| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

少女1人>リリカルマジカル

作者:アスカ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三話 幼児期③



 《新暦37年 春 NO.11》


 『テスタロッサ家』

 リリカル物語、第1期に出てくる重要な中核であり、ヒロインの1人であるフェイト・テスタロッサの家系である。

 彼女はプレシア・テスタロッサの娘として生を受け、ジュエルシードと言う宝石を集めるために主人公の高町なのはと戦い、親友となった少女であった。リリカル物語を語る上で、彼女の存在は必要不可欠なファクターであろう。あと「健気」とか「子煩悩」とか「ヌギステル・マジ」みたいな代名詞がついていたはずである。

 そんな彼女の存在のすべては、アリシア・テスタロッサという1人の少女に集約される。

 彼女は愛娘を失ったプレシア・テスタロッサの手によって生み出された、アリシアのクローン。バーサーカーと化したプレシアが、アリシアと同じ存在を作り出す為に、生み出した少女であった。プレシアはアリシアと違う彼女を虐待し、娘を蘇らせるためにジュエルシードという、変に願いを叶える宝石の力を求めた。と、原作の流れはこれで合っていたはず。

 そんで母さんの目的としては、確か『バイオハザード?』みたいな名前の世界に行って、アリシアを蘇らせようとしたはずなんだけどなー。……そうだよね? 少なくともゾンビ召喚をしに行ったわけではないはずだと思う。えっと、おそらく。


 あれ、どうしよう。もしかして俺、第1期、第2期の記憶も曖昧だったりする? ……い、いや、きっと大丈夫だ。だいたいのことは覚えているはずだから。自信を持て俺。第1期をさらっと思い出してみるんだ。

 まず、確か母さんがユーノさんをドカーンしたはずだよな。雷バコーンって。それから、なのはさんが覚醒して、なのはさんが砲撃して、なのはさんが破壊光線撃って、なのはさんがもはやヒロインユーノさんだろうと感じるぐらいヒーローして、なのはさんがフェイトさんと一騎打ちして、なのはさんがバインドしてチャージしてスターライトぶちかまして、フェイトさんが星になりかけて……

 ……結論、なのはさんパネェ。


 いや、あれ? フェイトさんもめちゃくちゃすごかったはずなのに、なんでここまで俺の記憶には桃色光線ばかりが出てくるんだ。そんなに衝撃的だったのか。そこまで魔法少女の概念をブッ飛ばされたのが、印象に残ったのか、俺。

 あの後に興味本位で見た、営業マンと魔法少女のアニメの時も色々木端微塵に吹っ飛ばされたよな…。まさか序盤の展開でヒロインチョンパって。リリなのもそうだけど、最近の魔法少女に俺ついていけねぇよ。本当に。



 とりあえず考えが横道にそれまくったが、本題に入ろう。

 アリシアは5歳のとき、『ヒュードラ』と呼ばれる魔力駆動炉の暴走事故に巻き込まれる。俺は事故がいつ起きるのかも、どのように起きるのかも詳しくはわからない。だけど、事故は確実に起きる。母さんは俺たちが3歳ぐらいの時に、ヒュードラの設計主任に選ばれた。それは今も継続しており、おそらく事故が起きるその時まで続くのだろう。

 普通ならどうしようもなかった。ただの子どもに事故を回避することも、対処することもできるはずがないからだ。本来ならアリシアと一緒にいる俺も、死亡フラグが乱立している。

 だけど、俺はただの子どもじゃなかった。事故を止めるために自分ができることを考えられる。なによりも、事故を回避することができるレアスキルがある。


 救えるのだ。他でもない俺だけが。1人の少女の未来を、1つの家族の幸せを護ることができる可能性を。

 そしてそれは同時に、1人の少女の未来を、多くの少女達の幸せを奪うことになる可能性を。


 正直にいえば、どうしてこんなことになったんだろうとは思う。俺はただ笑って人生を往生したいだけだったのに。誰かを不幸にしたくもないし、みんな笑っていられたらそれでいいじゃないか、とかのほほんと考える、自分でもマイペースでのらりくらりとした性格だって自覚していた。

 それでも、選ばなくちゃいけないのなら。それでも、俺に出来ることがあるのなら。

 とりあえず、俺に出来ることを精一杯に頑張ってみようと、まずは思った。3歳の子どもにできることは限られているけど、何も変わらないのかもしれないけど、少しでも後悔しないように。俺が俺らしく生きていけるように。

 今はまだ、……先のことなんてあんまり考えないで、自分がしたいことをしていくことに決めたんだ。



******



 俺はずっと前から、とある計画を立てていた。自分に出来ることをめっちゃ考えた結果、今日俺はその1つを実行に移すことにしたのだ。成功と意気込みを込めて、掛け声一発。せーの、ラッセーラ! ラッセーラ! ……よし、完了。

 というわけで。

「母さん、仕事辞めて」
「ア、アルヴィン。いきなり何を言い出すの?」

 キッチンで晩御飯を作っていた母さんは、戸惑い気味に聞き返してきた。今日の晩御飯はシチュ-らしい。牛乳嫌いの妹だが、シチューは好きだ。なんだか某豆にキレていた錬金術師を思い出す。カルシウムは大切だから、ちゃんと取らせるようにしないといけないなー。

 いかんいかん、また考えが横道にずれた。

「いきなりというか、ずっと思っていたんだ。母さん、いつもすっごく疲れてる。そんなに大変なら今の仕事を辞めて、別の世界で心機一転しようよ」
「難しい言葉を知っているのね。でもね、お母さんのお仕事がなくなったら、みんなのご飯やお洋服もなくなっちゃうのよ」

 シチューが入っている鍋の火を止め、母さんは優しく諭すように話してくれる。確かにただの子どものわがままで、仕事は辞められないだろう。だが、甘いよ母さん。俺がその程度看破できないと思ったか。事前情報は完璧。協力者の援護も要請済みの俺に死角はない。

「大丈夫だよ。母さんは魔導師ランクSの大魔導師。それに魔法工学の研究開発者としての功績もあり、しかもミッドの中央技術開発局の第3局長。さらにさらに、2児の母とは思えないぐらい美人だから、すぐに就職先もイケメンの男も見つけられそうだね! ……ぐすっ、えぐっ、うえぇぇえぇん!! ……って、同僚のお姉さんが悔しさで涙を流しながら語っていたよ」
「(人の息子になにを話しているのよ!?)」

 同僚さんからもらった証言を本人さながらで伝えてみた。泣きマネ込みで。母さんが軽く現実逃避しながら、頭を抱えていた。

 ちなみに母さんと同僚さんは友人同士で、仲もいい。というより、開発チームのみんないい人たちだ。世界のみんなのためになる技術を、研究することを心情に集まった人たち。俺たち兄妹はなんかマスコットのように可愛がられていた。そのおかげか、アリシアは大人相手にも物怖じしない明るい性格になった。局長として忙しい母さんの代わりに、俺たちの面倒をよく見てもらったっけな。

 ……次元航行エネルギー駆動炉の開発の話と、あの上層部の連中が現れる前までは。


 とまぁそれは、今はいいだろう。とにかく、まだオレのバトルフェイズは終了していないぜ! 正真正銘のダイレクトアタック。出でよ、強靭! 無敵! 最強! の対母さん用の切り札よ!

「なぁ、アリシアも母さんがもっと元気に一緒にいて欲しいよなー?」
「うん!」

 キッチンにひょっこりと現れた妹は、元気よく返事を返す。ナイススタンバイ。サムズアップしてエールを送ると、妹も母さんに見えないようにまかせて、とサムズアップ。いろいろ大丈夫なのだろうか、この兄妹。

「お母さん、私もっとお母さんと一緒にいたい。それにね……私、お母さんが心配なの」
「……アリシア」

 娘の純粋な思いが母親に届く。少女の大きなルビー色の瞳が揺れ、小さな手が母のエプロンを遠慮がちに握る。その言葉に嘘はまったくない。そこにあるのは、ただ母親が心配で、自分の思いを精一杯に伝えようとする健気な少女と少年の姿だろう。


「(いいぞアリシア。そのちょんとエプロンをつかむ仕草ナイス! 次にそこで上目づかいで涙を目にためろ。そしてさりげなく、ダメ? と小首をかしげればなおよし)」
「(目に涙を浮かべるには、おばけこわいおばけこわいおばけこあい……ぐすっ)」
「うっ…」

 内面を別にしたら。


 ちなみに無理だったけど、いい線までいったことは明記しておく。



******



「もうちょっとだったのにな…」
「がっくし」

 俺と妹は仲良く一緒に肩を落とす。結構いけるかと思ったんだけどなー。アリシアにも台本渡して、かなり本格的にやったのに。

 まぁでも、やっぱり簡単には辞められないんだろうな。俺たちに余り時間を取ってあげられないことを、一番悔やんでいるのは母さん自身なんだ。家族を一番大切にしている母さんが、仕事のためにそれを削らなければならない。それだけ重要な役職であり、上層部の奴等にとって母さんは必要な人材なのだろう。

「まっ、できなかったことをずっと悔やんでいてもしゃーないよな。アリシア、晩御飯が出来上がるまで何して遊ぶ?」
「むむー。あ、お兄ちゃんこの絵本読んで!」
「どれどれ、『どうぶつのおうこく』か。アリシアってば、本当に動物が好きだよな」
「だってかわいいんだもん」

 お兄ちゃんはそんなあなたがかわいいです。でも確かに動物は俺も好きだな。昔は俺も生き物を飼っていたっけ。懐かしい。でもどうしてか前世では、なかなか動物を飼うのを認めてくれなかったんだよなー。不思議だ。

 あれ? そういえばテスタロッサ家って、動物と何かと関わりがあった気がする。フェイトさんはナイスバディ2歳児のアルフさんを使い魔にしていたはずだし。他にも確かもう1人、テスタロッサ家に使い魔の人がいたような…。

 おぉ、そうだった。思い出したぞ。原作に登場していたし、きっと大丈夫なはずだ。もふれるのか。やべぇ、もふれるのか! まじで原作知識で初めてテンションが上がってきたよ! もふもふ。

「お兄ちゃん?」
「アリシア、もしかしたら近いうちにもふれるぞ」
「もふ?」

 俺は兄として、妹にもふり方を伝授。ムツゴ○ウさんの撫でテクをテレビで真剣に練習して、町内のワンコやニャンコたちをもふり倒した、俺の中学生時代をなめるなよ。

 そういえば、『もふりキラー』という二つ名を町内越えて隣町にまで響かせた頃に、家族から「もうペット買ってやるから!」と泣きながら必死に言われたんだよな。高校生ではさすがに自重して、家の子と近所だけにしたんだけど。いやはや、懐かしいもんだなー。ふむふむ。



「どうぶつのおうこくでは、それはそれはたくさんの動物に囲まれて、幸せに暮らしましたとさ」
「えへへ、私もこんな世界に行ってみたいな」
「お、いいな。楽しそうだ」
「でしょ?」

 あれから絵本を2人で読み、一緒に笑い合う。放浪も好きだけど、こんな風にのんびりするのもやっぱり好きだな、俺。

「2人ともご飯ができたから、テーブルの上を片付けておいて」
「「はーい!」」

 母さんの声に俺たちは絵本を閉じ、本棚へと直す。いつものように、俺がテーブルクロスを整え、妹はテーブルの上に置いていた本や小物を片付けていく。料理を運んできた母さんに、よくできました、と一緒に頭を撫でられた。俺たちはそれに少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑顔を浮かべた。


 かけがえのない毎日が、いつも通りの日常がただ続いてほしい。それはとても尊い願いなんだと、俺は転生したことで初めて実感した。

 
 

 
後書き
主人公の原作知識:アルヴィンはかなりうろ覚えです。当然いろいろ大雑把にもなりますし、なにか勘違いをしているかもしれません……よ? 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧