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俺が魔王の息子ってマジですか!?

作者:ユウスケ
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2話 兄になりました。

ー紅蓮視点ー

今日も俺に仕えてくれる、侍女悪魔の少女達。
何か出来ないかと考えてから、数ヶ月が経ってしまった。
正直とても悩んでいる。
彼女達に何か欲しい物、もしくはして欲しい事はないか?
と、聞こうと思ったのだが、そうじゃない気がする。
贈り物って贈る人が相手の事を一生懸命考えて渡すものだと
俺は思っているんだよね。

しかし、どうしたものか・・・。

コンコン

「・・・紅蓮様よろしいでしょうか?」

「入れ」


贈り物、もしくは彼女達に何ができるかを考えていると
家臣が部屋の前にやって来たようだ。
自分でも偉そうだと感じるが、魔王っぽい口調で対応する。
一応魔王の息子だしね。
それっぽくしないと、生んでくれた両親に悪いと思うのでこの口調にしている。

ガチャ

「・・・失礼します」

黒いローブを被った家臣が一礼して部屋に入ってきた。
この人は、確か・・・。
どこかで見た事がある、家臣の事を思い出そうと記憶を探る。
・・・・そうか!思い出した!!
たしか父の側近の人だ!
いつも父の予定の書いてある手帳を持っており、父のサポートをする
秘書の人だ。
一体何の用だろうか?
もしかして討伐命令?

「・・・紅蓮様。実は[ボオォォォォォォ!!]ッ!?」

突然の音に驚く、俺と家臣とヒルダ達。
部屋の窓の外を見てみると・・・・。



向かいの部屋が勢いよく、燃えていた。



火事だぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!

やばいよ!部屋燃えてんじゃん!!
いったい、何が起こったんだ!?
赤く燃える、部屋を眺め呆然とする俺。

「紅蓮様・・・。さきほどの用件ですが・・・。



ご兄弟がお生まれになられました」


はぁ!?




2時間後



落ち着きを取り戻した俺は、家臣たちから火事の詳細を聞いた。
けが人、死人は0。
なんでも、俺の弟が生まれて大泣きをしたらしい。
その際、半径十五メートルを焼き尽くしたようだ。
マジで?
話を詳しく聞くと、大量の魔力制御が行えない赤子や子供は泣くと今回のような事が起こるらしい。
そうか、弟は俺と違ってすごいのか・・・。
ん?じゃあ、次期魔王も弟じゃね?
・・・・。
そうだ!ヒルダ達を弟に仕えさせよう!
俺みたいなボンクラに仕えるよりもきっといいはずだ!
なんせ弟は次期魔王。
彼女達の待遇もよくなるだろう。
今まで俺みたいなボンクラに仕えて苦労が耐えない彼女達の事を考えるなら
これしかない!!
俺は父の許可を貰うために駆け出した。




ー大魔王の側近視点ー


今日は大魔王様の二人目の子供がお生まれになる、おめでたい日なのですが・・・。
紅蓮様のお姿が見当たりません。
あの方は大魔王様と違って真面目なお方のはずなのですが・・・。
一体どうしたのでしょうか?
私が不思議がっていると、大魔王様は両手をポンッと、思い出したような動作で叩き
一言。


「あ、いけね。わし、紅蓮に言うの忘れてたわ・・・てへ♪」

「えぇぇぇぇ!!大魔王様!紅蓮様に言ってなかったんですか!!?」

「うん!つーか、嫁が妊娠した事も言ってなかったわ!わしうっかり!」

「「「大魔王様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

紅蓮様に今日生まれる事を言っていないだけならまだしも、大魔王様は妊娠したことすら
紅蓮様に言っていなかったとは・・・。
いや、諦めよう。
このお方はそういうお人だ。


「じゃあ。お前、紅蓮を呼んできて」

「・・・かしこまりました」

こうして、大魔王様の命令で紅蓮様を呼びに行く事に・・・。
廊下を歩きながら、紅蓮様にどう報告すればいいか考える。
紅蓮様の事だ、いつもなら一言「かまわん」か、「しかたがないな」と言って終わりなのだろうが・・・。
今回は正直わからない。
なんせ、弟が出来るのだ。
紅蓮様も大人びているとはいえ十歳の子供。
こういうイベントを楽しみにしているかもしれない。
そう考えると足が重くなる。

今、思い返すと紅蓮様は本当に魔王になるべくして生まれたお方なのだと思う。
お生まれになられた時から一度も、その身に宿る膨大な魔力を暴走させることはなく。
大魔王様の出した無茶な命を全てをこなし、母君に似た美しい容姿で今やファンクラブなるものが
あるのだとか・・・。

そんな紅蓮様が、お怒りになるかもしれないと思うと本当に恐ろしい。
そんな事を考えてると、目の前に紅蓮様の部屋があった。
どうやら、考え事をしているうちに着いてしまったようだ。
私は何故か重く感じる腕を使い、扉をノックする。

コンコン

「・・・紅蓮様よろしいでしょうか?」

「入れ」


ガチャ


「・・・失礼します」



部屋の中から、紅蓮様の入室許可の声が聞こえたので。
ノブを回し、私は紅蓮様の部屋に入室した。
紅蓮様は入室した私を真っ直ぐ見つめる。
正直とてもいい難いが、しかたがない。
私は覚悟を決めて、報告する事にした。


「・・・紅蓮様。実は[ボオォォォォォォ!!]ッ!?」



突然の音に、まさか!?と音の方を向く。
音はある部屋からしていた。
そう、奥様がご出産なされている部屋だ。
つまり、お生まれになられたという事。
なんてタイミングの悪さ!

「紅蓮様・・・。さきほどの用件ですが・・・。



ご兄弟がお生まれになられました」



自分の運の悪さを恨みながら紅蓮様に報告をする。
・・・しばらくたっても、返事が無い。
どうなされたのだろうと紅蓮様を見る。

「・・・・」


どうやら、驚いているようだ。
どうぜんだろう、さすがに向かいの部屋が魔力の篭った炎で燃えていれば。
誰でもこうなる。





願わくば、ご兄弟様も紅蓮様のようなお方に育ちますように。




と、燃える部屋を見ながら願ってみたが、大魔王様に似てしまったらと思うと・・・。


私は、少しシクシクする腹部を撫でた。


 
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