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鰹のたたき

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第二章

「法は破られんぜよ」
「破ったら殿さんに処罰されるぜよ」
「下手したら打ち首きに」
「流石に打ち首にならんでも牢屋に入れられるぜよ」
「そうなるぜよ」
「だから鰹の刺身は食えんぜよ」
「このままじゃどうするきに」
 彼等はこのことは受け入れるしかなかった、兎角法は破ることは出来なかった。それでだったのだ。
 彼等は必死に考えた、それでだった。
 ある者が周りに言った。
「刺身は駄目ぜよ」
「いや、それもう言うまでもないぜよ」
「おまん何言うちょる」
「そんなこと言って何なるぜよ」
「一体何の意味があるぜよ」
「だから生ものが駄目ぜよ」
 あくまでというのだ。
「焼いたらええぜよ」
「そうしたら殿さん何も言わんぜよ」
「全くのう」
「食ったらいかんというのは生ものぜよ」
「あくまで刺身のことぜよ」
「火を通したらいいきに」
「焼いても煮ても」
 こう言うのだった。
「それならいいぜよ」
「最近都で揚げるのもあるっちゅうが」
「まあ焼くか煮るかぜよ」
「どっちかぜよ」
「それぜよ、どれだけ焼くかは言われてないきに」
 ここでこの者はにやりと笑って話した。
「それぜよ」
「?どういうことじゃ」
「どれだけってどういう意味ぜよ」
「わからんこと言うのう」
「どういうことぜよ」
「だから表の方だけ焼いてじゃ」
 いぶかしむ周りの者達に笑ったまま話した。
「ちょっとのう」
「ああ、実は殆ど生か」
「ほんの少しだけ炙って」
「実は生か」
「刺身と同じか」
「殆どそうしたものにするんじゃな」
「そういうことぜよ」
 まさにというのだ。
「どうぜよ」
「それいいのう」
「ちょっと炙っても焼いたぜよ」
「生ものじゃないぜよ」
「それになるぜよ」
「ならいいぜよ」
「そこに少し叩けば」
 そうもすればというのだ。 
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