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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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ANSURⅣ其は鳴天より死地に墜つ雷の化身なる者~GrandfairY~

 
前書き
雷光の堕天使グランフェリア戦イメージBGM
英雄伝説・空の軌跡SC『解き放たれた至宝』
http://youtu.be/JUPYSLS2cQY 

 
†††Sideルシリオン†††

石柱がすぐ側に倒れ込んだことで発生した砂煙に乗じて、私はテスタメントの幻を作り出した。そしてそのテスタメントの幻が虚数空間へと落ちて行ったのを、ステルス魔法――ミラージュハイドで姿を消した上で岩陰に隠れて見ていた。
私が騙った名前、「テスタメントちゃん!!」を泣きながら何度も呼ぶなのは達。管理局にジュエルシードの捜査をこれ以上させないためにはテスタメントの死は必要だった。それで彼女たちの心に傷を負わせることになると解っていた。だが私の都合を優先させてもらうと決めていた。

「(正しく悪党だな。子供を散々傷つけて・・・)っと、行ったか・・・」

クロノに「死にたいのか!」と叱られながらなのは達は最下層より脱出。1つ上の階層から転移したようで完全に気配が無くなったのを確認した。全ての魔法を解除。ステアの顔から私自身の顔へと戻し、“界律の守護神テスタメント”の聖衣型の騎士甲冑から、アースガルド軍の軍服型の戦闘甲冑へと変身し直す。

「グランフェリアとの決戦前に回復しておこうか。我が手に携えしは確かなる幻想」

複製した物品や取り込んだ物品が貯蔵されている創生結界、“神々の宝庫ブレイザブリク”にアクセスし、手の平サイズの宝石を取り出す。ソレは、ここ時の庭園の駆動炉の魔力の結晶体だ。フェイトとアースラで別れた後、私はすぐさま駆動炉へ向かい、魔力吸収の術式コード・イドゥンで駆動炉の魔力を回収、結晶体へ変化させていた。

――女神の救済(コード・イドゥン)――

改めてのその結晶体から魔力を吸収し、なのは達との決戦で消費した魔力を全回復。そしてもう1つ。ジュエルシードのシリアル31も取り出し、魔力炉(システム)と同化させる。

「ぅぐ・・・づっ・・・くぁ・・・!」

馬鹿みたいに弱っている魔力炉(システム)にジュエルシードのようなエネルギーの塊を放り込んだんだ、かなり辛い。だがこの程度で音を上げているようじゃこれからの堕天使戦争は生き抜けない。

「かはっ・・・はぁはぁはぁはぁ・・・!」

――我を運べ(コード)汝の蒼翼(アンピエル)――

背より12枚の蒼き剣翼アンピエルを展開。最下層が完全崩壊する前に上層へ向かう。上層に出たはいいが、「グランフェリアと遭遇する前に崩れるな」庭園の崩壊速度があまりにも早い。

「場所を変えなければならないか・・・」

命懸けの決闘の最中、常に崩壊する瓦礫に注意を割かなければならないのは致命的だ。とにかく崩壊するのが最後になるであろう塔の最上階を目指す。私がぶち抜いてきた穴を通り、最上階へもう少しと言ったところで・・「っ!」直感と言っていいだろう。すぐに急停止して、その場に留まった。

――雷槍迅穿衝――

その直後、琥珀色に輝く雷光の砲撃が頭上を通り過ぎて行った。もし止まっていなければ直撃していた。すぐさま「エヴェストルム!」ベルカ時代に作成したアームドデバイス、“エヴェストルム”を携える。続けて2つある六連式シリンダーを同時に稼働させ、計4発のカートリッジをロード、穂に刻んであるルーンを発動し、デバイスを神器化させた。

「来たなグランフェリア・・・!」

グランフェリアが壁を突き破って現れた。背にはクジャクの尾羽のような魔力翼――エラトマ・エギエネス20枚が放射状に展開されている。地響きが続く中、かつては“戦天使ヴァルキリー”の次女、そして現在は“堕天使エグリゴリ”の1機、グランフェリアと相対する。

「グランフェリア。先日は世話になったな」

「神器王ルシリオンを視認。第一級戦闘意識へ移行」

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
其は善性より堕とされし雷獄の堕天使グランフェリア
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

急速上昇しつつ、「第三級断罪執行権限、解凍・・・!」リミッターをもう1段階解除。ジュエルシードの力を借りて魔力ランクをSSSまで高める。だが、まだグランフェリアの魔力、Xランクには届かない。

――力神の化身(コード・マグニ)――

その差を埋めるために身体能力や魔術効果を全て強化する上級補助術式、マグニを発動し・・・「行くぞッ!」急速上昇、グランフェリアの頭上を取る。

――無慈悲たれ(コード)汝の聖火(プシエル)――

足元にアースガルド魔法陣――4つのひし形で形作られた十字架の四方より剣が伸び、剣を繋ぐように三重の円――を展開。魔法陣より炎熱の龍を発生させ、グランフェリアへ突進させる。着弾する前に、

――舞い振るは(コード)汝の獄火(サラヒエル)――

炎熱の魔力槍サラヒエルを200本と展開させ、「蹂躙粛清(ジャッジメント)ッ!」号令を下し、プシエルに呑み込まれたグランフェリアへ向け一斉掃射。これでもまだあの娘の魔力障壁にも元から体に備わってる装甲の硬度にも足りないだろう。

――巻き起こせ(コード)汝の旋風(アムブリエル)――

――舞い振るは(コード)汝の獄火(サラヒエル)――

――舞い降るは(コード)汝の土爪(スカルティエル)――

――舞い降るは(コード)汝の無矛(パディエル)――

――舞い降るは(コード)汝の瀑流(ウァカビエル)――

――舞い降るは(コード)汝の雷光(パシエル)――

――舞い降るは(コード)汝の煌閃(マカティエル)――

――舞い降るは(コード)汝の邪闇(サマエル)――

「全より愛されし希望、其は次なる天上の王。そして此の矢は彼の者を穿つ、葬世の始まりを告げる狼煙、天に背きたる一閃。受けよ、王殺の凶矢」

全属性の魔力槍をそれぞれ1本ずつ作り出し、1本の長矢へと集束させた。“エヴェストルム”を指環に戻して魔力で弓を創り出し、長矢を番える。200本のサラヒエルが炎龍プシエルに着弾、私が作った吹き抜けとグランフェリアを中心とした付近の階層全てに満ちるほどの爆炎が発生した。

盲目神の哀矢(コード・ヘズ)・・・!」

上級攻性術式、ヘズを爆発の中心へと射る。ヘズの一閃は爆炎を一瞬にして消滅させ、全くの無傷だったグランフェリアへと一直線へと突き進む。さらに槍の如き魔力矢を創り出して弓に番え、「弓神の(コード)――・・・」射る体勢を取る。

「くだらない三文芝居を見せられ、さらにこの程度の児戯で私を斃そうなどと思われ・・・!」

――雷槍連穿衝・弐式――

グランフェリアが28本の雷槍を創り出し、石突を“雷界幻矛”で打ち払うことで超高速で連続射出する。最初の雷槍がヘズと真正面から衝突。拮抗する間もなく粉砕され、2本目の雷槍と衝突、またも粉砕、そして3本、4本、5本・・・と、3秒の間にそれらが繰り返され、ヘズは最後の20本目で潰された。

狩猟(ウル)・・・!」

魔力矢ウルを射る。ウルは数m進んだ後、600の光線と分かれ、一斉にグランフェリアを襲撃する。

「随分と馬鹿にしてくれるじゃない、神器王ぉぉぉぉッッ!!」

――雷天走衣――

グランフェリアが琥珀色の雷そのものとなり、ウルの絨毯爆撃を真正面から無理やり突破してきた。それにしても「三文芝居、か」私となのは達とのやり取りを見ていたようだな。気付かなかった。さすがは“ヴァルキリー” 全1000体中、トップ5に入る気配遮断能力の持ち主。今さらながらに面倒な機能をグランフェリアのシステムに乗せてしまったとちょっと後悔。

「お前はフェイトとアルフと仲良くしていたんじゃないのか・・・!?」

――曙光神の降臨(コード・デリング)――

閃光系魔力が私を中心として球体上に爆ぜる。それでもグランフェリアは止まることなく、デリングの中を突っ込んで来た。あの娘は“雷界幻矛(らいかいげんむ)”を持つ右腕を上半身を捻るようにして引き、「穿つッ!」軌跡を目で捉えることが出来ないほどの高速の刺突を繰り出してきた。起動し直した“エヴェストルム”で弾くが、ギリギリ過ぎた所為で頬を浅く裂かれてしまった。

「あの子たちには何も思うところは無いわ。ただ、お前の芝居にイラついているだけよ!」

「あー、本当にキツイな、今のお前は・・・。父さん(わたし)は泣きそうだ!」

洗脳される前は本当に可愛い娘だったんだがな。これが反抗期の娘を持つ父親の心情か。デリングが消失し、私とグランフェリアは斬撃と刺突の応酬を始めた。体が小さくなったことで戦い辛くなってしまうかと思ったが、案外問題にはならなかった。小さいゆえに体を常時覆う魔力障壁の消費魔力も少なくなり、何より小回りが利きやすくなった。体を軸に“エヴェストルム”をクルクル回し、片穂であの娘の刺突を捌き、片穂で斬撃によるダメージを狙う。

「っと、そうだ。これを聴きたかったんだ・・・!」

――屈服させよ(コード)汝の恐怖(イロウエル))――

グランフェリアの側面より、サイズを2周りほど小さくした銀の岩石で組まれた巨腕イロウエルを1基だけ出現させ、あの娘を握るように捕まえようとした。正直イリュリア製の“エグリゴリ”・ミュールにすら潰されるようなイロウエルだ。期待はしていない。まぁ私が土石系を苦手としているというのが大きな要因だろうが。しかしあの娘は「ぅぐ」簡単にイロウエルに捕まった。人差し指と中指の間からあの娘の胸と頭だけが出る。

「なんか・・・拍子抜けだな。まぁいいか。答えろ、グランフェリア。何故イリスが、管理局がレーゼフェアとシュヴァリエルの名を知っている?」

イリスの口から2機の名を聴き、動揺を隠すのがどれだけ大変だったか。フェイトの元にグランフェリア。管理局にレーゼフェアとシュヴァリエル。悪い夢を観ているような、偶然では片付けられない出遭いが起きてしまっている。

(なのはやユーノ達の元にも誰か姿を出していないだろうな・・・?)

マリアの索敵能力の穴に少々呆れや不満が生まれてしまうくらいは許してほしいものだ。足掻くこともせずにグランフェリアは真っ直ぐと私の目を見つけ返してきて・・・あることに気付き、「しまった!」何をする間もなく私は全力で急上昇する。あの娘の瞳。うっすらと光が燈っていた。それは、ある術式を発動する前兆だ。もう少し疑うべきだった。「くそっ、いきなりか・・・!」何故グランフェリアが大人しく捕まったのかを。

「真技・・・!」

――招請・百輝千光万雷――

カッと足元、グランフェリアから強烈な閃光が発せられた。あの娘の真技によるものだ。私のデリングと同じようなものだ。あの娘を中心に雷光が球体上に爆ぜる。熱量を持った爆ぜる雷光は触れる物を融解させつつ、私を呑み込もうと迫ってくる。

(最上階――駆動炉か・・・!)

庭園の最上層部へと辿り着いたところで雷光は収縮、ギリギリで効果範囲から逃れることが出来た。しかし時の庭園の塔、その大半が融解しまったことで崩壊速度云々と言ったレベルの話じゃなくなった。上層部と下層部との間にぽっかりと空いた穴。イリュリア戦争での“エテメンアンキ”と同じだ。重力に引かれて上層部が落下を始めた。逃げることは出来るが、その時は次元空間にこの身を投げ出すことになる。

(とはいえ次元空間に生身1つで存在できるのか・・・?)

疑問が尽きない中、グランフェリアがエラトマ・エギエネスを翻しながら急上昇してきた。

――雷槍連穿衝・壱式――

迫って来るのはあの娘だけでなく17本の雷槍もだ。それらを横移動で回避しつつ、

――女神の陽光(コード・ソール)――

“エヴェストルム”の穂先を向け片穂のカートリッジを1発ロード、上級の火炎砲撃ソールを連射する。グランフェリアはバレルロールを繰り返して回避。

――雷槍迅穿衝・連牙――

“雷界幻矛”の連続刺突によって発生した雷撃砲をお返しとばかりに放ってくる。今度は火炎と雷光の砲撃の応酬だ。互いに回避を連続で行い、徐々に距離が近づく。頭上からは天井も近づいて来る。崩落する上層部とあの娘に挟み撃ちされた状況。今考えられる好転の術はただ1つ。戦死ではなく事故死なんて嫌だからな。アレを使おう。魔力の供給減も有る。ついに彼我の距離が10m程になったところで、

「共に死のうかしら神器王?」

「娘と心中など嫌だね。エヴェストルム、ツヴィリンゲン・シュベーアトフォルム!」

“エヴェストルム”の30cmほどの柄の半ばが分離、二剣一対形態へと変形させる。そして両方のカートリッジを1発ずつロード。

――集い纏え(コード)汝の閃光槍(ポースゼルエル)――

――集い纏え(コード)汝の火炎槍(フロガゼルエル)――

片穂に閃光系魔力、もう片穂に火炎を纏わせる。薙ぎ払われた雷撃を纏う“雷界幻矛”を、右手に携える蒼光纏う“エヴェストルム”で受け、間髪入れずに左手に携える蒼炎纏う“エヴェストルム”をグランフェリアの右肩に振り降ろす。あの娘は後退することで回避。この短い攻防で時間は稼げた。1つ目のジュエルシードの魔力を全て使い切り発動する大魔術。

「開け、極壁の門、聖天へ続く道を示せ」

――聖天の極壁(ヒミンビョルグ)――

創生結界の1つ、“ヒミンビョルグ”へ続く穴を発生させ、「この魔術は!」驚愕するグランフェリアを呑み込ませる。私も続いて穴に飛び込む。これで庭園の崩壊に巻き込まれる心配は無くなった。視界が一瞬光で潰され、すぐに治まる。目を開ければ、そこは果てなど判らないほどに広大な、完全なる異界。
薄暗く、天地両方にはそれぞれの中心へ向かって渦巻く雲が存在し、どちらが天か地など判別できない。明かりは、見渡す限り続く地平線にある曙光のみ。そしてこの広大な異界の至る所にはルーンが刻まれた大小様々な球体が点在、他にも光のルーン文字が雪のように舞っている。

「ここでなら派手に暴れられるだろう、グランフェリア!!」

2つ目のジュエルシードを発動。強烈な胸痛に襲われるが、記憶消失じゃないから恐ろしくはない。400mほど先に浮遊しているあの娘が「創生結界を墓標に選ぶとはいい趣味だわ!」と応え、

――雷天走衣――

琥珀色の雷と化し、私へと一直線に向かって来た。魔力に満ち溢れている創生結界の中だ、あの娘にとっても戦いやすい環境になったことは言うまでもない。庭園内以上に飛行速度が上がっている。アンピエルの速度では到底対応できないだろう。

――瞬神の飛翔(コード・ヘルモーズ)――

だからこちらも飛行速度を限界にまで引き上げる空戦形態、ヘルモーズへ移行しよう。背より剣翼12枚が僅かに離れ、新たにひし形の蒼翼10枚を展開、計22枚の魔力翼とする。身を屈め膝を折り、クラウチングスタートのような姿勢を取る。両手には一対の剣、“エヴェストルム”。見据えるは、こちらへ向かって真っ直ぐに突進して来る、死を従える雷光――グランフェリア。

「いざ!!」

何も無い空間を蹴って急速発進。真正面からの衝突だ。逆手に持ち替えた左の“エヴェストルム”による右脇狙いの薙ぎ払いが“雷界幻矛”によって受け止められ、間髪入れずに右の“エヴェストルム”を左肩目掛けて振り下ろし、グランフェリアは左前腕で受け止めた。
もちろん神器化しているため、雷という自然現象と化していても魔力であり神秘を有しているから斬ることくらいは可能だ。あの娘の左前腕を斬り落とす。が、次の瞬間には再生している。

(確実なダメージは無いか)

再生された左手が伸ばされ、私の胸倉を掴もうとしてきたのを胸を反らすことで回避。そして“エヴェストルム”をいなした “雷界幻矛”の刺突で私の側頭部を狙ってきた。

「私の両手をスルーしておいて決められると思うな」

両手に携える“エヴェストルム”を指の動きだけでクルリと回し、グランフェリアの両腕を斬り落とす。だがあの娘は退かず、そのまま私にタックル。全身を駆け回る高圧電流に「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ!」堪らず声を上げてしまう。

雷光(わたし)に抱かれて逝ってしまいなさい、神器王ルシリオン」

雷光形態のまま私を抱きしめるグランフェリア。娘の胸の中で死ぬのも一興だが、今は勘弁だ。悲鳴を上げるのを歯を食いしばって止め、私もあの娘の背中に両腕を回して抱きしめ返す。

「何を・・・?」

「同じ手を使うんだよ、お前と同じ、な」

――デアボリック・エミッション――

私を中心として発動した、純粋魔力による広域空間攻撃魔法――いや魔術と言おうか。魔導としての術式を魔道の術式へと変換させ、複製術式ではなく私の魔術として組み直した。もちろん効果はグッと高めてある。障壁発生阻害という。それでもグランフェリアに決定打を与えられない。闇が雷を呑み込もうと押し返し、私とあの娘を境に雷と闇が共に半球状となり、2つで1つの球体と化している。

「グランフェリアァァァァッ!」「神器王ぉぉぉぉぉッッ!」

しばらくの拮抗。結局、互いに押し切ることが出来ずに闇と雷は対消滅。グランフェリアの雷光形態も解け、「くっ、離れろ!」私を突き放して離れようとした。だがその前に「なぁ、グランフェリア」この娘の背後で“エヴェストルム”を連結してランツェフォルムに戻し、「あぐ・・・!?」私に届かない程度にグランフェリアの背中を断ち斬る。

「やっぱり苦しまずに死にたいよな・・・」

「っ!? こ、この程度で、雷光の化身(わたし)を討とうなどと・・!」

グランフェリアは私の胸を殴るかのようにドンッと私を突き放し、吐血。斬り裂かれて負った傷より溢れ出す流血を抑えるために、「雷天走衣・・・!」また雷光形態へ。雷光形態になれば、通常形態で負った傷の治りは早くなる。だが全快とはいかない。
徐々にダメージを蓄積させていき、最後に大威力でトドメ。それがこの娘の撃破法の正しいルートだ。一撃で決めることなど、それでこそアンスールの真技レベルでなければ不可能だ。それに別に今ので決めようなどとは端から思っていない。あの娘を討つための魔術と神器は他に在る。

(ジーク・・・。あなたは望まないかもしれないが・・・)

アンスールの1人にして無圏世界ニダヴェリールの皇帝ジークヘルグ。そんなジークとグランフェリア。殺された者と殺した者。愛された者と愛した者。あの娘にとっても重要なファクターだ。たとえ洗脳されたことで忘れているのだとしても、自分が恋をし、そして殺してしまったジークの真技で討たれることがあの娘の為だ、と勝手に思ってる。

「そうだよな? グランフェリア」

「一体何を言っているのか解らないわッ!」

――天威轟雷――

グランフェリアから放電されている雷撃が8発の雷弾となり、高速で射出されてきた。だが私に直撃する軌道ではなくどれもがズレて、私の側を過ぎ去っていこうとした。ああ、判ってる。「忘れているだろうが、この術式は私がお前に与えたものだ!」その場に留まらず高速上昇。それとほぼ同時、8発の雷弾が一斉に炸裂、放電する球体上の衝撃波となって私が居たところを押し潰した。

「さっきから何を言っているのか解らないわ・・・!」

――天威轟雷――

あの娘は苛立ちを顔にハッキリと表し構わず雷弾を再構築、「散れ!」周囲にばら撒くように放ち続ける。この時点でグランフェリアが何かを企んでると判る。私を狙うにしては軌道が雑すぎる。次々と炸裂する何十という雷弾。“ヒミンビョルグ”内を飛び回りながら回避を続け、私もまた攻勢に打って出るための仕掛けを施し始める。3つ目のジュエルシードを発動。不可視の魔法陣――砲門を設置。すぐさま移動し、あの娘の放ち続ける雷弾の衝撃波から逃げる。

(一体何を企んでいるんだ? 私に当たらなければなんの意味も・・・)

8枚目の砲門を設置。グランフェリアの動向を確認するために目だけを動かして空域一帯を見回す。雷弾が炸裂した地点を視線でなぞり、「ん?」妙な引っ掛かりを憶えた。が、ハッキリしない。そして10枚目の砲門を設置し終えたところであの娘の強い視線を感じ、フッと目を向けた。その瞬間・・・

――雷天結界――

パリパリッと放電する音が耳に届いたかと思えば、雷弾が炸裂した地点を結ぶように琥珀色の雷撃が奔り、檻のような結界が創り出される。これが狙いだったか。完全に雷の結界に閉じ込められてしまったな。しかし閉じ込めるだけで私の空戦能力を封じたと思っているのか?

「あ・・・!(あー、さっきの引っ掛かりはコレか・・・!)」

奔る雷撃に触れないために飛行を停止し、私たちを閉じ込める結界を軽く見ると判った。三重の正八角形陣。内側と外側の八角形陣は時計回り、真ん中の陣は反時計回り。それぞれの陣の間には幾何学模様の文字のようなものが点滅している。そんな三重八角形陣の中心、上の棒が円になっている十字架――アンセイタが在り、両側に丸みの無い翼の紋様が在る。

「ニダヴェリール魔法陣・・・」

グランフェリアが作った結界は、ニダヴェリール魔術式の魔法陣を球状に丸めた形状の檻だった。対象が脱出できないように大きな空きには雷光の網が出来ているが、それでも判る者には判る。

「しまった、見失った・・・!」

ここであの娘の姿を完全に見失っていることに今さらに気付いた。あの娘から目を放した時間は1秒と無かった。気配遮断をしたとしても完全に姿を認識できなくなるわけじゃない。

「一体どこ――に゛っ!?」

右肩に走る強烈な痛み、そして熱さ。その個所を見ようとした時、視界の端が光り、咄嗟にその場から後退するが「づっ・・・!」間に合わずに左上腕を何かに貫かれた。ダメージと引き換えに知る。それは音や気配すらなく現れた光線。発射地点は今まさに私を捕えている結界を構成する雷光。

――雷天結界・閃雨――

「っ・・・!」

全方位に張り巡らされている雷光から光線が連続で発射されてきた。空戦形態ヘルモーズの瞬発力で結界内を飛び回って避け続けるが、「速い・・・!」光線の速度が速すぎて完全に避けきれない。光線は腕に足、胴体に頬と掠め皮膚を裂いていく。軌道が直線なのが救いだな。
この速度に誘導操作なんてものが付けば一溜りもない。とにかく結界破壊が最優先だ。“エヴェストルム”のカートリッジを残り全弾をロードし、治癒のエイルを発動、すぐに指環型の待機形態に戻し、外に設置しておいた砲門10枚を起動させる。

――女神の宝閃(コード・ゲルセミ)――

――女神の陽光(コード・ソール)――

閃光系と炎熱系の砲撃を計10本の砲撃を一斉発射。着弾直前、

――雷天結界・分け神――

雷光形態のグランフェリアの分身体が10体と生まれ、それぞれが壁となることで包囲砲撃を防いだ。そして今度は私に向かって50体を優に超える数の分身体が襲い掛かって来た。それぞれの手には魔力槍が携えられている。“雷界幻矛”を持つ者――オリジナルのあの娘は居ない。

(結界を含めてこんな術式は知らないぞ・・・!)

“エヴェストルム”を鞭のパイツェフォルムで再起動。柄の長い槍型を持ち手とし、柄頭から伸びる魔力の鞭の先端に有るもう片方の剣型の“エヴェストルム”をブンブン振り回して、高速で飛来する数十体の分身体を迎撃。先端の剣で裂き、半ばの鞭で打ち、接近を許してしまった者には持ち手の槍で薙ぎ、貫き、殴る。

――雷天結界・閃雨――

「っぐ・・・!」

分身体の対応に意識を割きすぎた。背後からの光線の雨を避けきれず、何発か全身に受けてしまった。光線を受け、体を貫通し、反対側――胸や腹から跳び出すと言うのをしっかりと見た。しかもさっき受けた時には無かったスタン効果付き。電流で筋肉が強張ってしまって、体が言うことを聴かない。

(グランフェリアには貫かれてばかりだな・・・)

そんなことを他人事のように考えながら、雷光より出現したオリジナルのグランフェリアが私の胸に目掛けて“雷界幻矛”を突き出したのを見る。

――女神の護盾(コード・リン)――

「チッ・・・!」

体は動かずとも魔力炉(システム)は稼働し続け、私は意識を繋ぎ止めている。魔術を発動する分には何ら問題は無い。女神が祈る姿が描かれた障壁リンは“雷界幻矛”の刺突を完璧に防ぎきるが、グランフェリアの突進の勢いだけは殺せない。私はそのままあの娘に押されるように後方へ弾き飛ばされる。

――雷天結界・分け神――

結界を構成する雷光よりあの娘の分身体が10体とまた出現し、両サイドから襲い掛かって来た。

「くそっ・・・!」

「全身を穴だらけにして、雷撃で体内を焼き滅ぼしてやるわッ!」

リンごと私を押し続けるグランフェリアが勝利を確信したかのように笑みを浮かべた。私としてはこのまま殺されるわけにはいかない。未だに体が動かないが、魔術は扱えると・・・たった今、見ただろう!

――崇め讃えよ(コード)汝の其の御名を(ミカエル)――

背に有る22枚の蒼翼を射出。散開した蒼翼は迫る分身体へ先端を向け、砲撃ミカエルを連続発射。ミカエルは中級最強の威力を誇る術式だ。蒼翼22枚を空翔ける砲身として、汎用性砲撃を行わせる。もう1つの効果は、蒼翼の後端から魔力ロープを生み出し、最終的に敵を閉じ込める檻とすることだ。その代償として飛行能力が酷い有様になってしまうが。今の状態ならそれくらいどうってことない。次々と現れる分身体をミカエルで迎撃し続ける中、

――女神の祝福(コード・エイル)――

3つ目のジュエルシードをすべて使い切ってエイルを発動。受けたダメージを全回復。体の麻痺も治り、「反撃だ!」“エヴェストルム”を待機形態にし、

――邪神の狂炎(コード・ロキ)――

業火で構成された3mの腕と脚を創り出し四肢に武装する術式、ロキを発動。リンを回り込むように炎の両手を回し、両側面からグランフェリアを握り潰そうと襲う。

「面倒な・・・!」

グランフェリアがリンより離脱し、炎の両手を避ける。背より生まれる炎の翼を使って追撃。あの娘を捉えようと炎の右腕を伸ばし、“雷界幻矛”で斬り飛ばされる。だが残念だったな。魔力が尽きるか解除しない限り再生し続ける。8枚の蒼翼で分身体を潰し、5枚の蒼翼で光線を防ぎ、残り9枚であの娘を包囲攻撃。

「ぐっ・・がっ・・・ぬぅっ・・・この・・・!」

――雷天走衣――

避けきれずに3発ほど砲撃を受けたグランフェリアは雷光形態となり、結界を構成している雷と同化して姿を消した。つまり現状においてこの結界すべてがあの娘の体となる。炎の両腕を結界へ伸ばし、掴み取る。流れてくる雷撃が私の腕に届く前に、周囲に伸ばした炎の触手から放電することで感電を防ぐ。

爆砕粛清(ジャッジメント)!」

炎の腕を爆破。掴んでいた雷を寸断するも、「ダメか・・・!」すぐに元通りになった。

――雷天結界・分け神&閃雨――

私へ襲い掛かってくる分身体と光線群。それらを再生した炎の腕や蒼翼で対処しつつ、結界破壊の方法を考える。ふと、この結界が創り出された際のことを思いだし・・・「なるほど」破壊方法を思いついた。光線はともなく分身が途切れたことで蒼翼17枚を操作、雷弾が炸裂した箇所へ向ける。

――雷弾が炸裂した地点を結ぶように琥珀色の雷撃が奔り、檻のような結界が創り出される――

天罰粛清(ジャッジメント)!」

砲撃――ミカエルを一斉発射。そう。結界を繋ぐ雷ではなく、結界を構成する基点を潰す。焦るかのように私に向けられていた光線の全弾が砲撃を迎撃しようとし、さらに分身体も立ちはだかる。だが、「甘いぞグランフェリア!」ミカエルを潰すんじゃなく、砲身である蒼翼を破壊するべきだ。
まぁ自由自在に動くからそう簡単には破壊できないだろうが。蒼翼を移動させ、様々な角度からミカエルを撃ち続ける。そしてようやく1つの基点を破壊。すると、そこと別の基点を繋いでいた6本の雷が消滅した。

『しまった・・・!』

頭に響くグランフェリアの焦りが多分に含まれた声。全ての蒼翼を基点に向け、22本の砲撃ミカエルを断続的に放ち続ける。次々と基点を潰し、結界はもう見るも無残に解れ・・・そして「もうダメ・・・!」あの娘が残る基点よりフラフラと飛び出して来た。蒼翼の先端を全て向け、「ジャッジメント!」砲撃を放ち続ける。あの娘は回避や“雷界幻矛”での迎撃などで対処していたが、次第に掠めることが多くなり、最終的には直撃を受け続けることに。

「我が手に携えしは友が誇りし至高の幻想・・・!」

ジュエルシード1つを消費して、“神々の宝庫ブレイザブリク”の最奥に眠るアンスールの神器の中から、

「天槌・・・ミョルニル・・・!」

ジークの神器、“天槌ミョルニル”を取り出す。そして担い手ではない私が“ミョルニル”を使うための籠手型神器――“宝甲イルアン・グライベル”、筋力を上げる帯型神器――“メギンギョルズ”を武装。
ミカエルの集中砲火を受けてなお致命的なダメージを負っていないグランフェリアが憤怒の形相を浮かべ、「うおおおおおおおおッ!」突進して来た。さらにジュエルシード2つを一気に消費し、「咆えろッ、ミョルニル!!」の能力を完全解放する。
“ミョルニル”のヘッドの装飾に刻まれた、敵の撃滅を意味するソーン、力を意味するイング、強化を意味するフェオ、勝利を意味するテュール、魔力を意味するエオー、超越を意味するダエグのルーンが輝きだす。

「おのれぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

“雷界幻矛”の高速刺突を“ミョルニル”で弾き逸らす。繰り出され続ける“雷界幻矛”、それを捌き続ける私。ここまで疲労しきっている今なら、ジークの雷撃もグランフェリアに絶対に届くだろう。あの娘は対雷撃系の“ヴァルキリー”だ。Xランク以下の雷撃系魔術は全てキャンセルする能力を有している。今の私が扱うジークの真技や“ミョルニル”では、万全な状態のあの娘を討つのは無理だ。

「だからこそ今! お前が弱っている今! 今日、お前を救う!!!」

わざと“雷界幻矛”の刺突を腹に受け、「ぅぐ・・・!」柄を掴むことでグランフェリアの攻撃を制限。左手に携える“ミョルニル”を振りかぶる。目掛けるはあの娘の頭頂部。一撃で、痛みも苦しみも無く消滅させる。しかしあの娘は「忌々しい!」“雷界幻矛”を私から勢いよく抜いて後退することで避けた。

「ごふっ。さようならだ・・・! 真技ッ、雷神放つ破滅の雷(ミョルニル)!!」

“ミョルニル”を全力で投擲。雷そのものと化した“ミョルニル”がグランフェリアへ向かう。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

――集雷法――

グランフェリアは咆哮し、天高く掲げた“雷界幻矛”に雷光を集束させた。

(ヒミンビョルグに満ちた自身の電雷撃系魔力を利用したのか・・!)

「食らえぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーッッッ!!!」

――神雷槍――

投擲された雷と化した槍。そして真っ向から向かって行くのは同じく雷と化している槌。そして衝突。視界を潰すだけの閃光爆発が生まれ、聴覚を狂わせる爆音が“ヒミンビョルグ”内に満ちた。目を細め、魔力で聴覚をシャットダウン。グランフェリアの魔力を探査しようにも魔力爆発が強すぎて捉えられない。

「・・・・っぐ!?」

それはあまりにも突然で、信じられない事態。ドスンと腹に衝撃。腹に手を伸ばし、衝撃の正体が何なのかを確認した。

「雷界・・幻矛・・・!?」

腹に突き刺さっているのは間違いなく“雷界幻矛”だった。まさか「ミョルニルが・・・負けた・・・?」ということになる状況だ。先に受けたダメージと合わせて「ごほっぐふっ」かなりの出血量だ、急いで治療しなければ失血死だ。

(ジュエルシード・・・!)

“雷界幻矛”を抜いて(柄が半ばで折れていた)すぐに7つ目のジュエルシードを使ってエイルを発動。負ったダメージの回復に努める。閃光が晴れ、ようやく状況を確認できた。グランフェリアの姿もハッキリと視認できる。警戒レベルを一気に落とし、「グランフェリア。愛おしい私たちの娘」あの娘の元へと向かう。

◦―◦―◦回想だ◦―◦―◦

ニヴルヘイム侵攻阻止戦後の僅かな休息期間を利用して各々が実力を高める鍛錬を積んでいる。私とシェフィもそう。師として弟子のシェフィを、“ユグドラシル”の最下層――ノルンの泉にて鍛えている。その最中、「父上、母上!」私たちを呼ぶ声が。

「「グランフェリア・・・?」」

ブリュンヒルデ隊のシリアル04、宝雷の矛グランフェリア・ブリュンヒルデ・ヴァルキュリアがこちらに向かって来ていた。シェフィと顔を見合わせ、あの娘の元へ向かう。

「どうしたのグランフェリア? なんか顔が赤いけど・・・」

「あ、あの、父上、母上! 私は一体どうしたのでしょうか? 鍛錬中よりずっと心臓(コア)が痛むのです!」

「なっ、コアがっ!? グランフェリアのシステムに不備が生じたのか!?」

大切な娘が苦しんでいる。急いで“ヴァルキリー”の管制を担うノルニルシステムの1つ、アプリコットにアクセスしようとしたところ「落ち着いてルシル」とシェフィに頭を叩かれた。

「グランフェリア。あなたも落ち着いて。どうしてそういう症状が出たのか、憶えている限りで教えて」

「はい、母上。実は――」

グランフェリアから語られた話は、なんと言うか・・・うん、恋愛のそれだった。この娘が好意を抱いている相手は、無圏世界ニダヴェリールの皇帝、アンスールの雷皇、ジークヘルグ。私とシェフィにとっての戦友だ。

「この胸の痛みは何なのでしょう? 私、ジークヘルグ様のお顔を見、お声を聴くと、顔が発熱し、胸が苦しくなり、そして・・・ニヤけてしまうのです。以前から似たようなことあったのですが、ここまで酷いのは今日が初めてなのですぅ」

グランフェリアは真っ赤に染まった頬に両手を添え、いやんいやんと首を横に振る。そんな彼女に私は「グランフェリア。お前は私のことが好きかい?」と訊ねてみた。

「え? 父上のことですか? もちろん大好きです。当り前ではないですか」

「じゃあシェフィのことは?」

「もちろん母上のことも大好きです。アンスールの皆様も、兄であるガーデンベルグ、姉のリアンシェルト。数多き弟や妹も。同盟世界に住まう人々、全てが大好きです、愛しています」

元の綺麗な色白の肌に戻っているグランフェリアが、可愛らしい笑顔でそう答えてくれた。ふむ。じゃあ「ジークヘルグもだよな」と追加質問をすると、ボンッと爆発したかのように首まで真っ赤にしたあの娘は、

「す、すすす、すすすす、すすす・・・!」

さっきまでと打って変わってつっかえる。そして小さく「好きれす・・・」答えた。

「ふにゃぁ~~??」

「「グランフェリア!?」」

恥ずかしさで限界を超えたのか強制シャットダウンを起こしたグランフェリアがフラフラとへたり込み、ペタンと仰向けに倒れた。シェフィと顔を見合わせて「プッ」噴き出してしまった。“ヴァルキリー”とて恋をする。人の子を産むことは叶わないが、それでも誰かに恋をし、結ばれ、生きていくことは可能だ。システムに、老いる、と追加すれば人のように老いて機能停止――死ぬことも出来る。

「ねぇ、ルシル」

「ん?」

「グランフェリアの恋心、ジークに届いたら・・・親としては嬉しいよね」

「・・・そうだな。ジークになら任せられる」

シェフィと2人で仰向けで倒れグルグルと目を回すグランフェリアの両脇に座り、私は前髪をそっと撫で、シェフィは頬に手を添えた。

「・・・・お休み、私と――」

「私の――」

「「愛おしい娘・・・」」

◦―◦―◦終わりだ◦―◦―◦

私は頭部・胸部・左腕しか残っていないグランフェリアを抱きしめる。

「お休み。私とシェフィの・・・愛おしい娘」

耳元にそっと告げる。と、グランフェリアが琥珀色の魔力となって霧散し始める。完全に消滅するまで私は此の娘を抱きしめ、「グランフェリア」名前を呼びながら後頭部を何度も撫でる。
そうして、「お休み」グランフェリアは私の腕の中から完全に消滅した。


 
 

 
後書き
タシデレ。
なのはサイド・ルシルサイドのラスボス戦が終わりました。
次回、エピソードⅠの最終話となります。最終話の後、裏話と魔導紹介の番外コーナーを投稿する予定です。
それから前作と今作の誤字脱字・加筆修正を行った後、エピソードⅡ:闇の書編を始めたいと思います。
 
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