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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第33話 母と嫁

「正宗に許嫁が出来たとお義父様に文をいただいた時は本当に驚いたわ。父上も凄く驚かれて、一時は政務を放って洛陽に行こうとしていたのよ」

母上は私と麗羽が許嫁に成った報せを受けた時の話をしてくれました。

今、私達は私の実家の屋敷の中庭で、お茶会を開いています。

久しぶりの我が家は良いです。

「あなた達の馴れ初めを聞きたいわ。話をしてくれるでしょ」

母上はニコニコと微笑んで、私と麗羽と揚羽の顔を順に見ました。

「今日は正宗に聞くより、麗羽ちゃんに聞こうかしらね。その次が揚羽ちゃんね」

私が母上に何か言おうとしたら、母上は私を無視しました。

「正宗。あなたは少し黙っていなさい。あなたに聞いてもどうせ肝心の所を話してくれないでしょ。早く麗羽ちゃん話して頂戴」

「え、はい。お義母様、正宗様とは・・・。食堂にて暴漢に襲われた処を助けていただいたのが切っ掛けでございました」

「ふふふふ。それで、それで」

母上は口元に手を隠し、ニヤニヤして麗羽の話に耳を傾けています。

その後、いろいろな話を麗羽に根掘り葉掘り聞いていました。

揚羽、斗詩、凪、沙和、真桜は麗羽の話に興味を持ったのか母上と一緒になり話に加わっていました。

猪々子は麗羽の話には興味を示さず、お菓子を黙々と食べていました。

猪々子らしいなと思っていると、母上は麗羽から揚羽に目標を変えたようです。

「麗羽ちゃんからは十分に聞いたわ。次は揚羽ちゃんの番よ」

「お義母様、私の番ですか?私と正宗様の馴れ初めを聞かれても面白くないと思います」

揚羽は突然、話を母上に降られても動ずることなく淡々と話しています。

「それはあなたがそう思っているだけで、私も同じとは限らないと思うわよ」

母上は揚羽のジャブを軽く受け流し、話をするように促しました。

「お義母様がそう仰るなら、分りました」

「早く聞かせて頂戴」

母上は揚羽の話をワクワクした表情で聞いていました。

私と揚羽の馴れ初めは面白いものとは言えないと思います。

案の定、揚羽の話を聞いていた母上は段々、つまらないと思ったようです。

「正宗。綺麗な二人を妻にした割に、馴れ初めが地味すぎよ。もっと、熱く燃えるような恋愛をしていたのかと想像していたのに・・・・・・。だいたい何なの。麗羽ちゃんと出会って以来、ずっと二人で文武に励んでいたなんて母上は悲しいわ。甲斐性の無い正宗に付き合う麗羽ちゃんが健気で可哀想すぎる。揚羽ちゃんとの出会いも微妙よね。引きこもりの彼女を自分に仕官するように熱心に説得する正宗に惚れたなんて・・・・・・。揚羽ちゃん。ごめんなさいね。揚羽ちゃんは何も悪くないわ。悪いのは正宗」

母上は私達の馴れ初めを好き勝手に言いました。

「母上が聞きたいと仰ったのです。私達は別に話したくなどありませんでした。当人同士が納得しているのですから良いでしょう」

「正宗様。お義母様にそんなことを仰しゃってはいけませんわ。私はお義母様に私達のことを聞いて戴けて本当に嬉しいですわ。お義母様。私は正宗様と文武に励んで居いたことを苦と思ったことは一度もございませんのよ。恥ずかしい話ですが、私は正宗様にお会いするまで、馬鹿でしたの。周囲から白い目で見られていたことすら気付いていませんでしたの。その中で、正宗様はいつも私のことを思って頑張ってくださったのです。私はそんな正宗様が大好きです」

麗羽は恥ずかしそうに頬を染めながら母上に自分の気持ちを伝えていました。

「お義母様。私も正宗様との出会いをつまらぬものとは思いません。正宗様は私に希望を与えてくださいました。私の周囲に近づく者は私を利用しようとする者達ばかりでした。その中で、正宗様は命を賭してもお前が欲しいと私に短剣を差し出されました。それ迄、正宗様のように純粋な気持ちをぶつけてきた方はいませんでした。私はこの方とずっと一緒に居たいと思いました。だからこそ、私は仕官を求められましたが妻にしてくださいと正宗様に要求いたしました」

揚羽は普段の淡々とした態度ではなく、感情の篭った表情で母上に自分の気持ちを伝えていました。

「ふふふふ、二人とも正宗のことが好きなのね。正宗は果報者ね。正宗。二人を必ず幸せにしなさいね。二人を不幸にしたら母上は許しませんからね」

母上は唐突に麗羽と揚羽の言葉を聞いて、嬉しそうに微笑んでいます。

「麗羽さんと揚羽さん。正宗のこと頼みます。この子は一人で何もかも抱える悪い癖があります。私や夫には言えないことでもあなた達になら素直に話せるかもしれない」

母上は麗羽と揚羽に頭を下げて、私を頼むと言いました。

まだ、婚礼は先なのに今言う事でもないように思います。

麗羽と揚羽は母上の突然の行動に驚いています。

「お、お義母様。頭をお上げください。もとより私は正宗様をお支えするつもりです。私の一番大切な方ですもの」

「お義母様。麗羽殿の仰る通りです。私達は常に正宗様と共にあります。正宗様に嫌われようと離れるつもりはございません」

二人とも神妙な面持ちで母上に応えていました。

「本当に良い子達ね。正宗には勿体ない位・・・・・・」

母上は麗羽と揚羽を見つめながら言いました。

「麗羽ちゃんと揚羽ちゃん。今日の夕飯は一緒に作らないかしら。正宗の好物も知りたいんじゃない」

母上は二人に夕飯を一緒に作らないかと誘っています。

「是非、参加させてください」

「正宗様の好物とは興味深いです。私も参加させてください。料理は得意ではないので、ご指導お願いいたします」

母上も麗羽と揚羽に打ち解けているような気がします。

母上と二人が仲良くなってくれて、何か嬉しいです。

私は母上と麗羽と揚羽を交互に見ていると自然に微笑んでいました。
 
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