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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第86話:お説教?あなたが!?


キャロがヴォルテールを戻した後、俺はヴィータとともに倒れている3人の
ところへと文字通り飛んで行った。
そして、3人とも大きな怪我もせず無事であることを確認すると、
ゆっくりと地上に降りてくるフリードを見上げた。
フリードから降りてきたキャロに俺は駆け寄る。
そして、ニコニコと笑っているキャロにの頭に拳骨を落とした。

涙目で俺の方を見上げるキャロに向かって俺は怒鳴りつける。

「キャロ!いくらなんでもやり過ぎだ。これは訓練なんだぞ。
 あいつらを殺す気か!?」

「・・・すいません。
 でも、ヴォルテールさんにお願いして、加減はしてもらいましたよ」

「当たり前だ!」

俺が声を荒げると、キャロは肩をびくっと震わせる。

「う・・・すいません・・・。もう、しません」

「判ればいい。あと、3人にはきちんと謝っとけよ」

「・・・はい」

キャロはさすがに反省したのか、肩を落としてうなだれていた。

「しかし、ヴォルテールを安定して呼び出せるようになったのか」

少し表情を緩めてキャロに尋ねると、キャロはころっと表情を変える。

「はい!ルーテシアさんの白天王と戦ってもらったあとに
 いろいろお話したら、気に入られちゃったみたいで・・・
 今ではすっかり仲良しです!」
 
そう言ってキャロは笑顔を浮かべる。

「そうか。でも、アレを呼び出すのは本当に必要な時だけにしとけよ」

「はい。気をつけます」

真面目な顔で頷くキャロの頭を少し乱暴に撫でると、
未だに倒れたままの3人を介抱するヴィータの方を振り返った。

「ヴィータ。アースラに戻ってシャマルを呼んで来てくれ。
 大丈夫だとは思うが念のためな」

「わかった」

ヴィータはそう言ってアースラへと飛んだ。



「やり過ぎちゃって・・・ごめんなさい」

ヴィータがシャマルを連れてきてしばらくしてから、
目を覚ましたスバル達3人に向かってキャロが頭を下げる。

「まあ・・・いいんじゃない」
肩をすくめて言うのはティアナ。

「いいよ。使えるものはすべて使うのが戦いってものだろうし」
キャロに向かって微笑みながら言うエリオ。

「いいよいいよそんなの。それよりやっぱり凄いね、ヴォルテール」
感心したように言うのはスバル。

3人ともキャロがヴォルテールを召喚したことはあまり気にしていないようだ。

「3人とも悪かったな。今回の件は俺の監督不行き届きだ」

俺はそう言って3人に向かって頭を下げた。
それに対して3人が口を開こうとするが、その前にシャマルが俺に向けて
鋭い目線を送る。

「まったくね。こういうことにならないようにゲオルグくんやヴィータが
 いるはずなのよ。金輪際こんなのは無しにしてもらいたいわね」

腰に手をあてたシャマルの口から強い調子で放たれた言葉に
俺やヴィータは身をすくめる。

「まあ、今回は大した怪我も無かったからいいようなものの・・・」

「悪かった!2度とこういうことにはならないようにする!」

このままではくどくどと説教されそうな雰囲気だったので
俺はそう言ってシャマルに向かって勢いよく頭を下げた。
そしてその勢いのままスバル達の方に向かって振り返る。

「と、いうことで本日の訓練はこれにて終了!解散!!」

俺はそう言うとそそくさとアースラの方に足を向ける。
すると、後ろから制服を引っ張られた。
見ると、キャロが俺の顔を見上げている。

「どうした?キャロ」

「えっと・・・あの・・・」

キャロはもじもじしてなかなか話そうとしなかったが、
やがて意を決したように俺の目を見た。

「ご褒美・・・もらえるんですか?」

「は!?」

俺は一瞬キャロが何を言っているのか理解できずに固まる。
が、すぐに訓練を始める前にそんなことを言ったのを思い出した。

「そうだな・・・。ま、いいぞ。約束だしな」

「本当ですか?ありがとうございます!」

キャロは嬉しそうに笑うとペコリと頭を下げる。

「で、何が欲しいんだ?」

「あの・・・前から欲しかったお洋服があったんですけど、
 いくつかいいなぁって思うのがあって・・・」

その時、キャロの背後に回り込んだティアナが俺に目で合図を送ってきた。
見ると、エリオの方を指さしている。

(ははーん。そういうことか・・・)

俺はティアナに向かって了解というサインの代わりにウィンクすると、
キャロの肩に手を置く。

「なあキャロ。さすがにいくつもは買ってやれないから、
 今度の休みにでもエリオに選んでもらってくれ。これで足りるか?」

俺はそう言って、何枚かの紙幣をキャロに手渡した。

「あ・・・はい。ありがとうございます」

キャロは呆気にとられたような顔で俺を見上げる。
俺はキャロにむかってひらひらと手を振ると、アースラに向かって歩き出した。

アースラのハッチに上がるスロープを上っていると、
後ろから追いかけてくる足音が聞こえてきた。
その足音の主は俺の横に来ると俺のペースに合わせて歩きはじめる。

「ありがとうございます。察してくださって」

俺は隣を歩くティアナを一瞥すると再び目線を前に向ける。

「別に構わないよ。でも、余計なお節介ってことはないか?」

「2人とも満更でもないみたいですよ。早速次の休みに出かける
 約束をしてましたし」

「ふーん。若いってのはいいねぇ・・・」

俺が遠い目をしながらそう言うと、ティアナがクスッと笑う。

「ゲオルグさんにはなのはさんがいるじゃないですか」

「そう言う意味じゃなくって、初々しくていいなと思ってさ」

「ゲオルグさんにだってあんな時期はあったんじゃないんですか?」

ティアナの問いに俺は自分が10歳のころを思い出す。
そして首を横に振った。

「いや。俺があいつらの歳のころはもうかなりスレてたかな」

「スレてた・・・ですか?」

ティアナは俺の言葉に首を傾げる。

「そう。当時の俺は勉強だけはできたから飛び級してたしね」
 
そうこうしているうちに俺達は副長室の前まで来た。

「じゃあな、ティアナ。今日は悪かった」

「いえいえ。それでは失礼します」

軽く頭を下げてからフォワード隊の待機室の方に向かうティアナの背中を
見送ると、俺は副部隊長室に入った。



午後は、昼食後すぐに隊舎再建工事の打ち合わせで本局に出かけ、
アースラに戻ってきたときには、もうすっかり夜になっていた。
艦内の食堂で少し遅い夕食を食べていると、向かいにはやてが座った。

「お疲れさん、ゲオルグくん」

「ん、お疲れ」

「今日は訓練でやらかしたらしいやん」

俺ははやての言葉に思わずむせてしまう。
見るとはやてはニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべている。

「・・・誰から聞いたんだよ」

「シャマルから聞いたんよ。めっちゃ不機嫌やったよ」

「・・・しばらく医務室には近寄らないようにする」

「それが賢明やと思うわ。ところで」

そう言うとはやての顔が真剣な表情に変わる。

「隊舎再建工事の方はどう?うまくはかどってる?」

「今日打ち合わせに行って来たんだけどさ。ちょっとうまくないな」

「そうなん?」

はやては心配そうに顔を曇らせる。

「うん。はやても知っての通り、管理局全体の組織体系を見直す
 動きがあるだろ。その煽りで6課が解散したあとの隊舎の使い道についても
 考え方が二転三転しててさ。とりあえず建物の外観は今までと同じにする
 ってことしか決まらなかった」

「そうなんや。組織の話が決まらんと隊舎の仕様が決まらんのでは
 時間がかかりそうやね」

「そうなんだよ。困ったもんさ」

「とはいえいつまでも再建工事を始められへんのは困るよ」

「判ってる。だから今後のことは考えずに元の隊舎をそのまま
 建てなおすことになりそうだ」

俺がそう言うと、はやては露骨に表情を曇らせる。

「なにそれ、しょうもない」

「しょうがないだろ。一応もとの隊舎は標準的な地上部隊の隊舎構成だし、
 悪くない案だと思うぞ」

「まあ、そっか」

はやてはそう言うと、手元のグラスの水をぐいっとあおった。

「ところで、事件の捜査のほうはどうなってんだ?」

俺がそう訊くと、はやては眉間にしわを寄せる。

「フェイトちゃんたちが頑張ってくれてるけど、全貌はまだまだ見えへんね。
 スカリエッティは事件に関する限り完全黙秘やし、
 戦闘機人も肝心なことを知ってそうなんは軒並み非協力的。
 何人か協力的なんはおるからそこから得た断片的な情報を
 組み合わせてるとこ」

「ゲイズ中将は?」

「あっちは素直やね。もともと、世界を守るためにやむなく・・・って
 感じで手を染めたようなところがあるから。
 にしても、規模が大きすぎてまだまだ何がなにやらさっぱりよ」

「そっか・・・。そういえば、戦闘機人ってこの後どうなるんだ?」

「捜査協力を拒否した奴は軌道拘置所送り確定やね。
 協力的なんでも社会的常識を知らん奴ばっかりやから、
 何カ月か何年かはわからんけど更生プログラムを受けて、
 その後は管理局にご奉公の身の上やろうね」

「ま、そんなとこだろうな」

「気になるん?」

はやてはそう言って俺の顔を覗うように見る。

「まあ、それは・・・な」

「ほんなら、明日ちょっと私とドライブでもどう?」

はやてはそう言って柔らかな笑顔を浮かべる。

「はあ?」

「協力的な戦闘機人からはほぼ証言を取り終えたから、
 もう更生プログラムが始まってるんよ」

「そうなのか?」

「うん。そやから、気になるんやったら明日にでも見に行ってみる?」

「そうだな・・・行こうか」

「わかった。ほんなら10時に出よか」

「了解。車は俺が出すよ」

「頼むわ。ほんなら、お休み」

「おう、また明日な」

はやては立ち上がって食堂を出て行った。

(戦闘機人・・・か。どんな連中なんだろ)

俺は急に決まった明日の予定に思いをはせながら、少しさめてしまった
夕食に再び手をつけ始めた。

 
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