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DOG DAYS 記憶喪失の異世界人

作者:blueocean
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第4章 レオの思い

 
前書き
今回からオリジナルな展開が混ざりますが、おかしな所があったらご指摘お願いします。 

 
「ちっ!?」
「貰った!!」

斧の攻撃を流しきれなかったレイジにすかさずレオが止めの一撃を食らわせた。
その攻撃はレイジの鞘に当たり鞘は勢いよく後ろに飛んでいった。

「これで………ワシの勝ちだ………」
「ああ、ちくしょ………」

目の前に斧を向けられ、仰向けに倒れ込むレイジ。
それを見て、レオもその場に座り込んだ。

「ふぅ………疲れた………」
「だけどスッキリしたろ?」
「ああ、そうだな………」

そう言ったレオは少し俯いたが、何やら覚悟を決めた顔でレイジを見た。

「ワシも腹を括った。何故戦争を起こすのかだな………レイジ、貴様に話そう。いや、むしろもっと早く話すべきだったのかもしれん………」
「俺に………?でも俺は新参者だぜ、国のことなんて全く分からないのに………」
「いや、貴様はワシにとって未来に起こる最悪の事態を回避する可能性がある唯一の人物なのだ………」

そう言って立ち上がるレオ。
戦闘後なのでフラフラながら歩く様はハッキリ言って危なっかしくて見ていられない。

「レオ、肩貸せ」
「おい、レイジ何をする?」

レオの返事を待たず、俺はレオの腕を肩に回し、担ぎながら一緒に歩く。

「貴様も大分疲労しているはずだ。無理をするな………」
「多少魔力強化すれば普通に動ける。………まあ後が恐いけどな」

恐らく明日は全身筋肉痛だろう………

「全く貴様は………」

それ以上何も言わないレオ。抵抗も無いのでやっぱり結構しんどいみたいだ。

「でも何処に行けば良いんだ?」
「ワシの部屋だ」

夜に男を部屋に連れ込むなんて………

「いやらしい事など無いぞ………?」
「分かってますよレオ陛下」

そう言ったら頭を叩かれた。








「これを見て欲しい」

そう言って俺の前に鏡の様な物を持ってきた。

「これは映像板と言ってな、ワシは『星詠み』の力で少し先の未来を覗くことが出来るのだ」

それって凄くないか………ちょっと待て、その映像板を持ってきたって事は………

「その未来に何かあるってことか………?」
「そうだ………そしてその未来こそワシがどうしても変えたい未来………」

そう言って映像板に映像が映し出された………









「何だよこれ………!?」

映像板に写っていたのは血溜まりの中に倒れる勇者とあの姫様。
その側には勇者の武器の棒と彼女の武器なのか短刀が落ちていた。

「これがワシが戦争を起こすきっかけの星詠みだ。『エクセリード』の主、ミルヒオーレ姫と『パラディオン』の主勇者シンク、彼らは30日以内に確実に死亡」

「それがこれから起こる未来だって言うのか!?」
「恐らく………しかしこれでもマシになった方なのだ。前は『その映像の未来はいかなる事があっても変わらない』と出ていたのだからな。しかしレイジ、貴様の映像が流れてからその一文が無くなり、代わりに新たな一文が出たのだ」
「新たな………?」

そう言って再び映像板に映像が………

「これは………」

そこには巨大な魔物に向かっていく2人の人影が。
顔は分からないが、片方は白いロングコートを着ており。もう1人は燃えるような赤い髪の人。

「この映像にはな、『2人の異世界の剣士、8つを統べる強大な魔物に立ち向かう、そして………』その後の文字は何故か写らない。だが、もしかしたらミルヒ達の絶望的な運命を変えられのかも知れぬ………そう思って貴様を待っていたのだ………」

だからこそ俺が必要なのか………
だけどこのもう一人の剣士は誰なんだ?
俺以外にも異世界から剣士がいる………?

「ハッキリ言ってレイジを利用してワシはミルヒ達を救おうとしている。まあそれでも未だに死ぬ運命は今だに変わらぬのだが………」

そう苦々しく呟くレオ。

「だがあの魔物の言っていた事であの運命を変えるには神剣がどうにも関わっている様だ。星詠みにもあったように『エクセリードの主』と『パラディオンの主』の主が原因なのだ」

確かに星詠みには2つの神剣の主の姫様と勇者が死ぬと出ていた。
………と言うことは。

「神剣を持っていなければあの星詠みは関係無くなる?」
「そういう事じゃ。神剣を全て封印し使えなくすればあの星詠みも消え去るだろう。そのために次の戦で神剣を互いに賭け合おうと思っている」

なるほど………それで次の戦に勝ち、神剣を封印しようと思ってるのか………って!?

「神剣を賭けてなんて………一応国のとって大事な物なのだろう?だったら魔物が神剣を狙っているから互いに使わない様に封印しようと言えば良いんじゃないのか?ダルキアン卿は感づいてるみたいだし、話せば納得してくれるんじゃないのか?」
「かも知れん………しかし、ミルヒの側近の者達に話すと、未来が更に悪い方向へ向かってしまう。そう思うと………」

なるほど………そんな可能性が有るのか。

「でも俺の場合は?」
「ミルヒの側近達以外は大丈夫だろう。それにレイジは親しくないであろうが」

………なるほど。

「全ては推測の上での考察だが、不安要素は少ない方が良い。だからこそワシは1人で事に当たっていた。………しかし、それももう限界だと感じた。だからこそレイジ、感づいた貴様に最初に話したのだ………」

そう言ってシュンとするレオ。
耳も垂れ下がっている。自分でも負い目を感じているのだろう。

「ずっと黙っていたのは悪いと思う。戦争も自身の目的の為に何度も侵攻したりと行き過ぎなのは分かってる。だが………」
「………分かった。なら次の戦争は必ず勝たないとな」
「レイジ………良いのか?」
「全然。………それに、星詠みって要するに占いみたいなものだろ?それに俺の場合は死ぬとも出ていない、断る理由が無いよ。」
「だがワシは………」
「じゃあもし俺がピンチになったら助けに来てくれ。俺とレオ、2人なら例え巨大な魔物でも負けねえよ」
「………ふふ、そうだな」

そう言って笑顔になるレオ。

「それじゃあこの話はとりあえず終わりな。それに何時までもこの砦に居る気は無いんだろ?」
「ああ、明日城に戻る。一旦前の戦争の報酬を渡さねばならんしな」
「………ということは俺にもお金が………?」
「まあ大した戦果を挙げられはしなかったがやるつもりだ」
「よっしゃ!!城に帰るのが楽しみになってきたわ!!」

とテンションが上がるレイジ。
先ほどのシリアスな展開を吹っ飛ばすような変わりようだった。

「全く、切り替えが早いな………」

そんなレイジを見てレオを微笑んだ。

「ワシも覚悟を決めないといかんな………戦争を立て続けに起こす領主など………」

レオは零治に聞こえないように小さく呟いたのだった………






さて、城に帰りその次の日に盛大に式が執り行われ、皆それぞれ報酬が渡された。
昨日の砦でも攻防でも負け、士気的にも沈んだ感じでするのだと思っていた俺だったが意外にも盛り上がっており、結構盛大に行われていた。

「何で敗戦したのにこんなに盛大なんだ?もっと静かに行うもんだと思ってたのに………」
「いや、盛大なのはいいじゃん。それに姉上は結構負けても豪快だからな………まあ最近は負けも無かったけど………」

そういうガウル。
ガウルは昨日の戦闘を起こした張本人と言うこともあってレオにこってり絞られた様で、頭に小さなタンコブが出来ていた。

「ううっ………本当なら私達にも報酬が………」
「そやな………」
「残念です………」

「いや、お前らは3人であの親衛隊長に負けてたじゃないか………」

そんなガウル同様、おっさんにこってり絞られたジェノワーズの3人もタンコブを作りながらブルーな感じで遠くから式を見ていた。

「なんやと~!?」
「でも事実」
「私は本気を出す前に負けてしまいました~!」
「そうや!!私達も本気を出してたら負けなかったわ!!」
「実は私も」

「いや、だったら最初から本気で戦えよ………」

「「「うっ!?」」」

真意は定かじゃ無いか、一応ガウルに言われ何も言えなくなった。

「まあ俺はそんなことより貰った報酬何に使うかな………」

式の途中だが頭の中は既に貰った報酬の使い道で頭が一杯だったり。

「ずるいずるい!!何かおごれやレイジ!!」
「………何言ってんだバカ?」
「バカ!?」
「私は美味しいディナーが良いですぅ~」
「いや了承してないからなベル」
「本が良い」
「ノワール、図書館に行け」

ブーブー言うジェノワーズ。
式の途中なので当然うるさいとビオレさんの目がキラリと光るので勘弁して欲しい………

「分かった分かった!!俺は街の事よく知らないから案内ついでにだったら何か軽食位おごってやる」
「よっしゃあ!!」
「やっぱり色気に弱いです~」
「………」

はしゃぐ2人に対し、自身の胸に手を当ててがっがりするノワール。

「別に負けてないし、ガキには興味無い。そしてノワール、落ち込まなくてもガウルがもらってくれるから心配するな」

「えっ、俺!?」
「本当………?」
「うっ………」

ノワールに涙目で見つめられ、一瞬出そうになった言葉を詰まらせる。

「だ、駄目やって。王子はまだ子供なんやから!!」
「そ、そうです~王子にはまだ早いです~!!」

そんなノワールを慌てて止める2人。

「モテモテだなガウル?」
「モテモテ?何が?」

意味が分からないのかポカンとするガウル。

「まるで誰かさんみたいだな………」
「誰かさん?」
「?俺今何を言った………?」
「誰かさんだって。………思い出した訳じゃないのか?」
「ああ、そうみたいだ………」

最近、記憶が戻るのが恐くなってきている。
戻った自分によって今の自分が消えるような気がするからだ。

「だが、このままなのもいけないよな………」






「はむはむ………」
「もぐもぐ………」
「うまうま………」

「はぁ………」

さて、式も終わり、早速ジェノワーズに街を案内してもらい、大体何処に何があるか把握できた。
なので約束通り、ケーキが美味しいと言う喫茶店に3人を連れてきたのだが………

「食い過ぎだろ………」
「はむもぐあっぷん!!!(おごりのときに食わんでいつ食うんや!!!)」
「何言ってるか分からんし………ほらノワール、口元にクリーム付いてるぞ」

そう言ってナフキンで拭いてやる。

「全く………」
「………ありがと」

「うまうま~」
「ベールに関しては10個目突破してるし………」

すっからかんって事は無いよな………?








「はあアイツら………結局報酬が3分の1に………」

貰った報酬の中身を確認して溜め息を吐く。
あの後ジェノワーズと別れ、フラフラと再び街を探索する俺。

「あらアンタ、もしかして記憶喪失の剣士さんじゃないかい?」
「ん?」

そんな中、俺に話しかける露店の店のおばさん。
どうやらここはアクセサリー屋みたいだ。

「あれ?俺って結構有名?」
「まあね。レオンミシェリ様に軽いノリで接してるのはアンタだけだからね」

………何か不味い覚えられ方な気が。

「それよりどうだい?少し見ていかないかい?」
「………まあせっかくだし、どれどれ………?」

アクセサリーを見ると色んな綺麗な石に皮の紐を通した簡単なもので、お値段は結構お手頃な感じだ。

「………?」
「どうしたんだい?」
「これは………?」
「ああ、何か森で拾った宝石でね、綺麗な色をしてたから持ってきたんだよ。何だいこれ欲しいのかい?」
「ああ………」

だってこれには魔力を感じる。
ただの綺麗な宝石じゃない。

「まいど!!」

俺は即座にそのアクセサリーを買ったのだった。



その帰路………

「あの魔物から出てきた玉に似てるけど………まああれよりも綺麗な色だし問題ないか。それに………」

そう呟き、買った宝石を見る。

「何でだろ?とても重要な物の気がする………」

レイジはその宝石を無くさないように、しっかり懐にしまい、城に帰った………







「どうだった街は?」

夕食を食べ、少し食事の運動にと庭園に来ていた俺。
中庭みたく広いスペースがあるわけでは無いのだが、今中庭にはガウルとゴドウィンが訓練をしており、邪魔をしてはいけないと思ってこっちに来たのだった。

俺がしたいのはイメージトレーニング。記憶の中にある自身の動きを思い出すように真似をする。
他人から可笑しな目で見られるかもしれないが、俺にとって一番効果があった。

「ああ、結構活気があって予想以上に楽しめた。………だけどもう手持ちが3分の1に………」
「はっ!?一体どれだけ使えばそうなる!!」
「ジェノワーズの3人に案内のお礼って事でケーキをおごったら………」
「歯止めが効かず、かなり食べたのだな?」
「ああ………」

お陰で貧乏生活だ。
………と言っても場所も食事も出るのでそんなに不便ではない。

「全く………アイツ等は………」

頭を抑えるレオ。
直属では無いとは言え、あの3人には手を焼いているみたいだ。

「おっ、そういえば………」
「?」

俺はさっきの露店で買った青い宝石のアクセサリーを渡した。

「これは?」
「青い宝石」
「見れば分かる。………くれるのか?」
「ああ、世話になってるお礼だ。………その宝石な、魔力を感じるんだ」
「魔力!?じゃあこれはお前の記憶の手がかりになるのでは無いのか!?」

確かに俺もそう思ったが、何も思い出すことは無かった。
恐らく俺との関わりは無いのだろう。

「それが全く………それにな、この宝石、あの魔物から出てきたあの青い宝石にも似てるんだ」
「それは危険なのでは無いのか!?」
「いや、この石からはあの魔物みたいな禍々しいのを感じないから大丈夫だ。それに何かいざというときに守ってくれる様な優しい魔力を感じるんだ………」
「魔力とはそういうものなのか?」
「いや分からん」

そんな俺の答えにまたも頭を抑えるレオ。
まあ気持ちが分からんでも無いが、俺もちゃんと理解したわけでは無いのだ。

だがそんな俺でもこの宝石には害がないのは分かる。

「でも絶対に持ち主を守ってくれる。だから………はい」

そう言って宝石をレオに渡した。

「………あまり嬉しく無いな」
「いいから貰っておけ!絶対にレオの助けになるから」

そう言って無理やり手に渡した。

「………確かに綺麗だな」
「な?レオには似合うし、助けになってくれる。一石二鳥だろ!!」
「………まああまり期待は出来そうにないが、あって損は無いだろうから貰っておく」

そう言いながらネックレスをつけるレオ。
俺の予想通りとても似合っていた。

「どうだ?」
「エロさが増した」

ゴン!!と大きな音と共に、頭に大きなタンコブが出来た。

「全く、貴様は………」
「レオ、綺麗だ」
「今更………もう寝る!」

そう言ってそっぽを向かれ、城の中に戻って行こうとするレオ。

「でな………レイジ。ワシはあの星詠みの事とワシの考えをビオレとバナードには話しておこうと思う………だから………」

「ああ、その時は俺も一緒に居てやるからちゃんと呼べよ?」
「………ありがとう」

恐らく今の話をしたいために俺の所に来たのだろう………
俺の返事を聞いて安心した顔で城に戻っていったレオを見て明らかだ。

「さて、俺もほどほどにして寝るとしますか………」

多分あの2人なら分かってくれる筈だ。
ガウルは今のレオに不満げだったが、いずれ分かってくれる時が来る。

「今の内にゆっくり休んでおけレオ………」

遠くない未来に起こる出来事を思いながらそう呟いた………









「ふむ………」

ベットに仰向けで倒れ込んだレオは首に掛けていた宝石を手に取り、窓から入る月明かりに当ててみていた。

「綺麗だ………こんなに綺麗な宝石は初めて見た………」

宝石と言ってもハッキリ言ってダイヤみたいな角張った宝石とは違い、丸い小さなボールのような宝石だ。

『レオ、綺麗だ………』
「奴も余計な事を言わず、真っ直ぐ言ってくれれば格好が付くのだがな………」

そう思いながら角度を変えて見てみる。宝石に照らされる月明かりが様々な模様を作り出している。

「レイジ………奴は記憶が全て戻ったら元の世界に戻るのだろうか?」

そんな思いがふと心に浮かび、暗くなるレオ。

「まあだが、帰る方法以前に記憶も無いのだ、奴は当分ワシの城にいるだろうな」

そう心の整理をし、顔を上げるレオ。

「さて、いい加減寝るとしよう」

そう言ってレオは眠りについた………  
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