに、遠い位置であれば、あまりに非効率だからだ。

 アルは、教えてくれた村長に礼を言い、頭を下げると、村長は明るい笑顔で『いーよいーよ』と言ってくれた。
 事情が事情だったけど、当初この村は最初は騒がしいイメージだったが、村のトップである村長がとても暖かい感じの人だ。それだけでも、この村はとても、良い村だなぁ……と、アルは感じていた。


 アルは、その後村長の家から出ると、出発の準備をして、チーグルの森へと向かおう、と思っていた。

 なぜなら、イオンは十中八九そこに言ったと思われるからだ。その証拠に、イオンらしき人がそちら方面へと歩いて言ったと言う情報もあった。
 それに、何よりも イオンは、昨日ずっ~~と、チーグルの窃盗事件に納得がいっていなかった。だから、明日にでも絶対に行くと言うと思っていた。……まさか、黙って出て行くとは思っていなかったけれど。

 イオンが言っていたのはチーグルは、魔物の中でも比較的、賢く大人しい。人間の食料を盗むなんておかしい、有り得ないと言っていた。チーグルの事はあまり知らないけど、イオンが嘘を言うとは思えないし、そう言う嘘をつく理由も無い。

 アルは、ふぅ……っとため息を1つして。

「……それにしてもさ。 せめて一言でも、オレにいってくれれば良かったのに……」

 そう愚痴を言っていた。外にはモンスターだって多いだろうし、ジェイドがいるかもしれないけど、話を聞く限り、イオン1人だ。……アニスの苦労が少しわかったような気がした。

 たった1人。護衛無しで外を出歩くなんて、危なすぎるだろう。

「とりあえず、イオンの事、心配だし……。うん、行こう。っと、その前に、出発の前に一通り準備しておこうかな」

 アルはそう呟くと、村の道具屋へと向かった。因みに、お金に関しては、程度持たせてくれていたのだ。

 アップル、オレンジグミ……などのサバイバル用品を購入し終えると、チーグルの森へと向かっていった。

 その道中、何体かのモンスターと戦ったけれど、あのゴーレムに比べたらあまりにも小さく力も弱い。無理に倒しきらず、相手を追い払う。手傷を少々負ったが問題は全然無かった。


そして、暫く歩いて平原を超えると、森林地帯に場所は変わった。



~チーグルの森~


 ここはエンゲーブより北部に位置する広大な森林。木々の葉が太陽の光を遮り、斑に森の中を照らしている。その森独特の香りは、自然の心地よさを現していた。
 アルは、森に足を踏み入れて……第一声目に発したのは。

「すっごくでかい森だなぁ……。これじゃあ、イオンを探すのかなり骨が折れそうだ……」

 森の大きさについて、だ。平原が続いていて、森が見えてきて、近づけば近づく程、その大きさが判る。そして、中に足を踏み入れたら、更に広大だと言う事を改めて感じていた。

 森に足を踏み入れたその後、時折襲ってくるモンスターを退けながら、奥の方を探索を続ける。森の中、木々を超え、小川を超え……更に進んだ先で、複数の声が聞えてきた。

 まだ先の方だったが、はっきりと聞こえてきた。……それは、声色から女の人と男の人の声。

 合計で3人の声だ。中には聞き覚えのある声、……と言うか そのうち1人は間違いなくイオンの声だ。だから、アルは声がする方へと進んでいった。






 イオンがこのチーグルの森についたのは、アルが到着する数十分前の事だ。歩行速度の関係で、アルは大分遅くに村を出たが、イオンにそれなりに追いついていたのだ。だが、森の中に先に入ったのはイオン。
 
 モンスターに何度か襲われ、足元がふらついていた時、同じくチーグルの森に来ていた女の人がイオンを支えた。イオンはそれに気づくと。

「大丈夫です……。 少しだけ、ダアト式譜術を使いすぎただけで……。あなた方は 確か昨日エンゲーブにいらした?」

 イオンは、少し立ち眩みをしながら、礼を言った。そして、女の人以外にも男の人も一緒にこの森へと来ていた。

「オレはルークだ」
「私は神託の盾(オラクル)騎士団、大詠師モース旗下 情報部 第一小隊所属。 ティア・グランツ響長であります。 イオン様」

 それぞれが挨拶をした。ルーク、と言う人に関しては知らない様だったが、イオンはティアの事は知っていた様だ。表情が変わる。

「ああ! あなたがヴァンの妹ですね。噂には聞いていました。お会いするのは初めてですね」

 イオンとティアの話していると、突然ルークが騒ぎ出した。

「ハァ!? お前が師匠せんせいの妹だと!? それに神託の盾オラクルの人間!? じゃあ、なんで師匠せんせいの命を狙うんだよ!?」

 ルークは、ティアに掴みかかりながら問い詰めていた。あまり穏やかな内容ではない。

「ヴァンの命を………?」

 話を訊いてイオンは、心配そうにティアの方を見た。その視線を感じたティアは。

「いえ…… こちらの話しで……。」

 その件に関しては、話したく無いようだ。口を閉ざしていた。……だけど ルークはまだ納得できず暫く騒いでいた。ヴァンの事を師匠せんせいと読んでいるのだ。そんな人の命を狙ったのであれば、簡単には納得出来るモノじゃないだろう。

 だが、今は少し不味かった。

 話に夢中になってしまい、3人とも背後から、気配を殺して近付くモンスターに気がつかなかった。
 獲物を狩るように、忍び寄り……、ある程度距離を詰めた所で、獰猛な牙を剥き出しに、咆哮を上げながら飛びかかった。

「しまった! イオン様っっ!!」

 ティアが真っ先に気付いたが、それでも遅すぎた様だ。もうモンスターは、イオンの側まで来ていたのだ。 イオンは、ティアの咄嗟の声を訊いて、振り返ったが、もう遅く、思わず、目も瞑ってしまった。
 ルークも突然の事で、対処する事も出来なかった。

 その獰猛な牙が、鋭利な爪がイオンに向かっていったその時、今度はイオンの周辺に壁、光の壁の様なものが現れ、イオンをモンスターの攻撃から護っていた。モンスター……、ウルフは、思い切り飛びかかった為、その勢いのまま壁に正面衝突し、吹き飛ばされた。
 そして、直ぐ傍の森の茂みから、人影が現れた。 

「あ、危なかった…… ほんと、危機一髪、間一髪だった。ふぅ、良かったよ……」

 イオンを守ったその障壁。それはアルが放った障壁ミスティック・シールドだ。
 声がする、傍まで行ってみると、村長の村の時の様に、彼らは騒いでいた。その光景は、村で見た時と何ら変わってない。そして、その後ろで、ウルフが近付いているのが見えた。3人は、夢中で気付いてない様子だった。
 撃退するには、距離がまだかなりあったし、イオンに攻撃が迫っていたから、咄嗟に防護の譜術を使用したのだ。

 まだ、その騒いでいる原因、状況が判ってなかったけれど、一先ずイオンの側まで行って、地面に手をついているイオンに手を貸す。

「ふぅ……、良かった。大丈夫だった? イオン」

 アルは、イオンの肩に手を置きながら、そう訊いた。イオンは、突然色んな事が同時に起こって驚いていたが、それがアルと判ると、安心した様に表情を和らげた。

「アル!ありがとうございます」

 助けてくれたのがアルだと言う事も判ったから、イオンは礼を言った。アルは、それを訊いて、ニコリと笑うと、立ち上がった。

「色々と、イオンには言いたい事はあるけど……、一先ず、こいつらを片付けてからだね」

 アルは モンスターに改めて向き直した。ウルフだけじゃなく、木のモンスターや、丸っこい?モンスターもいる。名前は、確かオタオタ、とトレント、と言う名だったかな? と思い返していた。
 一通りの数を確認した後。

「えっと、君達も……戦力として考えていいのかな?」

 側にいた2人に、アルは訊いていた。戦力になるのとならないのでは、対処法が変わってくるからだ。そして、返答は。

「……ええ! もちろん!」
「ッたりめーだ!こいつらァ! よくもビビらせてくれやがって!!」

 2人とも戦力だと言う事、戦えるとの事だった。正直、幸運だと思った。これだけ、戦える人数が居ればかなり心強いから。

「よし、OK!」

 剣を持つルークが前衛を、杖、そして投げナイフを持つティアが後衛、そして、アルは拳と譜術。だから前衛後衛どこでもいける。

 アルは、ここまで来る時の戦闘で、色々と試した。己の拳、そこに譜術によって、威力を高めたり 其々の音素を、属性を付与し戦う事もできるようになった。

 前衛が1人後衛が1人、中盤が1人。……バランスが取れているパーティ、陣形としては理想的だった。
 

 所々、攻撃は受けた様だが、それでも圧倒したのは3人の方だ。時間にして、数分。それでモンスターの群れを撃退する事に成功した。
 

 戦闘を無事、終えるとアルは考える。

(………うん。やっぱり 戦いは何人かいてくれると、とても戦闘が楽になるね。前衛にいれば、後衛で詠唱に専念できるし、それに隙を突いて接近戦もしやすくなる。それに、この女の人は治癒の力も使えるみたい。もう1人の男の人は、何だか荒削りな感じはするけど、その型はしっかりとしている様にも感じる、ね。剣術の心得を持ってるって事かな。これまでは、ジェイドと共に戦った事はあるけれど、ジェイドも万能型だけれど、その性質はどちらかと言うと後衛の譜術士。だから、こんな整ったパーティは初めてだ。……2人にはお礼を言わないと)

 2人の事を色々と評価したアルだけど、彼は基本的に戦闘に関してはそこまで得意、と言う訳じゃない。だけど、何故だか、身体は動く事ができ、戦闘も問題無かった。……あの声・・・が影響だった。

 改めて考えたら……得体の知れない力は気味が悪い。息をするように自然に戦える事が、……正直、怖い(・・)。だけど、この力は誰かを守る為の力。力を持ったあの時・・・から、アルはそう考え続けてきた。

 だから、2人の事以外にも、イオンを護る事が出来たこの力に、感謝をするのだった。


 
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