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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第9話 情報は命です

 第1層のフィールドで、リュウキはモンスター達の傾向確認もかねて狩りを行っていた。
 その討伐の数は、もう何体目になるだろうか、……それは判らないが、ある程度は十分だと感じた。確かに無理をし過ぎると、脳でプレイしている為、幾ら仮想世界ででもこのアバターに影響を来たすだろう。だが、その線引きが出来ないほど、彼は未熟ではない。

 何故なら、VR世界(ここ)が、彼のホームグラウンドだから。

「ん。あれから 約3時間ほど、か。もう大体 視終わったし、十分だな。……そろそろ次の村に向かうか」

 リュウキは武器をしまい、そして、次の村へと向かう事にした。この時の彼のステータスが。

 Lv.8
 HP 2,560/2,560


「以前のβテストの時のデータ。……そして、今回の情報。大体の安全マージンまで後2レベルか……、10位は行くと思ったが、まあ 問題はない。次の村にまで まだ、相当距離がある。……その間に上がるだろう」

 難易度は確かに増してはいる。敵Mobのステータスや行動範囲も全く以前とは別物だった。だが、今は とりあえずは問題なかった。問題なのは、この情報を知らないであろうプレイヤー達だけだ。

「さて……」

 村へと向かう為に、指を振り マップ情報呼び出して位置を再確認。
 確認し終えると、リュウキは再び歩きだした。








~第1層 ウィンドルの村~


 それは、始まりの町の次のに到達する村。
 別れた当初に言っていたキリトが向かったとされる村だ。今現時点で、拠点にするのなら、最適であり、環境も整っている。この村で購入する事が出来る武器防具も、序盤にしてはそれなりに優秀な筈だ。……それは勿論、以前までの世界。モンスターの強さの数値が変わってなければの話だが。

「ん……。無事な連中もいるようだな」

 リュウキは村を視渡した。
 ここの村の入口付近にはNPCも多数いるが、どうやら、プレイヤーも多数いるみたいだ。様子を見ると、疲れた様子のものが殆どだった。そのプレイヤー達が元βテスターなのかは判らない。全く判らない状態でここまで来て、更にあの戦線を潜り抜けてきているとするならば、実際に大したものだと思う。色々と視て回ったとは言え、以前は10層以上も昇ったリュウキにも余裕の類は無いのだから。

 そして、何よりも己の命がかかっているのなら尚更だ。


「……だが、これで判ってくれれば良いが……」

 リュウキは そうも思った。
 このゲームの難易度の変更加減についてを。かなり上方に変更していると言う事を。少なくとも、βテスターであればだ。

 元βテスターであれば、あの二ヶ月の経験を元に動こうとするだろう。その先入観が動きを鈍らせる事も十分にあり得る。……それは、恐らく、初心者達よりも危険を孕んでいると考えられる事だった。モンスター達の行動範囲や特殊攻撃、その威力の全てが変わってきているのだから。

 リュウキがまだ村の入口で考え、思考を張り巡らせていた時だ。



「……ヤアっ! ソコのおニィさん」


 突然だった。
 不意に、後ろから声が聞こえたのだ。その事にリュウキは 少し驚いたが、現実世界でもそういった類は多少あったから慣れていたりする。
 そして、ここは街中であり圏内だ。特に不意打ちを喰らったからといって、問題はまるでない。だから、リュウキは別に驚いた様子は見せず、警戒もせずに振り向いた。

 そこには、自分と同じ様に、フードをすっぽりと頭に装備しているプレイヤーがいた。

 カーソルを確認しても、どうやら NPCではないようだ。
 普段のリュウキなら、『突然話しかけてきた怪しいヤツ』と言うレッテルを張り、脳内にもその姿を焼き付けて、今も、そして以後も、相手にもしないのだが。この風貌、そして話をする感じ。そして、何よりも変わってないのがフードの中の表情を見て、リュウキは、止めた。

 リュウキは、このプレイヤーの姿に覚えがあるから。記憶に残っていたから。

「……オレに何か様か?」
「いや、キミが丁度20人目なんダヨ。コノ村来たプレイヤーデな? だかラ、ちょっとシタ記念に話しタイって思ったダケだヨ? 別ニ他意はナイゾ? オレっちは 色んナヤツと話しタイからナ?」

 その人物は、得意気にそう話してきた。
 そして、この短いやり取りで、リュウキは確信が益々いっていた。自分の中の記憶の人物と目の前の人物が殆ど同一人物だと言う事が判ったのだ。

 そして、この人物が 100%想像通りの人物だとしたなら、……本当に油断なら無い者だ。ある意味では フィールド上に闊歩しているモンスター達以上に。

「……そうか。オレは話さない。少しの間ででも、お前に何を抜かれるか判ったもんじゃないからな」

 相手が誰だか判ったからこそ、リュウキはそう返した。そう返した事で、相手も情報を握った様だ。

「……ナルホドナ、どうやら、キミもβ出身者だったカ?」

 目の前のプレイヤーは個人情報の1つをあっさりと見抜かれてしまった。だが、これは 浅はかな反応をした為だったから、と自分自身をリュウキは戒めた。これはゲーム内のスキルじゃなく、単純な洞察力だ。


――……自分の事を知っている。
――……この世界で会ったのは間違いなく初めて。
――……ならば、いつ出会った? 間違いなくあの世界(βテスト)の時だ。


 ここまで考えたら、最早答えだろう。


「……成程、20人目というのはハッタリか、お前はその後の反応を見ていたんだな。あの時(・・・)のアバターと全く風貌は変わってないし、話しかけ、返されたときの反応を見て……十中八九見破ったか。ん。ぬかったな」

 リュウキは、そう答えていた。少しだけ、後悔の色が濃かったのだが、それでも冷静さを取り戻した様だ。……が、このリュウキの言葉に流石に驚きを隠せないのは相手の方だった。

「ムムム……その通り、ダ。……だが、すごいナ? オレっちよりも狡猾なヤツ初めてダヨ。それも初めの層。第1層で、なんてナ? ヤー マイッタマイッタ! お手上ゲダ」

 笑いながら両手を上げている。……そう言っているのだが、その姿でさえ、フェイクなんじゃないかと思ってしまう。油断ならない相手だと認識したとしても、会えたのは幸運だとリュウキは思っていた。


――この人物は、他の誰よりも、精通しているモノ(・・)を持っているから。


「《鼠のアルゴ》。……βの時の情報屋だな。……それに狡猾とは失礼だ。今のは、ただの推理だ。お前も似たようなモノだろう?」

 リュウキは相手を見ながらそう答えた。


《鼠のアルゴ》


 その名は、かなり有名だ。βテスターであれば誰もが知っている、とさえ言える。

 アルゴは 筋金入りの情報屋であり、売れるなら、自身のステータスまで売るのだ。そこまで来れば、情報を抜かれたくない、と思ってしまうのも無理はない反応だ。だが、真骨頂は、キモはそこではない。アルゴの情報はアイテムや装備は勿論、モンスターの情報、マップの情報、……つまり、ありとあらゆる情報を仕入れている。そして、その信憑性も極めて高いのだ。

 リュウキの言葉を聞いたその時、フードの下の素顔が、再び見えた。
 ……その顔は、ニヤリと笑っていた。

「ソノ通~リ♪ ただの推理でもすごいサ! オレっちがそう思えたんだからナ? ソンデ情報は命ダ、この世界では特に。だから、集めてタってわけダヨ。色ンなヤツを、ナ? オレっちの姿……と言っても強制的にアバター戻されたからナ、多分髭でだと思うガ、知っているヤツは何人かいタ、デモ、あっさりと手口を見破ってくれるのはキミが初ダヨ」

 アルゴは、笑いながらそう言う。
 確かに簡単なデザイン変更の類はこの世界では可能だ。だから、あの世界で特徴だった髭をつけたのだろう。

 でも、あんなことがあって、まだ1日もたっていないと言うのに、自分自身を決して崩してない、それだけでも、大した精神力だろうと思えた。突如、デス・ゲームになったと言うのに。


「……丁度良かった。お前がアルゴ本人で間違いないのなら、1つ情報を買いたいんだが、良いか?」

 リュウキはアルゴにそう聞いていた。村に入った直後に情報屋と遭遇したんだ。……これを利用しない手は無いと思える。出会った当初こそ、何も話さない様にしていたが、今は状況が状況だから。

「ン?? ああ、別に構わないゾ? だが、今日はサービス1日目ダシ、そんな有力なのは無いガ、ソレでも イイのか?」

 アルゴは首を傾げながらそう返した。この段階で情報を買おうとする者なんか、他にいなかったからだ。自分は情報屋だと公言して回った訳ではないが。

「何……、別に難しい事を聞こう、って訳じゃない。簡単な情報(もの)だ。この村に結構早くにいるのなら、知っている可能性が高いから。……自分で確認するよりも、アルゴに訊いた方が手っ取り早いって思っただけだ」

 リュウキはそう言うと、村を見渡した。恐らく此処に来ているとは思うが念の為に聞きたかった。

「この村に《キリト》は来ているか、否か、……それだけだ」

 聞きたかったのはキリトの情報だ。キリトの事をアルゴが、知らない筈はない。


――……キリトが、アイツがそう簡単に死ぬわけ無い。


 リュウキ自身も、それは判っているたんだが、万が一もあると心の隅では否定しきれなかったのだ。そして、安心をしたかった。

「……オオ、確かに その情報は持っていルゾ。……して、対価は幾らカナ?」

 アルゴは、親指と人差し指で○の形を作って笑った。金銭交渉に入る時にいつもする仕草だ。

「そうだな。今回は情報には情報を……だ。キリトの情報の対価は《オレが持ってる情報》 それと引き換え。……で、どうだ? 悪い提案ではない、と思うが」

 その返答にアルゴはしかめっ面をした。
 情報売買は、自分の専売特許だと思っていたからだ。そして、自分以上に情報を持っている、とも思えなかったから。……例え、序盤も序盤、第1層ででも。

「……ム。オイラを差し置いて情報で、カ……。しかもこんな早い段階デ。ダーが しかーしっ! それも面白いナ! ウン、それは新しい展開ダ」

 しかめっ面をしたのは一瞬であり、アルゴはどうやら、喜んでいるようにも見えた。それが交渉成立だと言う事はリュウキは直ぐに判った。

「……オレの方の情報は、現時点では貴重なものだとは思う。だが、多分……皆も遅かれ早かれ知るものだ。……その点は互いに同じだろ?」

 キリトの情報も遅かれ早かれ知る。デス・ゲームが開始した時間を考えても、ここから先へと進んだとは考えにくいから、間違いなくこの周辺にいるはずだろう。

 そして、自分自身の情報も直ぐに知る事になる。いや、嫌でも(・・・)知る事になるだろう。

 今後、アルゴを情報屋として頼りにする為に、この情報は早めに周知して貰いたいのだ。

「アア、構わないヨ。して、その情報の内容ハ? 内容を訊いてカラ、進めタイが……」

 アルゴの言葉を訊いたリュウキは目を僅かに細めて、そして答えた。

「……今のこの世界。βテストの時と今の世界の違いを、だ。主にMoB関係、だな」
「!!!」

 その返答を聞いて アルゴは驚き、そして目を丸くしていた。それは演技でも何でもない。素の自分自身を出してしまった。感情の機微は、この世界では敏感に表情として反応してしまうから、多少オーバーに映っているかもしれないが、それでも。

 その情報は、貴重過ぎる事だと強く感じたからだ。


――……βテスト時と今の差。


 その貴重さより、それを 一早く見破るのにも十分驚きなのだ。ここは、はじまりの町を出て次の町だ。確かに距離はかなりあると思うが、このアインクラッドは全100層の超広大な世界。その規模を考えたら、判断材料は少なすぎるし、時間自体も短すぎるから。

 が、勿論ハッタリの可能性だって十分にある。
 でも、そうであったとしても、その情報の割には見返りが低い事から……一概にはそう言い切れないだろう。

「フム。簡単ニ信じる訳にはイカない。……それが、その情報が本当だと言う根拠ヲ示せるカ?」

 アルゴはそう聞き返した。少し、表情を強ばらせて。真剣な表情で。
 確かにそれは当然の事だろう。嘘の情報をつかまされた、となれば、情報屋としての信用問題。そして、プライドが傷つけられると言う事なのだから。何よりも生死に関わる情報であれば、尚更だ。自分の情報のせいで、本当の意味で目を覚まさないゲームオーバーになってしまったら……と。だからこそ、その情報の信憑性はしっかりとしておかなければならないのだ。

「ん……。(……正直、不本意だが状況が状況……仕方が無いか)」

 リュウキは、アルゴの言葉を聞いて覚悟を決めた。
 ため息を1つすると、しっかりとアルゴの目を見て、逸らせずに話しをした。

 自分が()なのかを。

「……オレの名は《リュウキ》、だ。……久しいな。アルゴ。以前、最後にあったのは第10層だった、か? まぁ、この世界でではなく、βテスト時代の話だが」

 リュウキは、アルゴに名乗る事にしたのだ。
 自分のことを。この相手とはβ時代からの付き合い、と言えばそう。……パーティとかじゃなく、現実世界での仕事仲間の様なものだ。

 それを訊いたアルゴは、強ばっていた表情がみるみる内に、崩れていく。ややつり上がった目は、だんだんと円みを帯びていく。

 そして、はらり……っと、フードが捲れ アルゴの顔が、表情が完全に顕になった。

「…………ハ?」
「だから、《リュウキ》だ。綴りは 《RYUKI》。……最後に会ったのは10層の《フレイゼ》。確か、あの時は 刀スキルの情報を提供しただろう? そして、蛇型のMob《オロチ・エリートガード》の事も話したな。使用スキルの話だ。隠蔽(ハイド)の効果が、オロチ相手では、より薄くなってしまう事も話した筈だ。………まぁ、あの層まで来た奴は少なかったから、あまり使えない情報だったと思えるが」
「………っっ!!!!???」

 アルゴは、そこまで聞いて、今の話が、そして今までの話も真実だと言う事を理解した。
 
 開いた口、丸くさせた目が戻らない。



「(―――きょ……今日は何回驚けばいいのカ……な?)」



 目の前の人物の正体は《リュウキ》
 あの……βテストの時、その難易度の高さ故に、詰んでしまうプレイヤーも多数いたというのに、まるで疾風の如きスピードでフィールドを駆け巡り……、怒涛の如くモンスター達の壁を突破して、その勢いは衰えず、各層の迷宮区の玉座に座して待ち構えているBOSSをも蹴散らした天下無双の剣士。

――……その明らかにステータス以上の力を持っているとさえ言わしめていた。

 あの世界、βテストの時のSAO内において、単独でMMOであるのに、BOSSを屠った所から、不可能を可能にする男(ミスター・インポッシブル)とも、一時は囁かれていた男だったのだ。ただ1人、2桁の高さまで上がったのだから、間違いなくそう思ってしまう。……それも、1人(ソロ)で。


 実は、この変な異名はアルゴが広めた……と言うのは秘密である。
 聞かれたら、情報屋として答えなければならないが、どうしても確かめたかった。本当に目の前の人物が《リュウキ》なのかを、再度。

「キミが……ほんとに、あのリュウキ、なのカ?」
「ああ、そうだ」
「ほんとカ?」
「……ああ、そうだ」
「絶対カ?」
「…………ああ、そうだ」
「ほんとにh「しつこい」ははっ!」

 アルゴは笑った。このそっけない返し方。
 間違いなくあのリュウキだと再び確信して。そして、アルゴは確信が出来ると同時に喜んでいた。

「これは特大級の情報だヨ。あのミスター・インポシブルの情報なんだからナ! オレっちはついてるついてる♪ 幸先良イナっ!」
「《Impossibility?》 はぁ? ……不可能って何のことだよ、まったく。変なふうに言わないでくれ」

 リュウキは、アルゴの言葉の意味が判らず呆れるようにそう言っていた。そう言えば、β時代。少しだけど、言われた事があった様な……と頭の中で少しだけ、かつての記憶を再生していた。……が、勿論直ぐに再生ボタンではなく、停止ボタンを押して、更に削除ボタンを押して消していた。

「マァマァ。気にするナ! キミの情報なら、大金だしても欲しい物ダ。それが、キー坊の情報で良いというなら尚更ナ!」
「……あまり期待しすぎるな。が、それでも 利益にはなる。ただ、大金を出してでも欲しいと言うのなら……だから、大金を出してまで欲しい、と言ってくれるなら、もう1つ頼まれてくれないか?」

 リュウキはアルゴに向かい、そういった。アルゴに頼みたい事があるからだ。

「ム? 何かナ?」

 料金上乗せを言われるのかと、一瞬渋ったが、それでも、リュウキの情報価値は超魅力だ。β時代、それは嫌って言うほど判っている。だから、アルゴは聞いていた。

「何、簡単な事だ。……この情報をなるべく早くに、一般プレイヤー達に配布してもらいたい。それで、生存確率はきっと上がる。β出身からの情報。そして何より《鼠のアルゴ》から、と言えば、皆食いつくだろう。勿論 そちらの金銭交渉については、関与しない。 ……アルゴの情報、それが広まれば、皆触発される。……だから広まるのも時間の問題だろう」

 リュウキの言葉にアルゴは目を丸くしているのが自分でもよく判る。
 そして、もう1つ、アルゴは思い出したことがあった。リュウキの性質、と言うものだ。

「なるほどナ。相変わらずキミは人付き合いがニガテみたいダナ?」

 そう……βテストの時も、風貌に似合わず、リュウキと言う名のプレイヤーは極端に人付き合いがニガテだった。自分とは真逆で、それが逆に強く印象に残っていた。

「……ほっといてくれ」

 リュウキは、また、そっけなく返していた。
 そう、自分にはその方面の力はまるで無い。だからこそ、他人(アルゴ)を、悪い言い方をするならば使うのだ。

「フフフ。優しい優しい♪ して、情報をお願いするヨ」

 そして、アルゴにこれまでの、ある程度の情報を説明する。まず、何よりもこの世界の難易度の大幅修正の事。

 この村に到着するまで。

 リュウキは、一直線にこの村へと向かった訳ではなく、周囲のフィールドを歩いて、視て回ったのだ。

 始まりの街周辺にいる、(フレンジーボア)の強さは大体は同じだったが、……やはり、あの茅場の宣言から相当に強めになっている。普通に倒せない事は無いが、連戦となると非情に危険なのだ。そして、レベル上げの効率もあまり良くなくなっている為、成長も遅い。

 だが、最大の特徴、驚異は、各モンスター達は、仲間を呼び寄せる《咆哮スキル》を使用してくる所だった。

 そのスキルを使われたら、仲間を一度に複数PoPしてしまう能力。
 難易度が増しているこの状況で、そう何度もPOPされては、命に関わるだろう。囲まれたりすれば、一気に(ゲームオーバー)に直結する。

 初めにスライム相当のモンスターを見て、プレイヤーは油断をする。……だが戦っている時に大勢の仲間を呼ばれでもしたら、本当に命に関わるだろう。最初に持っていた情報……βテスターであれば、その情報が自らの足枷になる事だってある。この村に来ている人間は大体は知っているだろうと思えるが、まだあの町にいる者は知らない筈だ。

 そして次に、攻撃のパターンを数点説明、解説に入る。

 咆哮の際の阻止の仕方。咆哮に入るモーションのいくつかのパターン。そして、敵の何処を突けば、回避できるのか……だ。

「……青猪(フレンジーボア) についてはこんなところだ」
「ムムムム……成程成程、ア、ちょっと待ってクレ。メモメモ……」

 アルゴは、リュウキの情報を一言一句、忘れまいとする為、必死にアイテムのペンを走らせていた。

「ああ、そして次に、この村外れの森に生息してる(ネイキッドビー)……詳しく言えば、この村の東側の森林エリアに生息するインセクトタイプのモンスターの話だが……。あれのスタン攻撃も色々とパターンが合ってな……。尻部分の針に注目しがちだが、実際は……」

 そんなアルゴの事はお構いなく、話を進めようとするリュウキだったが、流石にアルゴに止められた。

「ああ! って リューっ! 絶対分ってないダロ!? 頼ムからちょっと待ってクレ! 貴重だからしっかりとって置きたいンダ! 情報は命、マジで!」

 そう言うと、アルゴは再び必死にペンを走らせた。その表情は必死だが、それでも何処か楽しんでいる様にも見える。

「(……それにしてモ、オレっちがが振り回されるなんて、久しぶりの感覚だナ)」

 アルゴはそう感じていた。情報屋と名乗るなりに、それ相応のものは持っている。……が、それでも目の前の男には及ばないのだ。だけど、別に悪い気もしないようだ。


 そしてその後も暫く情報公開が続く。


「情報はこんなものだ。Mob達が落とすアイテムに関しては、大体は同じ種類だし、確率も同じだ。……βの時とな。そして、クエストの発生条件もそうだ。……だが、その先は見ていないからはっきりは言えないが、恐らくは全てが上方に修正されていると考えている。軽くなっているものなど1つもないと思った方が言い。何よりも敵の強さをな……、だから、気をつけろと。公開してくれ」
「ああ、わかっタヨ。任せてクレ。次はキミにダ」

 アルゴはメモをアイテムストレージに仕舞うと、リュウキに向きなおした。

「キー坊はこの村を拠点にしているヨ。つい数時間前にも話しタ。ヤッパリあの男モ強いんダ。何としても生き残ってやル。……スゴイ気迫を感じタヨ。それで、この村の外、《西のフェールド》で暫くレベリングをするらしいゾ? 回復アイテムも買い込んでいたシ。あの様子だったら、当分は戻らナイと思う。追いかけるか、待つカ……ドッチが良いかは、リューに任せタイ」
「……ああ、わかった。感謝する」

 リュウキは、アルゴに礼を言っていた。知りたかった情報を教えてもらったから。

 キリトが無事だと知れたから。

「オイオイ……。オイラの方が相当得したんだゼ?礼を言いたいのはコチラダ」

 ……リュウキの礼にアルゴは呆れるようにそう言っていた。情報の価値、そして量を考えたら、間違いなく不当と言われても仕方がないレベルなのだから。だが、リュウキは首を左右に振った。

「……オレにとってもその程度ってわけだ。さっきの情報がな」
「………キミがそう言うんダ。そうなんだろうナ。末恐ろシイ男ダな! ヤッパリ」
「オレが敵で、このゲームのジャンルがアクション系だったら……だろ?これはRPG。競うもんじゃないだろ?」
「ハハハ。そういえばそうダナ♪ 頼りになる事この上ナイ♪ もう行くのカイ?」

 リュウキは頷くと村の奥へと歩き出した。

「……ああ。今日はもう休む。じゃあなアルゴ」
「ハハっ。マタなーっ! リュー!」

 そして、互いに別れていった。

 
 そして、リュウキの姿が見えなくなった時。

「しかしオレっちもやきが回ったもんダ。それにあの男、リューも」

 ふっ、とため息を吐いた。

「……βテスターだって、バラすヤツが何処にいるのかってもんだヨナ。その情報だけは絶対オイラも自身は勿論他人のだって答えないし売らなイって思ってたんダが……。あっさりバラシちゃったヨ。あの男には初めから何かを感じタしナ。……マァ、あの男相手ならバ、問題ナイ寧ろ覚えててくレテ嬉しいナ。そ・れ・に……」

 アルゴは、何やら思い出しながら思わずニヤニヤと表情を歪ませた。

「ウ〜ン♪ ホント可〜愛イ顔してるんだナ♪ リューの素顔、素の顔は! ……いやぁ眼福眼福♪ オネーサン、悶えチャイそーダヨ! ウンウン、何だカ、最先イイゾっ!?」

 アルゴは、ニヤニヤしながらこの場所から立ち去っていった。

 
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