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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第29話:内緒のお話


ティアナについての話が終わってなのは達が部屋を出ていったあとも,
俺は残っていた。

「ん?ゲオルグくん,まだなんかあるんか?」

「ちょっと聞きたいんだけどさ,フェイトやなのはは騎士カリムの
 予言についてもう知ってるのか?」
 
「まだ話してへんけど,なんで?」

「8年前のゼスト隊全滅事件のことは知ってるか?」

俺がそう聞くと,はやては腕組みをして天井を見上げた。

「確か,首都防衛隊の1部隊がテロ組織の拠点に突入して,
 全滅したんやったっけ」

「そう。そして,俺の姉ちゃんはそのゼスト隊の一員だった」

「なんやて!? ん?ちょい待ち。ゲオルグくんのお姉さんて
 スカリエッティに殺されたって前に言うてへんかったか?」

「そうだよ」

「っちゅうことはやで,ゼスト隊全滅事件のテロ組織の拠点っちゅうのは
 実際にはスカリエッティのアジトやったってことか?」

「そうだ」

「ちょっと待ってや,ゲオルグくんのお姉さんが首都防衛隊の一員で
 8年前にスカリエッティのアジトに突入した時に殺されたと。
 でも,それがカリムの予言とどう関係あんねんな」
 
はやてが首をひねりながらそう聞いてきた。
俺は,ユーノからもらったメモを机の上に置くと
読むようにはやてに促した。

「ん?ちょっと待って!なにコレ!?
 無限の欲望ってカリムの予言にあったよな!?」
 
「そうだな。だがもう一つ重要なのは日付だよ」

「どういうこと?」

「そのメモの中で襲撃があったとされる日はゼスト隊が全滅した日と
 同じなんだよ」

「は!?」

はやては驚きのあまり声を失っているようだった。
俺は話を続けることにした。

「同日に出動した首都防衛隊の部隊はゼスト隊以外にはない。
 つまり,ゼスト隊が襲撃したのは”無限の欲望”なるものの研究拠点の
 1つだった訳だな。もう何が言いたいかは判るだろ?」

俺の渡したメモを持つはやての手が震えていた。

「カリムの予言にあった”無限の欲望”は,スカリエッティを表しとる
 っちゅうことか・・・。ん?待って! ガジェットにはスカリエッティが
 からんどって,ガジェットはレリックを狙っとるやろ?
 っちゅうことは,”古い結晶”はレリックを表しとるんやろうな」

「間違いないだろうね」

「このメモの出処は?」

「そこが最大の問題なんだよ。
 実は,最高評議会事務室の業務記録からの抜粋なんだ」

「!!!!」

はやての手からメモが滑り落ちた。

「そうだね。俺も知った時にはびっくりしたよ」

「・・・この話はゲオルグくんの他に誰が知っとるん?」

「レーベンとはやてだけ」

俺がそう言うとはやてはホッとしたように眉間を揉んだ。

「まぁ,ようこんな爆弾持ち込んでくれたわ。どないしよ・・・」

「それで俺から提案なんだけどさ,俺の古巣の力を借りようと思うんだ」

「古巣って,情報部の特務隊かいな?」

「うん。俺たちが動くと目立ちすぎるだろ?」

「ほんならロッサは?査察部やったらちょうどええやろ」

「ダメだね。相手がデカすぎる。今回は誰にも気づかれずに潜り込んで,
 情報を抜き取って帰ってくるのが必須なんだよ。査察部じゃダメだ」

「・・・特務隊しかないと。しゃあないか」

「いいのか?」

「さっきも言ったやろ。しゃあない。
 あと,お願いしに行く時は,私も一緒に行くから」

「かまわないけど,本局にほかの用事がある時じゃないとまずいぞ」

「それはまかしとき。以上か?」

「今のところは。ゴメンな,巻き込む形になって」

「ううん。話してくれてありがとう。
 あと,なのはちゃんとフェイトちゃんにも話したらなあかんな」

「まあ,そっちは近いうちにでいいよ」



俺は部隊長室を出ると,隊舎を出た。
さすがに重い話の後で,外の空気を吸いたかったからだが,
外はもう暗くなり始めていた。
静かなところでタバコでも吸おうと訓練施設の脇にある林に向いながら
火をつけると,林の奥の方から声が聞こえてきた。

(・・・何だ?襲撃か??)

声のする方に行ってみると,ティアナが射撃訓練をしている姿が見えた。

(・・・こんな遅くまで何やってんだ・・・ったく)

俺はティアナに背後から近づくと,肩に手をかけた。
ティアナは,ビクッと肩を震わせると距離をとり俺の方を向いた。

「・・・ゲオルグさん?」

「よう。こんな時間に何やってんだ?」

「・・・自主トレです」

「自主トレねぇ。今日もなのはにしごかれたんだろ?
 早く寝たほうがいいんじゃないの?」

「・・・いいじゃないですか。別に」

「よくないね。無理なトレーニングで体調壊したまま現場に出られたら迷惑だ」

「それくらいわかってます。訓練や任務に影響のない範囲でやってますから」

(んなわけねーだろ。無理しやがって・・・)

「ティアナ。少し昨日の戦闘について話したいんだけど,いいかな?」

「いいですけど・・・」

俺はティアナの手を引くと近くの木の側に座らせ,俺はその隣に座った。

「タバコ吸ってもいい?」

「・・・どうぞ」

俺は胸ポケットからタバコを一本取り出すと火をつけて,一度煙を吐き出した。

「昨日は悪かったな。途中で倒れちまって」

「いえ・・・」

「ところで,ヴィータから話を聞いたよ。ティアナらしくないミスだったな」

「・・・すいません」

「ま,なのはからも言われてるだろうけど,4発ロードなんて
 俺でも制御しきれる自信もないし,体への負担も大きいんだから
 今後はやめとけよ」

「はい・・・」

「ずいぶん落ち込んでるみたいだね」

「いけませんか?」

「いけなくはないよ。ミスしたら反省すべきだとも思うしね。
 ただ,引きずるのは良くない。ミスの反省を次に生かせれば十分だよ」

「はぁ・・・」

「ミスは誰だってする。俺も昨日はミスしたし。
 それで今日は,はやてに怒られちゃったしね」

「ゲオルグさんがミスなんて・・・」

「したよ。安易に一人で調査に出たこと。敵の戦力も不明な状況で
 バックアップも無しに取るべき行動じゃなかったね。
 ま,油断してたんだな」

俺が笑いながらそう言うと,ティアナは俯いて何かを考えているようだった。

「ティアナはさ,何をそんなに焦ってるの?」

「焦ってなんかないです」

「焦ってるよ。ただでさえお前たちフォワードはなのはから厳しい訓練を
 受けてるんだから,その上自主トレなんて焦ってる証拠」

「・・・」

「ま,くどくど聞くのはやめようか。とにかく,無理な自主トレは
 ティアナ自身のためにもならないし,寝不足は美容にもよくないよ。
 さ,今日はもう戻ってさっさと寝るんだ」
 
「はい・・・」

俺は隊舎に向かって歩くティアナを見送ると,振り向いて林の奥に向かって
声をかけた。

「のぞき見とは趣味が悪いね。陸曹」

俺がそう言うと,ヴァイスが木の陰から姿を現した。

「気がついてたんすか」

「当たり前だよ。舐めんな」

「それは恐れ入りました」

「なんで割り込まなかったんだ?言いたいことはあったんだろ?」

俺がそう聞くと,ヴァイスは頭を掻いた。

「いや,そうなんすけどね。俺の言いたいことは全部ゲオルグさんが
 言っちまいましたからね」

「それは失礼しました」

「いやいや。それよりいいんすか?ティアナ」

「良くはないね。あれじゃ,自主トレはやめる気ないだろうし」

「どうするんです?」

ヴァイスがそう聞くので俺は腕組みをして少し考えた。

「このままほっとくのも手かな,とは思ってる。
 一度無理のし過ぎでどんな痛い目を見るかってのを体感しとくのも
 悪くはないかなってな」

「本気で言ってるんすか?」

ヴァイスの声に少し怒気が混じった。

「半分くらいね。でも取り返しのつかないようなことには
 ならないようにしないといけないからね。さじ加減が難しいわな」

「俺がそれとなく見ときましょうか」

「暇なの?」

「んなわけないっすよ。でもゲオルグさんよりは時間の自由が効くでしょ」

「頼んでいい?」

「もちろんっすよ」

「恩に着るよ。ありがとう」

「いや,俺もあんなの見てるとほっとけないタチなんで,気にしないで下さい」

「お互い損な性分だな」

「そっすね。ま,今更ですけど」

「じゃ,頼むな」

俺はそう言うと,ヴァイスを置いて隊舎へと戻った。

 
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