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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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未来編その二

 
前書き
すいません、間に合わなかった(間違ってデータを消去した)ので未来編その二を投稿します。
なお、投稿が間に合わなかった場合は未来編を御送りします。 

 


「姫ッ!! 早くこの窪みに隠れて下さいッ!!」

「嫌だッ!! 貴様らを犠牲にしてまで私は生き残りたくはないッ!!」

 連合諸王国軍の夜中による夜襲もほぼ失敗しようとしていた。

 数人の兵士が何処かの国の姫に穴が空いている窪みに入ろうと促せるが当の本人は否定している。

「今姫が生き残らなければグリュース王国どうなるんですかッ!? 昼間の戦闘で王は戦死をしているんですッ!!」

「しかし……」

 兵士の言葉に姫は躊躇する。

「えぇい御免ッ!!」

ドスッ!!

「ぐッ!?」

 一人の兵士が姫の腹を殴る。

「き、貴様……」

「姫、今は御許しを。皆姫を守るのだァッ!!」

『オォォッ!!』

 兵士の言葉に周りにいた兵士は楯を持って姫を守ろうとするが、襲い掛かる銃撃に次々と倒れていく。

「み……みんな……」

 倒れていく兵士の姿に姫は涙を流しながら気絶をした。




「……此処は……」

 女性が立ち上がる。女性の髪はシルバーブレンドでショートヘアであり出るところは出ている。

 女性は辺りを見渡すがそこは何処かの部屋だった。

「あ、目が覚めたようね」

 その時、扉が開いて赤十字の腕章を付けた衛生科の女性自衛官が入ってきた。

「ちょっと医師を呼んでくるね」

 女性自衛官はそのまま部屋を出て医師を呼びに行ったのであった。




「……大丈夫すか三尉?」

「何とかな。まだ痛いし……」

 俺はあの女性にアッパーをされて気絶して医務室に運ばれていたみたいや。

「大分噂になってますから。アッパーで気絶させられたと……」

「……柳田二尉辺りがニヤニヤしながら言ってくるのが見えてくるな……」

 俺は溜め息を吐いた。

「ところで、さっきの女性が目を覚ましたようですよ」

「俺を気絶させた後に自分もまた気を失ったあれ?」

「はい。事情聴取するみたいですけど三尉がするなら譲ると言ってますよ柳田二尉が……」

「……計算されてないか?」

「気のせいです」

 俺はもう一回溜め息を吐いた。



「き、貴様はさっきの……」

「言っておくが俺はタオルを巻いただけやからな」

 顔が赤くなっている女性に俺はそう釘を刺した。

 結局は俺が簡単な事情聴取をする事にした。柳田二尉にはやっぱりニヤニヤされたが……。

「俺は日本国の自衛隊特地派遣部隊の一員の摂津樹だ」

 俺は女性に自己紹介する。

「……私はグリュース王国のシント・ダ・グリュースの娘のヒルデガルド・ダ・グリュースだ」

「……てことはお姫さまというやつか?」

「そうだ」

 俺の言葉にヒルデガルドが頷く。

「それでお姫さまが何故戦っていた?」

「我が国は帝国からの支援要請を受諾して兵力八千で連合諸王国軍に参加した。我が国は領土も少ないし民も少ないからな」

 シリウスはそう説明する。

「そして参加したが、貴様らの攻撃で我がグリュース軍は全滅した。恐らく帝国が今頃グリュース王国に侵攻して占領しているだろうな」

 ヒルデガルドは苦々しくそう吐いた。

「……暫くは君の処遇は保護として扱う。食料や衣服は此方から提供する」

「……奴隷として扱わないのか? 戦争で捕虜になった人間は男性は奴隷として売られ、女性は貴様らの慰め物になるのが普通だが……」

「……俺らはそんな事はしない(てかそんなんしたら左どもや隣の国が反発するからな)」

 俺は心の中でそう呟いた。

 そしてヒルデガルド・ダ・グリュースは日本国で保護する事になった。

「……服は女性物を要請したのに何で男性物を着ているんだ?」

 ヒルデガルドは普通の男性服を着ている。

「男が生まれなかったからな。私が男装をして民の前に出ていた。まぁ古くから知る兵士達は知っていたがな」

 ……まぁええけど、それに出るところ出てます。いやマジで御馳走様です。

 取りあえず、衛生科の女性自衛官に訳を話してヒルデガルドに改めて服を着させた。

 え? 何の服か? ブラですが何か?

「メシはどうしてるんだ?」

「さっきはお粥を食べさせましたが、医師からの話では普通に食べても大丈夫のようです」

 なら大丈夫やな。

「食堂は今開いてますので」

「分かった。ありがとうな」

 俺は女性自衛官に頭を下げて礼を言った。





「……自衛隊への大幅な予算増額するのか?」

「はいそうです」

 木戸は再び本位総理と総裁室で面会していた。

「これは嘉納防衛大臣も認可しています。御願いします総理」

 木戸は本位に頭を下げる。

「しかしな木戸。この増額は一%から二%まで上げているじゃないか」

 自衛隊の予算は大体が一%弱であるが、木戸は緊急防衛予算案として二%の増額を本位に具申したのである。

「普通なら自衛隊の予算は二%から三%であるがの普通です。今の東アジアの情勢を見るならば」

 木戸はそう言った。民衆党だった政権時は中国や韓国に舐められ、脅されていた日本であったが民自党政権以降は海自の防衛力を強めたりして抑えてきた。

「この緊急予算は主に特地へ弾丸や砲弾の生産分が多いのです。アメリカが支援すると言ってもそう期待はしないのが得策です。この緊急予算で日本の中小企業を復活させようと思います」

「何?」

 本位は驚いて木戸を見た。

「現在、特地には旧式化した七四式戦車や七五式自走155ミリ榴弾砲を派遣していますが、もっと派遣した方が良いです。それに日本の部隊に新型を配備するだけでいいんですから」

「……分かった。取りあえず予算増額は閣議で話し合おう」

「ありがとうございます」

 木戸は本位に頭を下げる。

 木戸は特地が少しでも楽になれるよう奮闘していた。



――ホワイトハウス――

「「門」はフロンティアだよ」

 集まった部下達の前でアメリカ大統領のディレルはそう言った。

「「門」の向こう側にどれ程の可能性が詰まっているか想像したまえ。手付かずの資源、経済的優位、汚染のない自然、異世界生物の遺伝子情報……上げれば数えきれない」

 ディレル大統領は両手を広げた。

「だが『日本軍』は何をしているんだ? 「門」の周りに亀の子みたいに立て籠って……これほどの物を前にしているのにだ」

「……自衛隊は過去から学んだのですディレル大統領」

 補佐官はそう言う。

「自衛隊は戦力不足のため、要地を押さえる戦略しか選択出来ません。情勢の見極めに時間をかけているのでしょう」

「……成る程な。戦後の日本人らしい」

 ディレルはそう言って笑い、出されていたコーヒーを飲む。コーヒーは温くなっていた。

「ですが大統領。日本は同盟国です。「門」から得られる利益は我が国にも……」

「それでは不足だよ」

 国防長官の言葉をディレルはバッサリと切り捨てる。

「もっと積極的に関与すべきではないか? 例えば陸軍の派遣とか……」

「残念ながら我が国は中近東だけで手一杯です。戦力的にも予算的にも余力はありません。そこで武器弾薬類の支援はどうですか? 実は日本の関係者から駐日大使に武器弾薬類の支援要請が来ています」

 国防長官はそう報告する。

「……確かに。過度の肩入れは禁止だ。ならば火中の栗は日本に拾わせよう」

 ディレルはニヤリと笑う。

「あぁそれと、その関係者とは誰かね? 自衛隊関係者か?」

「いえ、今の政権与党である民自党のキドとか言う議員です。キドの親友は自衛隊隊員らしいです」

「……成る程な。お願いか」

 ディレルはその時はそう言った。

 しかし、この木戸という人物は後に大きくなる存在だとは今は知らなかった。



「美味いッ!! 辛いッ!! けど美味いッ!!」

 食堂でヒルデガルドが二杯目のカレーを食べていた。ちなみに特地では毎週金曜にカレーが出される事になっている。

 一応はゲートで異世界と日本は繋がっているが、万が一ゲートが閉じた場合に備えて金曜カレーをやる事にしたのだ。

 金曜カレーで曜日が分かれば後は楽なのである。

「オリザルみたいな物だと思っていたがこれは美味いぞセッツ」

「そりゃあ良かったみたいで」

 監視役をしている摂津がそう返事をした。摂津自身もカレーを食べている。

「お、摂津は昼メシか?」

「あ、伊丹二尉」

 その時テッパチ(88式鉄帽)を被った伊丹二尉が食堂にやってきた。

「摂津から借りてた同人誌、引き出しの中に入れておいたからな。俺は今から偵察に行かないといけないからな」

「(そうか、そろそろ炎龍か)第三偵察隊でしたね。頑張って下さい」

 樹はそんな事を考えながら伊丹にそう返事した。

「ヤバくなったら摂津に救援してやる」

 伊丹二尉はニヤリと笑って食堂を出た。

「仲間か?」

 サラダを食べているヒルデガルドが聞いてきた。

「まぁ色んな意味で仲間やな(オタク同士やからな……)」

 樹はそう思いながら水を飲んだ。


 伊丹二尉の第三偵察隊が駐屯地を出て二日後、第三偵察隊から連絡があった。

「ドラゴンが目的地の森を焼いているだと?」

 檜垣三佐は報告を聞いて唸った。

「(……例えオタクでも日本人は日本人だ)……応援を送るか。伊丹が何をするか分からんからな」

 檜垣三佐は溜め息を吐いて人選をする。

「待てよ……確か摂津はヒルデガルドさんの面倒を見ていたな。道案内をしてくれるかもしれんな」

 檜垣三佐はそう呟き、摂津を呼んだ。


「何か伊丹二尉に予言されたみたいで怖いなおい……」

 樹は軽装甲機動車に乗り込む。

「まぁ特地を行けるんですからいいじゃないですか」

「そうですよ」

 水野と片瀬はそう頷く。

「こんな物が動くのか?」

 道案内人をする事になったヒルデガルドが軽装甲機動車を見ながら呟いた。

「……いいか。んじゃあ出発や」

「了解っす」

 片瀬が運転する軽装甲機動車は走り出した。

「オォッ!? 動いたッ!! 動いたぞッ!!」

 ヒルデガルドは子どものように目を輝かせてはしゃいでいる。

「ちょっと黙っとれヒルデガルド。それで水野、パンツァーファウストは何個や?」

「三つです」

「(……三つは少ないけど少なくとも炎龍を追い払う事は出来るな)」

 樹はそう考えてた。

「それで三尉、自分らが目指すのはコダ村でいいんですよね?」

 運転している片瀬が樹に聞いてきた。

「あぁ、伊丹二尉の第三偵察隊はコダ村を経由して目的地の森へ向かったらしいからな。俺達はコダ村付近まで行って第三偵察隊と合流予定や」

 樹は片瀬にそう説明する。

「それにしてもドラゴンだろ? やはり装甲は硬いんすかね?」

「可能性は十分あるやろな」

 片瀬の指摘に樹はそう言った。

「いざとなったらパンツァーファウストをぶっぱなしゃあええんや」

 俺は片瀬にそう言った。

「……暗くなりますね」

 空は既に闇に包まれようとしていた。

「連絡が来るのが遅かったからな」

 樹は知らなかった。

 あの死神と出会うのが夜中だという事を……。



「それと私はヒルダで構わないぞ。国の皆もそう言ってたからな」

「そうか、ならヒルダと呼ぶからな」



 
 

 
後書き
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