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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第171話

麻生恭介は不良に絡まれていた。
如何にも不良達が居ますよと言わんばかりの路地裏に、六人もの不良に連れてこられた。
今は胸ぐらを掴まれて財布やら、携帯やらを物色されそうになっている。
どうしてこうなったのか。
愛穂が退院してからというもの、毎日がいつもより騒がしくなった。
元々、制理や桔梗や麻生は率先して話をするような人ではない。
なので、必然と愛穂が場の雰囲気を盛り上げる。
病院食は味気がなかったと、麻生の料理を食べつつお酒を飲みつつとハイなテンションだった。
入院生活が恐ろしいほど退屈だったに違いない。
それも段々と落ち着いて来て、制理もマンションでの共同生活に慣れてきた頃。
麻生は日課ではないが、散歩を再開したのだ。
あてもなくふらふらと歩いていると。

「おい、兄ちゃん。
 ちょっと俺達とお茶しようぜ。」

いきなり馴れ馴れしく、一人の男に肩を組まれた。
周りの見るとニヤニヤ、と笑みを浮かべて麻生の周りを取り囲む不良達。

(これは絡まれているのか?)

最近、こういった事がご無沙汰だったので、変な新鮮味を感じている。
やっと日常に戻れたのだと、そう実感しているのだ。
いつもなら身体に刻まれた戦闘経験などを使い、一網打尽にするのだが、今回は気まぐれなのか路地裏まで付き合う。
周りの通行人はそんな麻生を見て、見て見ぬふりをするだけ。
せめて、怪我でもしないようにと祈るだけだ。
さて、不良の一人が麻生の携帯と財布を手に取り、調べる。
財布は言わずもがなお金やカード。
携帯はお財布ケータイなどの機能がしてあるかの確認。
まずは財布の中身を確認しようと、中身を開けると。

「な、なん・・だと・・・」

財布の中身を確認した不良が絶句している。

「お、おい。
 どうしたんだよ。」

別の不良が尋ねながら、同じように財布の中身を確認する。
すると、その不良も中身を見て唖然とする。
麻生の肩を組んでいる不良は二人の反応を見て、財布を渡してもらい確認する。
中を見るとお金が入っていなかった。
そう一銭も入っていない。
札も小銭もカードも一切入っていない、手にあるのは革で出来た財布のみだ。

「どういう事だよ、財布に金どころかカードすらないって普通はあり得ないだろ!」

ここは学園都市。
八割が学生なので、そのほとんどが財布を持っている筈だ。
何故なら、基本的には学生は働き、自分で衣食住を賄わないといけない。
今日のご飯を作るための買い出し。
勉強に必要な参考文書。
ふとした気分で、買いたくなった服やアクセサリーなど、財布には大なり小なりお金が入っている。
なのに、この男の財布にはお金が入っていない。

「携帯の方はどうなっている!?」

そうなると、お財布ケータイなどの携帯でお金を支払っている可能性が高い。
そう考えた不良は携帯を調べている不良に問い掛ける。
しかし、青ざめた顔で不良は答えた。

「こいつの携帯、メールと通話機能とか基本的な事しかできないようになってやがる。
 インターネットなんて繋げる事すらできねぇ。」

「お前、本当に学生か?」

本気で疑うような視線を麻生に送る。
無理もない。
学生なら財布には金は入れるしカードもいれる。
なのにレシートの一枚も入っていない新品同様の、財布がポケットの中に入っている。
携帯も何かしらの機能は使えるようにするはずだ。
インターネットにも繋げない学生は麻生だけかもしれない。

「必要な時にしか俺は金は入れない。
 その必要な時が余りにないだけの話だ。
 携帯も通話とメールなどの基本的な機能だけでも使えれば問題ない。」

くだらない事を口にするかのように、呆れた顔で話す。
それを平然と口にする麻生を見て、不良達はこいつは普通ではないと確信した。
ともあれ、この男を釣ったのは失敗という訳だ。
最後に残るのはこの無駄な時間を使わせた男に、ストレス発散を担ってもらうしかなかった。
それぞれ自分の得物を準備しようとした時だった。

「思い出した。」

一人の不良が突然口を開いた。
何やら麻生の顔を見て何かを思い出したみたいだ。

「こいつ、あの巨乳警備員(アンチスキル)の黄泉川とよく一緒にいる男だ。」

その言葉を聞いて全員が目の色を変える。
愛穂はスキルアウトの中でもかなり有名だ。
理由は二つ。
一つは愛穂がスキルアウトを捕まえる数が、他の警備員(アンチスキル)より多いという事。
もう一つはその身体だ。
女性から見ても羨ましいと思われるくらい美人だ。
男性から見れば性欲の眼差しを受ける事になる。
スキルアウトからすれば、尚更だった。
いつも自分達の邪魔をする警備員(アンチスキル)
それがあの愛穂で、その知り合いが自分達の目の前にいる。
警備員(アンチスキル)としての権限や訓練では、圧倒的にに不利だ。
だが、それも麻生を利用すればその壁をクリアできる。

「おい、携帯には黄泉川の電話番号は?」

「もちろんあるぜ。」

連絡手段も揃っている。
準備は万全だった。

「こいつを喋れないくらいに痛めつけて、黄泉川を脅迫すれば。」

「あの身体を、積年の恨みを込めて滅茶苦茶にする事ができるんだな。」

下衆な会話が不良達の間で交わされる。

「さぁ、お前には格好の餌に」

一番先頭に立っていた不良の男が、麻生の方に振り返った瞬間だった。
ドゴォ!!、という普通では耳にする事のない音が聞こえたのは。
気がつけば、麻生は先頭に立っていた不良の顔の位置辺りに拳を突き出していた。
代わりに、その男の姿はない。

「愛穂をどうするだって?」

スキルアウト達は知らなかった。
彼がスキルアウトの事を嫌っているという事。
そして、一番の原因は彼の目の前で愛穂を辱めようと口にした事。
彼が拳を握る理由は充分だった。
ちなみに、先頭に立っていた男は麻生の拳を喰らい、後ろの壁のコンクリートに顔面がめり込んでいる。
もちろん、能力で上手く調節しているので死んではない。
今度首を動かすのが非常に困難になるだけだ。
何が起こったかは分からないが、麻生が何かした事に変わりはない。
一人の不良が拳銃を抜き、麻生に向かって撃つ。
愛穂を脅迫するとか、そんな考えは既に頭にない。
発射された弾丸を麻生は手で掴み取る。

「避けたら流れ弾で、通行人に当たるかもしれないからな。
 返すぞ。」

掴んだ弾丸を親指で弾く。
それが能力によって、拳銃のような勢いで発射され、両肩両膝を貫く。

「あがぁ!!」

悲痛な叫び声と共に崩れ落ちる。
並外れた能力者である事を確認した他のスキルアウト達は、脱皮の如く逃げようとする。
それを許す麻生ではない。
ヒュン、と風を切る音が不良達の耳に聞こえた。
次の瞬間には、いつの間にか自分達の身体には糸が縫い付けられていて、さらにその糸は四方八方に張り巡らされて固定されている。
糸は縫いついた身体をちぎれるギリギリまで引っ張り、さらには身体に撒き付いた糸は身体にめり込んでいく。

「暴れるだけ自分の身体に糸はめり込んでいく。
 まぁ、じっとしていてもめり込んでいくんだがな。」

つまり、どうしようが目の前には絶望しかない。

「二度と愛穂に馬鹿な真似は起こさせない。
 これはお仕置きだ。」

「ま、待って!!」

「反省したから許してくれ、と?
 そんな口だけの言葉を信用すると思うか?」

ヒュン、ともう一度風を切る音が聞こえる。
一瞬の内に口や耳や目を縫い合わされた。
もちろん、両肩と両膝を貫かれた不良にも同じ様に縫っている。

「その姿でしばらく反省していろ。
 そうだな、一週間もすればその呪縛は解ける。
 身体を動かさずにじっとしていれば、糸もギリギリ骨までは到達しない。」

最後にそんな言葉を残して、裏路地から出ようとする。

「いやぁ~根性あるお仕置きだな。」

路地を出ようとした時、出口の方から声をかけられた。
その声のする方に視線を向けると、一人の男が立っていた。
額には白いハチマキを巻き、太陽が描かれたシャツを着て、その肩にはジャージがかけられている。
この季節には肌寒いであろう、短パンを履いた見た限り寒さを知らない子供だ。
彼の名前は削板軍覇。
学園都市に存在する七人の超能力者の第七位。
彼とは大覇星祭の開会式で知り合った?関係である。

「お前、麻生恭介だろ。」

「意外だな。
 てっきり忘れられていると思ったが。」

「お前の様な根性の持ち主を忘れる訳がない!」

力強く言い切る。
一〇月に入って、少しずつ寒くなってきているのだが、この男の前だと少し暑く感じた。

「さっきも言ったけど、根性入ったお仕置きだな。」

後ろで糸に縛られながら、呻き声をあげる不良達を見て削板は言う。

「ああいった根性なしの連中には、ちょうどいいだろ。
 これを機に根性を入れ直してほしいものだ。」

もしかしたら、削板はあの不良達を助けるかもしれない。
出来る事なら一週間はあのままにしたい麻生は、削板の好きそうな言葉を並べて、正当化しようとしている。

「うんうん、最近の子供達は根性がなくて困る。
 俺や恭介のように根性を入れて、ひたむきに前に進めばきっと根性のある子供達になるのに。」

「俺はお前ほどに根性ないけどな。」

「何を言う。
 恭介は俺以上の根性を感じるぜ。
 俺も根性入れ直して鍛えないと。」

勝手に勘違いされているが、どうでもいい事だと思いこの場から離れようとするが。

「ちょっと待ってくれ。」

後ろから削板に呼び止められて、手を掴まれた。
麻生はとてつもなく嫌な予感を感じた。

「さっき根性を入れ直すと決めたんだ。
 恭介もぜひ手伝ってほしい。」

「根性は自分の力だけで手に入れるモノだ。
 俺に頼っている時点で駄目だと思うぞ。」

考える限りの言葉を使って、何とか断ろうとする。

「でも、俺と恭介が一緒になって根性を磨けば、物凄い根性が出来ると思うんだ。
 俺は恭介にももっと根性を磨いてほしい。」

「まさか・・・」

「俺が今一瞬で考えた、『根性を磨きましょうメニュー』。
 これを一緒にやって、性根の腐った野郎どもに俺達の根性を見せつけてやろう!!」

力強く握りしめた拳を天に突き上げる。
これは逃げられないな。
諦めた麻生は流れに身を任せる。
削板は麻生の手を掴んで、根性を磨く為の場所まで凄まじい速度で移動する。
それについていく麻生を見て、削板はさらにテンションを上げる。

「すげぇぇぇ!!
 やっぱり恭介は男の中の男だ!!」

「あ~、ありがとう~。」

完璧に棒読みで言うが、削板は気がついていない。
削板の組んだメニューの内容は三日間ぶっ通しでそのメニューをやると言う、ふざけた内容だった。
最初の方は付き合っていたが、日が沈んた辺りで。

「軍覇よ。
 俺はお前の考えたメニューより、もっと根性が磨かれるメニューを思いついたぞ。」

それに食いつかない削板ではない。

「どんなメニューだ!?」

「内容はまず学園と全ての学区を走り、それを終わってからここに書かれているメニューをやる。
 これだけで根性はかなり磨かれる。
 俺が言うんだ間違いない。」

嘘くさい発言だが、それを削板はあっさり信用する。

「スタートはここからだ。
 そうだな、レースのように競争しようか。
 そうすれば、根性が試されるだろう。」

「いいな、最高に良いぞ!!」

「それじゃあ、よ~い。
 スタートだ。」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
 根性フルパワーぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

凄まじい速度で走って行く削板。
ちなみに麻生は一歩も動いていない。
走って行く削板を見て、紙とペンを創り、文字を書いて、その場にナイフで張り付けておく。
内容はこうだ。

『お前より早く着いて、メニューを終わらせた。
 俺はもっと根性を鍛えるために、この場を離れる。
 削板も自分の根性を磨いてくれ。』

如何にも削板が読んだら感動しそうな言葉を書いて、さっさとマンションに戻どる。
帰りながら麻生は思った。

(あいつに関わるのは二度と止めよう。)

そう心に誓うのだった。 
 

 
後書き
一話で終わらせると言ったな。
あれは嘘だ。

すみません。このまま書くと中途半端な所で終わりそうなので、短いですがきりの良い所で投稿しました。
次こそ、SS2巻は終わる筈・・・・多分。

感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。  
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