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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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狩りに行こうぜ!③

前回のアオアシラはあっさりリョウコウに倒されてしまったわけだが、今回の敵はアオアシラとはわけが違う

火竜、リオレウス。別名空の王

口からの強力な竜の息吹き(ブレス)に爪に潜む強力な毒。そしてなにより縦横無尽に空を飛び回るその飛翔力

正直言うと今回のリオレウス戦は鬼門……かもしれない
メンバー(リョウコウ君、リクヤ君、リン君、シノン君)は全員ALOにおいて、対空戦を行ったことは確かにある。しかし、自身が飛べない状況で……という条件をつけると全員が初体験だ
なぜならアインクラッドには飛行型エネミーがほとんどいなかったためだ
ガンゲイル・オンラインにはいるにはいるが、銃という絶対的な飛び道具があるため苦労とは無縁な雑魚エネミーばかり
以上の理由から地対空戦の熟練度は皆無だ

……ただ、このメンバーは常識はずれな面々なため、そんな熟練度やセオリーを完全に無視できる可能性もなきにしもあらずだが

「と、菊岡さんの持っていたノートに書いてあったわよ?」

「よし、後で絞めるか」

「全く……誰が常識はずれだって?」

おまえが言うな、という意味が込められた視線がリョウコウに集中するが、リョウコウは飄々とした様子でそれを受け流す

「……それは一旦置いといて……事実、空を飛ばれたらキツいよ」

「ゲームと一緒なら基本は低空飛行だろう。たまに高空から急降下攻撃orブレスをしてくるぐらいか?」

「もしゲームと違ったとしても、それが現実の法則に従ってんなら……」

「翼膜に風穴を開ければ飛べない」

鳥に限らず、ほぼすべての飛行型のモノは翼膜で上昇気流を受けて空を飛んでいる(例外はあるが)
そこに穴が開けばどうなるか?
答えは簡単。飛べなくなる、そこまでいかなくても飛び辛くはなるだろう

「まあ、それが妥当だな」

「それでリン軍師よ……どんな作戦でいく?」

「そうだな……って軍師?」

リョウコウがさらりと自然に似せた不協和音にリンは流しそうになるが、結局流せずリョウコウに聞き返した

「いや、いつも人の虚を突く作戦を立ててんのはリンだろ?」

「そうそう。普通の人は考えつかないような裏をかくのがうまいしな」

「おまえら、遠回しに喧嘩売ってるだろ……」

言葉の裏に隠されていた毒を敏感に感じ取り、額に青筋を浮かべるリン
暖かな日差しの照る闘技場の待機エリアのはずなのに少々殺伐とした雰囲気が立ち込める

「なにいきなり喧嘩をしてるのよ」

「シノン……口調」

「あっ……うん、ごめんなさい……」

「まあ……場を和ませてくれてありがとう」

シノンはリンに頭を撫でられると顔を綻ばせた
その様子をリョウコウとリクヤは一歩引いた場所から見守っている。顔は微妙に引きつっているが

「なあ、リクヤ。なんだろうな、この胸がムカムカするような、口の中が甘くなるような……」

「リョウは他人のことを言えない……」

リクヤに賛同を求めるリョウコウだったが、思っていた反応とは違う反応が返ってきたため首をかしげた
実に自分のことを客観的に見ることのできない連中だ

「まあ……作戦とは言っても簡単だ。シノンの弓で翼膜を抜くまでは俺たちは防御と憎悪値(ヘイト)の管理を行う。翼膜を抜いて地面に落ちたらシノンは尻尾の方向から状態異常付与の弓。リョウコウとリクヤは尻尾と突進、ブレスに注意しながら頭に貼りついてくれ」

「リンはどうするんだ?」

「俺はアオアシラ戦と同じく基本は遊撃。あとは前衛とのスイッチ役とシノンの護衛だな」

さすがに回復無しに戦えるような柔な相手ではないとリンは考えた。無しでいけないよね?
たぶん
おそらく

あり得ない予測が頭の中で成り立ってしまったのか、それを振り払うようにリンは頭を振った

「了解……。さて、支給アイテムを確認してさっさと行こうぜ?」

支給アイテム
錬金釜、回復薬、回復薬G、携帯食料、肉焼きセット、砥石、閃光玉、大樽爆弾G、投げナイフ、痺れキノコ、落とし穴、蜂蜜、強撃ビン、睡眠ビン、麻痺ビン、空きビン、ニトロ茸、睡眠草、生肉

「これは、苦戦させる気がないだろ……」

「……そうなの?」

「ああ、そうだ。こんなに潤沢なアイテムを駆使すれば初心者でも勝てるだろうよ」

経験者ではないシノンは首を傾げているが、実際にこの装備をフルで使った場合……まあ、可哀想なことになる
そもそもモンハンはモンスターと戦うのではなく、財布の中身と戦うゲームなのだ。たぶんこのゲームをプレイした人なら必ず一度は金欠病を発症したことだろう
そのためアイテムなんかは基本的に節約。たかが普通のリオレウスなんかに大樽爆弾Gや落とし穴を使う人なんて少数派だと思われる
注:作者の偏見です

「さてと……シノンはまずは睡眠ビンを頼む」

「睡眠ビン?これのこと?」

シノンは自身の髪とほぼ同じ色の薄く青みがかった液体の入ったビンを左右に振った
そこから発生したちゃぷちゃぷという液体特有の音が全員の耳に届いた

「ああ……それだな」

「わかった。つけて置くね」

シノンはそう言うとビンの蓋を開けて、その中に一つ一つ鏃を突っ込み始めた
明らかに戦闘中にはできない行為であり、このゲームがまだ試作段階で問題点があることを窺い知ることができる

「ところでリョウ、さっきからなにをしてるんだ?」

「ん?ああ、生肉があったら焼かねぇとダメだろ。だから肉を焼いてた」

肉焼きセット付随の小さな椅子に腰掛け、棒に固定された肉を火にかけながら回すリョウコウ

「別にダメってことはないと思うが……」

「付け終わったわよ」

「了解、じゃあ行こうぜ」

\上手に焼けましたー/

二十本ばかり睡眠ビンを付与した矢を矢筒に入れたシノンの声に反応し、リョウコウがちょうどいい焼き加減で肉を火から上げた
どこからともなく声が聞こえたがリョウコウはそれをスルーし、肉焼きセットを片付けると立ち上がった

そして、リオレウスの待つ闘技場へと足を踏み入れた

「おいおい……」

「菊岡のやつ……」

「はぁ……」

「綺麗ね……」

そのモンスターを見た瞬間、四者四様の反応が出た
リンとリョウコウ、そしてリクヤの経験者組はため息や菊岡への恨み事を。反対にシノンは見た感想をそのまま漏らした

大きく広げられた力強い翼。開いた口からは微かに焔が漏れる
やがて、リンやリョウコウ、リクヤ、シノンが入ってきたことに気が付くとその金色(・・・)の首をもたげ、咆哮した

「リオレウスじゃないじゃん……」

「リオレイア。それも希少種か……」

「硬いから嫌いなんだよなぁ……」

リオレイア。リオレウスが王だとしたらこちらは女王といったところだろう
基本的に攻撃方法は同じだが、一番注意しなければならないのはリオレウスですら持たないリオレイア特有の技、ムーンサルトだろう
多くのハンターたちを屠ってきたこの技は、その威力もさることながら問題は毒だ
戦闘中、解毒薬を飲む暇などないし放置すれば、ムーンサルトの威力と相まって簡単に命を落とす
しかも今回、持ち物の中に解毒薬はない
まあ、当たらなければ問題はないのだが

「前衛はムーンサルトに注意しろよ。じゃあ、作戦通り頼む」

「アオアシラのときは無様だったから、今度こそ!」

まず、飛び出したのはリクヤ。アオアシラの際の失態を取り戻すべく、誰よりも早く武器を構え突進してくるリオレイア希少種に向かって正面から特攻した
学習力がないのだろうか?

「アオアシラの時の二の舞になる気かよ」

「しょうがないから援護してくるか」

リオレイア希少種の頭に大剣をぶつけ、おもいっきり弾かれたのを見てリョウコウはリオレイア希少種の前に躍り出た

「じゃあ、シノン。援護は頼んだ」

「まかせて」

リンもシノンに一言声をかけるとリョウコウの後に続いた

「硬いな!?」

「一人で突っ込むな!」

「すまんすまん」

リョウコウとリオレイア希少種がぶつかり合う。さすがのリョウコウでもアオアシラの様には吹き飛ばせず、がっちりと組み合った
その隙にリクヤはリオレイア希少種の後ろに回り込む

「閃空剣!」

「っ!」

後ろに回り込んだリクヤが剣を振ると目に見えない真空波が発生しリオレイア希少種の足に傷をつけた
そして、同時に一本の矢がリオレイア希少種の翼膜を貫いた

「ブレスくるぞ!」

「キャッ……」

首をもたげブレスの兆しを見せるリオレイア希少種に対し、リンはそう叫ぶとシノンを抱え斜線から離れた
その直後、リオレイア希少種の口から球状の炎の塊が発射された

「リン! 恥ずかしいから!」

「かわし切れたら放すからちょっと我慢しろ!」

リンはシノンを抱えたまま、もう一度横に跳んだ
リオレイア希少種のブレスは一番最初にシノンがいた場所に着弾すると、爆発し周辺を消し飛ばした

「ちっ、爆風か……。これはゲームになかった要素だなこれは……」

「リン! シノン! 大丈夫か?」

爆風に押されて着地時に体制を崩して地面に手をつくリン
そして、衝撃を受けたリンとシノンからタゲを取るようにリオレイア希少種の気を引こうと大きな声を出すリクヤ
狙いどおり、リオレイア希少種の狙いはシノンからリクヤに移った

「何とかな。しばらくの間頼む!」

「了解! 断空剣!」

リクヤは飛び上がると空中で一回転しながらリオレイア希少種に斬り付けた
ほとんどなんの抵抗もなく刃が肉にめり込むのを見てリクヤはわずかに口角をあげる

「テイルズ技なら弾かれない!」

「バカか! さっさと離れろ!」

「へっ?」

喜びのあまり軽くリクヤが気を緩めたその瞬間。リオレイア希少種の巨体が横倒しになった

「なんとか……間に合った」

リンに抱き抱えられながらもリオレイア希少種に弓を射ちこんだシノンはゆっくり息を吐いた

「はぁ……リクヤ。後でシノンに礼を言っとけよ」

「あ、ああ……わかった」

リクヤが空中に飛び上がった時、リオレイア希少種は一歩足を下げ頭をわずかに下に下げていた。これはサマーソルトの前モーションであり、シノンの弓による睡眠が入らなければリクヤはゴミの様に飛ばされていたということであった

「まあ、せっかくなので睡爆でもやろうか」

「睡爆ってなに?」

「睡爆ってのは寝ている相手に刺激的な目覚めを提供するモノだな。睡眠中は威力が二倍だが、攻撃すれば必ず起きるから最大攻撃力で吹き飛ばそうってのがコンセプトだ」

「なるほど……。それでどこに爆弾を置くの?」

「そうだな……セオリーは頭なんだが今回は……」

一瞬だけ視線を頭に向けるがすぐに移動させ、最終的に動きを止めた場所。そこは……

「足だ」

「なるほど……わかった」

二次元ゲームの時、足への蓄積ダメージは転ぶと同時にリセットされてしまった。しかもリセットされる度に耐久性が上がっていくシステムだった
しかし、今回はもう一つの現実と言っていいVRMMO。リセットされない可能性が高い
現にシノンが弓で穿った穴は規定ダメージには届いてないにも関わらず、ふさがっていない

「じゃあ、全員置いてくれ。そうしたらシノンの弓で起爆する。シノン、爆弾は俺に渡して強撃ビンをつけておいてくれ」

「わかった」

全員の大樽爆弾Gがうずたかくリオレイア希少種の足のすぐ近くに積まれていく
少し離れたところではシノンが薄い赤色に染まった液体の入ったビンに矢の先のつけていた

「よし、シノン。矢を頼む。残りの面々は痺れ投げナイフの準備だ」

「眠りに麻痺って鬼畜だな、リン」

「本当にいい性格してるな」

「後で覚えてろよ、おまえら……。シノン!」

「うん、わかった」

シノンが放った矢は過たずに大樽爆弾Gの一つに直撃した。もちろん爆発。積まれていたすべての大樽爆弾Gが連鎖的に爆発した


「痺れ投げナイフだ!」

リンの掛け声で煙の中に見えるリオレイア希少種の影に向かって痺れ投げナイフをシノンを除く全員が一斉に投擲した

投擲にある程度慣れている三人が外すわけがなく、計三本の痺れ投げナイフがリオレイア希少種に突き刺さる

ナイフが突き刺ささった瞬間、リオレイア希少種の身体に電流が走ってるようなエフェクトが出た

「よし、チャンスだ」

「ぶった斬る」

リクヤとリョウコウ、リンはリオレイア希少種に駆け寄ると各自思い思いの攻撃を繰り出した

リョウコウの冷裂がリオレイア希少種の頭を殴り、リンの二刀流が足を傷つける。リクヤの双大剣が技名を叫ぶ度に光り輝き尻尾に刃がめり込んだ
翼膜へはシノンが強撃ビンで威力が底上げされた矢を容赦なく射ち込んだ

やがて麻痺が解けたリオレイア希少種は鬱陶しげに身体を震わせて一声天に向かって吠えると愚かなる襲撃者たちを一睨み

……しようとしたところで穴に落ちた

「うん、作戦は聞いたけど実際にやってみるとえげつないな……獅子戦吼!」

「まあ、モンハンだとはめ殺しってよくある話だけどよッ!」

「無駄口叩いてないでさっさと攻撃してくれッ!」

獅子の様な形の闘気をリオレイア希少種に打ち込みながら緊張感のカケラもない声でリクヤがぼやけと軽く苦笑いを浮かべつつも攻撃の手を弛めないリョウコウが応えた
その緊張感のなさにリンが二人を注意する

「いや……リンも集中しようよ……」

少し離れた位置で弓を射っていたためにシノンのその呟きは風に消えた

「さて、そろそろか」

「あいよ。俺とリクヤは少し離れればいいんだな?」

「さすがにここまでリアルだと普通にプチッと逝きそうだからな」

リン、リクヤ、リョウコウは攻撃の手を休めてリオレイア希少種から距離を取る
その直後、とうとうリオレイア希少種はその翼をはためかせ落とし穴を脱出し、その巨体を空に浮かせた
そして己を攻撃した者を睨もうとしたリオレイア希少種の視界には小さな一個の玉があった

「うわぁ、目が、目がぁぁ!」

「大げさだぞ、リクヤ。目を瞑らなかったお前が悪い」

「いや、お決まりかなって思って。しかし、本当に目が痛い……」

「自業自得だな。どうでもいいがさっさと攻撃しようぜ」

リンが投げた閃光玉は狙い違わず飛行中のリオレイア希少種の目の前で破裂
発生した多大な閃光によって視界が奪われたリオレイア希少種(+リクヤ)はパニック状態となり、地上へと落下
その衝撃によりスタンした

「そういえばリオレイア希少種が落とし穴を脱出するには翼が必要なんだよね?」

「今、見た通りだが?」

「じゃあ、翼を潰した状態で落とし穴に埋めたらどうなるの?」

「……チェックメイト」

その瞬間、リオレイア希少種の攻撃のチャンスは無くなった 
 

 
後書き
ボツネタ(台本書き)

金レイア「さて、私のターンよ」

リン「なに勘違いしてるんだ……」

金レイア「ひょっ?」

リン「俺らのバトルフェイズはまだ終了してないぜ。速攻魔法発動、狂戦士の魂(バーサーカー・ソウル)!手札をすべて捨て、効果発動!」

(中略)

リン「まず一枚目、ドロー! 麻痺投げナイフ!」

金レイア「うわぁぁぁ!」

リン「二枚目、ドロー! 落とし穴!」

金レイア「うわぁぁぁぁ!」

リン「三枚目、ドロー! 閃光玉!」

金レイア「うわぁ、ああ……ああぁぁぁ!!」

リン「四枚目……」

シノン「もう、やめてリン! どうせなら翼を破壊して落とし穴で嵌め殺ししない?」

リン「それもそうだな」

金レイア「もうとっくに私のライフはゼロよ! もう勝負はついたのよ!?」

リン「俺は君が泣くまで殴るのをやめない!」

竜の大粒涙狙い(笑)


以下後書き

はい、というわけでリオレウス編改め金レイア編でした
……あれ?苦戦させるつもりだったのにどうしてこうなった?
めぼしい攻撃は球ブレスのみ。サマソルは途中でキャンセル
……リョウコウを毒らせるつもりだったんだけどなぁ(鳩麦さんごめんなさい

金レイアに苦労したハンター全員に謝罪を……これがリアルモンハンです(キリッ

巨大ハプルの睡眠痺れ嵌めを思い出すなぁ……

では、この辺で
次回はいつもの三人とユカさんでお送りいたします

舞うは嵐、奏でるは災禍の調べ

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