| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

アマールと夜の訪問者

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章


第二章

「若し」
「どなたかおられますか?」
「宜しければ」 
 扉の方から声が聞こえてきた。男の声だった。
「扉を開けて下さい」
「そして私達を入れて下さい」
「御礼は約束しますので」
「あれっ、お母さん」
 その声に最初に気付いたのはアマールだった。
「声が聞こえるよ」
「声が?」
「うん、男の人の声だよ」
 ベッドから上体を起こして母に告げるのだった。
「それも三人いるよ」
「三人?」
「どうしよう」
「旅の人かしら」
 母はまずはこう考えたのだった。
「それでここまで」
「困っているのなら助けないといけないよ」
 アマールは子供らしい無邪気さから母に話した。
「やっぱり」
「ええ、わかってるわ」
 我が子のその言葉に静かに頷く母だった。
「それじゃあ」
「うん、じゃあ」
「アマールはそのままでいいわ」
 脚の悪い我が子を気遣ってのことである。
「お母さんが行くから」
「あっ、いいよ」
 しかし母が起き上がるよりだった。アマールは杖を使って起き上がったのである。
 そうしてそのうえで扉に向かう。そこでまた母に告げた。
「僕が行くから」
「脚、大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ」
 にこりと笑って母に告げるアマールだった。
「歩けるから」
「無理はしないでね」
 我が子をまだ気遣っている。アマールはその間に扉に向かいそれを開けた。するとそこには立派な服を来た三人の男と一人の従者が立っていた。
「君がこの家の子供だね」
「はい」
 アマールは最初の一人の問いに頷いた。
「そうです。アマールといいます」
「そう。アマール君だね」
「そうです」
 にこりと笑ってその人の問いに答えるのだった。
「わかったよ。僕はカスパーというんだ」
「カスパーさんですか」
「カスパー?」
 母は家の中でその名前を聞いてまずは顔をいぶかしめさせた。そして起き上がって扉のところまで来てその顔を見るとだった。
 若く端整な顔である。髪と目は黒く髭はない。その顔を見てわかったのだ。
「王様!?」
「王様って?」
「この方は王様なんだよ」
 驚いた顔で我が子に告げるのだった。
「王様がどうしてここに?」
「お母さんですか」
 今度出て来たのは茶色の髪と目の背の高い男であった。身体つきもがっしりとしている。その顔には少し皺も見られた。彼も立派な服を着ている。
「あのですね」
「貴方も」
 母は彼の顔も見て驚きの声をあげた。
「いらしたのですか」
「この人も王様なの?」
「そうよ、王様よ」
「メルチオといいます」
 その茶色の髪の男もまた答えるのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧