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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第28話 三羽烏

楽進に案内され怪我人を収容している一角に向かいました。

麗羽達には、私が治療中の間、村の外の様子を監視してもらうことにしました。

その際、集団行動を徹底するように言っておきました。

楽進の話ではいつ賊が来るかわからないような口ぶりだったので、用心に超したことはありません。

猪々子には独断行動は許さないと念を押しておきました。

「凪、その人達は誰や」

「凪ちゃん、その人達、誰なのー」

村の中を移動していると、何か聞き覚えのある声が楽進を呼んでいます。

声の聞こえる方向を見ると・・・。

そこには、李典と于禁が居ます。

私を不信な目で見ながら近づいてきます。

何故、楽進の住む村に2人が居るのでしょう。

恋姫では、楽進とこの2人は同郷のようでした。

史実では同郷ではないです。

この世界はやはり恋姫の世界なので史実とは大分乖離しているみたいです。

史実は精々、参考程度に留めておいた方が良い気がしてきました。

姉上が死ぬのは、反董卓連合後なので、この話は麗羽と揚羽と追々話し合いましょう。

今はやるべきことがあります。

「真桜、沙和!失礼だぞ!この方は劉ヨウ様だ!」

私が考え事をしながら、李典と于禁を見ていると楽進が2人に怒っていました。

「劉ヨウ?誰やそれ」

李典は私のことを知らないようです。

私は李典のことを狂わしい程に欲していたのに、彼女は私のことを何も知らないようです。

当然と言えば当然なのでしょうが、何故か哀しくなってきました。

「もう何言ってるの!劉ヨウ様っていったら、皇族なのに民の為に賊を倒している偉い人じゃないの!」

于禁は私のことに全く興味のない顔をしていましたが、楽進から私の名を聞いた途端、ミーハーな女子高生のような態度を取り出しました。

于禁・・・あなたは態度が豹変し過ぎです・・・。

「おーーー、そうや!思い出したわ!あれやろ沙和。最近、『地獄の獄吏』と呼ばれている人やろ。そないなけったいな人に見えんな・・・」

李典は、本人を目の前にして、失礼なことを言ってきました。

「地獄の獄吏」というネーミングセンスを疑う異名は要りません。

「楽進殿、早く怪我人の治療がしたいのだが・・・」

私はこのまま延々と無駄話に付き合わされたくなかったので、楽進に話しかけました。

「も、申し訳ありません!劉ヨウ様!真桜、沙和。怪我人はどうなっているんだ?」

急に、李典と于禁は急に沈んだ顔になりました。

「医者が居らんから、かなりの人数が死んだわ・・・」

「そうなの。手分けして、頑張ったの。でも、傷が酷い人達が多いから・・・」

「大丈夫だ2人とも。劉ヨウ様が治療してくださるんだ!」

楽進は元気な顔で李典と于禁に声をかけました。

「それ本当か!」

「本当なの!」

「ああ、そうだ」

「3人共、盛り上がるのは良いが早く案内してくれないか?話を聞いていが重傷の者が多いのだろう。幾ら、私でも死人の治療はできないよ」

私は興奮する楽進、李典、于禁に言いました。

「申し訳ありません・・・」

「すんません」

「ごめんなさいのー」

「早く治療したかっただけだから、別に気にしなくていい」

私は3人にそういうと、今度こそ怪我人の収容場所に案内させました。





いつ見ても酷い光景です。

この光景を見ると、賊共に情けなど必要ないとつくづく思ってしまいます。

まず、彼らの治療が先決です。

賊どもを掃除するのはその後です。

「楽進殿、私は傷が重傷な者から優先して治療していきます。あなた達は、軽症の者の手当をお願いします」

「軽症の人達は私と真桜ちゃんで、もう見たのー」

「残っとるのは、アタシ達じゃ手に負えない、重傷の人ばかりや」

「そうか・・・。じゃあ、私が治療するまで、その重傷者の側にいて元気づけてやってくれ。多分、心細いだろうと思うから」

「はい判りました!」

「判ったで、まかしとき!」

「判ったの!」

私は早速治療に入りました。

私の服に血が付くのを避ける為に、上着を脱ぎました。

その後は、傷の酷い人から順に、私の能力で傷を治療していきました。

中には前腕を賊に切られている人もいました。

流石に、無くなった腕を再生させるのは無理なので、止血をしてやるのが精一杯でした。

それから何人治療したか判からなくなる程、怪我人を治療しました。

治療の最後の辺りでは、楽進、李典、于禁も私の治療を見ていましたが、驚愕していました。

傷が動画の逆再生のように治っていくことに驚いたのだと思います。

私でも最初使ったときは、あまりの凄さに驚きました。

神様に感謝です。

あれから神様には会っていませんが、どうしているのでしょうか?

神様なので元気にしていると思います。





「あのー。劉ヨウ様、お聞きしてもよろしいですか?」

「先程の治療のことかな?」

楽進、李典、于禁の3人は黙っています。

図星のようです。

「あの能力は神様から貰ったものだよ」

変に誤摩化すよりこの方が良いと思います。

別に、信じなくてもいいです。

「神様ですか?」

「神様?」

「神様なの?」

彼女達は素っ頓狂な声を上げています。

「信じられませんか?私はこの能力に感謝している。この能力のお陰で、罪の無い人達が苦しむのを少しでも救うことができる」

私は幼少の頃を思い出しながら言いました。

自分で言っておきながらなんですが、私の言葉は宗教家みたいだなと思いました。

そう言えば、黄巾の乱の首謀者である張角も何とかの水で病気を治していたらしいです。

この世界の張角はアイドルですけど・・・。

「・・・」

「劉ヨウ様、神様はないわ。確かに凄い能力やけど・・・。妖術とか仙術とちゃうの?」

「そうなのー。でも、凄いのー」

李典と于禁は私が冗談を言っていると思っている様です。

楽進だけは真剣な顔で私を見ていました。

まさか、私の言葉を信じてくれたのでしょうか?

それはないでしょう。

「信じていただかなくても構わないよ。それと一言言っておくよ。私の能力は妖術、仙術の類いではない」

私はそのことだけ告げると踵を返しました。

「ちょい、待ち劉ヨウ様!何処に行くんや」

「治療も終わったから、賊共を掃除しに行く。場所を教えて貰えるかな?」

「賊を直接襲撃しにいく気?そんなの自殺行為や!相手は1500やで」

「そうそう、劉ヨウ様。無理なのー」

李典と于禁は私が賊を襲撃しにいくのを止めようとします。

賊の数は1500。

私にとっては多いとはいえない人数です。

「その程度の人数なら、賊は全て皆殺しだよ」

「何言うてんのや!そんなの無理に決まっているやろ!」

「危ないのー!」

「2人ともやめないか!劉ヨウ様、私が賊が潜伏していると思う場所に案内します」

今まで、黙っていた凪は私の道案内を勝手でました。

「凪まで、何いうてんのや!いくら地獄の獄吏と呼ばれている劉ヨウ様でも無理に決まってる!」

「凪ちゃん、危ないから止めるのー!」

「じゃあ、二人は村が賊に襲撃されるのを黙って見過ごせと言うのか!劉ヨウ様に怪我人を治療して貰ったけど、今のこの村は賊の襲撃に耐えられる状況じゃない。次、賊に襲撃されたら全滅だ!」

「そ、それは・・・」

「・・・・・・」

2人は顔を俯いて黙ってしまいました。

「劉ヨウ様、本当に勝てるのですか?」

楽進は真剣な表情で私を見ています。

その瞳は闘志に燃えています。

良い表情です。

楽進は私と賊退治をする覚悟のようです。

「必ず勝つ!時には死地にてこそ、勝利を見いだせるものだよ。私の場合、敵地の方が好き勝手に暴れられるので都合が良いだけだよ」

私は楽進の顔を真剣な顔で見つめ返しました。

「わかった、わかった!ウチも一口乗るわ!後、村の皆に声を掛けよう!一緒に戦ってくれる人が居るかもしれん」

「しょうがないのー。凪ちゃん達だけに任せておけないのー」

「二人とも良いのか?」

「良いも悪いも無いわ。二人してカッコ付けておいて、ウチ達だけ尻尾を丸めて逃げれるわけないやろ。村の人達を見捨てて行く程、白状やないわ。それに、地獄の獄吏の劉ヨウ様も居るんや。劉ヨウ様、頼りにしているからな!」

李典は、私に二カッと笑顔を向けてきました。

「アタシも本音は嫌なのー。でも、劉ヨウ様もいるしー。勝てるかもー」

「ありがとう二人とも・・・」

楽進は泣いていました。

二人が賊討伐に力を貸してくれたことが嬉しかったのだと思います。

私は3人のやり取りに、微笑みが漏れました。





一度、麗羽達と合流した後、賊退治に行きましょう。

これが終われば楽進、李典、于禁をスカウトします。

特に、李典、あなたには必ず私の陣営に入ってもらいます!
 
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