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ソードアート・オンライン stylish・story

作者:黒神
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第二十九話 スイルベーン


リーファから飛行指導を受けて数分後、キリトとシュウはコツを掴めたのか今では飛行を制御しており、自由に飛んでいた。

「これは便利だな」

「Agree(同感だ)。こいつは戦闘の時に大きく役に立つな。コントローラーに縛られる事無く自分の剣に集中出来そうだ」

「そうでしょう?二人とも中々筋が良いね。じゃあ、スイルベーンまで飛ぼっか!付いて来て!」

リーファの先導でスイルベーンまで飛行を始めた。リーファは飛行初心者のキリトとシュウの事を考え、ゆっくり飛んでいたがキリトが意地を張った。

「もっとスピード出しても良いぜ?」

「ほほう」

リーファは、にやりと笑うと一気にスピードを上げた。それに乗じてキリトも加速した。

「あまり慣れてない事をやるのは気が滅入るが置いて行かれたら堪ったモンじゃねぇからな・・・やるしかねぇか。相変わらずの負けず嫌いだな、キリトは」

シュウはハアと溜め息を付くと羽を大きく広げると二人に追いつくように加速した。
キリトとシュウのステータスなら付いていく事は容易な事だったが更にスピードを上げると・・・

「はうー、わたしもうだめです〜」

ユイは途中でスピードに付いて来るのが難しくなったのかキリトの胸ポケットに飛び込んだ。
数分間の飛行を続けていると町が見えてきた。それに逸早く気付いたキリトが声を上げる

「お、見えてきたな」

「真中の塔の根元に着地するよ・・・ってキリト君、シュウ君」

スイルベーンの中心に立っている大きな塔に近づくとリーファがキリトとシュウに尋ね、それに逸早くシュウが答える。

「どうした?リーファ」

「君達・・・ランディングのやり方って分かる?」

「・・・分かりません」

「あっ・・・」

キリトは分からない単語に焦りを見せ始めるとシュウも少し焦りの言葉を漏らした。リーファも急いで説明しようとしたがいささか遅すぎたみたいだった。

「あっと、えっと・・・ご、ゴメン。もう遅いや・・・幸運を祈るよ」

そう言うとリーファは制御をかけると地面に降りて行った。

「そ、そんなバカなぁぁぁ!!!」

「ちぃ!!!」

ドガアアアァァァン!!!

~~~~~~~~~~~~

キリトは上げながら塔に激突し、地面に大の字に倒れ付した。

「ひ、酷いよ・・・リーファ」

「まあまあ、回復(ヒール)してあげるから」

リーファは回復呪文の詠唱を始めるとキリトの体が光り、HPが回復していった。

「おお・・・すごい。これが魔法か」

キリトは初めて見る魔法に感動していたのか声を漏らす。

「高位の治癒魔法はウンディーネじゃないと使えないんだけどね。必須スペルだから君達も覚えたほうがいいよ」

「へえ、種族によって補正があるのか。スプリガンってのは何が得意なの?」

キリトは跳ね起きるとリーファに尋ねる。

「えっと・・・確かトレジャーハントと幻惑魔法かな」

「ふ~ん。って、あれ?シュウは何処に居るんだ?」

キリトはシュウがいない事に気付いたのか周りを見渡す。それに乗じてリーファもキョロキョロと見渡す。

「ホントだ。シュウ君が居ない」

二人が心配していると・・・

「危ねぇ!!キリト!!そこを退け!!」

「えっ?」

第三者の声が響いたがキリトは何なのか反応が遅れてしまいその忠告も虚しく・・・

ゴスン!!

「グヘッ!?」

キリトは上から落ちてきた何かの下敷きになってしまった。
言うまでもないが上から落ちてきたのはシュウだった。シュウはすぐにキリトから退くとキリトの状態を確かめる。

「わ、悪ぃ・・・キリト。大丈夫か?」

「い、いきなり上から落ちてくるなよ・・・シュウ」

「でも、これでさっきの俺の気持ちが分かったんじゃねぇのか?」

さっきの事とはバグでキリトがシュウの上に落ちてきた時の事だ。それを思い出したキリトはコクコクと頷く。

「痛い程思い知ったよ」

「シュウ君。今まで何処に居たの?」

リーファがキリトを再び回復させながら尋ねるとシュウは説明を始めた。
シュウは塔にぶつかる瞬間にスレスレで急上昇し、慣性の力が弱まって地面に降り立とうとしたが丁度その下にキリトが居たと言う始末みたいだった。
リーファはシュウの咄嗟の判断力に呆れ顔になっていた。

「シュウ君って判断が早いよね?私が初心者だったらキリト君と同じ目に合ってたと思うよ?」

「ああ言う時は慌てた方が負けなんだよ。冷静に分析すれば咄嗟の判断だってすぐに出てくるモンだ」

シュウは落ちてくる時の反動で崩れてしまっていた髪型をオールバックに直しながら答えると回りの町並みを見渡した。

「ここがシルフの街か・・・綺麗な所だ」

「でしょ!」

スイルベーンの町並みは緑を中心とした色をしており、光が反射して中々神秘的な風景だった。キリトとシュウが風景を味わっていると・・・

「リーファちゃ~ん!」

とリーファを呼ぶ声が聞えてきた。三人が声が聞えた方を向くと黄緑色の髪をしたシルフの男の子が手を振りながら近寄って来た。

「あ、レコン」

「すごいや!流石リーファちゃん・・・って!!」

レコンと呼ばれているシルフの男の子はリーファを見ていたが隣のキリトとシュウを見た瞬間・・・

「ス、スプリガン!?それにインプまでどうしてここに!?」

腰のタガーに手を掛け、身構えたがリーファがレコンに言い聞かせる。

「あ、いいのよレコン。この二人が助けてくれたの」

「へっ?」

それを聞いたレコンは首を傾げ、気の抜けた声を出した。そしてリーファがレコンの説明を始める。

「こいつはレコン。あたしの仲間(フレ)なんだ」

「よろしく。俺はキリトだ」

「んで、俺はシュウだ。よろしくな?レコン」

「あっ、どうもどうも・・・って!いやいや!!」

キリト、シュウの順番でレコンは握手を交わしたがやはり油断できないのかすぐに飛び退くと再びタガーに手をかける。

「大丈夫なのリーファちゃん!?スパイとかじゃ!?」

「あたしも最初は疑ったんだけどね。キリト君はスパイにしてはちょっと天然ボケが入り過ぎてるしね」

「それは俺も同感だな」

「おいおい。二人とも酷いな」

三人のやりとりを見ていたレコンはリーファにみんなが集まっている事を知らせる。

「リーファちゃん。シグルド達はもう何時もの酒場で席取ってるよ?」

「あ、そっか。うーん・・・ゴメン。あたし、今日は良いわ」

リーファは手を合わせ、謝罪を述べるとレコンは残念そうな表情を浮べた。

「へ?来ないの?」

「うん。助けてくれたお礼にキリト君とシュウ君に一杯おごる約束をしてるんだ」

リーファがレコンに言い聞かせるとレコンは嫉妬の目でキリトとシュウを睨んできた。シュウはそれに感付いたのか少しからかう事にした。

「そう言う訳だ。悪ぃがお宅のプリンセスを拝借仕るぜ?」

そう言うとシュウはリーファの左肩に手を回して、自分の隣に抱き寄せる。

「ちょっ、ちょっと!シュウ君!!」

リーファは顔を赤らめながら戸惑いの表情を出していたが、レコンに至っては・・・

「あっ!!今すぐリーファちゃんから離れろ!!そうしないとお前を倒すっ!!」

レコンは腰のタガーに手をかけ、覇気をシュウに当てるがシュウはそれ以上に目を鋭くしながらレコンを睨んでいた・・・要するに殺気を浴びせていた。

「Interesting(面白ぇ)・・・テメェ出来んのか?そんな事が。俺はスイルベーンでシルフを倒す事は出来ねぇが、その身体に斬られる痛みと恐怖は刻み込む事は出来るぜ?」
シュウは左腰に帯刀していた刀の柄に手をかけながらレコンを威圧するが・・・

「リ、リーファちゃんは・・・僕が守るんだ!!」

レコンはそれに負けじとタガーを引き抜き、撤退の意思は無い事をシュウに告げると・・・

「ぷっ・・・あははははは!!!」

シュウは表情を元に戻すとリーファから手を離すとレコンに謝った。

「悪ぃな、レコン。少しからかい過ぎたぜ」

「えっ!?僕・・・もしかして、からかわれてた・・・の?」

「俺は確かにチャラ男だが、初見の女の子に手を出すほど無粋じゃねぇよ。からかって悪かったな」

シュウの言葉にキリトが突っ掛かって来た。

「本当にシュウってからかうのが好きだよな?俺も前にシュウにからかわれたしな」

「そう言う性分なんだよ。後、リーファもいきなり抱き寄せたりして悪かったな?」

「ホント、私も少し驚いたんだよ?シュウ君。今度からこんな事はやめてよね?」

「肝に銘じておく」

そう言うと三人はレコンに別れを告げて、レストランへと向かった。その姿をレコンは羨ましそうに見ていたみたいだった。
 
 

 
後書き
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