| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十七話『代表決定戦 ストライクVsブルーティアーズ』

朝、IS学園学生寮1021室にて…


「スッチー、スッチー起きてー、時間だよー」


本音がスウェンの身体を揺らしながら、起きるように促す。が、スウェンは起きない。本音は「うーん」と悩んだ後、何かを思いついたようにスウェンの耳元まで行き


「ふぅー」

「うおっ!!!!」


耳に息を吹きかけられ飛び上がるように起き、壁に張り付き本音のほうを向く。


「な、何をする……」

「スッチー起きたー♪」


ふと時計を見る。時間は6時半。スウェンは目を瞑りながら


「布仏……俺は7時半に起きると言った筈だが?」

「あれー?……間違えちゃった、ごめんねスッチー……」


落ち込んだ表情をする本音を見て、スウェンは軽くため息を吐き


「まあ、間違いは誰にでもある。気にはするな」

「……ありがとー、スッチー。それと」

「?」

「おはよー」

「ああ、おはよう」




/※/



「ぬ~……! う~……!」

「落ち着け、織斑」

第三アリーナのピットで、一夏は腕を組んだまま同じ場所を行ったり来たりして落ち着きが無い様子。何故なら始めの戦闘が一夏なのにも関わらず、彼の専用機が遅れているからだ。

専用機は本来、国家代表、もしくは企業の所属の者。そして一定の実力を持つ代表候補生にしか与えられない。一夏の場合はその特殊な事情でデータ収集が目的で専用機が与えられる事になった。だが到着が遅れており、一夏は待たされている形になっている。

スウェンはその落ち着きの無い一夏を見る、女子生徒に視線を移す。

『篠ノ之 箒』そう、あの篠ノ之 束の妹だ。彼女とは違い、真面目で堅実な性格の持ち主とスウェンは理解した。

(姉妹でこうも違うとはな……)

「ん? 何だ?」

「いや、随分と織斑が落ち着き無いと思ってな」

「ああ、全くだ」


腕を組みながら少し怒り交じりに言う箒。すると


『織斑君! 織斑君!来ました!織斑君の専用機が!』


真耶のアナウンスの後、ピットの壁が開くとそこには一機の白きISが搬送されてきた。


『これが織斑君の専用機……“白式”です!』

「白……式」


一夏は白式に近づき触れる。


「……」

「どうした? 一夏」

「い、いや、何でもない……」


一夏はそれが何なのか直ぐに理解できた。千冬がアナウンスで直ぐに装着を促すと、一夏は白式を纏っていく。


『Access』


起動音声と共に、一夏の目の前には白式のパラメーターとアリーナ場内にいる、セシリアの専用機“ブルー・ティアーズ”の情報も表示されている。


『時間が無い、フォーマットとフィッティングは実戦でやれ』

「ああ」

『……そこは“はい”だろ。一応言っておくが、勝利したほうがカルバヤンと模擬戦になる』

「スウェンと……」

『まあ、精々頑張る事だ。む、カルバヤン何処へ行く?』


スウェンは一夏が白式を装着し終えるとピットを出ようとする。


「俺は格納庫で模擬戦が終わるまで、ストライクの最終調整をしています」

『わかった、終了しだい山田先生が迎えに行く』

「了解」


そしてスウェンは歩き出そうとすると


「スウェン」

「?」

「勝って来るぜ!」

「……ふっ、ああ」





/※/




スウェンはモニターを開き、目の前に鎮座しているスタンドポジションのストライクの見る。


「お前とは長い付き合いだな、ストライク」


思えば、あの時。スウェンがストライクに触れた事が切欠であった。ストライクを託され、共に戦い、共に苦しんだ。どれもスウェンとストライクにとっても良き記憶とも言えるだろう。

今やスウェンにとってストライクは掛け替えの無い相棒だ。


「義父さん、義母さん。ストライクは今も大切に使っているよ。ありがとう」


ロイとネレイスの事を思い出しながら呟く。スウェンはモニターを切り替え、今一夏と模擬戦をしているであろう、セシリアのブルー・ティアーズのデータを見る。


第三世代ブルー・ティアーズ。遠距離戦を主体としたISで“BT兵器”と呼ばれる兵器のデータをサンプリングするために開発された実験・試作機との事だ。


「遠距離戦は苦手ではないから良いが……ブルー・ティアーズの主武装は“スターライトMk―Ⅲ”。たいそれた名だ……まあ、アグニやシュベルトゲ-ベルもいえたことではないな……」


自粛気味に言うスウェン。しかしあれから何分経っただろう。格納庫には時計らしいものが無く、時間を知る事が出来ない。スウェンは体感的に10分は過ぎただろうと予測する。


「スウェン君!」


格納庫内に真那の声が響く。「来たか」とスウェンは真那の方を向き


「教師山田。貴女がここに来たという事は、模擬戦は終わったみたいですね」

「はい! それじゃあ次はスウェン君の試合が始まるので来てください!」

「了解」




/※/




「すまん、スウェン。負けちまった」


頭をかきながら、一夏はスウェンにそう言う。どうやらセシリアに最後の一撃を加えようとしたところ、白式のシールドエネルギーが0になり敗北したようだ


「全力で戦ったんだろう? なら気に病む必要は無い」

「あ、ああ」

『カルバヤン、オルコットは既に次の模擬戦の準備を終えている。お前も早くISを展開しろ』

「了解」


スウェンは目を閉じ、ストライクを展開しエールストライカーを装備する。


「全身装甲か……」

「うお! スウェンのISカッコいいな!」

「そうか?」

「ああ! アニメとかに出てきそうな見た目でさ!」

『無駄話はいい、さっさと出ろ』

「……了解」


千冬に促され、スウェンはカタパルトまで歩き足を固定する。


『織斑、しっかり見ておけ。カルバヤンの戦い方を』

「え? お、おう……勝てよ、スウェン」

「解っている。スウェン・カル・バヤン、エールストライク、出る」


カタパルトによりアリーナへと飛び出したスウェンはセシリアと対峙した。


「来ましたわね……」

「オルコット、織斑との戦いはどうだった?」


突然の問いに、セシリアは一瞬迷ったが。


「正直……考えさせられる事が多かったですわ」

「そうか」

『それでは始めてください』


開始のアナウンスと共に、セシリアは動き出す。


「喰らいなさい!」


青きレーザーはスウェンに向かうが、それをかわしビームライフルで応戦する。


「くっ!」


スウェンからの攻撃はブルー・ティアーズの非固定(アンロック)ユニットに直撃したが、セシリアの攻撃は一向に当たらない。


「ブルー・ティアーズ!」


その時、セシリアの声とともに非固定ユニットから四つの小型兵器が射出され、スウェンの周りを縦横無尽に飛翔する。


「“BT兵器”か……」

「これならどうです!」


セシリアの一声にビットの攻撃が激しさを増す。レーザーを回避し反撃の機会を見計らいビームライフルをセシリアに向けるが、一機のビットのレーザーによりビームライフルの銃身を貫通。破壊されてしまった。

軽く「ちっ」とスウェンは舌を打ち、エールストライカーのビームサーベルを抜刀しようとするがビットのレーザー攻撃により中々思うようにいかない。


「少しは堪えるでしょう?」

「ああ、そうだな……ッ!!」


エールストライカーの右側のスラスターにレーザーが被弾し空中で何とか体勢を立て直す。


(この手の特殊武装はどうも苦手だな……仕方ない……同じ土俵で戦うとしよう)


スウェンがそう言い放つと、地面に急降下する。そして、瞬時にエールストライカーを量子化させ別のストライカーに換装する。強大な砲台の装備されたストライカー、ランチャーへと。


「背部の装備を変えた!?」

「機動力はエールほど無いが、このランチャーならば射程は問題ない」


右肩のコンボウェポンポッドに搭載されたバルカン砲をセシリアに放つ。ビームライフルとは違い、連射性に優れたバルカン砲は弾幕を作り、逆に攻撃の手を止められてしまった。


「このぉ! チマチマと!」


無理やりスターライトMk―Ⅲを構え攻撃を加えようとするが、コンボウェポンポッドに搭載されたもう一つの武装、ガンランチャーとバルカン砲を放つ。誘導に優れたガンランチャーはセシリアを追尾し、弾幕を作るバルカン砲でビットを狙う。

セシリアはガンランチャーを受けながらも、ビットの操作をしバルカン砲を避ける。スウェンはビットの動きを見て、アグニを構え


「ここだ!」


アグニから放たれた高圧縮のビームは、一瞬だけ動きが重なったビットを3機纏めて破壊した。


「ブルー・ティアーズの動きを読んで!? くっ!」


ビームを辛くもかわし、装着している残り2基のミサイルビットをスウェンに向けようとするが、既にスウェンは接近し、手にしたアーマーシュナイダーを振りかぶる。


「インターセプター!」


近接ブレードを呼び出し、刃を支えることでアーマーシュナイダーを受け止めた。


「近接武装は一応ある……か」


その時、スウェンの頭上に一つの小さい影。


「残りのか……!」


レーザーが放たれる前にスウェンはランチャーから即座にソードに換装し、パンツァーアイゼン本体のキャニスターでレーザーを防ぐ。


「また装備を!」


またもやストライクの装備が変わる事に驚くセシリアの尻目に、スウェンはマイダスメッサーを投擲。見事最後のレーザービットを撃破した。そしてマウントされたシュベルトゲーベルに手をかけ


「断ち切る……!」


抜刀。そのまま振り下ろし、セシリアはシュベルトゲーベルの一撃を受けた。

それと同時にブザーが鳴り、試合終了を知らせる。





/※/




「凄いな! スウェンのIS!」


ピットに着くや否や、一夏が興奮気味にスウェンに言う。


「少し落ち着かんか、馬鹿者」

「いでっ!!」


千冬から振り下ろされた鉄拳は、一夏の頭に振り下ろされ鈍い音が鳴る。


「瞬時に武装を切り替え、防御、そしてそこから攻撃に機転するとはな。だがいかんせん対応に困っていたようだな」

「はい、BT兵器というものが理解できていなかった俺のミスです」

「そうか……だが、織斑もカルバヤンもよくやった。今日はも休め」

「ああ」

「了解」


そうして、一夏、スウェン、セシリアによるクラス代表決定戦はスウェンの勝利となった。

のだが……




/※/




「一組のクラス代表は織斑一夏君に決定しました! 一繋がりでいいですね♪」


翌朝のSHR、真那は笑顔で言うが納得いかない男が一人。


「あの、先生……どうして俺なんですか?」

「そ、それはですね、スウェン君が辞退したからです」

「え!?」


一夏はその言葉を聞くと、後ろを向きスウェンを見る。一夏のその目は何で辞退したんだよと言わんばかりのものだった。


「俺は決闘目的で試合をしただけだ。元よりクラス代表には興味が無い、だから辞退した」

「じゃ、じゃあセシリアは……」

「今回の決闘で学ぶ事が多くて、わたくしの不甲斐無さを実感しましたわ。それにあなた方に対してわたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして、一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたわ」

「そう言うことで、お二人とも辞退して残ったのが織斑君でしたので、織斑君に決定しました」


真那の説明に一夏はただただ唖然とするのみ。だが、千冬は気にすることもなく


「クラス代表は織斑一夏。異存はないな」

「「「はーい!!」」」

「なんでだよ……」


女子の声が重なる中ただ一人一夏は肩を落とし、スウェンはそんな一夏の様子を見て僅かに口を綻ばせていた。



 
 

 
後書き
ガンバレルストライカー……あれ面白いですよね。ああいうタイプの特殊武装は大好物です。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧