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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第9話:厄介な問題はとりあえず棚上げ

翌日,俺は早起きして夜の間にレーベンが集めた新人フォワード候補4人の
情報を一通りざっと確認した。
とりあえず,必要そうな情報は揃っていたのでしっかり読み込むのは後にして,
ナカジマ二士とランスター二士のBランク試験に立ち会うべく,
隊舎の屋上に向かった。

屋上に着くと,はやてとなのはが既に待っていた。

「あ,ゲオルグくん。おはよう。だめだよー,女の子を待たせちゃ」

なのはが偉そうに言うので,寝起きで少し機嫌の悪い俺は,
少しいじめてやることにした。

「高町一尉。階級に対する敬礼はどうした」

俺が不機嫌そうにそう言うと,なのはは少し狼狽したようだった。

「え?もう,何言ってるの?ゲオルグくん」

「それが上官に対する口の聞き方かね?高町一尉」

俺がさらに苛立った口調でそう言うと,ますますなのはは慌て始めた。

「高町隊長。シュミット副部隊長は三佐であなたの上官なんやから,
 挨拶くらいきちんとせなあかんよ。親しき仲にも礼儀ありやで」
 
どうやら俺の意図を察したはやてが諭すような口調でそう言ったので,
なのははかなり混乱し始めた。

[くっくっく。かなり慌てとるでなのはちゃん]

[だな。あー,相変わらずコイツをいじるのは飽きないなぁ]

[しかし,ゲオルグくんの演技力も大したもんやね。
最初は私もびっくりしたもん]


俺とはやてが念話でそんな会話をしているとは知る由もなく,
なのはは俺に向かって,ビシッと完璧な敬礼をしてみせた。

「おはようございます,シュミットしゃんしゃ。しゃきほどは失礼致しました」

なのはが噛みながらそう言うと,俺とはやては吹き出してしまった。

「あかん!あかんてなのはちゃん。面白すぎるわ!」

「そこで噛むのは反則だよ,なのは!」

俺たちが爆笑しているのを見て,最初は何が起こったのか理解できずに
きょとんとしていたなのはは,自分がからかわれたのに気づいたのか,
急に怒り始めた。

「もう!ひどいよ2人とも!私,本当にびっくりしたんだからね!」

それでも俺とはやてはしばらく笑っていたが,ようやく笑いが収まったところで
黒い執務官の制服を来た女性が屋上に上がってきた。

「ごめんね,遅くなって。道が思ってたより混んでて・・・。どうしたの?」

フェイトは腹を抑えている俺やはやてと,怒っているなのはを交互に見て,
何が起きたのか理解できず,きょとんとしていた。

「いやいや,大丈夫。ちょうどいい暇つぶしができたから」

「ゲオルグくんの言うとおりやで。なのはちゃんには悪いけど」

俺とはやてがそう言うのを聞いて,なのははフェイトに怒り心頭のまま,
何があったか説明しているようだった。


・・・5分後。
「・・・ということで,今後はこういうことはないようにね。わかった?」

「「はい・・・反省しています。なのはさん(ちゃん),すいませんでした」」

「ゲオルグくんもはやてちゃんももういいよ。だからフェイトちゃん,
 もうそのへんで・・・時間もないし」
 
両手を腰に当てて立っているフェイトの前で,俺とはやては正座をさせられ,
なのははフェイトを一生懸命になだめているという,
なかなかにシュールな光景が広がっていた。

「ところで,ゲオルグ」

フェイトがそう言ったので,俺はまだ叱られるのかと思い,ビクっとなった。

「久しぶりだね。半年ぶりかな?」

俺はフェイトのその言葉を聞いてほっと胸をなでおろした。

「うん,半年ぶり。元気みたいでなによりだよ,フェイト」

俺はそう言うとフェイトが差し出した手を握った。

「・・・ねぇ,いいかげんそろそろ行かないといけないと思うの」

試験官を務めるなのはは,しきりに時間を気にしながら言った。

「そやね。なのはちゃんを遅刻させるワケにもいかんし」

はやてがそう言ってフェイトを伴って一機のヘリに向かって歩き始めたので,
俺も2人についていこうとすると,後ろから腕を引っ張られた。

「ゲオルグくんは私といっしょだよ☆」

妙に機嫌が良さそうななのはに手を引かれて,俺はもう1機のヘリに
乗り込むことになった。


ヘリの中で, 俺はレーベンが集めてくれた新人候補たちの情報を
じっくり読むことにした。

「ゲオルグくん。今日の試験なんだけど・・・って何見てるの?」

「ん?ああ。新人フォワード候補たちの身上調査資料だよ。
 昨日の夜にレーベンに集めさせたんだ。どうも特秘扱いのもあるから
 なのはには全部は見せられないけど」

俺は資料に目を通しながら,なのはに答えた。

「身上調査って?」

「思想的に危険な人物でないか。生まれや育ちに特殊なものはないか。
 家族に同様の人物はいないか。あとは経済的なこととか,部隊運営上,
 危険となりうる因子が許容レベルを超えていないか確認してるんだよ」

「へえ。ゲオルグくんって,真面目に副部隊長やってるんだね」

「まあね。給料分の仕事はしないと。で,今日の試験がなんだって?」

「あ,ちゃんと聞いててくれてたんだ。
 あのね,試験そのものは私とリインでやるんだけど,
 できれば終了後にゲオルグくんにも講評をしてもらいたいなと思ったの」

「つまり,オブザーバーとして試験を見てろってことね?了解」

なのはに答えながらも俺は資料から目を離さない。

「ねぇ,レーベン」

《なんですか?なのはさん》

「これ,私の知ってるゲオルグくんじゃないよ」

《そうですか?》

「うん。だって,すごく仕事のできる局員に見えるもん」

《マスターは,やるときはたまにやる人ですよ,もともと》

「あ,たまになんだ・・・」

なんか,なのはとレーベンが非常に失礼なことを言っている気がしたが,
あまり気にせずに俺は資料を読みふけっていた。

(こりゃあ,またよくもこんな曲者ばっかり集まったもんだなぁ・・・,
 戦闘機人のプロトタイプに,プロジェクトFか。
 あとの2人は生まれに特殊な要素はないけど,過去の経験から精神的に
 もろい部分がありそうだし・・・。)
 
試験が行われる廃棄都市区域に到着し高度を下げていくヘリの中で,
俺は頭を抱えていた。

(厄介だ・・・)

 
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