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第二章
「ここは黙っとれ!」
「えっ・・・・・・」
「このままいくんや」
強い声でさらに言った。
「ええな」
「ですがここでは」
「ええんや」
こう言ってだった、鶴岡はそれ以上は言わなかった。
そして実際にだった、南海はこのピンチで崩れ試合に負けてしまった。杉浦は試合に負けたのを観てこの試合マスクを被っていたチームの主砲である野村克也に言った。
「なあ、僕があそこで出てたら」
「お前やったら抑えてたわ」
野村は確かな声で答えた。
「間違いなくな」
「そやあ、何で監督はあそこで僕を投げささんかったんや」
杉浦は全くわからなかった、だが。
着替え終わって球場を後にしようとすると球団のスタッフに呼び止められた。
「監督が?」
「はい、これから一緒にです」
「飲もうとですか」
「言われてますが」
「わかりました」
一言でだ、杉浦はスタッフに答えた。
「それでは」
「はい、それでは」
「今から行きます」
鶴岡のところにというのだ。
「そうします」
「では」
こう話してだった。
杉浦は鶴岡と共に東京のある居酒屋においてだった。
共に飲み酒を飲みはじめた、鶴岡は日本酒を飲んでいたが杉浦はビール党だったのでこちらを飲んでいた。
その時にだ、鶴岡は杉浦に話した。
「スギ、あそこでお前を出せばな」
「ピンチだったので」
「それでお前も言うたな」
「そうでした」
杉浦は真面目な顔で答えた。
「ほんまに」
「その気持ちはわかる、しかしな」
「それでもですか」
「あそこでお前が投げたら勝ってたかも知れん」
「僕は絶対に抑えます」
杉浦は強い声で答えた。
「どんな時も」
「その気構えやしな、けどお前が今日投げてな」
そうしてというのだ。
「後どうなる」
「どうなるといいますと」
「明日からわし等は大阪に帰るやろ」
鶴岡は杉浦にこのことを話した。
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