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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第4話 母上危機一発 中編

 
前書き
後編を書こうとしたら思ったよりボリュームがあったので、中編、後編に分けることにしました。 

 
ここしばらく山賊狩りを自重して、大人しくしていました。

お陰でストレスが溜まっています。

この前、教育ジジの授業の合間に、息抜きをしに市場をぶらついていたとき、商人が話をしているのを聞きました。

山賊の規模が大きくなっているというのです。

どうも小規模の山賊が、寄せ集まって大規模になっているようなのです。

その数は3,000人位とのことなのでかなりの大所帯です。

「鈍亀意外の何者でもないですね」

これでは目立ち過ぎて、良い的です。

「彼らもそれだけ必死ということですね」

私の襲撃を警戒しているのは間違いないです。

私相手では数百程度の手勢では、皆殺しです。

一人より、二人。

二人より、三人。

頭数を揃えれば良いと思う当たり、お粗末な奴等だと思います。

ここまで大所帯だと父上が軍を派遣して討伐すると思います。

掃討戦になるので、隣の郡から援軍を要請する可能性があります。

殺伐とした話をしてなんですが、今日は私の誕生日です。

神様はいつくるのでしょうか?

早く神様からのプレゼントが欲しいです。





最近のあの子は憑き物でもとれたようにおとなくしています。

夜間の外出もなりを潜めています。

「どうしたのかしらね・・・」

あんなに毎夜、外出していた正宗が、急にやめたことは不自然です。

それも何の前触れなくです。

気にはなりますが、今日は正宗の誕生日です。

あの子ために何かおいしいものを作ってあげようと思います。

普段は召使いに任せていますが、今日だけは特別です。

そうと決まれば市場にいきましょう。

久しぶりに市場に出ましたが、やはり活気があります。

来てよかったわね。

「あの子は桃が大好きなので、桃を買ってきましょう」

召使いに声を掛けました。

「はい、奥様。それでしたらあちらになります」

「それにしても今日は人が多いわね。何故かしら・・・」

「多分・・・あの噂が原因だと思います」

「あの噂?」

「はい、最近、山賊が大規模になっているとのことです」

「不安になった周辺の村の住民は大守様のお膝元であるこの街に疎開しているらしいです」

「そう・・・」

場の雰囲気が悪くなったわ気まずいわね。

「奥様がお気になさる必要はありません」

「大守様は頑張っておられると思います。あっ!出来すぎたことを言って申し訳ありません」

「ふふっ、気にする必要はないわ。あの人は文官としては優秀だけど、荒事は苦手なの。だから、武官全般は都督殿に丸投げだし」

「はあ・・・分かりました」

「さあ、気を取り直して買い物をしましょうか」

「そうですね」

このまま楽しい買い物で終わるはずでした。

この買い物に出かけたことが切欠で、正宗が夫や私に黙って何をやっていたのかを知ることになるとは、このときは露程にも思ってもいませんでした。





私は一枚の布を手で握り締めていた。

その布には私の最愛の妻を誘拐したと書かれており、身代金を要求するものだった。

「許せん!賊どもめ!私の妻を誘拐するとは許せぬぞ!」

私は執務室の机を怒りに任せて殴りつけた。

「太守様、落ち着かれませ。まだ、危害を加えられてはいないと思われます」

長い付き合いになる老齢な武官が冷静に話してきた。

「貴様に何がわかるというのだ!安全であるという保障がどこにある!」

「奥様に危害を加えるつもりなら、わざわざそのような文を寄越しませぬ」

「仮にも一群の太守にこのような真似をして、ただでは済まぬのことは馬鹿でもわかります」

「それに実行した奴等の目星も検討がつきますゆえ」

「誰だ、その痴れ者は!」

「多分、例の山賊どもでしょう」

「それは領内の山賊の寄せ集めのことか?」

「御意」

「あれだけ膨れれば村を襲うくらいでは、集団を維持するのは難しいと思われます」

「奥様の身の安全を考えれば、ここは身代金を用意すべきでしょう」

「し・・・しかし、民のための税金だ。私の妻のために使うことなど・・・できぬ・・・」

本音はそうしたいが、民のための税金を自分のために使うことなどできない。

私の矜持が許さない。

「別にくれてやる訳ではありません」

老齢な武官を鋭い目つきで太守に言って来た。

「奴等に金を受け渡したところで、奥様を無事返す保障などございません」

「故に、受け渡し場所に侍女に扮した女の武官を紛れ込ませ、奥様の居られる場所を突き止めてみせます」

「奴等とて馬鹿ではない・・・。バレたら妻はどうなるか・・・」

「太守様、お気をしっかりお持ちください」

「後のことは、この私にお任せください!必ずや助け出してご覧にみせます」

・・・・・・・・・。

「妻のことを・・・頼む!」

私にはどうすればいいのか判らなかった。

妻の無事を祈るしかできない私が情けなかった。

「はっ!必ずや奥様を助け出してみせます!」

私は拱手する老齢な武官に全てを託した。





あの教育ジジが授業を急遽とりやめて、父上の元に行っています。

家人の様子も何かソワソワして変です。

私に何か隠していると思います。

はじめは私の誕生日なので何かサプライズを考えているのかなと思っていました。

それにしては変です。

屋敷の警備が物々しいです。

私の誕生日に賓客が来るので、警備が物々しいのは当たり前なのですが、警備の武官からは殺伐としたものを感じます。

そう山賊狩りで私が山賊達を探すときの雰囲気に似ています。

何かあったのは間違いないと思います。

それにしても母上が屋敷にいないように思います。

いつも今頃は庭でお茶の時間を楽しんでいると思うのですが・・・。

「ん?」

向こうで召使い達が何か話しています。

気づかれないように近寄ることにしました。

「奥様だいじょうぶかな?」

「山賊に誘拐されたんでしょ・・・最悪・・・」

「縁起でもないこと言わないで!奥様の救出のため都督様が陣頭指揮をとられるって仰っていたもの」

「お坊ちゃま、かわいそう・・・。折角の誕生日だったのに・・・」

「そうね・・・」

私はその場をすぐに後にしました。

あの山賊達を皆殺しにしておくべきでした。

そうすれば母上が誘拐されることなどありませんでした。

「山賊達、どこまでいってもお前らはウジ虫という訳か。」

「この私の手で引導を渡してやる!」

3,000人であろうと関係ありません。

私の母上を誘拐したことを後悔させてやります。

私は警備の厳重な屋敷を抜け出し、人気の無い森に向かいました。

そこに予備の武器を隠しているからです。

今、武器庫にいっても物色するのは難しいと思います。

私は目的の場所に着くと、隠していた武器を土の中から掘り起こしました。

「必ず、母上を助け出します!」

布に巻かれた槍を手に持ち、自分に言い聞かせるように言った。

山賊達の居場所に当てはありませんでした。

しかし、3,000人の規模でなれば、駐留できる場所は限られます。

山賊達は人の目につき辛い場所に駐留しようと思うはずです。

そんな場所、この郡にあるのか?

領民の噂では山賊達は北のあたりで目撃されています。

その当たりをしらみ潰しに探すしかありませんね。

「母上無事でいてください」

私が母上の捜索を行動しようとしたとき、真上から私を前世の名前で呼ぶ声が聞こえました。

「どちらにいかれるのです?林さん」

私をその名で呼ぶのは、私の知る限りこの世界にはいない。

上を仰ぎ見ると予想通りの人物が木の幹に腰掛けていました。

「神様、急用がありますので後にしていただけますか?」

「ふふっ、つれないのですね」

相変わらずマイペースな人です。

私はあなたに構っている暇などないのです。

「私はあなたとの約束を果たしに来ただけですよ。お手間は取らせません。」

神様はそういうと私の目の前に、何かが空から降って地面に突き刺さりました。

「あっあぶないではないですか?」

突然のことに私は驚きました。

「それであなたの母上様を助けておあげなさい」

神様は真剣な顔つきで私を見て言いました。

地面に突き刺さっていたのは「双天戟」です。

私はおもむろに相棒となる「双天戟」を力強くに握りしめ引き抜きました。

「これであなたとの約束は果たせましたね」

双天戟を手にして初めて実感したことがあります。

手に馴染みます。

今まで使ってきた槍などとは全然違います。

これがあれば山賊達など物の数ではないです。

「神様、ありがとうございます!」

「お礼を言われると心苦しいですね・・・。元はと言えば、私の不手際であなたを死なせてしまったことが原因です」

神様は困った顔をしながら私に言いました。

「これであなたと会うのも最後だと思います。林さん、私はあなたが幸せになるお膳立てをしただけです。幸福なるか不幸になるかはあなた次第・・・。そのことはゆめゆめ忘れないようにしてください」

神様は私にそう伝えると消えました。

私は先程まで神様が腰掛けた幹を見続けていました。

『そうそう最後におまけです』

『あなたの母上はここから東の方の郡境の谷にいます』

どこからともなく神様の声が聞こえてきた。

「ええ、山賊達から必ず母上を救い出してみせます。この槍に掛けて!」

私は相棒を天に向けて突きつけ叫びました。 
 

 
後書き
次回で劉ヨウこと正宗が山賊から母上を救い出します。
この作品の主人公である劉ヨウのヨウは文字化けしたりするので、[月缶系]などと訳される人のことです。
知っている方もいらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、知らない方のために書いておきます。
 
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