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形而下の神々

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過去と異世界
  神と公式

 
前書き
今回のお話はただの設定説明と言うよりほかない物であります。
次のお話から、いよいよ書きたかった異世界ライフがスタートです。

今回のお話はキリが良い所まで進めた結果かなり長いですがご了承ください。 

 
目を覚ますと、余りにまばゆく差し込む光に驚いた。

その前に、目が覚めた事に驚きだ。

「よぉ、起きろグランシェ」

隣で寝息を立てるグランシェをたたき起こす。

「つッ、うわぁっ!?」

「オハヨー」
「お、おはよう?」

やっぱり死んでないのか?
場所は移ったのか、あの地下室でもない。

「グランシェ、ここは何処だ?」
「いや、死んだだろ。天国じゃね? スゲー綺麗だし」

そこで改めて周りを見る。

「おぉ、確かに……」

思わず感嘆の声を漏らす。

教会みたいだが、現代の建築物ではない。
光を取り込むステンドグラスが天井一面に張り付き、色鮮やかで眩しい石畳を照らす。

大理石とも違う、光沢のある灰と白のマーブルで出来た世界。

「こりゃあ凄い。こんな所初めてだよ」

「白井菜月の言った事は本当だったのか」

グランシェが何やら不可解な事を口走った。

「なんぢゃそりゃ?」
「ここは過去だよ。ロストテクノロジーってヤツだ」

「おい、何処のオカルトだ」

「白井菜月の話を信じるとそうなるんだよ」

なんなんだよ信じるって。何を聞いたんだ、しかもグランシェだけ。

「詳しく説明を」

俺は死んだのに生きてたんだ。
白井菜月も意味の分からん事を口走ってたし、全くもって訳が分からんが。
もう何があっても驚かん。

「白井菜月の話を要約すると……」

「いや、要約せずに頼むよ」

「そ、そうか? 分かった」


グランシェから要約せずに聞いた話を俺が要約すると……。


この世界はその昔、一度滅びた。

そこには人類が居て、俺達が存在した世界と全く同じ様な世の中だったらしい。

ただし、少し違う点が幾つかあった。

一つは、高度な機械は存在しない事。
理由はこの世界の根底にある。

基本的な物理学はこの世でも同じく通用するが、この世には俗に『公式』と呼ばれる物が存在する。
その『公式』とは、分かりやすく言うと超能力的な力を引き出す為の理論なのだと言う。
そんなの能力があるから、人類は科学に頼る必要が無かったのだそうだ。


ではなぜ、そんな超能力じみた現象が横行するのか。
理由は、高次元の生物の存在だ。

分かりやすく言うと『神』が実在したのだ。

彼等は4次元以上の次元を感知する。
それこそ目で見る様に、高い次元を見る事が出来るのだ。


そのせいで、高い次元の物理学がこの世では成立する。

例えば瞬間移動。

想像してみて欲しい。
紙に円を書き、その円の外から円の中心へ移動しようと思うと、円周を通るより他ない。
しかし円周を通りたくなければ、空中を移動すれば良い。

その時、俺達は2次元から3次元を通る。
それは2次元しか感知出来ない存在からすれば、あたかも瞬間移動した様に感じるはずだ。

その現象がここでは3次元でも起こる。

例を上げれば、バスケットボールの中に入れた飴玉をバスケットボールに触れる事なく取り出せるのだ。

俺達の感知出来ない次元を通って。

そんな特異な現象は、何も神と呼ばれる存在だけの物ではない。

神は神であり、人とは基本的に交わらない。

俺達が今居るこの場所は神殿と呼ばれ、神との通信を行う場所なのだそうだ。

その神に、自らを認めさせる事で、俺達にもその力の一端が使えるらしい。

それが『公式』だとのこと。

公式という理論を立て、神にこの場で示し、神を納得させる。

それすなわち神の所業。

ただ、その公式に矛盾があった場合、その矛盾を自分以外の人間に指摘された時点でその公式は失効する。

簡単な話、矛盾が有ろうとこの場で完成した公式を披露すれば、魔法が使える様になるといった感じ。


「で、これがその公式を込めた道具、神器らしい」

グランシェが一枚のマントと一双の手袋を鞄から取り出した。


「このマントは瞬間移動の公式が込められた神器らしい。人は無理だが、物質なら……」

そう言って自分の鞄にマントを被せた。

途端……。

「ほら、ご覧の通り!!」

マントを取ったその下には鞄は無かった。

「うおっ!? なんの手品だ!?」

「手品じゃねぇし、ほら」

また床にマントを置き、それを手で軽く叩くと鞄が戻ってきた。

「な?」

「お、おぅ」

なんだこの手品じみた微妙な感じは。

「ちなみにこのマントはレアモノで、人間には作れないらしいよ」

「じゃあ何が作るんだよ」

「いや、知らねぇケド」

じゃあ気になる事言うなよ!!
次にグランシェは手袋を取り出した。

「で、次はこの手袋。これはもっとレアモノらしい。大事にしろって言われた」

グランシェはその手袋を両手に装着する。

「これは凄かったぞ」

と、俺に近付いて来ると……。


「おいぅわっちょっ!?」

片手で俺を持ち上げた。

「な?」
「スゲーな!!」

「怪力が出る手袋だ」


って、俺には何もくれなかったんだな。

と、突然グランシェが手袋を外して俺に手渡す。

「この手袋はお前にって言ってた。良かったな」

「おっ、やった。サンキュー」


こんな訳の分からない手品や怪力を見せられては、公式とやらもそろそろ信じざるを得ないかもしれないな。

しかし……

「何故グランシェはこの世界の事を聞かされて信じたんだ?」

「あ、あぁ、ちょっとな」

「ちょっとなってなんだよ」

「いやぁ、思っきり使われたんだよ、色んな神器をな」
「……ご愁傷様です」


これで合点が行った。

グランシェが女性相手に負けたのは、神器があったからだろう。

自分でその恐ろしさを体感させられたのならそりゃあ信じるよね。

身をもって体感させられた訳だ。

可哀相に。
俺、ムキムキじゃなくて良かった。

と、話が一段落した時。

そのタイミングを見計らったかの様に教会の扉が開いた。

「お前達!!何者だぁっ!!」
「こらっ、レミント、静かにっ」

人影は2つ。

レミントと呼ばれた男の子と、それをたしなめた女の子だった。

「貴方達は何者ですか?どうやってここに侵入を?」
「あ、いやぁ~、よく分からんのですよ」

何故か通じる言語。
グランシェが不思議そうにするでもなく弁解する。

「まぁ良いです」
「えっ、良いの!?」
「うるさいレミントっ!!」

レミントとやらを再びたしなめてから、こちらに向き直る。

「貴方達、こちらの世界は初めてよね?」

「…………」

この問いには答えない。
下手に答えたら何をされたもんか分かったもんじゃない。

グランシェも同じ事を考えている様だ。
それを見て女性は更に続ける。

「……ナツキさんに、刺されたのよね?」

流石に俺もグランシェも少し反応してしまうが、やはり無言。

「大丈夫、ここは流動する民族、レミングスの移動村落。
私達レミングスはどんなモノだって受け入れ、そして流れるの」

「異界の人間だって同じさ!!」
「……だから静かに話しなさいってば」

よく分からないが、ここで拳を奮っても意味はないだろう。
村落と言う事は仲間も居るだろうし。
勝ち目は薄いか。


「タイチ、奴らを信じよう」

グランシェからの申し出だ。

まぁ、ここは降伏するより他はないか。 
 

 
後書き
そろそろ進んできましたので月木更新に切り替えて行きたいと思っております。
ただ、月木には一気に数話書き込む事もありますのでお楽しみに(笑)


--2013年04月19日、記。 
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