海神の贈りもの
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
海神の贈りもの
ナイジェリアのヨルバ族に伝わる話である。
国全体を恐ろしいまでの飢饉が襲った、それで誰もが食べるものに困り餓えに苦しんだ。その状況を見てだった。
ある村の青年で農家の息子であるアジャイ、中背で痩せた身体の細面の彼は家族に真剣な顔で話した。
「俺が食べものを見付けてきて」
「そしてか」
「私達を助けてくれるのね」
「俺は狩りや釣りも出来るから」
畑仕事だけでなくというのだ。
「それでね」
「そうか、何か食いものをか」
「見付けてくれるのね」
「そして持って来るから」
両親そして弟や妹達に話した。
「まっていてね」
「ああ、頼むな」
「そう言うならね」
家族もそれならと応えてだった。
旅立ったアジャイを見送った、彼は何としても食べものを見付けるつもりだった。
その彼を見ている神がいた、海の神で創造神に次ぐ力を持つオロクンである。
オロクンはその彼について自身の海の宮殿で話した。
「その心掛け見事だ」
「だからですね」
「あの者を助けられますね」
「そうされますね」
「それに創造神と話したが」
周り、自分に仕える者達に話した。
「飢饉もな」
「何とかする」
「そうされますか」
「そのことも決まりましたか」
「だからあの人間をこちらに導く」
そうするというのだ。
「これよりな」
「わかりました、ではですね」
「あの者を呼ばれますね」
「まずは」
「椰子の実を川辺に置いておく」
オロクンはその導き方の話もした。
「するとあの者は見付けるとな」
「取ろうとしますね」
「間違いなく」
「椰子の実を」
「そして家族に持って行こうとしますね」
「それでだ」
アジャイ、彼がそう動きからだというのだ。
「そこで実を動かして川に戻してな」
「川を流れさせて」
「人間はそれを追いかける」
「そして気付けばですね」
「この宮殿の前にですね」
「いる様にな」
その様にというのだ。
「しよう」
「そうされますか」
「ではですね」
「これよりですね」
「椰子の実を出そう、あの人間が実を取った時はだ」
神は楽しそうに笑って話した。
ページ上へ戻る