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仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
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第三話『居眠りにご注意』

 ある日の夜、一人のタクシー運転手は鼻歌を歌いながら客を探すために夜の公道を走っていた。
 「♪〜」
 運転手の気分は好調になる。しかし次の瞬間に酷い睡魔が運転手を襲う。そして、運転手はそのまま意識を失い前方の車両に追突してしまうのだった。

 『続いてのニュースです。都民の移動の足が不安になります。昨晩、加茂野橋市を走行中のタクシーが前方の車両に衝突するという事故が発生しました。運転していた運転手は、「突然睡魔が襲い、意識を失っていた」と供述し、加茂野橋警察署は発表しました。都内では同様の事件がすでに八件発生しており、何れもバスや電車など、都民の生活に欠かせない移動手段での事故のため、一部労働組合からは働き方改革の失敗ではないか、との見解も出ています。』
 翌日、昨晩の事故はニュースの話題となっていた。
 「最近多いっすね、アニキ。」
 霞のジョーはテレビを消しながら言う。
 「そうだな。仕事の疲れは無自覚のうちに溜まるものだから、それが限界を超えて意識を失うんじゃないか?ニュースを見ていると、事故は全部夜に起きているみたいだし。」
 光太郎は冷静に話す。
 「お義兄ちゃん、随分変わったね。昔なら、すぐにゴルゴムの仕業だと疑っていたじゃない。」
 杏子は光太郎がゴルゴムと戦っていた頃を思い出しながら言う。
 「今の世の中、そう安安と言えないよ。すぐに疑えば、『レッテル貼りだ』って批判されるし、『ソースはどこ?』って笑われたりもするし。昔とは価値観も違うんだ。」
 光太郎は現実的なことを言う。
 「なんか、そう聞くと嫌な時代になりましたね。何が信じられることで、何が嘘っぱちで、疑い合わなくちゃいけないなんて。」
 霞のジョーはため息を吐く。
 「悪いことばかりではない。それだけ人々が、情報に価値や意味を見出したんだ。昔は何でも信じすぎていた部分もある。無論、最初から全部を疑うのも間違っている。だが、疑わないから騙されて悪意に飲み込まれることだって少なくなかった。世の中、いい部分と悪い部分は必ずある。昔だって、全部が良かったわけではないだろ?」
 光太郎は強く力説した。
 「確かに、それもそうっすね。」
 霞のジョーは納得する。
 「それに、情報を集めやすくなったから見えてくるものもあるわ。」
 杏子は以前カブトムシ怪人の写真を投稿したアカウントのプロフィールを見せる。しかしそのプロフィールは、すでにアカウントが削除された跡であった。
 「あのアカウント、捨てアカだったみたい。多分、最初からお義兄ちゃんを誘うために作ったんだと思う。」
 投稿頻度とアカウント削除の速さから、杏子は推測する。
 「なあ、捨てアカってなんだ?」
 「捨てアカ、正しくは捨てアカウント。SNSで特定の目的のために本来のアカウントとは別に作成したアカウントで、その目的が終われば削除して証拠を消すアカウントのことよ。」
 状況がわかっていない霞のジョーに杏子は説明する。
 「ごめんみんな、気になることがあるから、ちょっと出ていくけど、すぐ戻るから店番を頼んでいい?」
 光太郎は立ち上がる。
 「行ってらっしゃい光太郎さん。」
 克美は笑顔で送り出す。
 「行ってきます。」
 光太郎は自家用のバイクに乗り事故現場に向かう。

 現場にたどり着いた光太郎は不審なものが落ちていないか確認するが、気になるものを見つけることはなかった。
 (やはり思い過ごしなのか、実際仕事疲れがたたって不注意を招いただけの可能性も十分にあるが…)
 光太郎は思考を張り巡らせながら辺りを見渡している。すると、ある異変に気づく。
 「この匂い、薬品か何かか?」
 光太郎は改造人間の優れた嗅覚を頼りに、何らかの薬品の匂いを発見する。
 「間違いない、ゴルゴムであるにしろ、そうでないにしろ、何者かが意図的に薬品を使って眠らせていたんだ。」
 光太郎は事故が意図的に引き起こされたものだと確信する。その時、光太郎の背後から何かか突撃してくるのを光太郎は察知し、それを避けると目の前には鹿の子草の特徴を持つネオゴルゴム怪人、カノコソウ怪人がいた。
 「やはりゴルゴム、お前達の仕業だったか!」
 光太郎はすぐに体勢を立て直す。
 「変身!」
 光太郎は瞬時にバイオライダーへ変身する。
 「ショオオオオ!」
 カノコソウ怪人はバイオライダーに掴みかかろうとするが、バイオライダーは軽々と回避する。
 「そこだ!」
 バイオライダーは得意の蹴りを放つが、カノコソウ怪人はその足を掴むと口から霧状の物体をバイオライダーに吹きかける。
 「グッ!」
 咄嗟のことに対応できず、バイオライダーはその霧状の物体を吸い込んでしまう。
 「そうか…匂い…の正体は…こいつの…」
 バイオライダーは眠気に打ち勝つことができず、眠りについてしまい、カノコソウ怪人の逃亡を許す隙きを与え、霞のジョーが駆けつける頃にはバイオライダーの意識は完全に途切れていた。

 ゴルゴム神殿跡地を作り変えたネオゴルゴムの拠点に三神官とカノコソウ怪人、そしてその隣に二重代後半と見られる男性がいた。
「よくぞカノコソウ怪人の毒花粉の力を強めてくれた。素晴らしい調合能力ではないか、柿坂よ。」
 リシュナルはカノコソウ怪人を強化した薬剤師、柿坂を評価する。
 「全ては、カノコソウ怪人様の性質あってのものです。」
 柿坂はカノコソウ怪人の能力を評価する。すると、
 「君みたいな鼻つまみ者が、どうしてこの神聖な場所にいるのだ?もしかして、怪人の実験台になりに来たのかな?」
 柿坂をバカにするような態度を見せる五十代前後の男性が現れる。
 「麻木、よくもそんな事を言えたな!お前があんな下らないデマを流したおかげで!」
 柿坂は五十代前後の男性、麻木を睨みつける。
 「いいのか?怪人様にそんな態度をとって?」
 麻木はニヤつきながら言う。
 「やめぬか!麻木よ、お前には例の件で忙しいはずだ。すぐに研究室へ戻れ。」
 リシュナルは苛つきを見せながら二人を離す。
 「柿坂も、早く他の怪人達の調整に行くのだ。」
 「かしこまりました、リシュナル様。」
 柿坂もリシュナルの指示を受けて製薬室へ向かう。
 「まったく、これだから人間は…とは言っても、人間社会を動かすためには怪人に改造していない人間も必要。先代三神官の手腕は確かなものだったのね。」
 リシュナルはため息を吐いていた。

 その頃、バイオライダーは変身を解除することなく霞のジョーによってキャピトラに運ばれていた。
 「アニキ、起きてくれ!」
 霞のジョーの声でバイオライダーは目を覚ます。
 「…霞のジョー!俺はあれからどうなったんだ⁉」
 「あれからずっと眠ったまんまで、変身した姿で倒れていたから、怪人と戦っていたことはわかって、ここまで運んできたんだ。」
 バイオライダーは霞のジョーから説明を受ける。
 「そうか、俺はカノコソウ怪人の睡眠花粉を受けて眠っていたんだ。」
 バイオライダーは状況を把握する。
 「それから、以前にも似たようなことがあったから、アニキの手から出てきていた液体はこれに入れておいたぜ。」
 霞のジョーはポットに入っている薄桃色の液体を見せる。バイオライダーは敵から毒を受けた際、毒素を打ち消す抗体を生成する能力がある。かつて、光太郎が界魔異星獣ムサラビサラの毒を受け、その際に抗体を生成していた記憶を頼りに、霞のジョーは事態を把握し、準備していたのだ。
 「そうか、ありがとう…って、これ店の備品じゃないか!事件が片付いたら新しいの買わないと。流石に抗体を入れたポットはもう使えないし。」
 光太郎は感謝と同時に落胆する。
 「すまねぇ。悪いとは思っていたけど、すぐに用意できたのがそれしかなかったんだ。」
 「いいさ、こうして抗体が手に入ったんだ。悪いけど、響子さんを借りて大丈夫か?」
 「大丈夫だ。響子、アニキのサポートは任せた!」
 光太郎は響子と二人でキャピトラを出て作戦を実行に移すため、貯水槽のある施設へ向かった。
 「それじゃ、頼むよ。」
 「ええ。水よ!」
 光太郎の合図で、響子は作戦を始める。響子には水を操る超能力がある。会得した頃は水を出現させる程度でしかなかったが、長い月日で響子の超能力は強化され、水を状態まで含めて自在に操れるまでに強化されたのだ。そして、響子が巻き上げる水に光太郎は抗体を混ぜる。それを響子は雨のように東京全域に振らせる。その水は地面に染み込み、気化することで睡眠花粉を中和するのだった。
 「よし!これで睡眠による事故は防げるはずだ!」
 光太郎と響子はハイタッチをするが、そこにカノコソウ怪人とコウモリ怪人が現れる。
 「良くも我々の計画を邪魔したな、南光太郎!」
 コウモリ怪人は腕を広げて襲いかかるが、響子の放つ水で目潰しをされる。
 「変…身!」
 光太郎はその隙きを伺い、変身の掛け声を上げる。光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
 「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
 RXは高らかに名乗る。
 「カノコソウ怪人、人々の移動手段に不信感を与え、混乱を巻き起こしたお前を、絶対に許さん!」
 RXは強い怒りを見せる。
 「カノコソウ怪人、ここは俺が援護する。」
 コウモリ怪人は滑空しながらRXに突撃するが、RXはコウモリ怪人を軽く掴んで投げ飛ばす。
 「グガッ!おのれ、仮面ライダー!」
 コウモリ怪人はよろめきながら立ち上がる。その隙きにRXはジャンプする。
 「RXキック!」
 RXの必殺キックを受けてコウモリ怪人は撃破される。そこにカノコソウ怪人は突進し、RXは突き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直すとバイオライダーへ変身する。
 「俺は怒りの王、RX、バイオライダー!」
 バイオライダーはそのまま強力なキックの連続攻撃をカノコソウ怪人に放ち、ダメージを与えていく。そして、
 「バイオブレード!」
 バイオライダーは必殺武器を取り出す。
 「ハァッ!」
 バイオライダーはそのまま袈裟斬りで敵を切り裂く必殺の斬撃、スパークカッターを放ち、カノコソウ怪人は火花を散らしながら爆発し、肉体を蒸発させる。

 「それにしても、事件が起きればあれだけ攻め立てて、解決したら知らんぷりなんて、しっくりこないっすね。」
 事件の解決からしばらく立ち、霞のジョーはぼやく。
 「仕方ないさ、ゴルゴムの仕業だって誰も知らないんだ。繁忙期で忙しかったから起きた連続事故としか思われないよ。」
 光太郎は落ち着きながらコーヒーを出す。
 「アニキ、まさかあの時のポットで作ってないよな?」
 「そんなわけないだろ。あれは丁寧に洗浄して捨てたよ。残しておくわけにはいかないからね。」
 光太郎は冗談を言う霞のジョーに笑いながら言い、確かな友情を感じる。かくして、連続睡眠事件の原因は、光太郎の活躍で無事取り除かれた。しかし、ネオゴルゴムの作戦はこれでは終わらない。平和を掴み取るまで戦え、仮面ライダーBLACK RX。
 続く

 次回予告
 登山客を襲う吸血鬼、ヤマビル怪人。その牙が次に襲うのは…『地を這う悪魔』ぶっちぎるぜ! 
 

 
後書き
 怪人図鑑
 カノコソウ怪人
 身長:195cm
 体重:78kg
 能力:吸い込んだ生物を眠らせる睡眠花粉

 ネオゴルゴムに所属する鹿の子草の特性を持つ改造人間。本来、投薬医療で使用される鹿の子草の成分を毒花粉に調整されており、それを噴射して生物を眠らせる。 
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