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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第6章 英雄感謝祭編
  第24話 竜種vs魔導士2

ラクサスは、アレンの言葉を受け、雷神衆と共に、一番近くにいる竜の元へと駆けていた。
そうして向かっていると、爆発音と悲鳴、そして呻き声が聞こえる。角を曲がる。するとそこには、アレンからもたらされた情報と同じ竜がいた。竜の周りはあらゆるものが破壊され、建物は悉く残骸の山と化していた。所々に火の手も上がっている。ラクサス達が竜を確認すると同時に、竜が翼をはためかせ、空中で滞空する。
「こいつが、火竜…」
「リオレウスか…」
ラクサスとフリードが、臨戦態勢を整えながら、リオレウスを睨みつける。それと同時に、瓦礫の山から一人の男が出てくる。
「っ!おまえ、大丈夫か!」
「ひどい怪我!」
それに気づいたビックスローとエバが声を掛け、駆け寄る。
「くそっ、あいつ、半端ない強さだ…」
「まさか、一人で戦っていたのか!」
その男に、フリードは驚いた様子で声を掛ける。
「…周りに戦える奴がいなかったんでな…そういうあんたらは?」
「俺たちはフェアリーテイルのもんだ」
ビックスローが、そう答えると同時に、リオレウスが動きを見せる。頭を振り、火球を吐き出してきた。それを見据えていたラクサスは、火球に向かって雷撃を放つ。
「レイジング・ボルト!!」
ラクサスの雷の魔法は、一度火球の進行を押しとどめるが、1秒と持たずに火球は雷を突き破る。自身の魔法が打ち破られたのを見て、ラクサスは後方へ退避する。
火球はラクサスが元居た位置へと落ち、爆発音とともに豪炎が立ち上がる。
「なっ!ラクサスの魔法が…こんなにも簡単に…」
フリードは、驚きつつ、剣を抜きリオレウスへと向き直る。
そうしていると、さっきの男がラクサスの隣へと移動してきた。
「俺は剣咬の虎のオルガだ!俺は雷の滅神魔導士…力になれるはずだ」
オルガはそう言うと、身体全体に黒い雷を纏い始める。
「ほう?…そいつはいいな…俺はラクサスだ。まずはこのトカゲ野郎を地面に落とすところから始めるか!」
オルガの言葉を聞き、ラクサスも雷を纏う。
「ふっ!偶然にもラクサスと同じ雷の魔導士とは…必然か?」
そんな2人の様子を見て、フリードが呟く。ビックスローとエバも臨戦態勢に入り、リオレウスの様子を伺う。瞬間、耳を覆いたくなるような轟音を、リオレウスが上げる。
「ガアアアアアアアアッ!!」
その声に、皆が耳を塞いで驚く。
「ちっ!うるせー野郎だ!」
ラクサスは悪態を付きながらリオレウスを睨む。そして、驚く。その飛翔能力に。先ほどまで、20mは離れていた距離が、すでに目の前にその姿を現していた。
リオレウスは、その強靭な足をもって、5人に襲い掛かる。
「「っ!避けろ!!」」
ラクサスとオルガは声を合わせるように叫んだ。
フリードとビックスローも慌てた様子で回避する。しかし、エバは咆哮の影響で一瞬判断が遅れ、腹部にリオレウスの足の爪が深く食い込む。リオレウスはそのまま振り切るようにエバの腹を抉りきる。
「ぐあああっっ!!!」
「エバ!!」
エバは大きな悲鳴をあげ、その場に倒れこむ。フリードがエバを抱え、後退する。
「てめぇっ!雷竜方天戟!!」
「っ!雷神の黒槍!!」
ラクサスとオルガは、回避行動を終え、リオレウスに雷を浴びせる。リオレウスが苦しむ姿が見られたが、すぐに雷を振りほどき、少し後退してその身を地面へと着地させる。
「ラクサスッ!!」
フリードが大声を上げる。
「エバは無事か!フリード!」
フリードは改めてエバの傷を見る。へその横、横腹を抉られている。恐らく、内臓にも達しているだろう。エバは短く、苦しそうに呼吸を繰り返している。更に、腹部からじわじわと紫色の紋様が浮かび上がっていた。
「…傷が深い…それに、どうやら奴の足の爪には、猛毒があるみたいだ!このままじゃ…」
その言葉に、4人は驚愕の表情を見せる。ラクサスは怒りで鬼のような形相を見せる。
「フリードッ!今すぐウェンディを探して毒を解除しろ!!」
「ッ!だが、こんな奴相手に、3人だけで戦うのは無茶だ!!」
ラクサスの提案に、フリードは困惑したように声を上げる。
「この兄ちゃんの言う通りだ!そのままじゃ、その姉ちゃんが死んじまうんだろ!!」
「いけー、フリード!!」
オルガとビックスローも、続けて声を上げる。
フリードは暫し悩んでいたが、覚悟を決め、エバを抱えて走り出す。
「…死ぬな…!」
フリードが走り去るのと同時に、リオレウスは火球を、しかも連続で放ってきた。
3人はそれをすんでのところでかわしきり、体勢を整える。
「お前、中々見どころあるじゃねえか…」
「そんなんじゃねえ…ただ、目の前で女が死んだら寝覚めがわりいと思っただけだ…」
「十分だぜ!!このドラゴン倒したら、一杯驕らせてくれや!」
ラクサス、オルガ、ビックスローがそれぞれ会話を終えると、リオレウスが威嚇をするように咆哮を上げる。
「俺の仲間に手を出したこと、後悔しながら死にやがれー!!」
ラクサスの言葉を皮切りに、ラクサスとオルガは雷を、ビックスローは人形から光線を出して攻撃する。
暫く甘んじて受けていたリオレウスであったが、それを翼で振り払う。
「なっ!!」
「嘘だろ…効いてねえのか?」
ビックスローとオルガが驚いて見せる。
「いや、効いてはいる…だが、決定打にかけてるってだけだ…」
ラクサスが説明するように言葉を発すると、リオレウスがまたも火球を放つような動作を見せる。
「へっ、もうその火球は見切ったぜ!!」
ビックスローがそう言いながら、再度光線を放とうとする。だが、
「っ!まて!!これは火球じゃない!!」
先ほどの火球とは比べ物にならないほどの火の粉がリオレウスの口の周りに滾っていることに気付き、ラクサスは制止するように声を掛けた。
「ブ、ブレスだ!!いったん退けー!!」
オルガが言い終わると同時に、リオレウスの口から広範囲かつ高出力の火炎が巻き起こる。
その火炎は、瞬く間に通路を火の海に変え、両脇に佇む崩壊しきっていた建物を吹き飛ばし、燃やし尽くす。ラクサス達は、頑丈な瓦礫に身を隠し、ブレスが止むのを待った。
「っくそ!!なんて威力してやがるっ!」
「こんなもん喰らっちまったら、一瞬で丸焦げだな…」
「くそ熱いぜ!」
ラクサス、オルガ、ビックスローが悪態を付きながら会話をする。次第に火炎が収まると、3人は様子を見ながら慎重に瓦礫の影から身を乗り出す。そして、絶句する。辺り一面が真っ黒に焦げあがり、建物は炎に包まれ燃え上っていた。
「おいおい…」
「火竜…名前負けはしていないようだ…」
「どうやったら倒せんだよ…こいつ…」
その光景に驚きつつも、3人は魔力を込める。
「そんなもん…ひたすら魔法を浴びせ続けるしかねえだろ!!雷竜の顎!!」
「いいな、それ。賛成だ…単純で分かりやすい!雷神の刃角」
「よっしゃー!!行くぜーベイビー!!」
3人はひたすらにリオレウスに魔法を浴びせる。黄色と黒の雷、そして青白い光線が、何度も何度もリオレウスを襲う。
「ゴガアアアアアアッ!!!」
リオレウスは、悲鳴をあげながらそれらを振り払おうと、飛翔する。だが、リオレウスの姿をきちんと捉え、飛翔したうえでも攻撃を続けていた3人により、リオレウスは地面へと伏っして転倒する。
「良し!!畳みかけろ!!」
リオレウスが転倒したのをみて、ラクサス達が近寄り、追撃を仕掛けようとする。だが、リオレウスはすぐさま立ち上がり、身体を大きく回転させる。
「ぐはっ!!」
「がっ!」
「ぐっ!」
回転の速度と力により、ラクサスは尻尾に、オルガは頭に、ビックスローは翼が直撃し、吹き飛ばされる。何度か地面を転がり、暫くして停止する。3人はそれぞれ少し離れた位置で身体を起こそうとする。
「ぐっ…たった一撃で…」
「があっ!いてーっ!!」
「ぐうう!!」
3人は、全身に傷を負い、口から血を流しながら小さく呟く。リオレウスが翼を大きく広げ、再び飛翔する。そして、その口には火の粉が舞い上がる。
「っ!まずい!また火球を撃ってくるぞ!」
「狙いは…っ!ラクサスだ!」
「避けろ!ラクサス!!」
ラクサスがリオレウスの動きに気付いた瞬間、その矛先がラクサスであると感知すると、2人は大声でラクサスに声を掛ける。
「んなもん、言われなくても…がはっ!」
ラクサスは、火球に合わせて回避行動をとろうとするが、痛みで立ち上がることができず、血反吐を吐く。
「おいっ!しっかりしろ!!」
「っ!くそーっ!!」
ラクサスの様子を見たオルガは叫び、ビックスローは震える足を何とか立たせる。リオレウスの火球が、ラクサスを仕留めんと発せられた。ラクサスは、自分に向かってくる火球を見て、ぎゅっと目を瞑る。ボゴーンッという衝撃音が聞こえるが、ラクサス身体に痛みはなかった。外したのか?そう思い、ゆっくりと目を見開く。驚く。目を見開く。そこには、ラクサスをかばうようにして仁王立ちをしているビックスローの姿が、顔が見えた。
「ビ、ビック…スロー…」
ビックスローは、火球を背中に喰らった。その影響で上半身部分の服は完全に焼けこげ、下半身も所々服が燃えている。だが、そんなものは差異に過ぎない。火球受けたのが背中だというのに、ビックスローの身体の正面には、点々とやけどの跡が見て取れた。
「ラ…ラク…サ…」
バタンッとビックスローが前のめりで倒れこむ。ラクサスは震える目を、なんとか動かし、ビックスローの背中を視界に入れる。言葉が出なかった。ビックスローの背中が真っ黒に焼けこげ、大量の血とも水ともとれるような液体が滴っていた。ビックスローは弱弱しく目を動かし、ラクサスの顔を見る。
「あ、あと…は…任せ…た…」
ビックスローは消え入るような声でラクサスにそう告げると、ガクッと意識を手放した。
ラクサスの口が、目が、身体が震える。悲しみか、怒りか、いやその両方であろう。ラクサスは全身に雷を纏い、神をも恐れるような形相でリオレウスを睨みつける。
リオレウスは、一度雄たけびを上げると、またも口に炎をため込む。しかも、これはブレスを放とうとしているときのものであった。
「よくも…俺の仲間を…くそが…!」
「くっ!!おい!ブレスだ!!退避しろ!おい!」
ラクサスは怒りのままに低く唸る。そんなラクサスに、オルガは声を掛けるが、その声は届かない。
「ぶっ殺してやらー!!!!!」
ラクサスの身体に、今までと比べ物にならない魔力が、雷が纏う。
リオレウスがブレスを放つ。ラクサスは、こともあろうに、そのブレスに突っ込む形で駆け抜ける。
「バカッ!何やってんだ!!」
オルガは自殺行為ともとれるラクサスの行動に、悪態を付きながら、「くそっ!」と呟き、黒雷を発生させ、リオレウスの頭に向けて放つ。リオレウスはそれをうっとおしい程度にしか感じていないのか、ブレスを中断させるには至らない。だが、オルガはそれでも黒雷を浴びせ続けた。
ラクサスとリオレウスのブレスがぶつかる瞬間、ラクサスが身体に纏う雷が、より一層強さを増した。
「雷豪・鳴御雷!!!!!」
ラクサスの拳に、強大な雷が形成され、リオレウスのブレスをかき消そうと電流を発する。ラクサスは熱に絶えながら、更に魔力を込める。だが、リオレウスのブレスは強力で、ラクサスはじりじりと押し負ける。
「ぐううううううう!!!おおおおおおおお!!!」
そんな時、リオレウスが「ガァッ」と一瞬怯む。オルガが連続で与えていた黒雷に怯んだのだ。ブレスの威力が弱まる。
ラクサスはそれを見逃さず、最後の力を振り絞り、突き進む。
「いけええええ!!!!!!」
オルガがラクサスにそう叫ぶと同時に、ラクサスの拳がリオレウスの頭を打ち砕く。瞬間、圧倒的な雷の波動が生まれ、リオレウスは断末魔に似た雄たけびを上げ名ながら、その場に崩れた。

「なんなの…こいつ…」
「き、気持ち悪いです…」
「ええ、間違いないわ…」
ミラ、ウェンディ、シャルルの3人?が声を漏らすのは、目の前にいる竜に向けてのものであった。全身真っ白に覆われた皮膚とも呼ぶべき身体は、ブヨブヨとした肉質が覆っている。何よりも、奇妙なのはその顔である。
「奇怪竜…フルフル…」
「目がないです…」
ミラがその竜の名を口にすると、ウェンディは今にも泣きそうな声でその特徴を口にする。
刹那、そのフルフルが大きく咆哮をあげる。
「キキャアアアアアッ!!」
「ああっ!!」
「ひゃあっ!!」
「うっ!!」
フルフルの咆哮は、甲高く大きなもので、3人の耳を襲う。
直後、フルフルが大きく身震いをすると、その気色の悪い顔を振り、地面へとたたきつける。すると、口から電撃球のようなものが3つ発生し、それぞれ3人を襲う。
ミラは跳躍して民家の上へ退避し、ウェンディはシャルルのエーラの魔法によって回避する。
「電撃ッ!」
「それも相当強力よ」
「目はないけど、気配で私たちのことを察知しているみたいね…」
3人はそれぞれそんな風に観察をしながら、攻撃開始の狼煙をあげる。見た目はキモくても、列記とした竜である。油断はできない。ミラジェーンはサタンソウルを解放し、ウェンディも魔法を放てるように魔力を込める。
「確かに気配で私たちを察するのはすごいけど…」
「動きはそんなに速くありません!」
ミラはイビルエクスプローションを、ウェンディは天竜の咆哮を放ち、攻撃を仕掛ける。その攻撃を察知してか、フルフルは全身から電撃を放電した。バチバチッと放電した電撃は、2人の攻撃をガードするようにかき消してしまった。
「「!?」」
「そんなっ!2人の攻撃が!」
フルフルは放電を終えると、匂いを嗅ぐように首を左右に振る。
「これは一筋縄じゃいかないわね…」
「はい…っ!?」
自身とウェンディの攻撃を防がれたミラは、悪態を付きながら再度魔力を込める。そんな様子を見て、自分も魔力を込め始めるウェンディであったが、あることに気付く。
「(この竜…ミラさんを察知してる…いや、まさか…)」
ウェンディはフルフルがミラを察知したのではなく、すでに攻撃の準備をしていたことに気付く。
「ミラさん!!避けてください!!」
「っ!!」
ウェンディの叫びを聞いたミラは身を固め、フルフルを見る。その瞬間、フルフルの首が突然伸び、ミラの眼前へと迫る。そして、ミラの身体に噛みつき、突き飛ばす。
「ああああああっっっ!!!」
ミラを襲ったのは、鋭い牙による噛みつき、そして地面に叩きつけられた衝撃。…加えて、フルフルの唾液が持つ酸による爛れであった。それにより、ミラのサタンソウルが解除されてしまう。
「ミラさんっ!!」
「ウェンディっ!避けて!!」
ミラに駆け寄ろうとするウェンディに対し、シャルルが声を上げる。ウェンディはすんでのところでフルフルの攻撃を回避する。
「うっうう…」
ミラは、自身を襲った咬傷、打撲、熱傷の痛みに耐えながら、ゆっくりと立ち上がる。たった一撃喰らっただけで、相当なダメージを受けてしまったことに驚きを隠せなかった。
「ミラさん…大丈夫ですか!!」
「っ!ええ、なんとか…ウェンディも気を付けて!こいつ、見た目のキモさ以上に強いわ!」
「さすがはドラゴンね…」
ウェンディはフルフルの攻撃に警戒しながら、ミラに治癒魔法をかける。フルフルは3人の居場所を確認すると、全身を動かし、攻撃モーションを取る。
「くるわっ!!」
ミラの言葉に、2人も警戒する。すると、フルフルは空高く跳躍し、3人の目掛け、伸し掛かってきた。3人はそれぞれ散り散りに回避し、距離を取りつつ攻撃を繰り出す。
「天竜の翼撃!!」
「サタンソウル・魔人ハルファス!!」
2人の攻撃は、フルフルを怯ませるに十分な打撃を与える。
「キギャアアアッ!!」
「き、効いてます!!」
「希望が見えてきたわ」
ミラとウェンディが喜びながら言葉を発した。そんな中、ウェンディは誰かが近づいてくる気配を察知した。
「っ!誰か来たわ!!」
シャルルの言葉に、ミラとウェンディがちらっと示された方角を見る。髪色と長さで、それがフリードであることが分かった。
「ウェンディ!!ようやく見つけた!エバが重傷なんだ!!」
フリードの言葉に、ウェンディが驚きつつも駆け寄る。
「こ、これは…エバさん」
ウェンディは言葉を失った。エバの脇腹は抉られ、あまつさえ周りの皮膚が紫色に変色していたのだ。
「火竜リオレウスの攻撃を喰らったんだ。しかも毒に侵されている。治療してほしい」
「勿論です!!」
ウェンディはフリードの頼むを、即答で引き受ける。フリードは、エバをウェンディに託すと、ミラの隣に移動する。フルフルは新たに来た2人を察知し、咆哮をあげる。
「くっ!なんて下品な…こいつが奇怪竜フルフルというやつか…」
「ええ、キモいだけじゃなくて、相当強いわ。強力な電撃を放ってくるわ」
ミラは、フルフルから視線を外すことなく、フリードの質問に答える。
「電撃か…今日はやけに雷に縁があるようだ」
「え?」
「いや、こっちの話さ…それより、来るぞ!闇の文字、暗黒!」
フリードは、フルフルが攻撃態勢に入ったのをみて、魔法を発動し、悪魔のような姿へと変貌した。
「ふふっ、悪魔コンビってところかしら!」
「この気持ちの悪い竜に、悪魔の力を思い知らせてやろう」
フルフルの放った電撃が、2人に襲い掛からんと迫る。だが、魔人ハルファスとなったミラと、暗黒の闇文字を用いて悪魔の姿となったフリードはそれを容易くよけ、フルフルに攻撃を与える。
「クギャアアアアアッ!!!」
フルフルは、痛みに耐えかね、呻きに似た轟音を発する。
「よし、効いている!」
「このまま畳みかけるわよ!!」
フリードとミラが再度攻撃を仕掛けようと近づくが、それはあるものによって遮られる。
上空から、赤いオーラを纏った竜がフルフルの真横に降り立ってきたのだ。振動で体勢を崩したフルフルは、驚いた様子で転倒する。
「お、おい…こいつは…」
「まさか…」
その黒く赤い龍を見たフリードとミラは小さく呟き、戦慄する。…次元が違う。今まで私たちが戦っていた竜とは、まるで強さの桁が違うというのが、一瞬にしてわかってしまった。
『ん?貴様らは…アレンの仲間か?』
「「「「!?」」」」
先ほどまでフルフルと戦っていたミラとフリードに加え、安全な位置でエバの治療をしていたウェンディとシャルルも、その声に驚きを見せる。
「…あなたが…天彗龍バルファルク!」
『ほう?俺を知っているのか…なら情報を与えたのはアレンか?まあ、そんなことはどうでもいい…』
バルファルクは、ミラの質問に答えながら、槍翼に込める龍気を高める。
『死ね…』
「避けろーっ!!」
考えられないほどの力を感じ取ったフリードは、ミラに声を掛けながら、回避行動をとる。
バルファルクはそう言うと、龍気の満ちた槍翼を地面に叩きつけてきた。間一髪、バルファルクの槍翼から逃れたと思ったその瞬間、2人の身体に激痛が走る。
「あああああああっ!!!!!」
「ぐああああああっ!!!!!」
タイミング悪く、避けた先にフルフルが放った電撃球が待ち構えていたのだ。バチバチッと強烈な音を立てる電撃は、2人が地面に伏するのに十分な威力を誇っていた。
「ミラさん!フリードさん!!」
ウェンディは悲痛のうちに大声をあげる。
『俺の一撃を避けるとはな…だが、これで…っ!』
バルファルクは動けない2人に止めを刺そうと再度攻撃を繰り出そうとするが、圧倒的な衝撃に、空へと打ち上げられる。どうやら、何者かがバルファルクを押しのける形で空へと舞っていったことが分かった。
「っ!まさか…アレンか…」
「アレンは…あんな化け物を相手に…」
フリードとミラは、とりあえずは去った死に安堵しながら、身体を起こす。まだ体の痺れは残っている。
「ア…アレンが、あんな化け物と戦ってるのに…私たちが…」
「…こんな気色の悪い相手に負けるわけにはいかんな!」
ミラとフリードが息を切らしながらフルフルへと視線を向ける。
「奴も大分弱っている…次で決めるぞ!」
「ええ…」
フリードとミラは、すべての魔力を注ぎ込むように、魔力を極限まで高める。
「っ!漆黒の(ダークレイン)!」
「黒魔の一撃(アルディブラスト)!」
ミラとフリードの攻撃が、フルフルへと襲い掛かる。ようやく転倒から復帰した直後の攻撃だったため、フルフルは対処が遅れ、2人の魔法をモロに喰らってしまう。
「「はぁ…はぁ…」」
ミラとフリードはこれ以上にないといった様子で息を荒くしていた。
フルフルは、断末魔のような叫びをあげ、その場に倒れた。 
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