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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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少女の気付き

 
前書き
新しい職場が聞いてた話と違うところが多すぎて病み病みのためこの作品で現実逃避してます。
やりたいところだけやってるのでかなり飛び飛びですが、大目に見てください。いや、今までが事細かに表現しすぎだったのかもしれない← 

 
俺たちの何倍もの数がいる妖怪たち。その数は未だに増えているようで、洞窟の道を塞ぐのではないかというほどに溢れている。

「さぁ、百鬼夜行の始まりじゃ。喰らい尽くすがよい」
「召喚魔法!?」
「霊力だから召喚霊術でしょうか!?」
「色んな妖怪がどんどん出てくるよ」

なおも増え続けている妖怪の群れ。彼女の魔力・・・いや、霊力でここまでの数が作れるとは・・・もしかして相当高い霊力を持っているのか?

「なんて数だ」
「次から次へ生まれてくる」
「このままじゃ囲まれるわ!!」
「まずいよますいよ~!!」
「どうするナツ!!」
「決まってんだろ。全員ぶちのめす!!」

倒す以外に道はないと前へ突き進む俺たち。それを見ていたヨウコ素早く印を結んでいた。

「無駄じゃよ」

彼女の指示を受けたのであろう妖怪たちが一斉に襲ってくる。それを俺たちは一心不乱に倒していく。

「かかってこいぃぃ!!」
「こっちにはモンスター100体斬りの魔導士が二人もいるからな!!」
「もちろん!!やってやります!!」
「いや、あれと比べると一体一体はこっちの方が強い。油断するな」

次々に倒されていく妖怪たち。ただ、数も多ければ違う姿の妖怪が多いこともあり奴らにも得手不得手があるようで・・・

「きゃあああ!!」
「ルーシィ!!ぐおっ!!」

こちらの攻撃が効かない妖怪に当たってしまうと反撃を受ける場合がある。そして何よりもこの数の暴力。終わりが全然見えない。

「数が多すぎる!!」
「ならば・・・」
「おう」

広範囲に攻撃ができる魔法でエルザさんとナツさんが妖怪たちを一掃しようと試みる。彼らの力は言わなくてもいいほどに強いため周囲の妖怪は蹴散らせたのだが・・・

「まだまだ全然いるよ~!?」
「倒した数より生まれてくる数の方が多いわ!!」
「どうしようどうしよう!!」

最初よりもむしろ数が増えているのではないかと言うほどの大群となっている妖怪たち。こっちは人数が少ないため押し込まれてしまう。

「これぞ百鬼夜行・・・無限の霊術。百というのはな、数の多い例えでしかなくてな。私は無限に妖怪を呼び出せる!!」

この魔力が溢れているエレンティアだからこそなのか、術者であるヨウコの体力は下がっている感じがしない。

「これじゃキリがありません!!」
「なんとかならないんですか!?」
「こっちも頭数を増やすしかねぇな!!」

このままではただ消耗していくだけで突破口がない。すると、アクエリアスさんが何か思い付いたようでルーシィさんへ指示を飛ばす。

「ルーシィ!!持ってる鍵の星霊全員呼べ!!」
「そんなの無理だって!!」
「ここじゃ鍵がなくてもお前の魔力を使わなくても星霊が呼べる!!」

魔力が溢れすぎている世界。それのおかげで本来ルーシィさんが持っていないアクエリアスさんがここにいられるということは、どの星霊も呼び出せる状態にあるということ。そのことを彼女の言葉によって気付いたルーシィさんはすぐに行動に移った。

「そっか!!だったら今日はパーティね!!開け!!黄道十二門の扉!!」

それによって現れたのはルーシィさんが所有する星霊たち。なんかプルーまでいるけど、そこはあえて触れないでおこう。

「すげー!!」
「こいつは壮観だな」
「頼もしい」
「いくよ!!」

星霊たちの力を借りてより戦いを加速させていく俺たち。それによりわずかな隙が生まれたことでエルザさんが術者であるヨウコを倒すために動くのだった。

















第三者side

次々に妖怪たちを倒していくシリルたち。それを見ていた男は何を話すわけでもなく、静かにその姿を見つめていた。

「ずいぶん熱心に見ているね」
「・・・」
「そんなに気になるかい?」

後ろから話しかけられた彼は無視を決め込もうとしたが、あまりにも熱心に聞いてくる彼にため息を付きながら回答する。

「思ったより成長してねぇなと思ってな。ドキマギしてるよ」
「まだまだ成長期だからね、これからじゃないのかい?」
「だといいんだがな」

ガッカリとした様子でタメ息をついた彼は天を仰ぐ。すると、その後ろからもう一人の青年が現れたことに気が付くと、声をかける。

「あれ?あいつはもう行ったの?」
「うん。少し時間はかかってるみたいだけどね」
「ふーん」

自らが尋ねたにも関わらずまるで興味がないといった反応を見せる男を睨み付ける青年。ただ、それだけではないような異常なまでの殺意が彼の身体から発せられていた。

「そう睨むな、戦いたいならいつでもやってやる。また殺してやるけどな」
「!!」

その言葉に青年は怒り掴みかかろうとしたが、隣に並ぶ黒髪の青年が間に入り止める。

「落ち着け、今は僕たちは仲間なんだから」
「はい。すみません」

冷静さを取り戻すためにその場から離れていく青年を見送ると、黒髪の青年は男の方へと向き直る。

「今のは良くないよ、いくらなんでも」
「いいじゃんか、今は俺の方が偉いんだぜ?」

全く反省の色のない男を見て肩をすくめる青年。そんな彼の方を見向きもせず、男はさらに戦いの加速している地上へと視線を落とす。

「やっぱり時間がかかるねぇ。まぁ、どこにいるのか探すのも大変だからな」

舌を出しながらそう言った彼は水色の髪の少年をズームする。その戦う姿を見ながら、男は不敵な笑みを浮かべていたのだった。
















シリルside

妖怪たちを次々に凪ぎ払っていく俺たち。すると、突然目の前にいた妖怪たちが煙のように消えていくではないか。

「妖怪たちが・・・」
「消えてく」

何が起きているのかと思って辺りを見回すと、遠目に術者であるヨウコを倒したエルザさんの姿が目に入り、状況を理解した。

「助かったぁ」
「どうなることかと思ったわ」
「よかったね~」

危機を脱したことで安堵の表情を浮かべながらその場に横たわるエクシードたち。しかしそれは俺たちも同じで、消耗しているのが自分でもわかる。

「やったね、シリル」
「うん。頑張ったね」

手を差し出してくるウェンディとハイタッチ。星霊たちもこの戦いはかなり答えたらしく、全員ボロボロになっていた。

「そういえば姫、先程からナツさんの姿が見当たりませんが」
「え?」

それを聞いて辺りを見回すが、確かにナツさんの姿だけが見当たらない。あのレベルの妖怪に彼がやられることなど想像できないが、万が一のことを考えると全員がざわつき始めた。

「ナツ様ならマフラーをした茶釜を追いかけて向こうの方へ」
「茶釜!?MO・・・自分にはタヌキに見えましたが」

カプリコーンとタウロスの間で意見が別れているけど、とりあえず彼の後を追いかけることにした俺たち。その際ルーシィさんの魔力も限界だったこともあり、星霊たちには戻ってもらい、俺たちだけで彼が向かったと思われる方向へと走り出すのだった。


















「ナツー!!」
「いた!!あそこ!!」
「ナツさん!!」
「待ってください!!」

ようやく探していた彼の姿を見つけ駆け寄る。そのナツさんはマフラーを取り戻したらしく、上裸にマフラー姿と変態のようになっていたけど、誰も突っ込まないので俺もスルーしておく。

「お!!みんな!!いっぱいいた怪獣は倒したのか!?」
「怪獣って・・・」
「エルザが本体を倒したからな」

本当は妖怪なんだけど彼からすればどちらも一緒なのだろうと苦笑い。その俺たちの反応に気が付いていないのか、ナツさんはマフラーを見せびらかして楽しそうにしている。

「・・・で、そちらの方は?」

ナツさんと一緒にいた東洋の侍のような格好をしている男性。彼はウェンディに問われると、会釈してから自己紹介を行う。

「拙者スザクと申す。訳あってセレーネ討伐のためこの世界に召喚された」
「セレーネを?」
「召喚された?」

どうやら彼も本来はアースランドの住人らしく、こちらの世界の住人に呼び寄せられてきたらしい。そんな彼にナツさんは笑顔で答える。

「みんなは俺の仲間だ」
「仲間・・・」

彼は何か言いたげな表情を一瞬見せたが、すぐに真顔へと戻る。

「それよりお前、裸にマフラーって変態みてーだぞ」
「全裸の奴に言われたくねーよ」
「うおっ!!いつの間に!?」

俺と同じことを考えていたグレイさんが突っ込みを入れるが、彼はいつの間にかズボンもパンツも脱ぎ捨てていたらしい。それに気が付いたウェンディは顔を赤くして目を隠すが、妙な反応をする者がいた。

「ぷ・・・ぷくく・・・ぷ・・・く・・・全裸・・・ぷぷ・・・」

俺たちに背を向け小さくなりながら懸命に笑いを堪えているスザクさん。どうやらグレイさんが全裸なのがツボにハマったらしい。

「妙にツボに入っちゃってるんだけど」
「服を着ろグレイ!!」

いつまでも笑いが止まらないスザクさん。そんな彼にハッピーがさらに追い討ちをかけると、彼は地面を叩きながら爆笑している。

「と・・・ところでそなたたち。黒月山というのはここで合っているだろうか」
「さぁな」
「ちょっと地名までは」

ウェンディはともかくなぜかここの場所の名前を覚えていないナツさん。セレーネからの説明を聞いてなかったのかな?

「黒月山にセレーネがいると聞いて来たのだが・・・」
「それなら間違いねぇ」
「ここが黒月山ですよ」

最下層から登ってきたこの場所が黒月山のはず。そう思いグレイさんと一緒に答えると、スザクさんは深々と頭を下げる。

「拙者・・・討ち取ってきますれば」

そう言ってその場から去ろうとする彼をナツさんが止める。

「ちょっと待て!!そいつは俺たちの仕事なんだ」
「そなたたちは愉快な者だがそれはゆずれぬゆえ。モタモタしておれば妖精の尻尾(フェアリーテイル)に先を越されるやもしれず」
「「「「「!!」」」」」

なぜか俺たちがここにいることを知っている彼は敵対心を持っているみたい。なんだか面倒ごとになりそうなので、極力刺激しないように声をかける。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)?」
「うむ。我らのギルドの敵と聞いておる。炎の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)に黒髪の氷魔導士・・・赤髪の女剣士、金髪の星霊魔導士、小さい子供の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が二人に猫三匹・・・あ」

そこまで特徴を捉えていて俺たちが妖精の尻尾(フェアリーテイル)とすぐに気が付かない辺り、この人は天然なのかもしれない。だが、ようやくそのことに気が付いたようで空気が凍り付く。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)とはまさか。困惑」
「ちょっと待ってよ!!あたしたち別に敵じゃ・・・」
「ディアボロス」
「「「「「!!」」」」」
「それが我がギルド」

その名前を聞いた瞬間、以前の戦いが脳裏をよぎる。ということはこの人も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)

「あいつらの・・・」
「愉快なものたちなれど・・・我がギルドの仲間を傷つけた敵・・・覚悟」

彼が刀に手をかけた瞬間、エルザさんが剣を構えて立ち塞がる。さすがの反応速度を見せた彼女はその剣を受け止めたのだが・・・

「ぐあっ!!」

スザクさんの刀はそれを真っ二つにし、彼女の身体を切り裂いた。

「なっ・・・」
「エルザ!!」
「きゃあああ!!」
「お・・・お前!!」
「ウソだろ!?エルザが一撃で!?」

彼女が対処できないほどの太刀を入れてきたスザク。俺たちは倒れた彼女に駆け寄る。

「我が剣に反応した・・・だと?」
「ふざけんなよ!!」

不意打ちを咬ましてきた彼に怒りの炎を拳に纏った火の竜が向かっていく。

「よせ!!ナツ!!こいつは格が違う!!」

嫌な予感を感じ取ったグレイさんが彼を止めようと叫ぶが止まらない。でもナツさんは怒れば怒る程力を増すタイプ。もしかしたら・・・

ザンッ

淡い期待を抱きながら二人の方を見た俺だったが、スザクの攻撃はこの目で捉えられないほどの速さで彼の身体を切り裂いた。

「ナツー!!」
「いやああああ!!」
「ウソだろ!?」
「こいつ・・・ヤベェぞ」

鮮血を吹き出しながら地面へと伏せるナツさん。スザクは臨戦態勢には見えないが、その構えには隙がなく近づくことができない。

「我がギルドの仇。切り捨て御免」
「おやおや、これは邪魔をしてしまったかな」

そんな俺たちの元に新たに現れたのはセレーネ。その後ろにはガタイのいい女性と凛した姿の女性が付いてきている。

「セレーネ!!」
「どちらが先に私を倒すなどという物騒な話が聞こえたものでな。やれやれ天下の五神竜が狩りの獲物とは全く・・・面白くない話よのぅ」

明らかに殺意を秘めているセレーネの目。それに対しスザクは正体し、戦う構えに入る。

「ナツとエルザのケガがひでぇ!!引くぞ!!」
「はい!!」
「速く!!」

二人が睨み合っている隙に負傷した二人を連れてその場から離れるために走る。だが、それを逃がすまいとセレーネの後ろにいた女性二人が後ろから追いかけてくる。

「あいつら追いかけてくるよぉ!!」

見た目の割に動きが速い二人を振り払うことができない。ただでさえけが人を連れている今の状況では、追い付かれるのは時間の問題か?

「あれは!!」
「え?」

そう思っていた矢先、目の前に水でできた輪っかが現れる。そこから顔を覗かせたのはエレンティア出身のエクシード・トウカだった。

「ハッピー様!!皆様!!こっちです!!」
「トウカ~!!」

彼女を見るとフニャけた表情を見せるハッピー。彼の隣を走っていたシャルルは不機嫌そうにしているけど、ここで彼女が来てくれたのはありがたい。

「飛び込め!!」

全員でその空間に飛び込み出口を塞ぐ。俺たちが入ったそこは和室のような一室で、ヨボヨボの老婆と巫女のような服を着ているファリスさんがいた。

「なんじゃなんじゃこやつらは~」
「皆さん!!」
「とにかくベッドを貸してくれ!!」
「あと薬や包帯も!!」
「あとは私たちが治療します!!」
「急いでください!!」

何がなんだかわからない老婆は放置してすぐに治癒の準備にかかる。横でガタガタ騒いでいる老婆をグレイさんが一喝して黙らせておくと、突然襖が力任せに開く音がする。

「たのもぉー!!」

そう言って入ってきたのはさっき振り切ったはずのセレーネの手下二人・・・って・・・え!?

「そんな・・・」
「なんでここに~!?」
「つけられたの!?あんた」
「そんなはずは・・・」

なぜここにいるはずのない二人がいるのか訳がわからない。すると、それに答えるように大きな身体の女性が鼻を擦る。

「私は鼻がよくてね」
滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なの?この人も」
「いいえ・・・それは違うみたいです」

彼女の鼻がいいのは生まれ持ってのものなのだろう。しかし、今はここを何とかするのが先決だ。

「どうします?グレイさん」
「ナツとエルザが重体なんだ、俺たちでやるしかねぇ」
「うん」

そう言って立ち上がったグレイさんとルーシィさん。すると、夜空に浮かぶ月が見たこともないほど大きく光輝いている。

「何事じゃ!?」
「月があんなに大きく!!」
「こんなこと・・・」

何が起きているのかと困惑している俺たちだったが、目の前にいる女性二人は笑みを浮かべていた。

「あらあら、どこかの誰かさんがセレーネ様を本気にさせてしまったみたいですわ」
「デカさこそ正義!!」

どうやらスザクと対峙しているセレーネの影響により月の大きさが変わっているらしい。月の神と評されるだけあって、その力が及んでいるのか?

「セレーネ様の宴も良き頃合い」
「ここらで一気呵成片付けてくれようぞ」

恐らくセレーネ優勢で進んでいるであろう二人の戦い。その流れをここでも生かそうとしている二人は臨戦態勢に入っている。

「リベンジマッチってわけね」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)に二度の敗北はねぇからよぉ」

俺とウェンディは二人の治療で動けないためここは彼らに任せるしかない。それにしてもかなり深いところまで太刀が入り込んでいたようで、なかなか治癒が完了しない。

「どう?ウェンディ」
「やっぱり時間がかかりそうだよ」

ウェンディでも時間がかかるとは、あのスザクって人相当高い剣の技術を持っているのかもしれない。もしかしたらあの人がディアボロス最強の魔導士ってことなのかな?

















第三者side

カッカッカッカッ

長い廊下を早歩きで進む赤い髪をした青年。その表情は怒っているのか何も考えていないのかわからないほど変わらない。

バタンッ

その勢いのまま扉を殴るように開ける。部屋の中ではイシュガル大陸において高い実力を保有している面々が慌ただしく動き回っている。

「おかえり、カミュ」
「まだ連絡取れないのか?」
「まぁ・・・あの子たちじゃねぇ」

お手上げとも取れるような反応を見せるリュシー。そんな彼女を見て青年はタメ息を付き、頭をかく。

「カミューニ殿、エルザ殿たちを呼び戻した方が良いのでは?」
「いや・・・そこまで深刻ではないだろう」

歯切れが悪い彼にジュラは煮え切らないようで珍しく不機嫌さを隠そうとしない。他の面々も手元にある資料に目を落としながら、眉間にシワを寄せていた。

「もしこの情報が本当なら、大変なことだぞ」
「全てのギルドに通達するべきじゃ!!おおう!?」

ハイベリオンもウルフヘイムも苛立ちを隠せない。だが、それにウォーロッドだけは冷静さを失っていなかった。

「いや・・・下手な動きを見せてはすぐにでも襲撃されかねない。ここは今しばらく状況を見守るべきじゃ」
「事が起きてからでは遅いんじゃぞ!!ウォーロッド!!」

険悪な雰囲気に全員の表情が暗くなる。そんな中で、赤髪の青年だけは違うことを考えていた。

「リスクを背負える人材が必要だな」

誰に言うでもなくそう呟いた彼は、すぐに横にいたメルディにメモを渡す。それを受け取った彼女は一瞬顔を強張らせたが、すぐに部屋から出ていった。

「もっと戦略を練ろうぜ、冷静にな」

立ち上がり全員の視線を集めてから静かな口調でそう告げる。それによりヒートアップしていたその部屋は一時的に落ち着きを取り戻したのだった。

















シリルside

「ああああああ!!」

外から聞こえてくる女性の悲鳴。それは仲間たちの勝利を教えるものだった。

「倒したぁ!!」
「やったぁ!!」
「やっぱりすごい・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)

セレーネの手下たちを倒したことで盛り上がる巫女さんたち。だが、その幸せな時間はそう長く続かなかった。

ゴゴゴゴゴ

座っていた俺たちでもわかるほどの大きな揺れ。それを感じ取った巫女さんたちは大騒ぎしていた。

「これは・・・」
「い・・・いかんぞ!!エレンティアの魔力が暴走しておる!!」
「「ええ!?」」

どうやら本気になったセレーネをスザクは止めることができなかったらしく、膨らみ続けていた魔力が限界点に達したらしい。それはもう、白滅(ホワイトアウト)が使えるファリスさんたちでもどうしようもないほどに。

「ワシらは代々この世界の魔力の調和のために余分な魔力を白滅(ホワイトアウト)・・・消しておった。だがセレーネは時空を渡り歩きより多くの魔力のこの世界に集めていく」
「何のためにそんなこと・・・」
「奴の目的はわからん。だが、このままではエレンティアは確実に滅ぶ。魔力の膨張による大爆発によって世界が消滅する」

大巫女さんがそう言うと、まるでそれを待っていたかのように地面から生え出てくる巨大な手。しかもそれは一つではなく、至るところから生えているように見えた。

「なんて数の"手"じゃ・・・」
「もう終わりだ・・・」
「世界が終わる」

異常な光景に涙を流す巫女たち。その後ろでトウカやファリスさんがこの世界からの脱出のための話をしているが、ウェンディは何かに気付いたような顔をしている。

「ウェンディ?どうしたの?」
「シリル、この光景・・・見覚えない?」

突然そんなことを言われて頭をフル回転させる。確かに似たような光景を見たような気もするけど、それが何だったか思い出せない。

「なんだっけ?」
「フェイスだよ。アースランドのフェイス!!」
「あぁ!!」

世界から魔力を消す評議院が保有していた兵器。エレンティアにおける手は魔力膨張の象徴として出てきているけど・・・

「それが関係あるってこと?」
「わかんない・・・でも、何か関係あるかも」

ウェンディの中で何か引っ掛かる点があるのかもしれない。それが何かはわからないけど、彼女のその気付きはもしかしたらこの状況を打破できるものかもしれない。

「ダメ!!水の翼(アクアエーラ)は使えない!!」
「魔力が膨張しすぎて空気が圧迫されてるんだ!!」
「神様・・殿様、大白巫女様どうかお助けを!!」
「最後のはあんただろ!!落ち着け!!」
「落ち着いてられるかぁ!!この世界が消滅するんじゃ!!」

大混乱に陥っているみんな。このままではウェンディが何かに気付く前に終わってしまう。

ドンッ

喧騒の渦に巻き込まれていく人々を一瞬で黙らせるほどの大きな音。それは起き上がった青年が畳を叩いたことにより生まれたものだった。

「そんなことはさせねぇ」
「セレーネを討てばよいのだろう」
「俺たちが止めてやる!!」

致命傷になりかねなかった傷が癒えたことにより目覚めた二人の妖精。彼らの復活を受け、俺たちはすぐさま動き出した。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルになんか活躍させようかとも思いましたが、特に思い付かなかったため端所る形になりました。
たぶん次でエレンティアはおしまいかなと思います。展開が早すぎてたぶんまもなく追い付きます笑 
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