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ウルトラマンカイナ

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銀華編 ウルトラクルセイダーファイト 後編


 ――GUYSガンクルセイダーを想起させる、曲線的なフォルム。
 その白いボディを特徴とするBURKプロトクルセイダーには、BURKセイバーのものと同じレーシングバイクのシート状のコクピットが、前後に二つ設けられている。

 故にそこに跨っている前席のメインパイロットは、後部座席のナビゲーターに向けてむっちりとしたヒップを突き出すような格好になるのだ。
 だが、このBURKプロトクルセイダーのテストパイロットを務めて来た女傑達が、今さらその体勢を恥じらうことはない。

『……あれが、我が祖国(ドイツ)にも伝わっている伝説の怪獣……「銀の華(ズィルバァブルーメ)」か。いいだろう、相手にとって不足はないッ!』
『さぁ……ここからが真打ち登場ですよぉっ! 10連装ロケットランチャー、安全装置解除! 攻撃開始ぃいっ!』

 リーゼロッテとヴィルヘルミーナを乗せた1号機を筆頭に、シルバーブルーメへと急接近して行く5機のBURKプロトクルセイダーは、両翼下部に装備された10連ロケットランチャーを同時に連射していた。
 だが、シルバーブルーメは7本の触手を変幻自在に振り回し、その弾頭の豪雨を全て撃ち落としてしまう。彼はこの圧倒的な打撃力と手数を活かし、ウルトラアキレスを撃退したのだ。

『やはりこの程度では通じませんか……! 各機、散開ッ! 作戦通りに引っ掻き回してやりますよッ!』
『了解ッ!』

 だが、リーゼロッテ達BURKプロトクルセイダー隊に、動揺の色はない。初撃のロケットランチャーが迎撃されたと見るや否や、彼女達の乗機は即座に散開し、各々で攻撃体勢を立て直して行く。戦闘時におけるその速度は、マッハ4が限界だったBURKセイバーのそれを遥かに凌ぐものであった。
 オーストラリア支部のシャーロット博士が開発主任を務めた、このBURKプロトクルセイダーの最高速度は、マッハ8にも及んでいるのだ。

『……ッ! やっぱりこの加速、殺人的ですねッ……!』
『ふふっ……! シャーロット博士も、なかなか良い仕事をしてくれるッ……!』

 レーシングバイクのシート状のコクピットに身を預ける美女パイロット達は、その全身に甘い匂いの汗を滲ませ、扇状的な肉体をシートに擦り付けている。
 押し付けられた乳房はむにゅりと形を変え、突き上げられた安産型のヒップがぷるんっと躍動する。艶やかな唇から漏れる吐息も、蠱惑的な香りを放っていた。

『ふふんっ……全く、駒門隊員には困ったものですねぇ〜っ! 私達に、この先行試作型を使わせるなんてっ!』
『おやおや……この機体でなければ駒門隊員を救えないからと、シャーロット博士に無理を言って全ての試作機を引っ張って来たのは君ではなかったかな? いつまでも素直じゃないな』
『ヴィ、ヴィルヘルミーナッ! 余計なこと言ってないで、レーダー監視に集中してくださいッ!』

 1号機の主な操縦を担当するリーゼロッテは、レーダー監視を担う後部座席からニヤニヤと見守っているヴィルヘルミーナに対し、顔を真っ赤にして怒号を飛ばしていた。だが、そんな反応など見慣れているヴィルヘルミーナは全く意に介していない。

『そうしたいのは山々なのだが、君の大きなお尻が視界に入って気が散るのだよ。また一段と「成長」したようだな?』
『んなっ!? ど、どこを監視してるんですか、もぉお〜っ!』

 そればかりか伏臥式の操縦席である以上、どうしても強調されてしまうリーゼロッテの爆尻についても言及していた。100cmを超える安産型の白い臀部には、レオタード状の戦闘服が特にきつく食い込んでいるのだ。

 そんな自分のヒップを揶揄われているリーダーは、悲鳴を上げながらも巧みな操縦で触手をかわし続けていた。一方、望月珠子と八木夢乃を乗せた2号機は、素早く伸びる数本の触手に追尾されている。

『望月先輩! 4時の方向から2本です! 同時に来てますよぉッ!』
『了解……! しっかり掴まってなさい、八木! 最高速度で一気に振り切るわよッ!』
『分かってます……ってばぁッ!』

 望月は急加速と共に激しく機体を旋回させ、乗機を音速(マッハ)の世界へと導いて行く。一方、そんな先輩の豪快かつ強引な操縦に振り回されながらも、八木は体勢を崩すことなくレーダーを監視し続けていた。

『クーカ、6時の方向から4本追って来てるわ! 上昇して振り切りましょう!』
『オッケー、任せときな! 俺達の機体を捕まえようなんざ……2万年早いぜッ!』

 その頃、ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントスとアリア・リュージュが搭乗している3号機も、複数の触手に追われていた。鞭のようにしなる数本の触手を上昇しながらかわし、彼女達を乗せた3号機はシルバーブルーメを撹乱して行く。

 シルバーブルーメに急接近し、触手攻撃を誘っている1号機、2号機、3号機の目的は、本体を無防備にするための「陽動」にあるのだ。全ては、残る2機のBURKプロトクルセイダーによる攻撃のための「布石」だったのである。

『1号機と3号機が上手く引き付けてくれたようだね……! アルマ、仕掛けるなら今だよッ!』
『りょーかいッ! スペシウム弾頭弾、発射ァアッ!』

 3機の陽動によって触手による防御が手薄になり、本体が「丸裸」となった瞬間。アルマ・フィオリーニと劉静を乗せた4号機が一気に突入し、機体下部に搭載された大型のミサイルを発射する。

 両翼下部の10連装ロケットランチャーとは別に積まれていた、「真打ち」の弾頭――スペシウム弾頭弾。そのミサイルが、シルバーブルーメの本体下部にある触手の「付け根」に直撃し、その箇所から伸びていた数本の触手が無惨に千切れ飛んで行く。

 無論、これだけで終わる彼女達の攻撃ではない。ナターシャ・ジャハナムとエリー・ナカヤマが駆る最後の5号機が、「2発目」を叩き込むべく急加速していたのである。

『ナターシャさん! 2号機を追っている触手が、完全に伸び切っていますッ! 今なら私達が仕掛けても、シルバーブルーメはすぐに対応出来ないはずですッ!』
『よぉーし……! 行くよエリー、スペシウム弾頭弾……発射ァアッ!』

 後部座席のレーダーから状況を観測していたエリーの言う通り、陽動に徹していた機体を追尾している触手は伸び切り、本体の防御が疎かになっている。その僅かな隙を、5号機は虎視眈々と狙い続けていたのだ。

 前席のナターシャが操縦する5号機は素早くシルバーブルーメの懐に飛び込み、スペシウム弾頭弾を発射する。その弾頭が本体の下部に炸裂した瞬間、残っていた触手全てが「根元」から爆ぜてしまうのだった。

「み、皆っ……!」

 その爆音だけで「外」の状況を察していた琴乃は、溶解が進みつつあるBURKセイバーの機内で、独り頬を濡らしていた。このまま座して死を待つしかなかった彼女にとっては、彼女達こそが最後の希望なのである。

『よし、邪魔な触手は全部千切ってやりましたねっ……! こうなったらシルバーブルーメも、デカいだけの木偶の坊同然ですっ!』
『だが……奴め、もう再生を始めているようだなッ……!』

 一方、BURKプロトクルセイダー隊の攻撃によって、全ての触手を千切られてしまったシルバーブルーメは――無駄な足掻きだと言わんばかりに、触手の「再生」を始めていた。
 少しずつではあるが、根元から爆ぜた7本の触手は、再び本体から放り出されようとしている。このままでは、リーゼロッテ達の攻撃も徒労に終わってしまう。

『……ふふっ、無駄な足掻きですねぇ。それが徒労に終わるとも知らないで……可哀想なことです』

 だが、リーゼロッテをはじめとする10人の女傑はこの光景を目の当たりにしても、狼狽えることなく勝ち誇った貌を覗かせていた。
 彼女達にとっては、このシルバーブルーメの再生こそが――「徒労」だったのである。

 ◇

 その頃、リーゼロッテ達の戦闘を地上の基地から観測していた弘原海達は、「全ての触手の切断」という絶好の好機を目の当たりにしていた。

「隊長! プロトクルセイダー隊が、7本の触手を全て切断した模様! 再生中の今がチャンスですッ!」
「よぉしッ! 嵐真、駒門のこと……頼んだぞッ!」
「……はいッ!」

 観測員の切迫した叫び声に、弘原海が声を上げた瞬間。彼の隣で待機していた嵐真はアキレスアイを手に、傷だらけの身を押して通信室の外へと飛び出して行く。
 黄昏時の空を仰ぎ、変身体勢に入った彼の脳裏には――出撃前のリーゼロッテ達と交わした言葉が過っていた。

 ――7本の触手全てを、プロトクルセイダー隊の攻撃で切断……!? 大丈夫なのか、君達だけで……!
 ――ふふんっ、私達の心配なんて2万年早いですよぉ。生憎ウルトラマンのお守りなら、私達は経験済ですので。



(……ありがとう、リーゼロッテ。ありがとう士道さん、皆! 必ず応えて見せるよ、俺とアキレスで!)

 宣言通りに自分達の使命を果たしたリーゼロッテ達や、シルバーシャーク砲の発射阻止に奔走している士道達に応えるべく。女傑達が待つ空の彼方を見上げる嵐真は、アキレスアイを掲げ――

「デュワッ!」

 ――力強い掛け声と共に、双眸を覆うように装着する。
 その箇所を中心に、ウルトラアキレスの姿へとみるみる「変身」して行く彼は、瞬く間に真紅の巨人へと変貌するのだった。

 変身を果たした彼はそのまま勢いよく地を踏み締めると、両手を広げて地上から翔び立ち――音速を超越した速さで、成層圏を一瞬のうちに突き抜けて行く。

 一度敗北し、深い傷を負っている今のアキレスでは長時間の行動は不可能であり、真っ向からシルバーブルーメと交戦することさえ難しい。故に彼はこの瞬間のみに残された全エネルギーを集中させ、光の矢の如く突撃しているのだ。
 残りのエネルギー全てを、リーゼロッテ達が作った一瞬の好機に懸けて。真紅の巨人が宇宙へと飛び出し、流星の如くシルバーブルーメ目掛けて突っ込んで行く。

『ダァァアーッ!』

 その気配に気付いた邪悪な円盤生物は、再生中の未成熟な触手でアキレスを迎撃しようとするが――彼はその悉くを、紅い拳で叩き落としてしまう。

『いっ、けぇえぇ〜っ!』
『かましてやれぇえッ! ウルトラアキレスッ!』

 残る無防備な本体では、もはや回避も防御も不可能。約束された「チェックメイト」へと向かって行くアキレスの背に、リーゼロッテとクーカが声援を送る。他の隊員達も、固唾を飲んで巨人の突撃を見守っていた。

「……!」

 そして――そのまま本体下部の口腔に飛び込んで行ったアキレスが、体内で溶解寸前となっていたBURKセイバーを抱き抱えながら、最高速度で拳を突き上げた瞬間。

 アキレスの姿を視認した琴乃が、瞠目するよりも疾く。BURKセイバーを抱えた真紅の巨人がシルバーブルーメの本体を突き破り、大宇宙の海原へと脱出したのだった。

 刹那、体内を一気に突き破られたシルバーブルーメの本体に亀裂が走り――その全てが爆炎に飲まれ、跡形もなく爆ぜて行く。それは紛れもない、ウルトラアキレスの勝利を意味していた。

『シルバーブルーメの爆散を確認……! 駒門隊員は……生きていますッ! 生きてますよぉおッ!』

 そして、アキレスの腕に抱かれていたBURKセイバーからは、今もなお生命反応が発せられていたのだ。そこから導き出された結論に、リーゼロッテは涙ながらの歓声を上げる。

「よっ……しゃあぁああッ!」
「ふぅっ……! な、なんとか間に合った……! シルバーシャーク砲は、どうなったんだ……!?」
「標的の消滅により、先ほど政府から発射の中止が命じられたらしいぜ……! 綾川司令官がギリギリまで粘ってくれたおかげだよ……!」

 その報告から伝わる喜びが伝播するように、地上の基地でも歓喜の声が広がっていた。標的を失ったことでシルバーシャーク砲の使用も中止が決定され、通信室に居る隊員達は安堵の息を漏らしている。発射準備を終えていた砲台もすでに、士道達によって制圧されているらしい。

「……そうか、分かった。皆に良くやってくれたと、君からも伝えてくれ」

 独り作戦司令室に篭り、政府との電話交渉を続けていた綾川司令官も。シルバーブルーメの沈黙と琴乃の生還という現場からの報告に安堵し、背凭れに身を預けている。

「聞いての通りです、(あかつき)総理。……御子息のお力添えが無ければ、この大難は乗り越えられなかったことでしょう。ご協力に、感謝致します」

 彼と通話していた当時の首相――暁天真(あかつきてんま)総理大臣も電話の向こう側で、1人の息子を想う父親として同様の反応を示していた。ウルトラマンという過酷な宿命を背負った我が子を想うが故の、非情な決断は実行されることなく終わったのだ。
 その元凶たる銀の華は、宇宙の果てにその命を散らしたのだから。

「……ありがとうよ嵐真、リーゼロッテ、皆っ……!」

 そして砲撃命令が白紙となり、士道達の叛逆も不問となった頃。
 通信室を去り、黄昏の空を独り仰いでいた弘原海は――その頬に熱い滴を伝わせ、拳を振るわせるのだった。

 ◇

 ――やがて、この戦いから約5年後。シルバーブルーメの体内からも生き延びてみせた駒門琴乃は、弘原海の除隊後に再編成された新生BURKを率いて行くことになるのだった。エリー、劉静、アリアの3人もこの後、それぞれの乗機――BURKクルセイダー、BURK烈龍(リィエロン)、BURKワーマーに己の命運を託し、テンペラー軍団との決戦に臨んで行くこととなる。
 その未来が、元調査隊メンバーの奮闘よって紡がれたものであるということは、この作戦に関わった全ての隊員が知っているのだ――。
 
 

 
後書き


 今回の後編で、銀華編「ウルトラクルセイダーファイト」は完結となりました! 最後まで本章を見届けて頂き、誠にありがとうございます!(о´∀`о)
 
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