| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

コラボ
~Cross storys~
  episode of cross:接触

妙な違和感という物を、感じたことはないだろうか。

例えば、路上で何もなかった所に少し目を離した間に人が出現していたり、その逆で消えていたり。

何気なく置いてある物が、ふと見てみると消えていたり、その逆で現れていたり。

怖い、恐い、強い、コワイ、コワい、こわい。

そんな感情とは少し違うのかもしれない。

あまりにゆっくりで、あまりに穏やかに。それは入って来るから。何の抵抗もなく、ゆっくりと。

じわり、じわり、と。入って来るから。

日常の中に住まう、非日常。

非日常の中に住まう、日常。

そんな経験はないだろうか?奇妙な違和感。奇異な既視感。

頭にもやもやとした暗雲のようなものがこびり付いて離れない。そんなことはないのだろうか。

日常にするりと入ってくる、非日常。

非日常にするりと入ってくる、日常。

例えるとするならば、この感じは何かを忘れていることを忘れているような時の心理状態に近いと思う。何かを忘れている、それは分かっている。

だが、それが何かを思い出そうとすると、全く頭に思い浮かんでこない。

もどかしい、じれったい、いらだたしい。だが、いくら頭を絞っても、零れ出てくるものは何もない。

おそらくそれを思い出さない限り、《ソレ》が自分の隣に居ようとも気が付かないだろう。

それが異様とも気付かずに。

それが奇異とも気付かずに。

気が付かない。気が付かない。気が付かない。

全く、気が付かない。










「んあ?決闘試合(バトルロワイヤル)ぅ?」

シキは、隣に座るシンにオウム返しに言った。悔しいことに自分より実力が上の親友は、今日も絶賛跳ねまくりの髪をまったく気にせずに言った。

開け放たれている窓からは、もう初夏である朝の陽光が爽やかな新緑の香りとともに入って来ている。

「ああ、そうだ。何でも二十層あたりで大規模なイベントが近々あるらしい」

モーニングコーヒーをずずーっと啜るシキは、それを聞いて気だるげに言う。

「二十層ォぉ~?超低層じゃん。やる気出ねぇな~。どうせ決闘とか言うんだから、デュエル主体なんだろ?リーグ的な。めんどくせーなー」

現在の最前線である五十一層にある宿屋の一階、飲食店になっているそこに立ち並んでいる丸テーブル達。その一つの上に、だるーんと顎を乗っけてシキは愚痴る。

それに頬杖をついて、シン。

「そー言うなっての。結構有名どころが出場するらしいぜ?《六王》とか、な」

シンのその言葉に、机に突っ伏していたシキの耳がピクリと動いた。

それをどこか面映そうに見ながら、シンは口を開いた。

「……………マジで?」

「この間の五十層のボス戦がキツ過ぎたからな。息抜きの意味合いがあるんだろうな。それか、半分まで攻略したことへのお祝い的なデモンストレーションじゃねぇの?」

「なるほどな。じゃ、じゃあ、その、出るのか?《白銀》とか、《神聖剣》も………」

顔中にワクワクと言う擬音語が付きそうな感じで、シキが聞いてくる。

それにどこかつまらなそうにシンが返答する。

「でるわきゃねぇだろ。あいつらが出たら、逆にブーイングが出そうだからな。ま、《六王》から一人は出すらしいぜ」

「おっ、それはどなた?」

頭だけ巡らせてこちらを見てくるシキに、にやりと言う効果音がつきそうな笑みを返し、シンは

「それはだなぁ───」










「《冥王》、かぁ………。ふーん」

「なによ、ゲツガくん。文句があるわけ?」

ゲツガは、テーブルに頬杖をつき、手元のウインドウを気だるげに見ていた。

その隣、ユキは持ってきた(自称)重要情報に対してのゲツガの反応の薄さに頬を膨らませていた。

「いや、別に文句があるわけじゃあねえんだけどよ。《冥王》っつったら、超有名なPKKじゃねぇか。実物にはまだお目に掛かったことはねぇが、大丈夫なのか、そんな危険な奴をわざわざデュエル大会なんかに呼んで」

「んー、団長は良いって言ってたんだけどな。アスナも心配ないって言ってたし」

「言ってた言ってたって、ユキ。お前も実物見たことないのか?」

図らずも挑戦的な言い方になってしまい、またもや雷が落ちるか、とゲツガは首を縮めるが、意外や意外、ユキはちょっぴり憂鬱な表情で首を巡らせていた。

「そうなんだよねぇ。これでも《六王会議》にも度々出席してるんだけど、その度に行き違いみたいに欠席になってて………」

「なんだそりゃ。嫌われてんのか?」

「ううん。あっちも私のこと知ってないと思うから、それはないと思うんだけどね……」

ふーん、とゲツガはもうそのことに興味をなくした。

別にそんな低層のデュエル大会なぞに興味など抱く必要もないし、第一出ないのだから参加者云々の話も関係ない。

「ま、いいや。とにかくそいつ見たさで出場すんだな。頑張れよ、一応応援しとく」

そう言うと、なぜかユキは何言ってるの?みたいな表情でこちらを向いた。

「何言ってるの?ゲツガくん。私は参加しないよ。そんなやばそうな大会。ゲツガくんが出るんだよ」

…………………………………は?

ぼんやりと窓の外を眺めていたゲツガだったが、ユキの放ったその一言で現実に引き戻された。こう、ゴキッと、バキッと、強引な感じで。

「……ちょ、ちょっと待て。何で俺がそんなとこに参加しないといけないんだ?」

「あら、私を傷付けたいの?」

「い、いや、そういうことじゃないんだが───」

慌てふためくゲツガを前に、ユキは一人、ふふふと笑った。










「え?決闘試合(バトルロワイヤル)?」

それは、最前線で迷宮区を攻略中、ふと思い出したというような感じでコハクが言い出した言葉だった。ちなみに、そんな無防備で良いのか、と問われたら、今は休憩中なのである。

安全地帯の床は鋼鉄を思わせる鋼色の光沢を持つ金属でできているため、多少座り心地は悪いが、贅沢は言っていられない。

まぁ、かと言ってぐーすか爆睡している漆黒のロングコートを着込んだ男、ハザードには正直どうかと思うが。

それを横目で見つつ、俺、セモンは隣にちょこんと座る、肩の出た騎士装束の女性プレイヤー、コハクを見る。

「そ。あたしも出たかったんだけど、あいにく用事があってね。あんたを選手登録しといたから、絶対出ること。いい?」

「な、何で俺が……。普通、こう言うのって、きちんと確かめてから訊くもんなんじゃ………」

「あーもー、ごちゃごちゃうっさい!あんたは女か!!」

「違いますが」

「知ってるわよ!」

ぎゃーすか言い合うセモンとコハクの隣で、その騒音によってなのか、ようやくハザードが、んにゃ?とという少々情けない声とともに目を覚ました。

ハザードはまだ覚醒途中です、というような半開きの寝ぼけ眼でこちらを見た。

「おーおー、朝っぱらから仲がよろしいこって」

今は朝ではありません。

んー、と伸びをする親友を見、セモンは脳裏にピーンと閃くものがあった。

まぁそれは、やっべぇそうだいい生贄がいたじゃんこれ、という結構というかかなりどす黒い内訳だったのだが。

「そうだ、ハザードが出場したらいいじゃん。年がら年中暇人みたいなもんなんだし」

「おい、さりげなくと言うかかなりあからさまに悪口を言われたような気がしたんだが」

「嫌よ!もう選手登録しちゃったんだし!いくらハザードが一年中俺暇人ッスから、みたいな顔してても、用事くらいはあるでしょ?」

「もう俺泣いてもいいか?」

ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー

言い合ううちにも、時は過ぎていく。










「はあ!?何で俺の名前があるんすか師匠ぅぅ~!!」

ホークは絶叫していた。そりゃもう絶叫していた。

今肺活量を計ったら、間違いなく自己ベストを更新するくらいに叫んでいた。

その手には、羊皮紙サイズのウインドウ。その中には、二十層で開催されるという決闘試合(バトルロワイヤル)についての情報が乱雑に書き記されていた。

これを渡したのは、ホークの目の前にいる小柄な女性プレイヤー。ペイントアイテムで頬に書かれた三本の髭が特徴的な、情報屋《鼠》のアルゴだ。

先刻、「この情報まとめときなアホ弟子」というあまりといえばあんまりな台詞とともに頂戴したこれに書かれていたのは、簡単に言えばそのデュエル大会の概要とそれに出場する選手達の名前とその特徴である。

ここまではいい。

これくらいならば、情報屋としてまっとうな仕事だろう。むしろ、これが仕事の内容だと言ってもいい。しかし───

「だったら、なんでこの出場選手のところに俺の名前が書かれているんでございますか!?」

混乱しすぎて、若干日本語がおかしくなっているホークをどこか憐れむような目で見ながらアルゴは軽く肩をすくめた。

「修行のうちだと思エ」

「……………。師匠、まずこれが何の修行になるのかさっぱり分かりません。英語で言うと、whyです」

かなりキている表情と口調で言うホークの目の前で、アルゴはんー?とおとがいに人差し指を当て、しばしの間照準する様子を見せた後

「その情報は十万コルだナー」

「………………………………………」

あーそーだねそーですよねー、つーか十万って高ぇーなオイ、と半ば諦めた表情を浮かべるホーク。

漫画で言うならば、ずーんと背後に縦線が出てくるところだろう。

「まァ、気を落とすナアホ弟子。フォローはしっかりしといてやるカラ」

「何のフォローですか………」

床に突っ伏すホークの瞳から落ちたものは───

さーなんだったんでしょーねー?










レンは憂鬱だった。とんでもなく憂鬱だった。

アインクラッド第五十層主街区【レインズ】の街中にある店先に並ぶ白い机たちの中に、レンとユウキはいた。

「いいなぁ~、レンばっかり。ボクも出たかったのに、その大会」

先ほどから駄々をこねるユウキもその気持ちになった理由の半分なのだが、何よりもユウキが駄々をこねるそもそもの原因こそが、レンを今こうして憂鬱にさせている諸悪の根源なのである。

くじ引き、というかなり大雑把かつアバウトな選択方法で決定した、第二十層で開催されるデュエル大会の《六王》内からの参加者。

その当たり(外れ)をレンは引いてしまったのだ。

「良いことなんてないよ。ただメンドーなだけだよ?ユウキねーちゃん」

内容に沿うように、心底つまらなそうな顔で答えるレン。

「だってさ~、スッゴい人たちが出るんだもん。ボクも戦ってみたいよ」

「………スゴい人達って?」

目論見通り喰い付いてきたレンの、必死に押し隠そうとしているようだがバレバレの好奇心に、ユウキは堪らずにくすりと笑った。

「すっごいよ~。《ホワイトバレット》に《神話剣》、《直死の魔眼》にアルゴの弟子も出るんだってー」

レンは、ぽんぽんとユウキの口から出てくる超有名な名に驚いた。

「って、あれ?アルゴねーちゃん、弟子なんて取ってたっけ?」

「うん。ボクもついこの間まで知らなかったんだけど、取ってたんだって」

「振り回されてそうだなー」

「あはは、ホントにね」

そう言って、二人は上空を仰ぎ見た。

次層の重い蓋があるだけのそこにも、二人は青空を見た。 
 

 
後書き
今回のそーどあーとがき☆おんらいんは、長すぎるためにつぶやきにて公開いたします。お手数ですが、もし見たいという方はそちらに……… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧