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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百五十二話 ヴァンフリート星域会戦 その1

 
前書き
大変お待たせしました。

腕の痺れ(頸椎の捻挫)で中々書けませんした。 

 
宇宙暦794年 帝国暦485年1月10日

■フェザーン自治領 自治領主オフィス

「ふむ、又ぞろ帝国が出兵か」
「はい、今回は4個艦隊総数五万一千隻との事です」
ボルテックがルビンスキーに補足するが、その様な事ルビンスキーには既に三十分も前に知っている事であった。

「何時ものように、エッシェンバッハが出張る訳だな」
「その様です。自率艦隊一万五千隻と一万二千隻の艦隊が3個だそうです」
「そうか、宇宙艦隊司令長官が相も変わらず出張るとは、帝国は予程、艦隊司令官の質が悪いと見える」

「その様です、門閥貴族出の艦隊司令官は皆家柄だけで司令官職を得ていますので」
「フ、戦争も経済も家柄で行う物ではないのに、所詮帝国は旧態依然か」
「ごく一部の中将と少将以下の指揮官では最近になり、平民出身の司令官も出始めてはおりますが、第二次ティアマト会戦時のコーゼル大将のような要職に就く物はおらず、臨時司令官或いは辺境警備艦隊司令官でしか有りませんので」

ボルテックの言葉を聞きながらルビンスキーが笑う。
「ケスラー中将とか言ったな、その司令官は」
「はい、憲兵隊総監グリンメルスハウゼン上級大将の高級副官のまま臨時編成練習艦隊司令官も兼任しております」

「ふむ、そのケスラー中将の艦隊は何処にいるのだ?」
「はい、フレイヤ星系にて訓練中との事です」
「そうか」

ルビンスキーは直ぐにケスラーの艦隊のことを記憶の片隅に追いやったが、この事を後に後悔する。

「同盟には出兵を何時知らせましょうか?」
「うむ、オーディン、イゼルローン間が四十日、ハイネセン、イゼルローン間が三十日、この所同盟は分が悪い戦いばかりだからな、下手にイゼルローン要塞でも攻めて見ろ、イゼルローン、イゼルローンツヴァイ、それに首飾りで未曾有の大損害を受けるやも知れん」

「そうしますと、別の星域での戦闘が宜しいですな」
「そうだな、帝国が出兵後十日程経ってから高等弁務官事務所へ知らせるが良い」
「はい」

ボルテックが去ったオフィスでルビンスキーが独り言を言う。
「フッ、帝国も同盟も、この俺の掌の上で踊るが良い」






宇宙暦794年2月25日

■自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部 ヤン・ウェンリー

「シトレ元帥、ヤン・ウェンリー大佐出頭しました」
「入りたまえ」
私が統合作戦本部長シトレ元帥の下へ出頭し部屋に入ると、シトレ元帥は書類を見る手を止め、私に目で椅子に座るように促した。元帥は10分程で仕事を終え私の向かいに座った。

「ヤン大佐、今回の敵の出兵に対して宇宙艦隊ではどう言っているのかね?」
「司令部では何時もの通り、ティアマト星系を主戦場に考えいます」
「ふむ、艦隊戦力が4個艦隊五万一千隻か」

「はい、その為に此方としても4個艦隊を出すとのことですが……」
「ヤン大佐の持論で言えば、敵の3倍の戦力で押しつぶせと言いたいのだろうが」
「はぁ、敵と同数での殴り合いでは埒があきませんから」

「そうは言っても、おいそれと3倍の戦力を出せる程、同盟軍も戦力は潤沢では無いのだからな」
「判っています。4個艦隊に対して12個艦隊を出した場合、その後半年以上殆ど全ての艦隊はメンテナンス、補修、休養、再編成で稼働不能になりますから」

私の言葉に元帥も安堵したかの表情を見せる。私としても無理なことは無理だと判るつもりだから。
「そう言う事だ、数字や書類だけで判断すると碌な事に成らんからな」
「はい、同盟軍12個艦隊が全てが稼働状態に有る訳では無いのですから」

「所で司令部としてはどの艦隊を今回は出すのかね?」
「現段階では、ビュコック中将の第五艦隊一万三千隻、ムーア中将の第六艦隊一万二千隻、アップルトン中将の第八艦隊一万二千隻、ボロディン中将の第十二艦隊一万三千隻司令部直属艦隊五千隻の総五万五千隻を予定しています」

私の答えにシトレ元帥は驚いた表情を見せた、ロボス元帥は好き嫌いが激しい人物で自らの取り巻き連中を優遇する気合いが有り、実績のある第五艦隊司令官ビュコック中将、第十艦隊司令官ウランフ中将、第十二艦隊司令官ボロディン中将を余り使いたがらないのであるが、この所の小競り合いを含めた負け戦の累積がそう言っていられなく成ったのだろうと私は推測している。

「ほう、ロボスは今回は勝つ気でいる訳だな」
「そう思います。普段より遙かに気合いが入っていますから」
「なるほど」






帝国暦485年2月28日

■銀河帝国イゼルローン要塞

「聞いたかキルヒアイス又ぞろ要塞指揮官シュトックハウゼンと駐留艦隊司令官ゼークトがエッシェンバッハの前でやり合ったそうだ。嘸やあの威厳だけの姿で仲裁したのだろうな」
「ラインハルト様、お声が大きすぎます」

ラインハルトはキルヒアイスの忠告に笑いながら答える。
「心配するな、此処なら誰にも聞かれる訳がないからな」
「自室とはいえ、場所をお考え下さい」

「判った、キルヒアイスのいう通りにしよう。しかし余り気にしすぎると自慢の赤毛が白くなるぞ」
「はぁ」
“ラインハルト様がもう少し自重して頂けたらよいのですが”そう思っても言えないキルヒアイスである。

「しかしあのノルデンは何だ。あの様な阿呆に付いて居るのは人事局の悪意しか感じない!」
「単に配慮が足りないだけでしょう」
「何をしてもそれで良い、それで良いでは何をしたいかさっぱり判らないではないか!」

ノルデン少将のボケボケ振りにラインハルトは切れる寸前であり、その上ノルデン少将の一歳下の弟も分艦隊司令として、フレーゲル男爵達を連れて作戦に参加していたのであるから、嫌でも顔を合わせる結果となりイゼルローン要塞内でフレーゲル達に絡まれたりしてラインハルトの神経は焼き切れる寸前まで来ていた。





帝国暦485年2月28日

■イゼルローン回廊帝国出口 ケスラー艦隊旗艦エリュテイア エルネスト・メックリンガー

宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハ元帥、総参謀長グライフス大将の顔がスクリーンに映ると私は敬礼をする。

『ケスラー提督、卿の艦隊はアルレスハイム方面へ先行し其処から当該地域へ向かって貰う』
「はっ、当艦隊はアルレスハイム方面から当該地域へ向かいます」
『此方の当該地域への到着は3月20日前後を予定している。くれぐれも遅れぬように』

「了解しました」
『では頼むぞ』

スクリーンが消えると、ケスラー提督の元へ向かう。

「提督、予定通りと言う訳ですな」
「そうだな、既に回廊出口付近の敵哨戒部隊はシュムーデ提督率いる哨戒部隊が追い散らした事だし、ティアマト星系方向にはレンネンカンプ提督の分艦隊が如何にも大軍が向かっているように欺瞞中だ」

「頃は良しと言う訳ですね」
ミュラー准将が笑顔で話に入ってくる、この笑顔は貴重な笑顔だな。
「そうだな、ミュラー准将の言う通りだな」

「参謀長、そろそろ出発させるとしよう」
「はっ」
「通信参謀、全艦に告ぐ、此よりアルレスハイム星系へ哨戒に移動する」

ケスラー提督の言葉を通信参謀が復唱して全艦に流していく。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。





宇宙暦794年 帝国暦485年 3月21日

■自由惑星同盟 ヴァンフリート星域

3月21日2時40分帝国軍と同盟軍の火蓋が切って落とされた、帝国軍は宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハ元帥率いる直衛艦隊15000隻、アルフレート・フォン・レーテル中将の12000隻、アドルフ・フォン・ホイジンガー中将の12000隻、フランツ・フォン・カイテル中将の12000隻、総数五万一千隻に対し

同盟軍は宇宙艦隊司令長官ロボス元帥旗下の司令部艦隊五千隻、ビュコック中将の第五艦隊一万三千隻、ムーア中将の第六艦隊一万二千隻、ボロディン中将の第十二艦隊一万三千隻、総数四万三千隻と言う陣容であった。

本来であればアップルトン中将の第八艦隊一万二千隻が参加するはずであったが、同盟軍当初の想定戦場がティアマト星系であり、レンネンカンプ准将の欺瞞部隊が展開して居たが故に、騙されたと判った時には先行していた第八艦隊は既にダゴン星域まで進出していた為に、会戦に間に合わない状態であり、現在最大戦速でヴァンフリート星域へ向かってはいるが、到着は補給等を入れて早くても4月上旬になる予定であったが為、戦力的に劣勢で有った。

「敵11光秒、有効射程距離です」
オペレータの声を聞いたエッシェンバッハ元帥が攻撃開始を命じる。
「ファイエル」

それにより同盟艦隊に三十万近いビームが降り注ぐ。
負けじと同盟軍も攻撃を開始し、帝国艦隊に三十万のビームが降り注ぐ。

同盟軍は凸型陣、帝国軍は凹型陣である。

同盟軍は左翼から第五艦隊、第十二艦隊、第六艦隊で第十二艦隊の後方に総司令部が鎮座している。
帝国軍は右翼からカイテル艦隊、レーテル艦隊、エッシェンバッハ艦隊、ホイジンガー艦隊であり、エッシェンバッハ自ら攻撃の指揮を取ってる。

帝国軍も同盟軍もヴァンフリート星域の戦い辛さに決定打が出せない状態で有る。




帝国暦485年 3月21日

■自由惑星同盟 ヴァンフリート星域 ケスラー艦隊

その頃、ケスラー艦隊はアルレスハイム星域からパランティア星域を経由して同盟側からヴァンフリート星域へ進入に成功し電子欺瞞をしながらヴァンフリート4=2へと向かっていた。

「参謀長、ヴァンフリート4=2まで後10時間と言うところです」
航海参謀がメックリンガーに細評を伝える。
「そうか、御苦労」

メックリンガーは受け取った書類を持ち提督席に座るケスラーの元へ向かう。
「提督、あと10時間で到着とのことです」
「そうか、エッシェンバッハ元帥の艦隊も戦闘を開始したそうだが、敵一個艦隊がティアマト方面から急行中だから、気を付けねばならんな」

「確かに、その点を鑑み、星系外縁に多数のステルス偵察衛星を配備しました」
「油断は禁物だな」
「そうですな」





宇宙暦794年 3月21日

■自由惑星同盟 ヴァンフリート星域 ヴァンフリート4=2同盟軍補給基地

ヴァンフリート4=2南半球に作られた補給基地では基地司令官シンクレア・セレブレッゼ中将が副官のサンバーグ少佐に不安を投げかけていた。

「少佐、敵は本当にこの基地が狙いじゃないのだろうな?」
「何度も申し上げているように、敵が気が付いた兆候はありません」
「しかし、敵が態々こんな何も無い星系へ兵を進めてきたのかが」

「ですから、恐らく以前第四艦隊がアルレスハイムとヴァンフリートを偵察した際の兆候で調べられたのではないかと」
「しかしだな」

堂々めぐりの話は延々と続いていた。
 
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