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木の葉芽吹きて大樹為す

作者:半月
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蛇足・結末に至る過程の話

 
前書き
入れ忘れていました。 

 

「覚悟して下され、初代様、二代目様!!」

 老人の裂帛の気合いの込められた声が、紫の炎に包まれた世界に響き渡れば。
 その強い強い決意の込められた声を耳にした二人の人物は、それぞれの反応で返したのであった。

『ほう……お前か。歳を取ったのぅ、サルよ』
『え? って事はあれがヒルゼン君なんだ。うわぁ、歳を取ったねぇ……って、何この肌色!? 滅茶苦茶悪っ! まるでゾンビみたい――って、今の私はゾンビか!』
『姉者……。お願いですから緊張感をお持ちください』

 疲れた様に溜め息を零した銀色の髪の青年に、老人は変わっていないなぁこの人達と思ったとか。

「随分と愉快な方達ですねぇ、猿飛先生」
「……言うてくれるな、大蛇丸よ」



『え? 何言ってんの。私の遺体はDNAが残らん様に火葬してもらったんだから、エドテンされる訳無いじゃん……って、扉間。――お前、まさか……』
『申し訳ありません、姉者! 皆が反対したので――ごふっ!!』
『ふっざけんな、この愚弟ーー!! なんって事をしてくれたんじゃーー!!』

 髪を振り乱して叫んだ黒髪の人物を結界越しに見つめていた暗部の片割れが、ぽつりと呟いた。

「隊長。その、あの人は本当に初代火影様なんですか? 随分と聞いた話と違う様な……」
「――……オレに聞いてくれるな」



「ダメもとでやってみたけど、なんとか上手くいく物だねぇ……さすが初代火影クオリティ」
「馬鹿な……! 生き返っただと!?」
「助かりもうした、初代様! お二方を相手するには最早屍鬼封尽しかないと思っておりましたが、初代様がお味方して下されるとならば、その必要もありますまい!」
「ゔぇ? 屍鬼封尽? なにその物騒な術」

 後々詳細を耳にして、心底使われずに済んで良かったと胸を下ろした初代火影がいたとか。



「私を始めとする様々な人々が生み出し、二代目である弟が育て、三代目、四代目と守り慈しまれて来た木ノ葉だ。お前の様な相手に好きなどにさせまいよ」
「しょ、初代様……!」

 振るわれた蛇の毒牙から老人を間一髪の所で救い出し、その人は不敵に笑ってみせた。

「――――それにヒルゼン君だって、お前に殺させはしない。残念だったな、大蛇丸とやら」



「うずまき……ナルト? そうか、君が……」
「なんだぁ、姉ちゃん? オレの事、知ってるのかってばよ?」

 堂々と己の名を披露した眩い金の髪の子供に向けて、その人は微かに震える声音で少年の名を紡ぐ。
 不思議そうな少年の眼差しと目を見合わせ、その人は今にも泣き出しそうな表情で笑ってみせた。

「いいや。でも、私の妹の事を思い出したんだ。あの子も……君と同じうずまき一族の者だったから」
「うずまき一族?」
「生命力をそのまま色にした様な鮮やかな赤い髪を持つ、渦の国出身の一族でね。君は、父親か母親のどちらかのうずまき一族ではない方の色を受け継いだんだろうね」
「なんかよく分かんないってばよ」

 首を傾げる少年の金の髪を優しく撫で付け、その人は過ぎ去った過去を懐かしむ様に両目を細めた。



「なんか物騒な気配がしたから、ガイ君と出て来てみたのだけれども……。半魚人って本当に実在していたんだなぁ……」
「…………失礼な人ですねぇ、貴方」

 しみじみと感慨を込めて呟かれた一言に、青白い肌の大男がこめかみを引き攣らせる。
 そうしてから無表情でこちらを見つめている黒髪の青年の姿を目にして、その人は「げっ」と何とも形容し難い呻き声を漏らした。

「万華鏡写輪眼!? なんで私の周りのうちは一族は万華鏡開眼率が高いんだ……!」
「――……木ノ葉では見た事の無い顔ですね。しかし……どこか見覚えがある」

 三枚羽の手裏剣を思わせる文様の浮かんだ瞳を軽く眇めた黒髪の青年に対し、その人は視線を逸らす事なく腰を落として身構える。

「私の方も君によく似ている子を知ってるよ。最も、君と直接顔を合わせるのはこれが初めてなんだけどね」
「どういう意味だ? それに何故この目の事を知っている……?」

 臆する事なく赤い目を射抜いて来るその人に、青年の方も只ならぬ物を感じ取り表情を険しい物に変えた。



 もうもうと湯煙の立ちこめる中、金の髪の女は白い蒸気の奥から現れた人物を見て、正確にはその首元を見て目を見張った。

「大叔母様! その痣は、一体……!」
「ああ、これ? 昔殺されたかけた事があってね。これはその時の古傷なんだ。どうしてか、これだけは治らなくてね」

 細く白い首を覆う枷を連想させる痣に、金の髪の女は息を飲む。そんな彼女に、その人は小さく笑って首元を白いタオルで隠した。

「殺されかけたって、それって……!」
「それよりもつーちゃん、いやさ、綱手。君は、火影になる気はないのかい?」

 それまでの親しみ易い声音を一変させた鋭い声が、女の胸を抉る。
 言い訳は許さないとばかりに研ぎすまされた声音に、女は無言で顔を伏せた。

「別に無理になって欲しいとは言わないよ。でも、どうして躊躇っているのか……その訳を教えてくれたら私としても嬉しいんだけど」

 慈母を思わせる声音に、女はますますその身を小さくする。
 胸の前に置かれた女の両手が過去の悪夢を思い出した様に小刻みに震え出した。

「私は…………!」



 薄暗い森の中。
 首元を押さえている少年の前に、森の空気がそのまま凝って人形を作った様な……そんな神秘的な気配を纏った人影が現れる。

「――手を組もうじゃないか、うちはの少年。私は君の知っている事を知りたくて、同時に確かめたい事がある。そして君は復讐のための力が欲しい。だったらあの蛇男よりも先に私の手を取りなよ。――少なくとも、私は君が今向かおうとしている蛇男よりも遥かに強いよ?」
「……何者だ、あんた」
「つくづく可愛くない反応だなぁ! 全くもってあの野郎にそっくりだ」

 大袈裟に溜め息を吐いてみせて、その人は軽く肩を落とした。
 同時にそれまでの触れただけで切れてしまいそうな空気が一変して、気安い雰囲気がその人を包む。

「さあてね、そればかりは内緒だ。悔しかったら当ててご覧、うちはの末裔」



「奇妙なんだ。私の覚えている里の風景の中で、どうしてかうちはだけが集落の位置が記憶と一致しない。……昔は、あんな里の外れにうちはの集落は置かれていなかったんだ」
「――覚え間違いって事じゃないのか?」

 焚き火を囲む様にして、二人の人物が向かい合っている。
 炎を作る陰影が、それぞれの横顔を彩った。

「それはない。あの時の事はとても鮮明に覚えているし、勘違いって事は無いんだ。それに……」

 一度言葉が途切れる。

「うちは一族の実力は私が一番良く知っている。幾ら君の兄が天才だったとしても、たった一人で一族全員を一晩で殺し尽くすなんて出来る訳が無い」
「けど……!」
「君の記憶は正しいけど、残念ながらそれだけで全てを判じてしまうには情報が少なすぎる。それに……可笑しな事は他にもある。一晩に一つの一族がなくなる程の殺戮が起こったって言うのに……どうして木ノ葉の者達が気付かなかった? 単純に、君の兄だけが絶対悪だと……言い切れる話ではないかと私は思うがね」

 少年は、唇を強く噛み締める。
 その姿に気付いた人影は、悲しそうに瞳を伏せた。

「うちはの滅亡に……里も噛んでいるという事なのか?」
「――残念ながら、その可能性は限りなく高いね」



「ここが大蛇丸の実験場か……。相変わらず胸くそ悪りぃな……って、なにしてんだ?」
「さ、最悪だ。最悪すぎる……! そりゃあ、遺体が火葬されていないという時点で薄々勘付いてはいたけどさぁ……!!」

 巻物を見下ろしながら顔を両手で覆ってぶつぶつと呟いている人影に、少年は気味悪そうに眺めやる。

「私の細胞、なんだかんだで悪用されまくりじゃん! くっそ、フラグ回避ならずかよ!! もう最悪だぁぁあああ!!」
「落ち着け! 大声を出したら他の奴らにバレるぞ!! あんたが来たいって言ったから大蛇丸の野郎に頼んで研究所までやって来たのに、それを台無しにする気か!!」

 蛇を模した柱に頭を打ち付け出した相手を、少年は慌てて押さえた。



「公衆の面前で堂々と自殺してんじゃねーよ! 未来ある青少年が悪い影響を受けたらどうしてくれるんだ、この上半身露出男!!」
「ごっふっ!!」

 奇妙な紋の描かれた陣の上で、己の腹に鎌を突き立てようとしていた男が吹っ飛ぶ。
 顔の反面に火傷を負った木ノ葉の忍びは、目の前で鮮やかな飛び蹴りをしてのけた人物を目撃して呆然と声を漏らした。
  
「どうして、貴方がここに……?」
「路銀稼ぎに賞金首に関する情報を得ようと思って立ち寄っただけさ。それにしても酷い怪我だな」

 翳された掌が緑の優しい光を帯びる。
 見る見る内に火傷の傷が癒された忍びは、彼にしては珍しく己の教え子が来るまで身じろぎ一つ出来なかった。

「お。シカマル君じゃないか! ナル君達は元気かい?」
「ああ、まあな……って、どうして初のねーさんが」
「――おい。さっきとんでもない勢いで暁のコートを着た男が吹っ飛んでいったんだが、あんたの仕業か……って、シカマル!?」
「サスケ!? お前、大蛇丸の弟子になったんじゃ!? ナルトが連れ戻せなかったって事でかなり落ち込んでいたぞ」
「あの蛇男の弟子になる前に、私の弟子にしてね。大蛇丸のところにも弟子という形で入ってもらう事で、私の目的の手助けをしてもらっていたんだよ」
「その弟子入りの最終課題に大蛇丸を倒して来い……っていう無茶振りまで押し付けられたけどな」

 そう言いながら、無言でこちらを睨みつけている黒地に赤い雲の入ったコートを着た大男へとその人は視線を映す。
 そうしてから、首を傾げた。

「可笑しいなぁ……。見覚えが無い筈なのに、どっかで会った事がある様な……」
「奇遇だな、女。オレも貴様の顔には見覚えがある。――そうか、貴様よもや……」
「ん?」
「オレが一番最初に戦った木ノ葉の忍び……初代火影の血縁者だな?」
「ええ、と……まあ、そんな感じです」

 だらだらと汗を流すその人へと、大男は敵意に満ちた眼差しを向けた。



 小雨が降り注ぐ中、少年は彼にしては珍しく素直な感情を宿した瞳で相手を見つめ返していた。

「あの時、あんたがオレに声をかけてくれなかったらオレは兄さんの言葉を鵜呑みにしたまま、復讐者になっていただろうな。……そういう意味ではあんたには心から感謝している」
「そっか、行くのか」
「……ああ」

 雨水の滴る質のいい黒髪をやや乱暴な仕草で人影が撫でる。
 幼子にする様な動作だが、少年が嫌がる事は無かった。

「じゃあ行って来い、私の弟子。つくづく不器用なお前の兄さん相手に一発ぶん殴って盛大に文句を言って来てやれ」
「――そうするつもりだ。それで、あんたはどうする?」
「私は木ノ葉に戻ろうと思う。あの蛇男の研究室で見つけた資料が本当なら、旧知の子がかなり厄介な事に首を突っ込んでいる様だしね」

 少しだけ困った様に笑うと、その人は遠く木ノ葉隠れの里へと眼差しを向けた。



「大事件だよ、さっちゃん! 久方ぶりに木ノ葉に里帰りしたのだけれども、木ノ葉の里が……!」
「さっちゃんは止せ! 兄さん、この間抜け面を晒しているのは一応オレの師匠で、これでも初代火影だったらしい」
「初代、火影……? 馬鹿な、死んだ筈では――そうか、大蛇丸の……」
「うん、そう! 改めて始めまして。――で、話の続きなんだけど、暁の首領が木ノ葉に侵攻して里を丸ごと潰してしまったらしい。それと五代目が……つーちゃんが倒れて、六代目にダンゾウ君が選ばれたって!」
「ダンゾウが!?」
「何か知っているの、イタチ君?」

 青年の口から語られるうちは一族滅亡に至るまでの話に、自然とそれを耳にした二人の顔が険しくなる。

「何度聞いても愉快な話じゃないな……。おい、やけに顔が青ざめているが……どうしたんだ」
「なんていうか、気付いちゃった。どうしてダンゾウ君が私の細胞を移植したのか……」
「ダンゾウはシスイ兄さんの目を持っていた。それには貴方のチャクラがあれば利用のサイクルを縮める事が出来る……そのためでは?」



「あ、あなたが世界に名高いラップ忍者こと、キラー・ビーさんなんですね! お会いできて嬉しいです、初めてあなたのラップを聴いて以来、ずっとファンでした!!」

 恋する乙女の様に頬を赤らめ、もじもじとしながら色紙を取り出した彼の人の姿に、その場にいた誰もが目を見張った。
 浅黒い肌を持つ雷の国出身の忍び達は、驚愕の視線をサイン待ちしているその人へと向ける。

「お、おい……。今の一言聞いたか? ふぁ、ファンだってよ、師匠の……!」
「うっそ、マジかよ……。世の中には好き者がいるもんだな……」

 刀を背中に差した若い二人の忍びがそう呟けば、彼の人と共に雷の国の人柱力に会いに来た『鷹』の面々は無言で目を背けた。

「サスケ……。なんだかとってもキラキラした目でこっちを見ているんだが……」
「目を合わせるな、水月。同類だと思われるぞ」



 オレンジの色の渦を巻いた仮面の男が一人、世に名高い四人の影を前によく響く声で己の計画を明らかにしていた。
 それを部屋の外で耳にしていたその人は、目深に被った外套のフードの下に隠された容貌に何とも形容し難い表情を浮かべた。

「月の眼計画……それに、うちはマダラだと……? なんだかきな臭くなって来たな……」

 小さくそう呟くとその人は踵を返して、その場から立ち去る。
 向かう先は、六代目火影候補であるかつての教え子の元だ。



「これでよし、と。そろそろ私も行くとしますか」
「大叔母様、一体どこへ行くと言うのです? あの仮面の男は未だに……」

 立ち上がって外套を羽織ったその人へ、金の髪の女が声をかける。
 心配そうに表情を歪める女へと、その人は優しく微笑みかけた。

「いやいや。オレが向かうのはあのぐるぐる仮面の方じゃないよ。我愛羅君とオオノキ君のいる戦場へと向かおうと思ってね」
「……どうして、そこへ?」

 訝し気な表情を浮かべた女へと、その人は軽く苦笑で返す。

「状況は確かに連合が有利だけど……相手がこのまま黙って見ていると思うかい? 私が奴らだったらそろそろこれまでの劣勢を覆す様な隠し球を今から投入するね」

 そして、と細い指が地図の一点をさす。

「殆ど決着のついている戦場ではなく、まだ盛り返しの効く……ここ。この地点が恐らく……」
「そこには既に影が二人もいます。わざわざ大叔母様が行かれる必要は……」
「まあ、確かにね。でも、つーちゃん」

 透き通る様な微笑みを、その人は浮かべる。
 それから殊更ゆっくりと、その人は優しい口調で言葉を紡いだ。

「なんでかね。どうしてか私は此処に向かわなければならないと、思うのだよ」



 軽く笑って、その人は腰に佩いた刀を軽く撫でる。

「――――さあて、と。これが最後の戦場だ。せいぜい見苦しくない様にしないとね」

 好戦的に微笑むと、緑色の輝きを帯びた黒瞳は真っ直ぐに遠くに見える戦場へと向けられた。 
 

 
後書き
尤もここの部分は書く気はないです。蛇足三部作につながるあらすじとでも。 
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