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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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番外編
番外編3:地上本部攻防戦
  第5話


飛行型ガジェットとの戦闘を中断したフェイトは,地上本部向かって高速で
飛行するゼストを止めるべく,リインから送られた座標に向かって急いでいた。
しばらくすると,少し高い高度を飛ぶゼストの姿が目に入る。
フェイトはさらに速度を上げると,ゼストの前に回り込んだ。
バルディッシュを構えゼストを睨みつけると,ゼストは前進を止めた。

「ゼスト・グランガイツ。首都防衛隊の隊長だったあなたがなぜ
 スカリエッティの側につくの?」

「それをお前に話すつもりはない。俺の邪魔をするな」

フェイトの言葉にゼストは表情を変えずにそう言うと,
握ったデバイスを構える。

「地上本部に何の用があるのかはしらないけど,管理局に所属する者として,
 あなたを通すわけにはいかない」

フェイトはそう言うと,バルディッシュを振りかぶりゼストに襲いかかる。
一瞬でゼストとの間合いを詰めたフェイトは,ゼストに向かって
バルディッシュを振りおろす。が,ゼストは難なくフェイトの一撃を
受け止めると,逆にフェイトを突き飛ばす。

「くっ・・・」

弾き飛ばされたフェイトは素早く態勢を立て直すと,再びゼストに向かう。
管理局に所属する魔導師の中でもトップクラスのスピードを持つフェイトの
攻撃であるが,ゼストは表情を変えずにフェイトの攻撃をかわし,フェイトに
攻撃を繰り出していく。が,フェイトもゼストの攻撃を残らず受け止める。
数分にわたって,激しい応酬が2人の間で繰り返され,フェイトは一度
ゼストから距離を取った。

(能力リミッタが重い・・・でも・・・)

フェイトは先ほどまで自分が戦っていた戦場に目を遣る。
そこでは,リインと融合したはやてが自身のリミッタを解除し,
ガジェットの殲滅戦を演じていた。

(これ以上はやての立場を悪くするわけにはいかない・・・。
 ここは何とかこのままゼストを抑える!)
 
フェイトが厳しい表情でゼストに視線を戻すと,ゼストがデバイスを構えて,
フェイトとの間合いを詰めてきていた。
さきほどよりもさらに激しい攻撃の応酬をフェイトとゼストは繰り広げる。

やがて,ゼストにフェイトが押され始めたところでゼストが急にフェイトから
距離を取った。

「くっ・・・限界か・・・」

ゼストはそう呟くと,元来た方へ飛び去って行った。
フェイトはゼストを追おうとしたが,自身の魔力消費も激しく追撃は
断念せざるを得なかった。
茫然とゼストの飛び去った方向を眺めていたフェイトに通信が入る。

『フェイトちゃん!無事か?』

はやてからの通信で我に返ったフェイトははやてに向かって返答する。

「大丈夫だよ,はやて。そっちは?」

『終わったで。地上の方もなのはちゃんが援護に回ってくれたおかげで,
 なんとか守り切れたみたいやね』
 
「そっか。じゃあ合流しようか」

フェイトはそう言うと,地上に向かって降下し始めた。



地上に降りたフェイトをはやて・なのはとライトニングの2人が迎える。

「おつかれさんやったね,フェイトちゃん」

「お疲れ様,フェイトちゃん」

はやてとなのはにねぎらいの言葉をかけられ,フェイトはどっと湧いてくる
疲労を自覚した。

「うん。はやてとなのはもお疲れ様。なんとか守り切れたみたいだね」

「そうやね。まあ,やれやれってとこやろか。それにしても地上本部の連中は
 ほとんど役に立てへんかったな・・・」

はやてが地上本部の建物を睨みつけながらそう言うと,なのはが苦笑しながら
はやてに話しかける。

「まあまあ,はやてちゃん。結果的に地上本部は守り切れたんだし,
 いいじゃない」

なのははそう言うが,はやては未だ怒りが冷めやらないようだった。
フェイトは,2人から離れキャロとエリオの元に近づく。

「あ,フェイトさん」

フェイトに気づいたキャロが声を上げると,エリオとともに駆け寄ってきた。
フェイトはそんな2人を抱き寄せると,声をかける。

「2人ともよく頑張ったね」

「「はい!」」

そう言って笑顔を向けてくる2人の頭を撫でていると,リインの甲高い声が
フェイトの耳朶を打った。

「大変です!はやてちゃん!」

「なにがあったんや?」

「今,地上本部の警備無線を傍受したんですけど,地上本部が建造した
 大型魔導砲のアインヘリヤルが破壊されたみたいです!」
 
リインの言葉にはやては驚きの表情を見せた。

「なんやて!?ガジェットにやられたんか?」

「いえ。まだ確実なことは判らないんですけど,どうやら戦闘機人の襲撃が
 あったみたいです」

フェイトははやてとリインの方に近づくと,会話に参加する。

「リイン,さっきの話は本当?」

フェイトが声をかけると,リインは勢いよく振り返った。

「はいです!地上本部の方でも情報が錯綜してるみたいで
 混乱してますけど,アインヘリヤルの全3基と連絡がつかないのは
 事実みたいです」

リインに謝意を伝えると,フェイトは腕組みをして考え込む。

「何を考え込んでるの,フェイトちゃん」

そう言って話しかけてくるなのはにフェイトは顔を向ける。

「うん・・・。スカリエッティが最重要と考えてた戦域はここじゃないんじゃ
 ないかと思って・・・」
 
「奇遇やね。私もそう考えてたところや・・・」

はやてがフェイトの言葉を受けてそう言った。

「どういうこと?」

なのはは首を傾げて2人に尋ねる。

「確かに地上本部に対しては大規模な襲撃があって,それなりに被害も出た。
 でも,主力はガジェットで敵の主戦力と思われる戦闘機人は現時点で
 確認されているのはたったの1人でしょ。
 それに対して,アインヘリヤルにはどうも複数の戦闘機人を割いてるみたい
 だから,ひょっとして,スカリエッティが本当に落としたかったのは
 地上本部じゃなくて他の何かだったんじゃないかな?って思ったんだよ」
 
「そうやねん。そもそも,地上と空の戦闘終結かてガジェットが
 一斉に撤退したせいやろ?何か不自然さを感じるんよね・・・」
 
フェイトとはやてが口ぐちにそう言うと,なのはは腕組みをして考える。

「じゃあ,地上本部の襲撃は囮なの?」

なのはがそう言うと,フェイトとはやては小さくうなずく。

「そうかもしれないね,ってこと」

そのとき,機動6課の集結点に聞きなれた声が響いた。

「なのはさーん!」

声のする方を見ると,地下の戦闘機人の迎撃に向かったスターズの2人と
ギンガがこちらに向かって走っていた。
3人はそのままはやての前に整列すると,一斉に敬礼する。

「八神部隊長。地下に出現した戦闘機人1体およびガジェット数機と交戦し,
 ガジェットについては全機破壊しましたが,戦闘機人は取り逃がしました」

ティアナがそう報告すると,はやては返礼しながら笑顔を向ける。

「御苦労さんでした。3人とも無事に戻ってくれてよかったよ。
 戦闘機人の件については気にせんでええよ。
 今日は地上本部を守れただけで満点や」

「はい。ありがとうございます。ところで地上ではずいぶんと激しい戦闘に
 なったみたいですね・・・」
 
ティアナはそう言って周囲を見渡す。その光景は3人が地下に降りる前とは
一変し,地面には砲撃による穴が至るところにあき,大量のガジェットの残骸が
散乱しているという惨状であった。

「まあ,規模だけはこれまでで最大やったんちゃう?」

はやては顔を曇らせると,吐き捨てるように言う。

「・・・何かあったんですか?」

何かを感じ取ったのか,ギンガがはやてに尋ねる。

「もしかすると,地上本部への襲撃は囮の可能性があるんだよ・・・」

そこにフェイトがそう言って割って入り,アインヘリヤルが全基襲撃された
ことなどを3人に話した。

「そういえば・・・交戦した戦闘機人がおかしなことを言ってました」

フェイトの話を聞き終えたティアナは,空を見上げながらそう言った。

「何て言ってたのかな?」

「役目は果たしたから十分だ,って・・・」

フェイトの問いにティアナがそう答えると,はやてとフェイトは
難しい顔をして少し俯いた。

「そっか,ほんならやっぱりここは主戦場やなかったんや・・・くそっ!」

はやてが吐き捨てるようにそう言った時,はやてのもとに通信が入る。

「なんやねんこんなときに・・・」

はやてはそう呟くと,緩慢な動きで通信をつなぐ。

『・・・隊長。八神部隊長,聞こえますか!』

それは戦闘開始直前から通信が途絶していた隊舎に居るはずの
グリフィスからの通信だった。

(グリフィスくんから通信があるっちゅうことは隊舎は無事なんやな・・・)

はやてはそう考え表情を少し緩めるが,グリフィスからの通信によって,
その考えが甘かったことと,スカリエッティの真の目的が何であったかを
思い知らされることになる。

 
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