| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

蒼天に掲げて

作者:ダウアー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

十二話

 旅を出て半刻ほど、俺は突拍子もなく二人に問いかけた。

「そういえばまだ趙雲以外名を聞いてなかったな」

「あー、そういえばそうでしたねー」

「村では領主さんの話ばかり聞いていたものですから」

 二人は思い出したように申し開く。

「私は程立と申しますー」

「私は戯志才と申します」

 しゃべり方が正反対な程立と戯志才に、俺はもう一度自分の名を名乗る。

「俺は稲威だ。これから迷惑かけると思うが、よろしく頼む」

「いえいえー、どちらかといえば稟ちゃんのほうが迷惑をかけると思いますよー」

「こら風! 何故そこで私なのだ!」

 程立の謙遜に、戯志才が頭を綺麗に叩きツッコミをする。

 この二人中々良いコンビっぽいな。

「それでは自己紹介も終わったところでだ、次の目的地を決めようではないか」

 趙雲が締めくくり、話を変えるように手を叩く。

「そーですねー、私は前回決めさせてもらったのでどこでもいいですよー」

「それをいうなら私もです。それに別段いきたい場所もないですし」

「まあお主等はそういうだろうと思っていた、私もだがな。それでは稲威殿、どこか行きたい場所はないですかな?」

 流れるように話を振られ、俺は少しばかり悩む。

 よく考えれば俺ってこの大陸の地理微塵も知らないんだよなー。それにいきたい場所なんてのも考えてなかったしな……

『それなら断然洛陽ね!』

(洛陽? どこだそこは)

『この大陸の都よ。そこにいけば色んなことを知ることができるわ』

(なるほど、だがあえていおう、絶対にいかねえ!)

『なんでよ! 今はこの大陸のことを知るのが先決でしょ!?』

(ふ、分かってないな照姫よ)

『どういう意味よ?』

(まず一つ、今の旅の仲間をよく見ろ)

『槍女と幼女と眼鏡じゃない。それがどうかし……は!?』

(そうだ、眼鏡だ。これほど頭の良さそうなキャラに教われば洛陽にいく必要などない)

『いいえ、でも新しいキャラには眼鏡でも頭のよくないキャラだっているわ! 銀○の新○とか!』

(残念ながら照姫よ、ここは昔の時代。新しいキャラなぞおらんのだ!!)

『な、なんですってー!?』

(さらにだ、真面目にいえば洛陽にいったところで情報しか手に入らん。俺達が今求めているのは天下をとる人物だろ?)

『それもそうね……なら北に向かうのはどう?』

 俺の意見に照姫が賛同し、俺の案に合うよう方向を指定する。

『北なら有力な勢力も結構あるだろうし、なにより魏と蜀があるからね』

 照姫が少し自信ありげに説明するが、魏と蜀という言葉がどんなものだったかあまり覚えてない俺は首をひねった。

(魏と蜀? 聞いたことあるようなないような気がするが、なんだったっけ?)

『馬鹿ねー、魏呉蜀の魏と蜀よ、三国志の二大勢力。ちなみに貴方気づいてないけれど趙雲って武将よ。それもとても有名なね』

(な、なんだってー!?)

 じゃあ俺は三国志の武将と旅してるってことか。あれ? でも趙雲って女性だっのか?

『だからいったじゃない、ここは外史の世界なのよ。史実と違って当然なの。それにね、そんな曖昧な記憶じゃこの先役に立たなくなるわよ?』

(そうか、ならいっそ全部白紙に戻して考えるか)

『そっちの方がいいかもね。それに変な外れ者も乱入したみたいだし』

(外れ者? なんだそれ?)

『まだ調べてないからよくは分からないけど、この外史が史実とはかなり違う歴史を辿ることは間違いないなさそうよ』

(そうか、ならまあ自分で考えて行動してみるわ)

『ええ、お願いね。外れ者に関しては分かり次第伝えるわ。それじゃね』

 俺が照姫との念話を切ると、ずっと待っていたのだろう、趙雲達が少し怪訝そうな顔でこちらを見ていた。

「決まりましたかな?」

 趙雲が俺を気遣うように聞いてくる。なんだか要らぬところで心配をかけてしまったようで、心の中で謝罪しながら目的地 (?)を告げる。

「地理には詳しくないんで場所まで指定できないんだが、北にいってみたい」

 まあ他があるなら遠慮するが、と控えめに答えると、三人共俺の決めた方角でいいといってくれ、俺は頭を下げた。

「それでは北に参りますか」

 そして趙雲の一言に俺達は頷き、北へ歩き出した。





 やはり覚悟はしていたが、旅というのは野宿が多く、今日は森の中で寝泊りすることとなった。

「それにしてもすごい量ですね、稲威殿」

 そして現在、俺は率先して食料調達を申し出て、昔培った森の知識をフル活用して食料をどっさり調達した。

「お兄さん一人でよくこんなに見つけましたねー」

「昔森に住んでたんでな、これくらいは朝飯前だ」

「おお、なら次からはお兄さんに食料を調達してもらえれば安心ですねー」

「任せとけ。それより趙雲はどこにいったんだ?」

 戯志才と程立の賛美に謙遜し、先程まで居たはずの趙雲について聞く。

「ああ、趙雲殿なら水浴びをしていますよ」

「あ、そういうことね」

 ならいいかと倒木に腰を落とし、火を起こそうと火打石を擦り合わせる。

「そういえば星ちゃんが覗きくらいならしてもいいといってましたよー」

「いいじゃねえか兄ちゃん、ここはいっちょ男を見せてやりな」

 隣で程立がいつものぼーっとした口調で趙雲からの伝言を報告し、何故か程立の頭の上にある人形が俺をはやし立てる。

「は!? まさか水浴びで無防備になっている星殿を、その無骨な体で押し倒し、乙女の純情を弄ぼうと――ッぶーーーーーーーーーーーーーーー」

「はーい稟ちゃん、あんまり包帯もないんですから、鼻血出さないでくださいねー」

「フガフゴ」

 そして、自爆した戯志才が鼻血を出し、それを程立が手際よく止める。

 既に何度か見たことあるが、これから嫌というほど見ることになるんだろうな……

 そんなこんなしているうちに、拾ってきた枝に火がつき、捕まえてきた鳥や兎などを捌いて炙る。

「おお、美味しそうですねー」

「塩や山椒があればもっと美味くなるんだがな」

 俺と程立が呑気な会話を繰り広げ、そろそろ焼き上がりそうになった頃、川岸のほうから趙雲が帰ってきた。

「おや、なにやら随分豪華ですな。もしやこれだけの量を稲威殿が一人で捕ったのですかな?」

 趙雲が濡れた後ろ髪を纏めながら、驚嘆するように目を丸くする。

「ああ、俺も少しは役に立たないといけないからな」

 俺が焼いた串肉を趙雲に渡し、味の感想を聞く。

「ふむ、獣臭さがなく食べやすいうえに美味い。野営でこれほどのものが食べれるとは思っておりませんでしたぞ」

「そういってくれりゃ、作ったかいがある」

 戯志才を起こして食事にしようと程立にいい、旅の初日にしてはまずまずだと評価しながら、皆で食事をとった。







 夜。俺と趙雲が交互に番をとることとなり、今は俺が野良犬や賊を警戒しながら見張りをしている。

『さて、ここで私の出番ね!』

 俺が欠伸を噛みしめていると、照姫が念話を飛ばしてきた。
 意気揚々と登場した照姫に呆れつつも、眠気覚ましにはちょうどいいと思い相手をすることにした。

(お前っていつ寝てるんだ? こんな時間に起きてるなんて健康的な生活は送ってなさそうだよな)

『そんなことないわよ、私達は複数の世界を管理しないといけないから基本的に寝ることはないの。睡眠欲もないしね』

(ほー、そうなのか。便利なもんだな)

『まあその分大変なことも多いけれどね。あ、そうそう、外れ者について調べた結果がでたわ』

(おお、仕事早いな)

『そうでしょ? だからもっと褒めたらいいわよ? 私は褒めれば伸びる子だから』

(だが断る)

『だからなんでよ!』

(もっとすごいことをしたら褒めてやろう。それまでおあずけだ)

『く、なんて人でなしなの!』

(それで、その外れ者とやらは一体なんなんだ?)

『ああ、そうだったわね。えーと、結果はね、外れ者は未来から来た御遣いらしいわ』

(なんだそれ? 俺と同じ転生した奴ってことか?)

『えーと、似てるようで似てないわね。その御遣いは死なずしてこちらの世界に来たってわけ』

(ということは、その未来の体のままでこちらに来たと?)

 それなら俺も元の体のままでよかったんじゃないかと思ったが、俺がいうより先に照姫がくぎを刺す。

『ええ、でも貴方の世界と違って“この世界の未来”だから毒とかの抵抗は心配ないわけ』

(なるほど、てことはこの世界の歴史を知ってる未来からの使いってことか)

『そうなるわ。だから貴方の記憶より鮮明に残っていてさらに的確ってわけ』

(それならそいつの下にいけばいいんじゃないか?)

『いえ、それでもその御遣いがこの歴史に関わった瞬間から御遣いにとっても外史になるわけ。歴史が変わるからね』

(つまりは御遣いの歴史からも変わるわけか。しかも俺も関わっているわけだしな)

『ええ、だからその御使いのところが一番ってわけではないの。それにアイツがいるってことも知らないでしょうしね』

(ああ、そうだったな。ならまあ、俺の気に入ったところでいいか)

『そうしてくれれば助かるわ。
 そういえば柏也、賊がちょっと近くにいるんだけれど、分かってる?』

(四方に八人、それと後ろで二人固まってるな)

『よくそこまで分かったわね』

(昔ジジイに、目で見るな! 気配で察せ! といわれてな)

『あのお爺さん実は仙人なんじゃないの?』

(案外そうかもしれないな)

 あながち冗談でもなさそうだと二人で呟き、照姫がコホンと咳払いをすると、話を元に戻した。

『それじゃとりあえず、三人起こしたら?』

(そうだな)

 ということで三人を起こし状況を説明する。若干起きてるのか寝ているのかよく分からない奴が一人いたが、まあ頭の人形は起きてるだろと考え、皆で対策を練った。

「要するに四方から囲まれているのですね?」

 戯志才が確認のために聞いてきたので、頷く。

「それでしたら全員で一方向に前進すれば良いのではないでしょうか」

 すると戯志才がすんなりと解決策を講じたので、俺は感嘆の声を漏らす。

「それもそうだな。それにしても、戯志才は頭良いな。まあ俺が頭悪いだけかもしれないが」

「この程度は余裕ですよ。それに私達は軍師になりたいのです。ちなみに風もですが」

「おー、そういえばお兄さんにはいってませんでしたねー」

 戯志才と寝ぼけ眼の程立にいわれ、なるほどと相槌を打つ。

「話はすんだようだな。それでは前進で良いのだな?」

「はいー」

 趙雲がニヤリと笑いながら槍を構え、北に向かって走り出す。
 俺は程立がえっちらおっちら走ってるのを見守りながらしんがりを務める。

「背負った方がいいか?」

「いえいえー、大丈夫ですよー」

 程立がとても大変そうに走るので声をかけたが、本人が大丈夫だといっているので諦める。

 と、趙雲が二人の賊に遭遇したようで、甲高い金属と金属がぶつかりあう音が聞こえた。

「この趙子龍にたったの二人など笑わせる。はぁッ!」

 だが趙雲の方が強いらしく、賊を二人共吹き飛ばすと、そのまま前進する。

「これならなんとかなりそうですね」

 戯志才が安堵のため息を漏らした。どうやら撒けたと思っているようだ。

 残念だが戯志才よ、それを人はフラグというんだ。

「趙雲、回り込まれたぞ」

 俺は敵の気配を察知して趙雲に伝える。と、そのすぐ後にまた甲高い音が森に響き渡った。


「残念ですが申し訳ない。価値あるものを置いていっていただこうか」

 そこには後ろで固まっていたはずの二人がおり、喋ってない方が趙雲に斬りかかっていた。

「悪いがそれはできぬ相談だな。何故ならもうすぐ死ぬお主達に価値のあるものなぞないからだ!」

 趙雲が無口な槍男に神速の突きを浴びせる。が、どういうわけか槍男はその突きを次々と避け、連撃を終えた趙雲に反撃すらした。

「その男は私の相棒でしてね。槍に関しては一流以上に強いのですよ」

 自慢げに語る男が笑い、俺達を馬鹿にするようにため息を吐く。

「やれやれ、妄言の類はあまり好きではないのですよ私。ですから諦めて金目のものを置いていってください」

 その方が良い選択だと思いますよ? と不敵に笑う細目男に、俺は背負っている野太刀を降ろし、投げるようにして細目男に渡す。

「はあ、分かったよ。ほら、落とすなよ?」

「そうそう、それで良いのでうぐッ!?」

「まったく、ちゃんと受け取れよおい。おら、地面に落とすなよ汚れるだろ」

 俺の野太刀二本 (百キロ)を受け取った細目男が苦悶の顔を浮かべ倒れ伏せる。

「何故剣二本でこんなに重いのですか!? こんなものを振るうなんてありえないでしょう!?」

「生憎と俺は十の頃からこれを背負っていてな。もう重いなんて感覚はないんだよ」

 ぐう! おのれええ! と叫ぶ細目男を尻目に、俺は追ってきた六人の賊を体術で伸していく。

 やれやれ、どっちにしても戦わないといけなかったか。

「はっ、せい! でやぁあああ!!」

 俺が最後の一人を背負い投げすると同時に、趙雲が目にも止まらぬ速さで突きを放つ。

「っ……」

 それを受け流すように回避した槍男に関心し、細目男を踏みつけながら質問する。

「あの槍男は本当に強いな。どっかの将だったのか?」

「ええい、貴様に話すことなど……イタタタタ!! 分かった、分かりました、話すから顔面はやめてください!」

 細目男がぽつぽつと喋り出し、俺が、最初からそういえばいいんだよ、と愚痴ると、戯志才と程立が少し蒼褪めたような顔でこちらを見ていたが、気づかないふりをして細目男の話を聞いた。

「それではまずは自己紹介を。私は宋栄(そうえい)と申します。そしてあそこで戦っている男が司兵(しへい)、私の相棒です」

「てめえの相棒とかどうでもいいっていってんだろうが。さっさとその司兵とやらのことを話せ」

「分かりましたから! あともう襲いませんので剣を取ってください!」

 細目男が細目に涙を浮かべながら俺に訴えてきたので、舌打ちしてから渋々太刀を背負い直す。

「えーと、それでですね。実は司兵は昔、呂布軍に仕えていたことがあったそうで」

 細目男、宋栄が服についた土を払いながらそう語り、趙雲と戦っている司兵に顔を向ける。

「呂布軍の副隊長になったこともあるのだとか。まあ奴は気まぐれらしく途中で辞退して旅を始めたらしいのですが」

 そこでお前が誘ったのかと聞くと、ええ、と若干苦笑いしながら答えた。

「なんでも今の時代を知りたかったらしいんですよ。それで色々教えていたら一緒に行動するようになりましてね」

 よく助けられましたよ、と頭を掻く宋栄。
 趙雲と司兵はまだ戦っているらしく、未だ激しい攻防が続いている。

「で、お前はなんで追剥なんてしてるんだ?」

「それはこのご時世だからですよ、現に最近賊の数が飛躍的に増えているらしいですしね」

「ええ、なんでも黄色の巾を身に着けているらしいですね」

 戯志才が眼鏡をくいっと上げて補足し、同時に程立も頷く。

「ですねー。なんでも張角という者が原因らいいですけどー」

 張角ね、やっぱりもう騒ぎが起きているわけか。

「まあ今回は見逃してやるが、次に襲って来たらその首跳ね飛ばすからな?」

「ええ、もうそのような失態は二度といたしませんとも。ああ、そうだ、貴方お名前は?」

「稲威だ、字はない」

「稲威殿ですか。覚えておきましょう」

 それでは失礼。と頭を下げた宋栄は、未だ激戦を繰り広げている司兵を呼び、司兵が後退するように宋栄の下に帰る。

「それでは重ね重ねすみませんでした。では、御機嫌よう」

 森の中に消えていった二人を見て安堵すると、趙雲が歯痒い顔で戻って戻ってきた。

「あやつ只者ではありませんな。かなりの手練れのようだ」

「なんでも呂布軍の副隊長だったらしいですよー」

「なに、それは本当か!?」

 趙雲が驚きの声をあげる。というより呂布軍の副隊長相手に互角の戦いをするとは。もしかして挑発してなかったらやばかったか?

「とりあえず後で話してやるから、さっさと森を出ちまおうぜ」

 その後森を出た俺達は、寝不足を解消しようと近くの町へ向かって歩き出した。
 
 

 
後書き
 作者です。え? そんなの知ってる?
 すみません、補足させてください。
 星と戦ってやばいかもと思った柏也についてですが、彼は照姫の『まあいいじゃない、今ならあの呂布にだって勝てるかもしれないわよ』の発言は、あまり信用していません。それと、能力使わない状態だったらの「やばい」です。「敗ける」ではなく「やばい」なのも一応、作者の意図的発言です。
 さらに補足とすれば照姫がいっている『呂布に勝てるかも』とは、能力を最大にしての状態『勝てるかも』です。
 作者の文章力のなさが原因で申し訳ありませんでした。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧