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ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者

作者:黒神
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第八十三話 死滅


時間は少し遡り、闇慈はレミリアの元に向かったフランを探し始めた。だが闇慈の心はあの時のままだった。

(僕は・・・僕は・・・)

(いい加減に目覚めたらどうだ・・・アンジよ!!)

(・・・デスさん)

ここでデスの喝が飛んでくる。

(お前は根本的な事を忘れているぞ!!お前は何ために力を得た!?何ために我と契約を交わした!?お前の心はその程度だったのか!?そして・・・お前を想ってくれている者達の心を踏みにじるつもりか!?)

デスの一喝に闇慈はハッとした表情を浮かべ、走るのを一旦止めると今まで闇慈の事を見てきてくれた人たちの事を思い出した。

(アンジ!!)

(アンジさん!!)

「両親・・・部員の皆・・・冥界の人達・・・幻想郷の人達・・・そして・・・」

闇慈は心の中で最愛の人の笑顔を浮べる。

(そうだ・・・僕は『守る』ために力を欲した。そして犯した失敗はやり直せば良い・・・例えそれが、取り返しのつかない物だとしてもやり直しは出来る。大切なのは、前に進もうとする心と・・・人を想う心だ!!)

闇慈は目を閉じ、自分の中に存在するセイクリッド・ギアに呼びかける。

「今更だと思うけど・・・僕はもう迷わない!!もし・・・もう一度チャンスをくれると言うのなら、僕はそれに全力で答える!!だから・・・!!!」

闇慈はカッと目を見開き、叫ぶ!!

「応えてくれ!!僕の………セイクリッド・ギアーーーー!!!」

その覚悟の言葉が発せられると、闇慈の中のそれが応えたのか、闇慈の周りに力が渦巻き始める。

「来い・・・来いよ・・・俺は・・・ここに居る!!」

そして闇慈の服装は黒執事服からあの死神を思わせるボロ衣の漆黒のマントに変わり、眼も真紅に、そして髪も黒から銀色に染まった。最後にデスサイズ・ヘルを肩に担ぐ。

(終に迷いを断ち切ったか・・・アンジよ)

(デスさん。僕は・・・もう迷いません!!)

闇慈がデスに覚悟を決めたことを述べていると・・・

「お嬢様!!」

と咲夜の声が闇慈の耳に届いた。まさかと思い、闇慈はその場所に急ぐとレミリアがフランを庇うように魔力弾に背中を向けていた。闇慈はデスサイズ・ヘルを一旦消すと魔力弾とレミリアとの間に体を滑り込ませるとAMCマントでそれを受ける。
そして魔力弾が直撃すると砂塵が起こったが闇慈とその後ろの二人には害は無かった。

~~~~~~~~~~~~

「俺様に死を見せる?てめえが俺に勝てるとでも思ってんのか!?ああん!!?」

「如何にも落ちた奴が言いそうな台詞だな?・・・はぐれ悪魔」

闇慈は化け物の正体を見破ったのかそう言うと化け物・・・はぐれ悪魔をピクッと反応する。

「俺様がはぐれ悪魔だってことが分かって事は、てめえ・・・この世界の人間じゃねえな!?」

「さあ?どうかな?」

「アンジお兄ちゃん・・・なの?」

フランが初めて見る死神の姿に少しビクビクしながら尋ねた。

「そうだよ、フラン。この姿を見せるのは初めてだね。ゆっくり説明したいけど今は我慢してもらえるかな?後でフランの大好きなクッキーを焼いてあげるから・・・ね?」

「お兄ちゃんだ・・・私の知っているアンジお兄ちゃんだ!!」

闇慈が笑顔でそう言うとフランは闇慈に抱きつく。そしてレミリアに告げる。

「お嬢様。こいつは俺がやります。フランを連れて咲夜さんの元に行ってください。巻き添えを食らう可能性があります」

「どうやら自分の迷いを消す事が出来たみたいね。じゃあ任せるわ。それとこれは命令よ?」

「何ですか?」

「死ぬなんて許さないわ、必ず帰ってきなさい。貴方はもう私の家族と言っても良いのだから」

闇慈はレミリアの言葉に心打たれ、少し俯いた後に力強く頷いた。そしてレミリアはフランを連れて咲夜の元に飛んできた。

「お嬢様!妹様!お怪我は?」

「大丈夫よ。アンジが守ってくれたわ」

その事を聞くと咲夜はホッと胸を撫で下ろす。そして気になったのか霊夢と魔理沙がレミリアに尋ねる。

「なあレミリア。あいつって何者なんだ?」

「私の古い友人に仕える執事よ。そして・・・この幻想郷の住人じゃない」

「でも大丈夫なの?私と魔理沙でさえ、敵わなかった奴なのよ?」

「その点は心配無用よ、霊夢。私達はスペルカードと弾幕ごっこと言う概念に捕らわれ過ぎているけど・・・あの子は向こうの世界ではこう呼ばれていたわ」

闇慈が右手を前に出すと黒い光が集まって行き、デスサイズ・ヘルが現れると背中から6枚の漆黒の翼が生えた。

「「っ!?」」

「黒衣の死神・・・と」

「はん!!てめえ何モンか知らねえが、吸い尽くしてやるぜ!!行けよ!!ファング!!」

はぐれ悪魔は下半身の百足の足から無数の触手を飛ばし、闇慈の力を吸い取ろうとした。しかし闇慈はそれを紙一重でかわしていく。

「逃がさねえよ!!閉じ込めな!!アブソリュート・コフィン!!」

闇慈の逃げ先を読んで、紫の棺に閉じ込めようとしたが闇慈はそれを超反応でかわす。

「やるじゃねえか。初見でこの連携を避けたのはてめえが初めてたぜ!!」

「その二つの能力はセイクリッド・ギアか?差し詰め人間が所持していたものをお前が奪っただけだろう?」

「ああ、そうだぜ!!俺は下級悪魔だったが主を裏切って、人間界でセイクリッド・ギアを持った人間を襲って手に入れたもんだぜ!!」

はぐれ悪魔はそれだけでは終わらずに嘲笑うように続ける。

「死んで行く奴らの表情は良かったぜぇぇぇ?死ぬと言う恐怖に煽られながら目の光が消えていく・・・ひゃーはははは!!!思い出しただけで笑いが止まらねえなぁぁぁ!!!」

その言葉とともに人肌だった体の色が紫色へと変わって行き、心と体も『悪』に染まって行った。

「何でだよ・・・何でアイツは人殺しを楽しそうに喋ることが出来るんだよ!?」

「道が外れてしまった悪魔と言うものはそう言うものよ、魔理沙」

「お姉様・・・フラン。何だか怖い・・・私も破壊する能力を持っているけど・・・あんなに笑う事なんてフランには出来ない」

外道的な言葉に魔理沙が声を張り上げるがレミリアが言い聞かせる。フランも全てを破壊するという能力を持っているが、あそこまで外道的には出来ないらしく、怯えていた。

「言いたいことはそれだけか?はぐれ悪魔」

「何だと?」

「今の言動ではっきりした・・・貴様は生きていくに値しない奴だと」

「ほざけぇぇぇ!!そんな鎌しか持ってねえ奴が俺様に勝とうなんざ、甘過ぎんだよぉぉぉ!!!」

はぐれ悪魔は再び闇慈を閉じ込めようとしたが、闇慈はそれを避けずに棺の中に閉じ込められた。

「なっ!?何やってるの!?あいつ」

霊夢にはその行動が理解できなかった。はぐれ悪魔は触手を伸ばし始めた。

「何だ?何だぁぁぁ?でかい口叩いた割にはあっけねえな!おい!!もう良いぜ・・・死ねよ」

「ああ・・・貴様がな」

闇慈が呟いた瞬間、憑依死神を発動させ、魔力を溜めたデスサイズ・ヘルで棺を叩き斬った。その棺は破壊させるとそのまま霧散してしまった。

「なん・・・だと!?俺様の・・・棺が一撃で壊された!?」

「お嬢様!!どういうことなのですか!?私でさえあの棺は簡単に壊す事が出来なかったのに!!」

咲夜を初め、レミリア以外は驚愕に満ちた表情を浮べていた。そしてレミリアはゆっくり説明を開始した。

「セイクリッド・ギアと言うのは、ごく一部人間の体に存在する規格外の力のことを言うのだけど、あのはくれ悪魔が出していた触手と棺もセイクリッド・ギアの力よ。でも・・・彼の持つ力はそれより遥か上に存在するわ」

「あの厄介な触手や棺より高ランクなのか!?」

「ええ・・・使い手によっては神をも殺す事が出来る力、ロンギヌスの一つ・・・ありとあらゆる『生』を斬り裂き、『死』を導く鎌【デスサイズ・ヘル】よ。その力は【ノスフェラトゥ】・・・つまり【不死】すらも斬り裂き、殺す事の出来る程よ」

それを聞いたレミリア以外の人は空いた口が塞がらない程、驚愕していた。

「てめえの鎌が・・・デスサイズ・ヘルだと!?認めねえ!!そんなこと認められっかよーーー!!!」

はぐれ悪魔が触手を闇慈に向かって一斉に伸ばしたが、闇慈はそれを一本一本正確に斬り裂いて行った。そして当然その触手は『生』を失った事により、霧散してしまう。

「俺のファングが・・・」

「余所見をしている暇があるのか?はあっ!!」

ズバシュッ!!!

はぐれ悪魔が呆然となっている間に闇慈は下半身を斬り裂いた。周りには鮮血が飛び散り、下半身は霧散してしまう。

「ぎゃあああああ!!!」

はぐれ悪魔が痛みでのたうち周っている間に闇慈はシャドゥ・ルーラーで影を操り、動きを縛る。そして【ダークネス・ハウリング】を放つ為に、両手と六枚の翼を一点に集中させ、魔力を集め始めた。

「放せ!!放せってんだよぉぉぉ!!畜生がぁぁぁ!!!」

「これで止めだ!!全てを深淵なる闇に引きずり込め!!ダークネス・ハウリング!!!」

闇慈は出来上がった球体に正拳を打ち込み、黒い極太のレーザーをはぐれ悪魔に放った。飲み込まれたはぐれ悪魔はそのまま消滅してしまった。そしてそのことを確認した闇慈はこう呟いた。

「輪廻の中で貴様がやってきたことを、省みることだな」

こうして小さな異変は闇慈の心の決断によって終局を向かえ、平穏な日々に戻った。
 
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