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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第五章 StrikerS編
  第百十九話    『ぎこちない距離感、深めあう仲間達』

 
前書き
今回はほぼラン視点で描きました。
やっぱりこの話はお互いの距離を縮める大切な話ですから外せませんでした。 

 





Side ラン・ブルックランズ


機動六課が始動して数日。
私達はまだ慣れないデスクワーク作業をオフィスでしている時だった。

『隊員呼び出しをします。
スターズ分隊、スバル・ナカジマ二等陸士、同ティアナ・ランスター二等陸士。
ライトニング分隊、エリオ・モンディアル三等陸士、同キャロ・ル・ルシエ三等陸士。
セイバーズ分隊、ラン・ブルックランズ三等陸士、同レン・ブルックランズ三等陸士。
10分後にロビーに集合してください』
「ん…?」
「姉さん、なんだろうね…?」

レンと二人でなんだろうと話している。
それからスバルさんとティアナさん、エリオとキャロちゃんと合流して向かう途中で、

「呼び出しなんて初めてだねぇー」

スバルさんがそう話し出す。

「そうですね」
「う、うん」
「「はい」」

私、レン、エリオ、キャロちゃんでそう返事をする。

「ティア、行こう?」
「あー、今行くわ…」

ティアナさんがそうスバルさんに言葉を返してくるが肩を何度も捻っていてどうやらお疲れのようだ。
スバルさんも心配したのか、

「…ティア、筋肉痛? やっぱりつらい…?」
「まぁ少しね」
「なのはさんとシホさん達の訓練ってハードだもんねぇ」
「そうね。いままででも結構鍛えていたつもりだったけど、あの指導を受けているとまだまだ甘かったんだって思うわね…。
そうは思わない? ランにレン、エリオにキャロ?」
「まぁ、そうですね。私とレンはシホさんに追加で結構魔術の修行で絞られていますからおそらくティアナさん達の二倍くらいは疲労は溜まっていますかね?」
「そうだね、ラン姉さん。でも、もう慣れたって事もあるかな? アルトリアさんとネロさんの剣術の修行は普通にハードだから」
「あー、そういえばあんたら二人はシホさんの養い子で、シホさん達と一緒に暮らしているんだったっけ…?」
「うん!」
「はい」
「ふーん…それじゃその歳でちょっとレベルが高い技を使うのも納得できるわ」

どこか、ティアナさんの表情には羨ましいというものが込められているのを感じた。
別段気にはしないんだけど、どこか不安になる感じがしたのは気のせいかな…?
私がそんな事を思っていたがそこにキャロちゃんがティアナさんに寄っていき、

「あの、ランスター二士。よろしければ簡単な治療をしますが…」
「あぁ…そういえばキャロはヒーリングのスキルも持っていたっけ。それじゃお願いしちゃおうかしらね」
「はい…」

それでキャロちゃんはなにかの詠唱を開始するとそれをティアナさんの腕に当てていく。
するとティアナさんはかなり気持ちいいのか、

「あ、あ、あ~~~…効く効くぅ」

とても気持ちのいい表情をしていた。
あ、それなら私もシホさん謹製の塗り薬をおすすめしてみようかな?
あれは好きな人と苦手な人とで確実に分かれるからティアナさんはどっちかな?

「あの、ティアナさん。気持ちいいところ悪いんですけど、シホさん謹製の塗り薬を後で使ってみます…?」
「ん…? シホさん謹製の塗り薬…? それって効くの…?っていうか、シホさんってそんなものも作っていたの?」
「はい。なんでも伝手の協力者によって販売したら大ヒットしたらしいですよ?」
「そうなの。それじゃ後で使わせてもらおうかしらね?」

そうティアナさんは言っていた。
ちなみに後日に使ってみたらしく、それ以降スバルさんと一緒によく使うようになったという。
どうも、こう…突き抜けるような刺激が癖になったとか…。
ちなみになのはさんは昔から使っているらしいがいまだに慣れないというらしい。
もったいないなぁ…。
そんなどうしようもない事を思っていると近くではスバルさんとエリオが会話をしていて、

「エリオはへーきなの?」
「はい、なんとか…。これでも鍛えていますから」
「そっかー。やっぱりちっちゃくても騎士だねぇ。今度レンと一緒に三人で組み手とかしてみよっか」
「はい! お願いします。ナカジマ二士」

ん…?
なにか違和感を感じた。
スバルさんもどうやら感じたらしく「ん?」という感じの顔になっていた。
そしてティアナさんのほうでも、

「あー、ラクになったぁ。ありがとね、キャロ」
「恐縮であります。ランスター二士」

あ、こっちも。
違和感の正体は気づいているけどね。
ティアナさんも少し堅苦しいという表情になっているし。
それでティアナさんが最初に、

「あのさ、二人共? なんつーか、こう…」
「そうだね。チームメイトなんだしもうちょっと柔らかくてもいいよ。階級付きで呼ばなくても。
エリオはランとレンは普通に名前で呼んでいるでしょ? なんか、少し嫉妬するっていうか…」
「あ、はい…」
「えっと、ではなんとお呼びすれば…」

エリオとキャロちゃんはどうしていいか迷っているようである。

「ランとレンのように名前でいいよ。スバルとティア! そしてキャロはランとレンの事も階級をつけないでいいと思うよ」
「「…い、いいんでしょうか?」」
「いいんじゃないの?」
「うん。それじゃ私もティアナさんの事をティアさんって呼ばせてもらおうかな?」
「ぼ、僕もいいですか…?」
「いいわよ」

よかった。なんか、これこそ仲間って思いになるしね。

「それでは、スバルさんとティアさん」
「ランさんとレンさん」
「うん♪」
「いいと思うよ。キャロちゃん…いや、キャロでいいかな」
「構いませんよ。ランさん」
「よかった」

うんうん。距離感が縮まった感じがするよ。
私がまた一人感激しているとティアさんが「さ、遅れてもなんだからさっさと行くわよー」と言ったので私達六人で向かうことにしたのだった。
そして到着するとリインさんが待っていてくれていた。
リインさんは自宅、つまり八神部隊長の家はシホさんの家とご近所なので昔から良くしてもらっていたからあまり頭が上がらないんだよね。

「はい! みなさん集まりましたね」
「「「「「「はい!」」」」」」

りインさんが元気に挨拶してくる。
「おいーっす」と言っているのがなにげに可愛いです。
それはいいとして、私達は元気に挨拶を返す。

「今日の午前中は訓練なしということで六人には六課の施設や人員なんかを紹介していくですよ」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
「いい返事です。ほかのみなさんは初日にオリエンテーションをやってたですが六人はずーっとなのはさん、シホさん達と訓練でしたから」

そうだよね。いまだに施設の中がわからないところがあるから自由に行き来できていないんだよね。
今回はちょうどいい機会だね。
でもそこでりインさんが少し恐ろしいことを言った。

「でもおかげで最低限の基礎は終わって今日からは本訓練のスタートだとか」

あ、あれで本格的な訓練じゃなかったんだ…。
ティアさんなんか怖々とした表情になっているし。
スバルさんはのんきに笑っているけど。


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・S・高町


私となのははいまはやてとお話をしている途中だ。

「それで、訓練ももう四日目や。新人達の手応えはどないや? なのはちゃん、シホちゃん」
「六人ともいいね。かなり伸びしろがあるよ。あの子達」
「そうね。取り急ぎ準備だけは終えたけど伸ばしていく方向もだいぶ見えてきたかしらね」
「うん!
まずは高速機動と電気資質、突破・殲滅型を目指せるガードウィングのエリオ。
乾坤一擲の剣の技術と凍結資質、同じくガードウィングのラン。
一撃必殺の爆発力に頑丈な防御性能、フロントアタッカーの理想型を目指していくスバル。
スバル以上に防御重視の頑丈な護りの要、そして凍結資質で攻撃にも転用できてフロントアタッカーのレン。
二騎の竜召喚を切り札に支援中心に後方型魔導師の完成形を目指していくフルバックのキャロ。
射撃と幻術を極めて味方を生かして戦う戦術型のエリートガンナーになってくはずのセンターガードのティアナ」
「全員一癖も二癖も伸ばせる技能を持っているのよね」
「そう。だからどこまで伸びるか楽しみだよ。六人が完成したらすごいことになるよ! きっとね!」
「それは楽しみや。それで、六人のリーダーは誰になるんやろな?」

六人のリーダーか。それだとやっぱり…。

「ティアナで決まりじゃないかな?」
「そうね。やっぱりみんなに指示を出せる人が一番的確だと思うわ」

なのはの意見に私も賛成の意を示しておく。

「そうかぁ」
「ティアナはちょっと熱くなりやすいところがあるけど、視野は広いし指示も正確。自然に他の五人を引っ張っているしね」
「そうね」
「ええ感じやね」

はやてがそう言葉を発するがなのはは少し困り顔になる。
私も事情は知っているから何とも言えないわね。

「ただねぇ。ライトニングとセイバーズは経験不足以外だとレンの少し弱気なところ以外は特に問題はないんだけどね。
スターズのコンビが二人揃ってすんごい突撃思考なんだよ。ここは厳しく教えていかないとね」
「あー…なるほどな。なのはちゃんのちっちゃい頃みたいな?」
「あははっ!」

はやての比喩に私は思わず笑いをこぼしてしまった。

「あ、シホちゃん。笑うのはひどいよー」
「や、ごめん。なんていうか昔になのはをユーノ、フィアと三人で鍛えていた頃を思い出して、苦労したなぁ…と思い出したら思わず笑いたくなって…」
「うう~…そんなに迷惑かけていたかな?」
「私が生き証人や。安心してええよ。なのはちゃん」
「は、はやてちゃんまで…泣いちゃうよ、私!?」
「「あははははッ!」」

それで三人でひとしきりじゃれあった後、

「うー…なんかいまいち納得できないけど、話は戻すね。
今すぐにでも出動はできなくはないんだけどね。三つの分隊もまだあと一週間くらいはフル出動は避けたいかな。
もう少し確実で安全な戦術を教えてからにしたいんだ」
「その意見には同意ね。私もランやレンには危ない戦いはしてほしくないからね」
「そこのところはへーきや。そのための隊長・副隊長の配置やし。
新人達の配置についてもなのはちゃん、シホちゃんの裁量に…いや、高町教導官、シュバインオーグ・高町教導官に全面的にお任せや」
「ありがとうございます。八神部隊長」
「さすが部隊長ですね」
「二人共あかんよ。そう何度も部隊長呼ばわりはまだ慣れへんから背中がムズ痒くなってくるわ」

それでまた三人で笑いをこぼすのだった。


◆◇―――――――――◇◆


Side ラン・ブルックランズ


それからリインさんに色々と案内をしてもらって食堂にまでやってきた。

「はい。こちらの食堂で案内は一通り終了です。食堂の使い方はもうわかっていますよね?」
「「「「「「はい」」」」」」
「それではちょうどお昼休みですのでこれにて解散にしましょう」
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」
「さて、それでは…士郎パパー! お腹空いたです!」
『!?』

そのリインさんのある意味問題発言によって食堂にいた全員がギョッとしていた。
それに対して食堂の士郎さんはというと、

「…ああ、リインか。少し待て。特別メニューをご提供してあげよう」
「少しお待ちくださいましね。リインさん」
「わーいです!」

なんか和気あいあい…。
士郎さんとキャスターさんはもう慣れたというか普通に日常だと感じているようで気にもしないで料理を作っている。
リインさんはもうベストプレイスらしい士郎さんの頭の上で料理が来るまでくつろいでいるし。
それに呼応して何名かの男性局員が羨望の眼差しを士郎さんに贈っていたのは、うん、忘れよう…。
それで少し落ち着いてきた頃に全員で食べようかという話になった。
スバルさんは用があるらしいアルトさんに呼ばれて私達だけで先に準備をすることになった。
だけど、そこでもやっぱりエリオとキャロは無言で佇んでいた。
ティアさんも気にしているようで二人に話しかけて、

「…あのさ、じつは三日前から思っていたんだけどアンタ達二人揃ってお互い全然しゃべんないわよね?」
「うんうん、ティアさんの意見には同意だよ」
「僕もエリオ君とキャロちゃんはあんまりお互いに喋らないなって思っていたんだ」

それでエリオとキャロは不思議そうな表情になりながら「そうでしょうか…」という感じに答えていた。

「アンタ達二人共兄妹みたいなものだって聞いたんだけど…」

ティアさんの問いにエリオは、

「実際に会ったのは六課に来た時が初めてです。写真では知っていたんですが…」
「私達は二人共フェイトさ…フェイト隊長が保護責任者なのですが、別々の場所で過ごしていましたので」

それに対してティアさんは少し申し訳なさそうな顔をして、

「………そっか。ごめんね、あんたらもいろいろ複雑なんだ」
「いえ!」
「大丈夫です! それにフェイト隊長からもなるべく二人で仲良くして欲しいと言われていますので…」
「そう…。お母さんの言うことはちゃんと聞かないとね」
「「はいっ!」」

それで五人で食事を運ぶのだけれど、やっぱりエリオとキャロは喋らないようである。
うーん、もったいないわね。
仲良くするのは大事だと思うんだけどね。
ティアさんもそれで呆れているし。
私とレンはティアさんに同情して思わず苦笑いを浮かべていた。
それで謝ってくる二人だけどティアさんは面倒見がよく二人の頭をグリグリして、

「あんたたちライトニングはコンビなんでしょ? しかも同い年。
スターズのスバルみたいにむやみに誰とでも馴れ合う必要はないけどさ。
お互いにコミュニケーションはしっかりと取れていないとまずいんじゃないの?」
「そうだよ、エリオ。キャロとはもっと仲良くなったほうがいいよ」
「うん。仲がいいのはいい事だよ。エリオ君」
「「は、はい」」

と、三人で二人に言い聞かせているとスバルさんが遅れてやってきた。

「五人でなんの話~?」
「別に。ちっこいの二人があんまり話さないなって感じの話題を言ってただけよ」
「あーそれあたしもちょびっと思ってたよ。お話はちゃんとしたほうがいいよー?」
「「はい」」

それでスバルさんも二人の頭を撫でて、

「最初は話なんて合わないのは当たり前だよ。エリオにキャロ。
だからなんでもお話していくうちにいろいろとわかってくるもんなんだから」

うん。スバルさん、いい言葉だね。
私達も見習いたいものだわ。
それでエリオとキャロも元気が出たのか、

「がんばりましょう、“ルシエさん”!」
「がんばるであります。“モンディアル三士”!」

あれー!?
やっぱりまだ違和感があるよ!?
思わず滑りそうになってしまったよ。

「その呼び方も良くないね。
『行くよキャロ!』『うん、エリオくん!』…とかでいいんじゃないのー?」
「「が、頑張りますっ!」」

うん。まだまだこれからだね。時間はいっぱいあるんだしこれからももっと仲を深めていけるよね。
それから食事も終了し、食堂から出る際に士郎さんに、

「六人ともしっかりと訓練をしてくるといい。まだまだお前達はヒヨっ子だ。
だがな、ヒヨっ子はヒヨっ子なりに頑張れることがあるのだ。
無茶はせずに確実に頑張ってこい」
「「「「「「はい!」」」」」」
「いい返事だ。さ、行ってこい」

士郎さんは男気溢れるような笑みを浮かべて私達を送り出してくれた。
あー…あれが男性局員が憧れるという士郎さんの漢の笑みか。
かっこいいよねー。
そんな事を思いながら、ふとレンとエリオを見てみると二人共あこがれの眼差しを贈っていた。
やっぱり弱気なレンとしては士郎さんが理想系か。
だがそこに遅れてきたのかランサーさんが食堂にやってきて、

「おい、士郎。なにかつまめる物はないか? ヴァイスと後で酒飲みをする予定なんだが…」
「控えめにしておけよ、ランサー。ヴァイスはヘリパイロットなのだからいざという時に酒が入っていて動けないとかだったら職務怠慢になるからな」
「へいへい。さすがオカンだな」
「………私は男だぞ」
「いや、お前はやっぱり生まれてくる性別を間違えてるって。シホの嬢ちゃんの方が逆に正常に見えてくるぜ?」
「それは、ショックだな…」

なにやら意味深な言葉が聞こえてきた。
そういえば、シホさんと士郎さんって兄妹な関係らしいけど本当はどんなんなのだろう…?
ま、いつか話してくれるよね。
それで私は先を行く五人に追いつくのだった。
そして午後の訓練。
そこにはまだなのはさんとシホさんだけしかいないようである。

「さて、それじゃこれから第一段階に入っていくわけだけど…まだしばらくは個人スキルはやりません。コンビネーションやチームワークが中心ね」
「六人ともそれぞれ得意の分野でしっかりと生かして協力しあうのよ。ムチャもせずにね」
「「「「「「はいっ!」」」」」」

私達はなのはさんとシホさんに元気よく返事を返す。

「個性を生かして能力をフルに活用してまずは六人チームでの戦いをしっかりと身に付けようね」
「「「「「「はいっ!」」」」」」

みんなで過ごす私達の居場所。
こんな楽しい場所を続けていけるように私もしっかりとやっていこうと思いました。
ラン・ブルックランズ、これからも頑張ります。


 
 

 
後書き
よく話に出てくるシホ謹製の塗り薬。
そして久しぶりにリインと士郎の絡みを書きました。
そのうちランが某武神装甲の決め台詞のように『我が名はラン! ラン・ブルックランズ! なんたらかんたら…』とか名乗りそうで想像したら受けました。
…にしてもティアナは訓練校時代と比べればやっぱり丸くなっていますよね。
スバルがいい感じに性格を柔らかくしたんですね。
会ってまだ日の短いラン達に『ティア』呼びをすぐに許すほどですからね。 
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