| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第18話:はじめてのたたかい


機動六課が発足して1ヶ月がたった。
クレイから情報を受け取ってからの俺は,
昼は部隊運営関係の事務を淡々とこなし,
夜は寮の自室で通信記録と文書の分析という
まぁまぁ忙しい日々を送っている。

今は,俺の執務室でグリフィスとフォワード陣以外のメンバーの
戦闘可能者リストを見ながら,緊急事態への対処マニュアルについて
相談している。

「意外というかやっぱりというか,戦闘に耐えうる人間て多くないな」

後方支援やバックヤードのメンバーの総数の割にはペラペラなリストを
パラパラとめくりながら,俺はグリフィスに言った。

「そうですね。僕もそうですけど,後方支援に回る局員は
 戦闘に耐え得ないからそういう道に進まざるを得ないという側面が
 強いですから」

「うーん。実質魔導師として戦闘に参加できそうなのは,
 10人いればいいとこだね」

「そうですね。しかも彼らは継続して訓練しているわけではないですから」

「戦力化にも時間がかかるか。実質,俺とシャマルとザフィーラの3人で
 当面は支えなきゃならんのか。辛い状況だね」

俺はそう言うと,頭をかきむしった。

「ところで,小火器類の手配はどう?進んでる」

俺がそう尋ねると,グリフィスは渋い顔をした。

「いえ,本局の動きが鈍くて,もう少しかかりそうですね」

「ったく,運用部の連中はいっつも仕事が遅いんだよ」

俺が悪態をつくと,グリフィスがとても済まなそうな顔になった。
それを見て,俺はグリフィスの母親が運用部所属なのを思い出した。

「いや。ロウラン提督のことを言ってるわけじゃないからな」

「恐縮です」

俺は,ますます居心地悪そうなグリフィスを見て,
いたたまれなくなり話題を変えることにした。

「そういえば,今日はフォワード連中の実戦用デバイスが完成したらしいぞ」

俺は今日の朝食をたまたまなのはと一緒に食べた時にそう聞いていた。

「みたいですね。シャーリーが昨日やっとできたーって小躍りしながら
 デバイスルームから出てきてましたから」
 
グリフィスはその様子を思い出したのか苦笑していた。

「ま,これでやっと所定の戦力が整ったってとこか。やれやれだ」

「そうですね。こちらの計画はまだまだですが」

「まぁ,しょうがないでしょ。とりあえず,当面の対処計画としては,
 非戦闘員の迅速な退避に軸足を置くことにして,並行して
 防衛戦力になりそうなメンバーの訓練計画を立てていくことにしようや」
 
「了解です。では,僕のほうで素案を作成しますので,
 できたら一度協議しましょうか」
 
「おう,頼むわ。いつも悪いな,めんどくさいところばかりやらせて」

「いえ,いい勉強になってますから」

その時,突然緊急警報のアラームが鳴った。

「行くぞ,グリフィス!」

「はい!」


俺とグリフィスが発令所についたときには,
士官は俺とグリフィスしかいなかった。

「ルキノ!状況報告を」

俺は,ちょうど通信の当番だったルキノに今の状況説明を求めた。

「はい!教会本部からの入電によると,レリックを運搬中の列車が
 ガジェットドローンに襲われているとのことです。
 現在,情報を集めていますが,敵機の数・構成ともに不明です」
 
「了解。前線メンバーを招集。ヘリは緊急出動準備に入れ」

「了解しました」

「現在,招集可能な前線メンバーは?」

「スターズ・ライトニングともに副隊長は外出中,ほかは隊舎で待機中です」

「八神部隊長は?」

「聖王教会に行かれてます」

「そうだったな。通信はつながるか?」

「はい!」

通信がつながるとはやてがモニターに現れた。

『ゲオルグくん。私はこれから戻るから前線指揮を頼むわ』

「いいのか?初出動だぞ」

『かまへんよ。そのほうが効率ええから』

「了解。ロングアーチ02はこれより前線メンバーを率いて現場に急行し,
 前線指揮をとります。ついては,広域警戒要員として
 リインを借りたいのですが」

『許可します!』

「了解!」

俺は,モニターの中のはやてに敬礼すると,発令所から飛び出して
屋上ヘリポートに向かった。

[リイン!聞こえるか!]

[聞こえるです,ゲオルグさん!]

[俺が前線指揮を取るから広域警戒要員として同行してくれ]

[わかりました!屋上でいいですね]

[ああ,頼む!]


俺がヘリポートにつくと,ヘリが既に待機していた。
俺はヘリに乗り込むと,パイロットのヴァイス陸曹に話しかけた。

「陸曹!ロングアーチから現場情報はリアルで入ってるな?」

「もちろんっすよ。レーベンにつなぎますね」

「頼む」

俺は現場周辺の地図を確認して舌打ちをした。
列車が走っているのが崖の上だったからだ。
崖下への落下の危険もあり,あまり陸戦をやりたいロケーションではない。

『ロングアーチよりロングアーチ02。敵戦力の構成についての情報です。
 現在,列車周辺の上空に20~30機の飛行型ガジェットが展開。
 列車内には1型が30以上は侵入している模様。
 また,未確認情報ですが,新型の大型ガジェットが存在する可能性ありです』

「ロングアーチ02,了解」

そこで,前線メンバー全員とリインがヘリに乗り込んできた。

「ゲオルグくん,遅くなってゴメン」

最後になのはがそう言いながら乗り込んできた。

「構わないよ。ヴァイス,離陸だ!」

「了解っす!」

こうして,俺たち機動6課にとって初めての実戦が幕を開けた。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧