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有栖キャロの小学校物語

作者:blueocean
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第20話 魔導師がやって来ました………(後編)

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

久々の2連休でこっちを急ピッチで書き上げました。
お待ちしていた方々、申し訳ありませんでした……… 

 
「みんな………」

物陰から覗いていた真白は、一歩進もうとするが足が震えて全く動けないでいた。

「私は何て情けない………皆は私をいつも助けてくれるのに私は何も出来ない………」

悔しさで涙が滲んでくるがそれでも震える足が動かないでいた。

「動いて………動いてよ!!みんながピンチなの!!私の大事な………大事な友達が死んじゃうかもしれないの!!!」

自分の足を叩くがそれでも震えは止まらない。

「お父さん………私に勇気を………みんなを助ける為の力を!!」

宝石を握り締め、力強く祈る真白。
そんな願いはただ空に消えていくだけだと思ったその時だった………

「えっ………?」

宝石が強く蒼く光る。

「これは………」
『真白………』

そんな中真白にとって忘れない大事な人の声が宝石から聞こえてきた。

「お父さん………!!」
『このメッセージを見ていると言うことはお前の強い思いを感じたのだろう。………出来れば私のメッセージが再生されない事を祈っていたが………これはデバイスと言って魔法を詰めて置く記憶媒介と同時に使い手をサポートしてくれるものだ』
「私の宝石がキャロちゃん達が持っていたデバイス………?」
『このデバイスはスカイシャインと言う。いざと言う時のための戦う手段だ』
「戦う………?お父さん………?」
『こんな父親ですまん………雫とお母さんだけは巻き込みたく無かったが………済まない………』
「お父さん………」
『私がいなくても幸せになれることを私はずっと祈って………』

そこで音声ファイルは終わってしまった。

「お父さん!?」

何度呼びかけても反応は無い。

『………生体信号確認、識別コード………クリア。初めましてマスター、私はスカイシャインと言います』
「えっ?あっ、こんにちは………」
『マスター、命令を。私はマスターの為に作られました。マスターの思う通りに使ってください』
「いきなりそんな事言われたって………」

そう呟いてオドオドする雫。
その間にもフェンリルは止めを刺そうと口を大きく開けていた。

「だったらお願いスカイシャイン!!みんなを助ける力を………ううん、みんなを助ける為に私に力を貸して!!」
『イエスマスター。では先ず私の形を考えて下さい』
「形………?」
『そして起動呪文を』
「起動呪文………?」

いきなり言われ、何も知らない真白はただ混乱するしかなかった。

「えっとどうすれば………じゃ、じゃあ形は魔導師だし杖で………服装は………もうあれでいいや。後は起動呪文?それはどうすればいいの………?」
『私に決意の証を。自分の思いを伝えよと私のデータに残っております』
「決意の証………自分の思い………」

考え始める真白。しかし直ぐに顔を上げてスカイシャインを見つめた。

「いつも助けられている私は今日で終わり。これからはみんなの為に、みんなと一緒に困難を乗り越えてみせる!だから空の光よ、私の力になって皆に光輝け!!スカイシャイン、セーーーットアーーーーップ!!」

最後にそう叫ぶと真白は光に包まれ、蒼白い聖祥の制服姿に似た真白が現れた。

「これが魔導師………」
『マスター急ぎましょう』
「うん、行こうスカイシャイン!!」

真白は直ぐにその場を飛び上がった………










「さて、これ以上ゆったり話してたらお前逹3人共命が消えそうだな………さて………」

そう呟いてエローシュに触れるエクス。
すると光輝く2人。

「ユニゾンイン………」

光が消えるとそこには紺色のスーツ姿のエローシュがいた。

「これは………」
『適合率は………嘘だろ、前のマスターよりも高い92%とは………』
「適合率………?それに何だこれ?さっきまで凍えていた体が普通に動く………」
『当然だ、今俺とユニゾンしているんだからな』
「ユニゾン………?」
『まあ詳しい話は後だ。取り敢えず先ずはマスターの友達を助けないとな。ちょっと体を借りるぞ』
「はい!?」

そう言うエローシュは目を瞑り始める。

「ふう………しかし本当にカスっカスの魔力だなマスターは………これじゃあ俺が補助しないと碌な魔法が使えないや………」
『何だと………って何じゃこりゃああ!!』

大声で叫ぶエローシュ。だが、実際体は全く動いていない。

『あり………?』
「無駄だマスター、体は俺が使わせてもらう。取り敢えずユニゾンの事、魔法の事を実際に見て理解しろ。俺の本来の能力を使うにはマスターが使わないといけないんだから………」
『だからっていきなりマスターとか言われてもな………』
「だが皆を助ける力が欲しいんだろ?だったら少し黙って見てろ」

そう言うとエクスは自身の体を180°囲むようにキーボードを展開した。

「よし先ずは火のブーストを………ってあの2人にはリンカーコアが無いんだっけ?となると少し面倒だが直接送り込むしか無いか………」

そう呟きながらキーボードを操作していく。

「………接続回路展開、対象確認」

キーボードの上に出ているディスプレイの表示を確認するように復唱する。

「対象に接続………」

そう言うとエクスの周辺に空間を斬り裂いた様な小さな穴が表れる。
そしてそこから一本の糸がバインドで縛られている2人に伸びていく。

「回路形成………接続完了、火のブースト、発動!!」

最後にエンターキーを押すと伸びた糸に赤い光が2人に向かって伝わっていく。

「おお………」
「温かい………」

その光が到達すると2人の顔色もみるみる良くなっていき生気も戻っていく。

『凄い………』
「取り敢えずあの2人は大丈夫だな。後は………」

そう言ってフェンリルの方を見て………

「あのデカイ狼を開放してやるか」

エクスは不敵な笑みをこぼしたのだった。













「………あれ?」

フリードに放った攻撃。巨大な冷気の塊は真っ直ぐキャロ達へと放たれた。
しかしその攻撃はキャロ達に届くことは無く、何も起きない。

「何ともない?」
「どう………なってるの?」

回復を受け、普通に喋れる位には回復したエリオと近くにいたルーテシアがそう洩らす。

「何とか間に合った………」

そう言ってゆっくり空から降りてくる一つの小さな影が、

「「「真白(ちゃん)!?」」」
「助けに来たよみんな!」

そこに蒼白い聖祥の制服に似た服装着た真白がいた。
真白が咄嗟に放った砲撃魔法が相手の攻撃の軌道をずらしたお陰で攻撃がそれたのだった。

「真白も魔導師だったの!?」
「ううん、ルー違うの。私もさっき知ったばかりで、あの宝石がこのデバイスだったの」
『初めまして、スカイシャインと言います』
「「あっ、ご丁寧に………」」

「ちょっと!!今戦闘中なんだからそんなのほほんとしてたら駄目だよ!!」

キャロとルーが礼儀正しくお辞儀するのを見て慌ててエリオが突っ込んだ。

「そのガキの言う通りだ。だがまさか俺の狙っている物がデバイスだったとは………だがデバイスなら俺の情報が間違ってない事はハッキリしたな。フェンリル、そのデバイスを奪え!!使い手は殺しても構わん!!」
『………分かった』

そう言って真白に向かって敵意を向けるフェンリル。

「ひぃ………」

覚悟を決めて皆を助けに来た真白も実際のフェンリルの大きさとその威圧感に思わず怯えてしまった。
足が震え、杖を持つ手も震えが走る。

「へえ、今頃現れた所を見てもどうやら魔法どころか戦闘も初心者みたいだな。ましてやまだ小さいガキ、さっきまでありえない事ばかりでマヒしてたみたいだな………嬢ちゃん、そのデバイスを素直に渡してくれれば俺はこの場を去ろう。………どうだ?」
「い……いや!!」

震えた声ながら一生懸命強気で言った真白。

「………なら仕方がない。やれフェンリル!!」
『………済まない』

そう誤ると再び口を開けるフェンリル。

「わ、私は………」

震えながらも杖の銃口をフェンリルに向ける真白。
そんな時………

『聞こえるか真白………』

真白にとって聞きなれた声が聞こえてきた………










「何だあのガキ、震えてやがる………」
『真白ちゃん!?あの格好は………』
「魔導師だったんだろ。しかし推定魔力ランクAAAランクか。それにデバイスは、インテリジェントデバイス、レイジングハートの後継機か。優秀なデバイスに優秀な魔導師。将来が楽しみな逸材だな。いや、それだけじゃない。あのデバイスには………」
『おいエクス、何を1人で………』
「………最新型ベヒモスの設計図、これが奴らの狙いか………」
『エクス!!いい加減に答えろ!!一体何一人でブツブツ言ってるんだ!!』

「マスター、俺の中で大きい声出すな。敵の狙いが分かったのさ。………しかし時代が変わり文明が滅んでいても人は変わらないんだな………」

険しい顔で1人呟く。

『おい何が分かった、答えろ!!』
「説明は後だ、先ずは彼女を助ける」

そう言ってエクスはキーボードを叩き始めた。












「あなたは………?」
『時間がない。プロテクションは使えるか?』
「えっ、プロテクション………?」

いきなり自分に聞こえてきた声に戸惑いつつもちゃんと答える真白。

『………使い手がこれでは宝の持ち腐れだな。………とりあえず良い、お前のリンカーコアと繋いで火のブーストをかける。後は何とかしろ!!』
「何とか!?いきなりそんな事言われても………」
『やらないと後ろの奴等が死ぬぞ?』

そう言われ後ろを見る真白。

(そうだ、今度は私が助けなくちゃ………もう今までの私じゃ駄目!!)

『アイツ等を助けるんだろ?』
「………はい!!」
『ふん、良い目じゃないか。じゃあ行くぞ、接続回路形成……接続………ブースト!』

声の主、エクスがそう言うと真白が赤い色のオーラに包まれる。

「これって………」
『おい、来るぞ!!』

『アブソリュートブラスト!!』

自分の変化に戸惑っている内にフェンリルは先程よりも多く溜めた冷気の塊を真白達に向かって放った。

「シャイン、何かお願い!!」
『バーンプロテクション!』

スカイシャインの声と共に展開されたプロテクション。
それは直径3mほど大きく広がり、冷気の塊とぶつかり合った。

『冷気が無くなっている!?溶かされているのか………』

まるでフライパンの上に置かれた氷のように徐々に消えていく。

「まさか………嘘だろ!?」

ジランドが驚く中、徐々に溶けていき、完全に消し去った。

『ほう………まさか子供に防がれるとは………』

自分の攻撃が通らなかったのにも関わらず、それほど驚きは無いのか淡々と呟くフェンリル。

『だがそれほどという相手と言うわけか………面白い』
「え、えっと………」
『認められんだよ、好敵手として』
「ええっ!?そんなの困るよ!!」

聞こえてきた声に不満を叫ぶ真白。

「真白………何一人で叫んでるの?」
「2人共、取り敢えずここを移動しよ。ここにいたら真白ちゃんの邪魔になるよ」
「そうね………エリオ動ける?」
「うん、何とか………キャロの回復のおかげでね」

そう話しながらルーテシアとキャロがエリオに肩を貸し、3人並んで移動する。

「フェンリル、ガキ達が逃げる!!さっさとそいつをどうにかしろ!!」
『………うるさい奴だ』

そう呟いて、エリオ達の方へ向かおうと体勢を低くする。

「!?させない!!えっと………スカイシャイン、何か動きを止める魔法を!!」
『イエスマスター』

そう言うと白い輪っかがフェンリルの足に巻き付き、その輪っかからチェーンが伸び、地面に突き刺さった。

『これはバインドか………』

『チェーンリングバインド、チェーンバインドとリングバインドの複合魔法です』
「凄い………」

本人の魔力で使った技なのだが、身動きが取れなくなるフェンリルを見て、思わず呟く真白。

「あんなでかい召喚獣をよくバインド出来たもんだ………だけど長くは続かないから次の攻撃の準備をしておけ」
「えっ!?」

いきなり近くで声を掛けられ振り向くとそこには紺色のスーツ姿のエローシュがいた。

「信也君………?何か雰囲気が違うし、何でスーツなんて来てるの?あんまり似合ってない………」
「悪いな、それはコイツがちんちくりんなのが原因だ」
『俺は悪くねえ!!』

そんなエローシュの叫びは真白には届かず、真白は不審そうにエローシュを見ている。

『マスター、この人が先ほど指示をした人物です』
「えっ!?信也君が!?でも何で、魔法の事知らないって………」
「まあ俺であって俺じゃ無いけどな」
「えっ、それってどういう………」

『があああああ!!』
「さて、ゆっくり話している余裕はないようだ」

フェンリルの叫び声が聞こえ、身構える。

「真白、お前は今から集束魔法の準備を。それまでは俺が時間を稼ぐ」
「え、エローシュ君!?」
「スカイシャイン、あんまり長い間は無理だから早めに頼むな!!」

そう言ってエクスは一人フェンリルの前に立つ。

「雪原の獣王か………さて、どこまでやれるか………」

そう言って先ほどと同じくキーボードを展開するエクス。

『おいエクス、お前大丈夫なのかよ………?』
「無理だな。俺は補助や防御を目的としたデバイスでな。攻撃魔法も無いことは無いがとても倒せる様な物じゃない。何より俺だけの魔力じゃたかがしれてる」
『………俺ってそんなに無能』
「クズだな。Dランク以下の魔力って逆に中々居ないぞ」
『ハッキリ言われた!?』
「だが、お前のその頭、いや処理能力は大いに使える。というより俺との相性が良い」
『処理能力?』
「いずれ分かる。出来れば早く理解してくれ。俺はサポートする側なんだ本来は………!!」

向かってきた氷柱をキーボードの操作で展開したシールドで防ぎ、難を逃れる。

「っくそ、シールドの強度が足りない………俺だけの魔力じゃまかなえないか………なら方法を変えて………」

キーボードを高速でカチカチと操作しながらぼそぼそと呟くエクス。

「よし!!クリスタル展開!!」

そう言うと1m程の大きさのあるクリスタルが3つ現れた。

「火のエレメンタル!」

キーボードを操作してそう言うと青かったクリスタルが赤くなる。

『アイシクルロッド!!』

フェンリルは口を開け、大きな氷柱をエクスに向かって発射する。

「頼むぞ」

火のクリスタルを操作して氷柱に直撃すると、先ほど真白が展開したプロテクションの様に氷柱が溶けていき、完全に消え去った。

「よし、これなら行ける!!」
『ならば!!』

氷柱が駄目と見たフェンリルはエクスに向かって走っていく。

「くっ、クリスタル!」
『無駄だ!!』

前足でクリスタルを払いのけ、エクスに迫る。

「くそっ!!」
『終わりだ』

高々と前足を上げ、エリオの時みたいにエクスを振り払おうとしたその時、

「はあああああ!!!」

雷を纏ったエリオが振り上げた前足に槍を構え突っ込んでいった。

『エリオ!!』
「まだ動けたのか………」

「エローシュ、逃げて!!」
『この………!!』

弾かれた後も直ぐにエリオに向かって頭突きをする。

「うわあああああ!!!」
『エリオーーーー!!!』

自身の体よりも大きいフェンリルの頭はまるで巨大な岩が向かってくるようなもの。

既に満身創痍なエリオにとってどうすることも出来なかった。
吹っ飛んだエリオは地面に転がり全く動かない。

「ちっ、しぶといガキが………だが後戦えるのはそこのガキさっきの魔導師だな」

エリオの反応を見たジランドがやっと終わりが見えてきたことにより、集中を切らしてしまった。
そしてそれが仇となる。

「油断………!!」
「なっ!?」

両腕にワイヤーが巻き付き、腕が動かなくなる。

「今度は同じ手を食わないわよ!!」

先程と同じ施行でジランドを固め動けなくする夏穂。

「くそっ、このガキ………!!」
「エローシュ、後は任せて!!」
「ここは僕と夏穂が!!」

2人の声に手を振って答えるエクス。

「優秀だな。魔導師でもなくあの年であそこまで出来るとは」
『変わった家計の2人だからな。だけど頼りになる』
「そうか………」

そう返事をし、再びフェンリルと対面する。

「さてフェンリル、お前に話があるんだが………」
『何だ?』
「今の召喚師と手を切る気はないか?」
『何だと?』
「契約自体を解除することは出来ないが改ざんして内容を弄る事は出来る」
『………本当か?』
「出来る。………だが時間がかかる。それまではこちらに手を出さないで欲しい」
『だが、今の契約者に命令されれば拒否は出来んぞ』
「大丈夫、仲間がやってくれる」

そう言ってエクスは佐助と夏穂を見た。
2人は視線に気がつき、頷く。

『………分かった、だが我が攻撃しそうになれば遠慮なく攻撃しろ。上の少女ならそれも可能だろう』
「やはり気がついていたか」
『保険をかけるのは悪くない。だがそれに安心ししくじるなよ。我はそれほど弱くは無い』
「分かってるさ。………接続回路形成開始………」

そう言ってキーボードを高速で打ち始めるエクス。
すると佐助や夏穂にしたように小さな穴から糸が現れ、フェンリルと繋がる。

「くそっ………やはり召喚師の契約を改ざんするのは骨が折れる………」

舌打ちしつつ手を止めないエクス。

「これじゃとても間に合わん………出来るかどうか分からないが………接続回路複製………再度接続………」

更に小さな穴を出現させ、複数の糸が現れる。
そして全てがフェンリルと繋がった。

「くっ、このやはりこの情報量を俺が処理するのは………!!」
『お、おいエクス!!』
「黙れ、気が散る………!!」

エローシュの体で脂汗をかきながら動かす手を止めないエクス。

「ぐっ………何なんださっきからこの体術は………体が動かねえ………それにさっきより力が………」
「今度はさっきみたいにはさせないわ!佐助!!」
「準備は出来た。後は飲ませるだけ」

そう言って小さな小瓶を手に、ジランドへ近づく。

「ふざけるな、ここでしくじる訳にはいかないんだよ!!」

夏穂に固められている腕を気にせず無理やり動こうとするジランド。

「うそっ!?痛みで動けない筈なのに!!それじゃあ腕が折れるわよ!!」
「知ったことか!!ここまでやってしくじれないんだよ!!!」

血を吐くような叫びを開けた後、真白に固められていた腕を無視し、無理やりゆっくり立ち上がるジランド。

「させない!!」

そんなジランドの動きを止めようと佐助がワイヤー付きのクナイを投げジランドの足に突き刺さる。

「ぐっ!?うおおおおおおおお!!!」

それでも立ち上がったジランド。ジランドの左腕は無理やり動いた為、真逆な方向へ曲がってしまっていた。

「あああああああ!!」

立ち上がると同時に離れた夏穂に蹴りを入れるジランド。

「くぅ!?」

咄嗟に腕でガードした夏穂だが、大人の蹴りに耐え切れず後ろに下がった。

「夏穂!」

近くにいた佐助が真白を支えた。

「このクソガキが!!!」

ぷらぷらと左腕を揺らしながら近くに落ちていた自分のデバイスを拾い、クナイが刺さり地が流れる足を気にせず、剣から刃の魔力弾を2人に向かって飛ばした。

「きゃあああ!!」
「ぐうううう!!」

魔法を使えない2人にとって守り様の無い攻撃。避けきる事も出来ずまともに喰らってしまった。

「くそ………もう好きにさせるか………フェンリル!!」
『くっ………!!そこの小僧、早く我に攻撃を………!!』
「間に合わなかったか………真白!!」

「はい!!お願いねスカイシャイン!!」

杖先が翼の様に広がる。
それと同時に夏穂自身にも光の翼が現れた。

『発射OKですマスター』
「うん!!行くよ、サンシャイン………ブレイカー!!」

集束された魔力はフェンリルよりも巨大な砲撃魔法となり、フェンリルを飲み込む。

『凄い………』
「集束技術も申し分無い、彼女は良い魔導師になるな………」

そう呟きつつ、手を動かし続けるエクス。

「くそっ、こっちを同時に………じゃない………何て複雑な………!!」

しかし直ぐに焦りからかどんどん声に余裕は無くなり、声も荒らげ始めた。

『エクス』
「何だ、今話しかけるなと言ったろ!!」
『俺と変われ』
「何………だと?」
『俺に変われと言ったんだ』

そんなエローシュの言葉を聞いたエクスは思わず動かしていた手を止めてしまった。

「お前は魔法を何も知らないのだぞ!?そんなお前に何が出来る!!」
『エクスと繋がっていた影響でお前がどういう風にしたいのかは分かった。エクスにはこの量は無理だ!!』
「何を言って………」
『俺は天才だぜ?マスターの力量もみたいだろ?』

そんな自信満々なエローシュの言葉に返す言葉を失うエクス。

(どっちにしても俺では間に合わない………真白の集束魔法がどれくらいダメージを与えているか分からないが、倒すのは無理だろう。今の真白にフェンリル相手に長い間戦うのも無理だ………これは賭けだな………)

そう考えたエクスだったが、時間が無い。

「分かった………文字はこの星の国に設定する。見せてもらうぞマスター」
「ああ、任せろ。俺は頭以外にもタイピングの早さも自信があるんだよ」

変わったエローシュが自信に満ちた目でそう返事をした………











『くぅ………末恐ろしいな。その年でこれほどの魔法を放つとは………だが、我を倒すにはまだ威力が足りん』
「余計な事を話すな!!殺せフェンリル!!!」

命令により、真白に目を向けるフェンリル。

『マスター、来ます』
「スカイシャイン!!時間を稼ぐよ!!エローシュ君が今頑張ってる、エローシュ君ならやってくれる!!」
『イエスマスター』

そう返事をしたスカイシャインはさっきと同じチェーンリングバインドを展開し、フェンリルを縛る。

「そんなもので止まると思ってんのか!!」
「そんな事ない!!」

いつもの真白とは違い、力強く言い返す。

「スカイシャイン、お願い!!」
『マスター発射OKです!!」
「うんサンライトバスター!!」

杖先から直射砲を発射する真白。

「どんどん行くよ!!」

攻撃を止めず、連続で放つ真白。

「エローシュ君、お願い………」

祈るように呟きながら真白は連続で撃ち続ける………









「真白ありがとう。………接続回路再形成………エクスは同じ箇所からアクセスし続けるから駄目なんだ。押して駄目なら引いてみる。発想の転換が必要なんだよ」
『お前………』
「俺ってもしかしたら凄いのかもな。いつも以上に頭がスッキリしてる。まるで聖徳太子の気分だ」
『マルチタスク………だがいきなり普通に扱えるとは………』
「マルチタスクね。これは本当に凄えや………」
『化け物が………だがそれでこそ俺にふさわしい………』
「よし、後は………この契約内容を改ざんすれば………エクス、どうすればいい!!」
『先ずは契約期間を変えろ!!召喚獣を使役するには契約を結ぶのだが、無理やり使役する場合はあらかた期間で縛っている場合が多い。それを直ぐに切れる様に変えれば自然に契約が切れる』
「そうか、なら………」

エローシュは再びキーボードを操作し始める。
その動きはエクスに負けない程である。

『なるほど言うだけあってキーを使うのに慣れているな』
「俺はネトゲーじゃ神と呼ばれていた事もあるからな。これくらいの操作はお手の物さ。よし、完了!!接続回路遮断!!真白、下がれ!!」
「うん!!」

展開した糸を解き、下がるエローシュ。

「フェンリル今だ!!奴らにアブソリュートブラストを!!」

ジランドが叫ぶがフェンリルは動かない。

「どうしたフェンリル!?」
『………もはや貴様の言うことを聞く理由は無い』

そう言ってジランドの方へ向き直るフェンリル。

「おい、何故こっちに向かって口を開ける………?」
『昔のお前はもっとマシな奴だった………無理やりな契約だったが、少しは見込みがあると思っていた。だからこそ残念だった………』
「何を言っている………?」
『気にしなくて良い。もはや過ぎた話だ………』
「お前………!!』
『さらばだ』

そう言ってフェンリルは溜めた冷気を放出した………










「フェンリル………」
『礼を言うぞ小僧、貴様達のおかげで我も救われた』
「ああ、それは良いんだが………」
『済まないな、好き放題使われたせいで思わず体が勝手に動いてしまった。奴に話を聞きたいのなら早くしたほうが良いだろう。恐らく長くは無い、近いうちに凍死するだろうな』
「………そこまでしなくとも」
『だが、これを想定していなかった訳はなかろう』
「だけど………」
『小僧、優しいのは良いが、優しさだけでは守れる者も守れなくなるぞ』

フェンリルはそう言い残して消えていった………








「終わりだな………」

エローシュが徐々に凍っていくジランドを見ながらそう呟く。
他の皆とも合流し、色々確認したい事をあったが、取り敢えずジランドの元に集まった。
ただエクスだけは軽く自己紹介だけ済ませておいた。

「まさかガキ達にこんな目にあうなんてな………」

顔は既に青白く、誰がどう見てももう助からないと見えた。

「ねえ助けられないの………?」
「無理だな。例え真白の魔法を使ってもこの氷は溶けないだろう。それほどの力だ。そもそもフェンリルとは氷雪の王、普通の魔導師が気軽に使役出来る生物では無いんだ」

キャロの呟きにエクスが答える。
そんな答えに悲しそうな顔をするキャロ。

「………全く、今まで敵だった奴にそんな顔をするとはな………まあまだ純粋なガキならば当然か」
「何よ、アンタだって純粋かどうかは知らないけどガキじゃない」
「………まあそうだったな」

夏穂にそう言われ、少し間を置いてから肯定した。

「エクス、どうにかならないのか?俺達はまだコイツには色々と聞きたいことが山ほどあるんだ」
「無理だな………さっきも言ったがこの氷を破る程の魔導師が居ない。………キャロの使役出来る竜にもっと強力な竜がいれば話は別だがな………」
「えっ!?私は………」

そう呟き、押し黙るキャロ。

「………余計な事をするなクソガキ………」
「お前がどう言おうと俺はお前を殺しはしない。お前には色々と利用価値があるんだ」
「俺にも俺の………プライドがある。ガキに生かされたとされちゃ………皆の笑い者だ………」

そう言うジランドの体は既に肩ほどまで凍ってしまっている。

「一つ忠告をしてやる………これで終わりだと思うな………俺達の組織はそこのガキが持っているデータを狙っている………俺みたいな末端な下っ端に苦戦しているようじゃ………全員殺されるぞ?」

「下っ端………?」
「うそ………」

そんなジランドの言葉に信じられないのか思わず呟くエリオとルーテシア。

「だが、俺がバカで良かったな。………手柄を独り占めなんて考えたおかげで逃げる時間が充分に得られたんだからな………組織の奴等がそのガキがデータを持っている事を知るのは当分先になるだろう。それまでに精々逃げるがいいさ………」

そう言ってニヤリと笑うジランド。
その顔には恐怖の色は無く、これから起こる出来事を楽しみにしているようだった。

「あ、あの………!!」

そんなジランドに真白が意を決して声を掛けた。

「わ、私のお父さんを知っていますか!?」
「お父さん………?」
「真白爽馬って言います!!」
「………なるほど。あのソウマ博士に娘がいたとはな………」

そう言って何か合点がいったような顔をするジランド。

「お父さんを知っているんですね!?お父さんは今何処に居るんですか!?」
「………ソウマ博士は完成した……新ベヒモスのデータを持ち去り、それに関連する………データを全て削除…し、何処かへ逃亡した………組織の方でも探し続けているが未だに………見つからない………」

そう言って首元まで凍っていくジランド。

「最後に真白だったか?一つ言っておく。………父親を探そうと思うな………父親を探すと言うことは組織と戦う事になる………そうなったらお前達ではどうしようもない。………強くなれ。父親を守れる程の力を付けろ。………まあそれまでソウマ博士が生きてればの話だがな………」

「そんな………」

「ソウマ博士は恐らく今もミッドにいるだろう。………俺の感だけどな。だが当たるぞ………死ぬ前に会えると良いな………」

「ミッド?」
「ミッドチルダ………管理局がある世界だよ」
「そこにお父さんが………」

ルーテシアに教えられ、真白は意を決した顔をする。

「後エローシュだっけか………?」
「ああ」
「一つ頼みがある………」
「何だ?」
「完全に凍ったら俺を海の底にでも沈めてくれ」
「えっ!?」
「でもそれじゃあもう誰も見つけてくれるかどうか分からないじゃない!!」

ジランドの言葉に思わず声を上げてしまうルーテシアと夏穂。

「構わないさ………。クソみたいな俺の最後を締めくくるには良い墓場だ………それに簡単に見つけられそうな場所に置いておいてもお前逹にとって都合も悪いだろう………いつ組織の奴が俺を補足するか分からんぞ?」
「あんた………」
「勘違いするな………別に助ける為にそうするわけじゃない。………俺が海が好きなだけだ………頼むぞエローシュ………」

そう言い残し、ジランドは満足した顔で最後まで氷漬けになった。

「全く………子供の俺達がどうやってコイツを海まで運ぶんだよ………」

エローシュはジランドを睨みつけながらそう呟いたのだった………  
 

 
後書き
次回事件後です。

なるべく早く投稿できるように頑張ります!!

 
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