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Fate/WizarDragonknight

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マスターからの贈り物

「お前……やっぱり!」
「やっぱりってなんだい? もともと私がここにいることを知っていたのかな?」

 青メッシュ、そして白と黒に分かれた服装の男性、霧崎。
 不気味な笑みのままの彼は、首を傾げたままハルトを見つめていた。

「コヒメちゃんはどこに!?」
「教えると思うかい? 私が……」

 霧崎はそう言いながら、トレギアアイを取り出す。
 すでに変身待機になっているそれに対し、ハルトもルビーの指輪を中指に当てた。

「なぜとは聞かないんだね、ということは、どうやらソロとは接触したようだね……とすれば、もう私の目的は知っているのかな?」
「八岐大蛇……!」
「ククク……大正解」

 霧崎は、顔を大きく歪めた。
 外れてほしい、全てはソラのただのホラだと思いたかった。
 トレギアは笑いながら続ける。

「色々この世界を調べてみれば、中々面白い怪物もいるじゃないか……是非、新しいおもちゃで遊んでみたい」
「ふざけるな……!」

 その言葉とともに、ハルトは駆け出す。
 霧崎も、ハルトの格闘技に応じる。
 蹴りを防ぎ、手刀を防ぎ。
 そして。
 互いに組み合う中、ハルトと霧崎は睨み合った。

「変身!」
『シャバドゥビダッチヘンシーン フレイム プリーズ』

 赤い魔法陣が、室内の日常を埋めていく。同時に、霧崎の顔に装着されたトレギアアイは、持ち主の姿を闇に書き換えていった。
 ウィザードとトレギア。至近距離で、二人の姿は変わっていった。
 二人は互いに蹴りを激突させ、そのまま飛び退く。

「お前、紗夜さんの次はコヒメちゃんまで! 一体何を考えている!?」
「別に……私はただ、自分の正しさを証明したいだけさ」
「正しさ? 女の子を利用して、そんなことで証明できる正しさなんてあるものか!」
「……いつだってそうだ」

 トレギアは嘆くように頭を振った。

「君は……君たちは、いつだって物事を片方の側面からしか見ない……そう言って、一見悪と思えるものを危険と断定するのが……」

 トレギアの目が、一瞬怪しく光る。
 同時に、彼の手が、トレラアルディガイザーの体勢を取る。

「っ!」
「嫌いなんだよ……!」

 五つの赤い点が、ウィザードを睨む。
 幾度となくウィザードを苦しめてきた技。今回は、予めそれが予測できたから、回避が可能だった。
 避けたウィザードの直線上にあった重機が、木端微塵に砕け散る。

「……っ!」

 ウィザードは、ソードガンを構えながら、ゆっくりと間合いを取る。

「ふふふ……」

 トレギアと、互いに距離を保ちながら、ウィザードは並走する。
 やがて、巨大な機械。そのパーツの中をくぐり、一気にウィザードはトレギアへ攻め立てる。
 だが、トレギアは爪で応戦し、さらに蹴りでウィザードを怯ませる。

「ぐっ!」
「ほらほら。大丈夫かい?」

 せせら笑いながら、トレギアはウィザードの顔面に指さす。

「このっ!」

 ウィザードは蹴りでトレギアの指を弾き、さらに指輪を入れ替える。

『バインド プリーズ』
「無駄だよ。そんなもの」

 発生した炎の鎖。だがトレギアは、空を爪で裂く衝撃波で相殺させる。
 それは、何度もウィザーソードガンとの激突を繰り返し、やがてウィザードを追い詰めていく。

「どうしたんだい? やはり、ノアの残滓がいないと私には勝てないということかな?」
「まだ……まだだ!」

 ウィザードは剣と蹴りを織り交ぜた攻撃で、トレギアを攻め立てる。
 だが、両手を腰で組むトレギアは上半身の動きだけでウィザードの攻撃を避け続ける。

「フン……」
「!」

 やがて、トレギアの反撃。手から放たれた黒い雷に対し、ウィザードはソードガンを放り捨て、すぐさま天井のパイプを掴み、逆上がり。
 ウィザードの背中をかする、黒い雷。その痛みに、仮面の下で口を歪めながら、跳び蹴りを放つ。
 トレギアの胸に命中した蹴りには、流石の彼も怯む。
 ウィザードはさらに狭い工場内でパイプを伝い、トレギアの背後に回り込む。そのまま、足技を使い、どんどん追い詰めていく。

「何……!?」
「まだまだ!」

 さらにウィザードは、回転蹴り。その合間にも、さらなる指輪を使用した。

『ビッグ プリーズ』

 巨大化によって威力が上がる蹴り。それは、トレギアへの攻撃の威力を増していく。

「少しは……やるじゃないか……!」

 トレギアは感心し、再びその目から光線を放つ。
 だが、それに対するウィザードはもう動き出していた。
 隣にある鉄パイプを掴み、それを軸に体を回転。
 赤い光線を空ぶらせ、そのまま遠心力を利用してジャンプ。一気にトレギアへ接近、蹴りを放つ。

「っ!」
「俺の攻撃は、魔法だけだと思わないことだね」

 だんだん追い詰めていく手応えに、ウィザードはぎゅっと拳に力を込める。

「行ける……! 今度こそ……!」
「どうかな?」

 トレギアは首を傾げる。
 そして。

「マスターからの贈り物だ。味わってくれ」

 現れた、闇。
 ウィザードとトレギアの間に割って入るそこからは、青く太い柱。
 ワニのような口が、ウィザードの肩に食らいついた。

「っ! こいつは……!?」

 やがて、闇からその全身を表す怪物。青い体と、その内側には反対に紅色の肌を持つもの。背中からは無数の棘が突き出ており、自然な生物とはとても思えない。その全身の表皮からは、ポロポロと欠片が零れ落ちており、生物というよりは、剥製の印象さえも受ける。

「グールギラス。まあ、別に覚えなくてもいいよ」
「ふざけるな……!」

 ウィザードは、そのグールギラスの首を掴み、押し倒す。
 バランスを崩したグールギラスが倒れた隙に、ウィザードは指輪を取り出す。

『コネクト プリーズ』

 先ほど投げ捨てたウィザーソードガンを回収したと同時に、グールギラスは立ち上がる。
 その赤い目は、ウィザードには不気味な印象を抱かせる。焦点が全く合わない、左右別々の方向を向いている目。
 それなのに、口から吐く炎の球体は、迷うことなくウィザードへ向かった。

「はっ!」

 炎の球体へ、ウィザードは唐縦割り。
 左右に分裂した炎は、それぞれ二つの機材に命中し、爆破させた。

「マスターの贈り物って、どういう……?」
「さあ? どういう意味かな?」

 トレギアは一切手を出さず、ほほ笑む。
 ウィザードの格闘技は、間違いなくグールギラスを攻め立てていく。
 だが、相手の動きは鈍らない。あたかも痛覚がないかのように、その肉体でウィザードを攻める。

「っ!」

 ウィザードは両足を合わせ、その顔面を蹴り飛ばす。反作用で半回転、距離を置いて着地した。
 だが、すぐに体勢を立て直したグールギラスが、こちらに口を開ける。

「やばい!」
『ディフェンド プリーズ』

 炎の壁。
 同時に、グールギラスの口からは、先ほどと同じような火球が何発も発射される。
 炎の障壁を通じ、衝撃がウィザードへ貫かれてくる。
 さらに、グールギラスは頭突き。
 障壁を破り、ウィザードは容赦なく体をぶつけられる。

「っ!」

 足をなんとか踏ん張りながら、ウィザーソードガンをお返しにとばかりに打ち込む。
 銀の弾丸が命中するにあたって、その表皮が傷ついていく。

「……!」

 表皮の綻びが激しくなっていく。
 そしてウィザードは、その綻びにも部位によって破損具合が異なることを見抜いた。

「首か……!」

 その突き出たという構造上、どうしても首の部分は負担が大きいのだろう。
 全身をくまなく命中させた結果、グールギラスの首を切れば倒せる。

『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』
「おっと。ダメだよ」

 必殺の斬撃を行おうとしたその矢先、トレギアの手がウィザードへ向けられた。
 黒い稲妻がウィザードの体に命中。爆発とともに吹き飛び、ソードガンの待機状態も解除されてしまう。

「ぐっ……」
「おいおい。私もいるんだから、忘れちゃいけないなあ」

 トレギアはそう言いながらグールギラスに並ぶ。

「さあ。ここまで私を楽しませてくれたけど、君もここで終わりだ」

 トレギアの号令により、グールギラスが吠える。
 再び、複数の火球が放たれ、ウィザードへトドメをさそうと迫る。
 だが。

「盛炎のうねり!」

 ウィザードの前に、炎の渦が盾となる。
 炎の渦は、そのままグールギラスの炎を吸収し、さらに大きくなる。
 そして、薄く、広く伸びていく炎は、グールギラスとトレギアに浴びせた。
 そして。

「大丈夫か! 松菜青年!」
「煉獄さん!」

 煉獄。
 炎の渦が掻き消えて現れたのは、炎の模様が描かれた上着を羽織る青年。
 またの名を、セイバーのサーヴァント。

「煉獄さん、どうしてここに!?」
「六角少女より、大体の事情は聞いた。あとは、足で探した!」
「足って……!」
「彼が、荒魂の少女を攫ったのだな!」
「あ、ああ……!」
「そうか! なら、これでこの話は終わりだな!」

 悪鬼滅殺。
 炎の柄に、そんな文字が刻まれた黒い刀を構えた煉獄は、続ける。

「ならばここからは! この俺が剣で! 斬り開こう!」

 そんな煉獄に対し、グールギラスは吠える。
 再びの火球。ボールのようにバウンドを繰り返しながら、煉獄へ向かっていく。
 だが。

「だあっ!」

 それが煉獄に届くよりも先に、ウィザードが火球を蹴り飛ばす。
 火のウィザードが、その特性を活用した足技により、グールギラスの火球は消滅した。

「いや、俺だってまだ戦える! 助けてくれたのは感謝するけど、まだいける!」
「うむ! 良い心がけだ!」

 煉獄は、頷いた。
 ウィザードは彼の隣に並び、ウィザーソードガンを構えなおす。
 銀と黒の剣。
 ウィザードは煉獄と頷き合い。
 同時に、グールギラスの炎が放たれる。

「行くよ! 煉獄さん!」
「うむ!」

 火球が地面に命中すると同時に、二人は駆け出す。

『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』
「炎の呼吸 弐ノ型」

 とどまることなく地面を穿つ火球。
 ウィザードと煉獄は、屈み、跳び、時には切り裂き。
 やがて、二人の炎の力を持つ者は、グールギラスの懐で屈みこむ。

『フレイム スラッシュストライク』
「だああああああああっ!」
「昇り炎天!」

 ウィザードは、煉獄と同じ動き。
 炎の剣で斬り上げ、グールギラスの首を切り開く。

「炎の呼吸 参ノ型」

 電子回路のようなグールギラスの内部構造を見下ろしながら、振り上げた剣を両者振り下ろす。

「だああああああああああああっ!」
「気炎万象!」

 すでに、悲鳴を上げるグールギラスの首は地に落ちている。
 煉獄とともに切り落としたその体は、縦三枚おろし。
 やがて、三つの破片になったグールギラスは、爆発。
 ウィザードと煉獄の次の敵は、トレギアただ一人となった。 
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