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転生者が歩む新たな人生

作者:冬夏春秋
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第20話 3学期始まる

 さて、年も明け麻帆良学園に戻ってきた。

 エヴァのログハウスも訪問し、お土産を渡すと共に、中部魔術協会の意向を伝えた。

 なお、「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」達に変な勘ぐりはされないように、以前渡した血の対価として、解呪や石化解除の文献や魔法書を閲覧させてもらっている、と学園長を通じて話しはしてある。

 嘘は言っていない。ただ、すべてを伝えていないだけだ。

 ガングロフィーニ? だったか、正義感に凝り固まった魔法先生なんかは納得がいっていないような感じで睨まれたこともあったが、話しが伝わっているのだろう、面と向かっては何も言ってこない。
 解呪や石化解除からは、悪魔の襲撃で村人らが石化し、村が全滅したことを連想するだろうから。
 さすがにどうこう言えまい。

「そうか」

 そう一言だけ話し、エヴァンジェリンとの話し合いも終わる。
 人形による呪いの移し替えが成功しないと進まない話しだから仕方あるまい。
 組織の後ろ盾を求めて庇護下に入るような性格でもないし。

 その後、冬休み中に調整したという時間差10倍のダイオラマ魔法球を前回の報酬としてもらった。

 このダイオラマ魔法球は、さすがエヴァンジェリンが調整しただけあって、中身が秀逸である。

 中は5区に分かれており、1区は宿泊施設兼来客を迎える屋敷となっており、2区は魔術工房、ただし現在は建物だけ。3区は自然及び農業区で、おおざっぱに森や海と、エヴァンジェリン仕込みの農作業を行う人形が田畑、果樹園などがある。4区は武闘場で大規模な攻撃魔法を使っても壊れないような仕様となっている。最後の5区は某龍玉を集める話しに出て来たような「重力」や「気圧」「空気の密度」が変化するトレーニングルームが設置してある。

 本当に珠玉の一品である。

 なお、とりあえずエヴァンジェリンは呪いの移し替え用の人形の作成に今後力を入れるそうだ。



  ☆  ★  ☆  



 3学期の始業式も過ぎ2週間も経つとさすがに日々の生活も慣れてくる。

 2-C、2-E、2-Jの数学と2-Bの副担任が今の仕事だ。

 2-Aのような面倒なクラスもなく、無難にこなせていると思う。



 そんなある日、当番となった学校の見回りをしていると、何やら怪しい気配を感じる。
 というか、あまり近づきたくない感じの魔力だな。
 文化部のクラブ棟の方か。

「(リニス。今どこにいる?)」

「(? 寮の部屋ですよ。夕ご飯の支度をして(アキラ)を待ってます)」

「(そうか。もうそんな時間か)」

「(どうしました?)」

「(文化部のクラブ棟で怪しい気配がするんだ)」

「(それは、瀬流彦に知らせるだけじゃダメなんですか?)」

「(本来はそれで良いんだけど、何かまずい予感がする)」

「(そうですか。では、すぐに現場に向かい、結界を張るので、その後に来て下さい)」

「(わかった。頼むよ)」

「(はい、頼まれました)」

 リニスとの念話をやめ、オレも現場に向かう。



 現場の文化部のクラブ棟に近づくとミッド式の封時結界が感じられるので、既にリニスは到着しているようだ。

 結界に入る寸前に「分身符(わけみのふ)」で分身体を作り、分身体は結界内に入れずに結界の外で行動させる。
 これで、どこからか監視されていても、余程のことが無い限り、「オレが封時結界の中へいきなり消えた」ということにはならないはずだ。

 結界の中に入れば監視の目は届かないので、オーラの密度を上げ、何があっても対処できるように気を配り、リニスと合流するために急ぐ。

 リニスはどこかの部の部室の開いた扉から中に対し、既に臨戦態勢だ。
 リニスの右前に立ち、敵に備える。

 すると中にいたのは、机に倒れ伏した1人の少女とその少女に駆け寄って起こそうとし、いきなり封時結界に囚われ、何が起こったかわからず、オロオロしたもう1人の少女だった。
 ちなみにもう1人の少女の行動を見ていたかのように話したが、実は只の予想だ。
 そう外れては無いと思うけど。

 部屋の中は少女達のいる机が中心にあり、パイプ椅子がその周りに転がっている。

 扉の反対側には窓があり、右手側の壁にロッカーと小物入れ用かカラーボックスが置いてある。左手側に本棚があり、そこそこ本が詰まっている。
 背表紙を見る限り、アレな本が多く、「黒魔術」とか「白魔術」「占星術」「恋占い」などが見受けられる。

 リニスに確認してもらうと、占い研究会の部室のようだ。
 研究会なのに部室がもらえるんだ………。

 はっ。思わず、現実逃避してしてしまった。

 で、現実に立ち戻り、倒れ伏している少女は近衛さんで、一緒にいるのは2-Aの長谷川さんだ。

 何故、長谷川さんが?
 まぁいい。とりあえず、先生っぽく声をかけよう。

「どうしたんです? 長谷川さん、近衛さん」

 声をかけ、近づいて行く。

「サギ先生。急に近衛が倒れて。それと一緒にいたみんなが消えてしまって!」

 パニクりながらも、要点を絞って説明してくれる。

 急に消えた? 何があった?

「危ない!」

 リニスの声と同時に天井から黒い(もや)が迫って来る。この部室に魔力が堆積してて、上にいたのに気付かなかった。

 まぁ、リニスが声をかけた同時に行使した【ライトニング・バインド】により、空間にがんじがらめに固定されてるんだけどね。

 とにかく急いで、近衛さんを抱え、長谷川さんを連れ、リニスの方に向かう。
 抱える前にざっと確認したが、近衛さんには特に怪我とかも無いようだ。

 オレ達がリニスの後ろに隠れたのを確認し、リニスが既に準備していた金色に光る魔力スフィアから【フォトンランサー】で靄を討つ。

 あの一瞬で何本の雷撃が入ったんだ?
 さすがはリニスだ。

 【フォトンランサー】が撃ち終わると同時に、机の上にあった紙が燃え上がる。
 黒い炎を上げた紙は一瞬で灰も残さず消えてしまう。

 うん? 10円玉か? 10円硬貨1枚だけが机に残っているな。



 疑問は尽きないが、とりあえず終わったようだ。

 とにかく、唯一意識のある長谷川さんに事情を聞こう。





 で、話しを聞いたら、こういうことだった。

 占い研究会の会員の1人が冬休みに「こっくりさん」の話しをどこからか聞いてきた。

 その子が2-Aにやって来て、近衛さんと占い研究会でやるやらないとか話してた。

 たまたま聞こえたその話しに「止めとけ、くだんねぇ」と長谷川さんが言ってしまった。

 長谷川さんは「こっくりさんは危険だ」という話しを聞いたことがあり、その話しをしても一向に聞きもしない。多分、長谷川さんはオタクな知識で聞いたので、ばらさずに説明することができなかったんだろう。

 で、いつの間にかなし崩し的に参加することになり、人気(ひとけ)の無くなる時間にこっくりさんを始めてしまった。

 最初は問題なかったようだが、突如近衛さんが倒れ、部屋中に嫌な気配が立ちこめた。

 バタバタと一緒にやっていた部員3人も倒れてしまい、恐怖していると、何か変な感じがさらにし、近衛さんと長谷川さんを残して、3人が消えてしまった。

 慌てて近衛さんの方に駆け寄ったら、いつの間にかオレが知らない女性を連れて来ていた。

 後は見ての通りとのこと。



 まぁ、あれだ。こっくりさん恐ぇ。

 事情を察するにこっくりさんに近衛さんの膨大な魔力が使われ、暴走し、雑霊が集まりあの黒い靄となった。

 その魔力を感じてリニスに連絡を取り………、以下略。

 部員3人が消えたのは封時結界に弾かれたんだろう。
 結界を戻せば、元の位置にいるはず。

 てか、近衛さんの魔力が暴走して雑霊が集まるなんて恐すぎだろう。

 近衛さん自身まで取り込まれてたら、シャレにならん被害が出たんじゃないか?

 ところで、長谷川さん。
 その早く説明しろや、という感じで睨むのは止めませんか?
 一応、こちらは生命の恩人なんですよ。

 多分、長谷川さんが結界内に取り残されたのは、体質的に結界をすり抜けたんだろうなぁ。
 さすがは、麻帆良の認識阻害結界を無効にする少女。

 だがしかし。

 これ、まずくね?

 麻帆良内で魔法使いが良からぬこと(戦闘とか)をする度に張る結界を、ガン無視して入って行ったら、生命が幾つあっても足りなくね?   
 

 
後書き
ちと長くなりそうなんで一旦きります
ネギよりも早くサギから魔法バレです 
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