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銀河転生伝説 外伝

作者:使徒
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とある自由惑星同盟転生者の話 その5


<スプレイン>

あの巫山戯《ふざけ》た演説から約2週間後、イゼルローンに帝国の侵攻部隊が押し寄せてきた。

ナトルプ上級大将を総司令官とした帝国軍は4個艦隊55000隻。
要塞に駐留する第十三艦隊15000の4倍近い数だ。

イゼルローン要塞の攻略において動員した艦艇数で過去最大なのは第五次イゼルローン攻防戦における同盟軍の50000隻だが、その記録は今回更新されることになる。

しかし、俺はこれが陽動にすぎないということを確信している。
間違い無く、帝国軍はフェザーン方面より大挙して押し寄せてくるだろう。
そして、それを止める手立ては無い。

帝国には今イゼルローンに侵攻している部隊を除いてもまだ20万隻以上の戦力が有るが、同盟は第十三艦隊を除けばパエッタ中将の第一艦隊15000隻に俺の第十二艦隊12000隻、それとビュコック司令長官直属の5000隻。
全て合わせても32000隻しかない。

無理やり掻き集めればさらに20000隻ぐらいは集まるかもしれんが……。
それでも帝国軍の4分の1にも満たない。


* * *


宇宙暦799年1月1日、帝国軍によるフェザーン占領の報が入り、俺を含む各艦隊司令官は統合作戦本部に集められた。

第十二艦隊司令官の俺に、第一艦隊司令官パエッタ中将、新規に編成された第十四艦隊司令官モートン中将、第十五艦隊司令官カールセン中将。

まさかこの面子の中に俺が加わる日が来ようとは……。

ドーソン元帥への挨拶を済ませた後、俺たちは会議室で作戦会議を始めた。

「この際、正面から決戦を挑むのではなく、ゲリラ戦に終始して敵の補給路を叩いてはどうでしょうか?」

「うむ、その言は正しい。じゃが………」

「敵はガイエスブルグ要塞に推進装置を付け、移動拠点として使用しているようです。要塞だけで全ての補給を賄うのは難しいかもしれませんが、そのままハイネセンを突ける程度の余裕はあると考えられます」

敵はあのガイエスブルクを補給基地として使っているのか……。
上手いやり方だ。

おそらく、敵の総数は20万隻を超えるだろう。
ガイエスブルクだけでそれだけの補給を賄えるとは思えないが、艦艇数に余裕がある分補給船団の護衛は厚くなるだろう。

それに、こちらも52000隻もの数でゲリラ戦をするのはさすがに無理があるから襲撃部隊を1個艦隊程度まで減らさざるを得ない。

だがそうすると敵の護衛部隊に阻まれる……か。
ゲリラ戦は無理そうだな。


* * *


宇宙暦799年/帝国暦490年2月7日12時40分、帝国軍の位置に関する情報がこちらにもたらされた。

帝国軍の総数は15万隻を超え、11個艦隊が縦列に展開しつつ第二惑星の軌道をかすめる形でランテマリオ星域を通過しようとしているらしい。

これは……罠だな。
おそらく敵の陣形は原作同様『双頭の蛇』だろう。

同盟軍も帝国軍も原作より数が多い。
それがこの後にどう影響してくるのか……。


ビュコック司令長官から中央突破の命令が入る。

ここから見た感じ、敵の中央部は思いの外厚い。
突破出来るだろうか?

「み、味方の一部が砲撃を開始しています!」

ああ……やっぱりこうなったか。
なんとなく予想はしていた。

だが、これはどうしようもない。
混成艦隊の上、あれだけの大軍を敵に回した経験のある者はアムリッツァ経験者ぐらいのものだろう。

ビュコック元帥は……このまま中央突破を図るようだな。
少々早まってしまったが、これも予定の内だ。

「砲撃開始! 敵の中央に風穴を開けてやれ」

同盟軍は敵中央に果敢な攻撃を繰り返すが、帝国軍の堅実な守りもあって突き崩せずにいる。

敵中央部隊はハプスブルク元帥の直属艦隊とミュラー、シュタインメッツ、メックリンガー艦隊か。
特に、守勢に強いミュラー艦隊は厄介だな。

「敵、両翼が動きます!」

来たか……。
敵両翼の先頭はよりにもよって双璧だ。

「司令部より伝令、『左ノ艦隊ニ集中砲火』とのことです」

なるほど、タイムラグを利用して各個に撃破するわけか。
さすがはビュコック元帥だな。

「左の艦隊に一斉掃射、てぇー!」

多数のビームとミサイルを叩きつけられたミッターマイヤー艦隊はその足を止める。

「次は、右の艦隊だ。砲撃開始!」

敵左翼のロイエンタール艦隊も先程のミッターマイヤー艦隊同様の結果になった。

急場は凌げたか。
だが、次はタイミングを合わせて来るだろう。
後退するなら今だな。

幸い、敵にはビッテンフェルトがいない。
このまま第一惑星の軌道上まで後退してヤン艦隊が来援に来るのを待てば……

「後方に敵の別動隊が回り込もうとしています! 数、50000隻以上!」

背後だと、バカな!
それにこの数は……。

「後方が遮断されました!」

帝国軍の両翼が真っ直ぐ延びてこちらの左右に展開する。

「我が軍、敵の包囲下にあり」

「くっ、密集して敵に備えろ」

これは…マズイ。
突破しようにもこの数の差では……。

「戦艦マルドゥーク撃沈、アラルコン副司令官戦死!」

「グラックス提督にアラルコン部隊の穴を埋めさせろ。これ以上撃ち減らされるな!」

おそらくヤン艦隊がこちらに向かっているはずだ。
それまで粘れば!

「敵の予備兵力と思われる艦隊が動き出しました!」

ここまでか……

「ん? これは!」

「どうした?」

「第十三艦隊です! 第十三艦隊が来援に来ました!」

間に合ったか。

「敵、混乱しています」

「今がチャンスだ! 敵の薄い部分に砲撃を集中しろ!」

包囲網に穴が空く。

「よし、突入せよ!」

・・・・・

ヤン艦隊の来援により、同盟軍は間一髪で危機を脱した。

とは言っても、当初50000隻を超えた艦隊はヤン艦隊の15000隻を合わせても40000隻程度でしかない。

同盟軍は、このランテマリオ星域会戦で実に25000隻もの艦艇が失われるか、戦闘不能の大きな損傷を負っている。
損傷率50%という、壊滅と言ってもよい程の損害だ。

だが、まだ戦いが終わったわけじゃない。
次のバーミリオンでハプスブルク大公を倒せば勝機はある。

……いや、まだ戦いがバーミリオンで起こると決まったわけじゃないか。
この世界は、既に原作から離れているのだから……。
 
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