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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~

作者:黒井福
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GX編
  第113話:似て非なる枝分かれした技術

 
前書き
どうも、黒井です。

今回はある意味本シリーズを描く上で最大のポイントとも言える、魔法と錬金術の違い何かを描いていきます。 

 
 颯人達がウィズを連行した後、エルフナインからの話はガルド達年長組の主導によりアルカノイズに対抗する為の手段として聖遺物・魔剣ダインスレイフの欠片が提示されるところまで進んだ。

 その後、エルフナインは検査の為医務室に連れていかれ、一行は発令所にてその結果をあおいから聞く。
 颯人達が戻って来たのはこのタイミングだった。

「悪い悪い、待たせちゃってさ」
「いや~、もう、ウィズってば頑固で困ったよ」
「颯人さん、奏さん! お帰りなさい!」

 場所を移すという事を朔也から聞き、颯人達は発令所で響達と合流する。
 その際ウィズとアルドも共に居た。アルドはともかく、ウィズは腕を組み明らかに不機嫌な様子だ。エルフナインに対する甘い判断が相当気に入らないらしい。

 私不機嫌です、と言う雰囲気を惜しげもなく撒き散らすウィズに、弦十郎が見かねて口を開いた。

「もういい加減にしたらどうだ、ウィズ? エルフナイン君に関しては様子見という事で話は纏まっただろう?」
「フン……どうなっても知らんからな」
「それは、エルフナインさんの?」

 鼻を鳴らして顔を逸らすウィズをチラリと見て、アルドは正面のモニターに表示されたバイタルデータに注目する。そこにはエルフナインの正面と横から見た画像、それに性別、年齢、血液型に加え肉体を構成している元素までもが表示されていた。
 一頻りそれを眺めたアルドは、視線で話の続きをオペレーター2人に促した。

「念の為に彼女の……えぇ、彼女のメディカルチェックを行ったところ……」
「身体面や健康面に異常は無く、またインプラントや高催眠と言った怪しいところは見られなかったのですが……」
「……ですが?」

 あおいと朔也はどこか釈然としないと言うか、今一理解が及んでいない様子だった。歯切れの悪い物言いに、響が首を傾げつつ続きを促すと、あおいが言葉を選ぶようにしながら話を続けた。

「彼女……エルフナインちゃんに性別は無く、本人曰く『自分はただのホムンクルスであり、決して怪しくは無い』と……」

 ホムンクルス……錬金術により作り出された人造人間とその技術を示す言葉だ。自らそう名乗り、あまつさえ怪しくないなどと言う。普通に考えれば怪しい事この上ないのだが、先程ウィズが指摘し本人もそれを認めていた。これがエルフナインの自白だけであれば信じるのは難しかったろうが、曲がりなりにも知識人であるウィズが言うのであればエルフナインの妄想とかそういう類ではないのだろう。検査の結果、洗脳などの類も無いらしい。

 しかしこの場に居る者の多くにとって、錬金術とは未知の存在。それを敵が駆使してくると言うのであれば、知らない事には対策の取りようもない。
 なので、颯人は素直にウィズに知識を出させた。

「んで、ウィズ? 実際のところどうなの?」
「何がだ?」
「あのエルフナインちゃんの事。ホムンクルスって?」

 全員の疑問を代表して颯人がウィズに問い掛けると、ウィズは仕方が無いとでも言いたげに溜め息を吐き口を開いた。

「お前達も何かで聞いた事はあるだろう。ホムンクルスとは人造人間の事だ」
「あの子がそうだって?」
「あぁ。外見上はまるで人間と変わりないが、連中に性別は存在しない。生物としてはそこが決定的な欠陥だな」

 魔法使いとしてS.O.N.G.内での存在を盤石にしているウィズが断言するのであればそうなのだろう。

「ではウィズ。単刀直入に聞くが錬金術とは何なのだ? 魔法とは違うのか?」
「似て非なるもの、と言っておこう。それが一番正確だ」
「より正確に言えば、魔法は錬金術から派生した技術です。錬金術は術の行使に生命力を基本的な対価として必要とするのに対し、魔法はご存じの通り発現させた体内の魔力を消費して使用します」

 ウィズの説明にアルドが補足を付け加えた。

 そう言えば、奏達と戦った奴はアルカノイズを召喚する時や撤退する時に結晶を砕いたりしていた。あれが魔法使いで言うところの指輪に相当する物なのだろう。見たところ錬金術は術の行使に際して魔力だけでなく触媒も消耗品として必要とするらしい。そこら辺は魔法使いが一歩進んでいるが、その一方で技術の広さは錬金術の方に分がありそうな感じだ。何しろ魔法には生命の創造するものは存在しない。唯一ホープの魔法はそれに近いかもしれないが、あれに使われている魔法石は非常に希少らしくあれ以来アルドがその指輪を作ったと言う話は聞かなかった。

 とりあえず錬金術と魔法の違いは何となく分かった。その上で、颯人にはまだウィズに訊ねたい事がある。ビーストと言う魔法使いに関してだ。ウィズはあの魔法使いの事をアーキタイプと呼んでいた。あれは一体何なのか?

「それじゃあウィズ、あのビーストって魔法使いは何なんだ?」
「ビースト……颯人君が戦ったという敵魔法使いだな」
「ペテン師が負けたって?」
「そこ触れないでお願いだから」

 明確な黒星となる戦いにはあまり触れてほしくない颯人だったが、ビーストの存在を無視する訳にはいかないので話題に出さざるを得ない。だが話題に出すと必然的に颯人の黒星もくっついてきてしまう。颯人にとって、なかなかに悩ましい問題だった。

「あれはちょうど魔法が錬金術から別れる頃に作られた物だ。あのアーキタイプの存在が現在の魔法使いの始祖になったと言っても過言ではない」

 その昔、錬金術を行使する際により強力な術を用いようと試行錯誤された結果生み出されたのが、件のアーキタイプことビーストドライバーだった。
 人間の生命力を消費して使用される錬金術。それをより強力に、より手軽に使用する事を目的に作り出されたビーストドライバーは、使用に際して装着者の命を削りながら絶大な力を発揮した。

 当然その強すぎる力と大きすぎる代償は危険視されていたが、同時に魔法使いビーストを研究している内に当時の錬金術師達は人間の中に生命力とは別に消費できる力である魔力を発見したのだ。これが発端となり、一部の錬金術師が研究に研究を重ね遂にサバトを完成させる。結果多大なリスクを払いはするが、その代わり一度発言してしまえば今までと違い低いリスクで術を駆使できる魔法使いが生まれる事となったのだ。

「まぁ、言ってしまえば魔法使いは世界で異端の錬金術師の、そのまた異端な連中という事だな」
「魔法使いの誕生の経緯や魔法使いに至るまでのリスクなどもあって、錬金術師は魔法使いの事を野蛮人と呼び基本的に嫌っています」
「魔法使いも同様だな。魔法使いの多くは錬金術をカビの生えた技術と馬鹿にしている」

 何とも難儀な話だ。根元は同じなのに、お互いにいがみ合うとは。

 話を戻すと、どうやらビーストはどちらかと言えば錬金術寄りの魔法使いらしい。であれば、変身しているのも魔法使いと言うよりは錬金術師という事なのだろうか?

 とにもかくにも、ビーストと言う魔法使いについては分かった。だがそれ以上に、分からない事が一つあった。

「それよりも、だ。アタシら的には敵にメデューサが居る事の方が分からねえ」
「メデューサ? マジで?」
「クリス、それは本当か!?」
「あぁ、マジだ。あの声、それに雰囲気、メイジに変身してたがあれは確かにメデューサだった」

 俄かには信じがたい話だ。先のフロンティア事変の際、メデューサは確かにファントムと化した上で颯人達により倒された。それは間違いのない事実だ。であるとすれば、クリス達の前に立ちはだかったメデューサは一体誰なのか分からなかった。

「双子とかだったりするんじゃないの?」
「今時手品でも使われない手口だけどな。そこら辺ウィズは知らないの?」
「そこまで知るか。本人に聞け」

 結局再び現れたメデューサに関しては何も分からず仕舞い。果たして本当に双子だったのか、それともワイズマンにより魔法で蘇ったのか。

 分からない事の方が多かったが、とりあえず現状の確認は出来たという事でこの日は解散となった。

 その際ガルドはウィズを呼び止めた。

「ウィズ、アルド、ちょっと頼みが――」
「ダメだ」
「ま、まだ何も言ってないが?」
「言いたい事は予想出来る。自分も戦いたいと言うのだろう。まだダメだ」
「貴方の体はまだ完全に癒えていません。そんな状態で戦っても足を引っ張ってしまうだけです」

 アルドの言いたいことは分かる。ガルド自身、自分の体がまだ完全に復調していないのは理解していた。だが現在、戦える者が限られている今そんな事を言っている暇はない。

「俺が不完全な状態なのは分かっている。だが何も出来ずに見ているだけなんてできない!」

 フロンティア事変からガルドはS.O.N.G.の食堂で働く傍ら、アルドからの治療を受けて来ていた。あの頃に比べて、大分復調してきている筈だ。例え敵に勝てないまでも、仲間を守るくらいは出来る。

「だから頼む! 無茶はしないと約束する。どうか――!」

 ガルドの意志は固い。目を見ればそれが分かる。ウィズとアルドは互いに困った様に目を見合わせると、同時に溜め息を吐き頭を振った。

 2人の反応から、これはダメかとガルドが半ば諦めかけたその時……ウィズは右手のウィザードリングを交換しハンドオーサーに翳した。

〈コネクト、ナーウ〉

 コネクトの魔法でウィズが取り出したのは颯人の物と同型のウィザードライバー、それと数個のウィザードリング。それがキャスターの物であると気付き、ガルドは目を見開いた。

「! ウィズ!」
「まぁお前の言う通り、今は戦力が欲しいのは事実だからな。私も何時も助けに入れる訳ではない」
「ですが、無茶は禁物です。何度も言いますが貴方はまだ完全ではないのです。これ以上の無茶を重ねればどうなるかは分かりませんよ」
「肝に銘じます」

 アルドからの忠告に答えながら、ガルドはウィズから渡されたドライバーと指輪を握り締めた。
 その彼の瞳には、これまで堪えていた闘志の火が燻っているのにウィズは気付く。

――全く……――

 今度は内心だけで溜め息を吐きつつ、今後の事を考えウィズは頭を働かせるのだった。 
 

 
後書き
という訳で第113話でした。

切りが良いので今回はここまで。
本作において魔法は錬金術からの派生です。XDUとかのゲームだと一般錬金術師も錬金術使ってますけど、あれって多分生命に影響ない範囲で生命力を魔力に変換して術使ってると思うので、魔法使いはそれを一歩進めて魔力を発現させて術を行使する際の制約をほぼほぼクリアした存在みたいな位置づけです。

今回は説明ばかりであっさり済ませましたが、次回はがっつり戦闘シーンです。キャスターVSビーストの戦闘をお見せします。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。 
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