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おっちょこちょいのかよちゃん

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182 運ばれたスケート靴

 
前書き
《前回》
 李の森で書いた字を具現化させる男・蔡京と交戦するかよ子達。かよ子は蔡京の筆を杖で能力を得て、杖を筆に変えて描いたものを実物化させる能力を得る。他の皆の総攻撃で蔡京を撃破させることに成功した!! 

 
 さり達は護符で出した宿泊施設にて眠っていた。宿のような建物ができており、インフラの整った個室までが完備されていた。そして夜明けが少し来る前に起きた。
(この護符ってホント凄いわね・・・)
 さりは改めて護符の強力さを思い知った。母も戦後の食糧難や戦災孤児問題をこの護符で乗り切り(その戦災孤児には同行している尾藤海斗の母親も含まれていた)、清水へ帰省していた時に豪雨に巻き込まれた時も自身の意思が護符に通じて浸水した町を干上がらせた。クリスマス・イヴの日の戦いでも一人の力ではないとはいえ何とか戦えたのもこの護符があってこその結果であろう。異世界での戦闘でもネロやアブー・アブドゥッラー、エルデナンドなど本部へ侵入する者を撃退している。そして寝床や遠方への移動などにも困らぬように役には立っている。流石この世界で生み出された最上位の道具の一つであるだけの事はある。
(また来るかもしれないわね・・・。領土攻撃班の攻撃をすり抜けて・・・)
 さりは寝ても覚めても気を張り詰めていた。別室で寝ていたさきこ、尾藤、長山も起きた頃だった。

 かよ子達藤木救出班は李の森で朝を迎えていた。かよ子はこの日は何の夢も見る事はなかった。
「おう、山田」
「大野君、おはよう・・・」
 大野やブー太郎、他の面々は起きていた。
『おはようございます、皆様、朝食の準備が整いました。そちらに送りますので受け取り下さい』
 イマヌエルの声だった。この日の朝食は和食で、御飯にワカメやネギ、椎茸のすまし汁に鮭にお浸しだった。
「それじゃあ、・・・って」
 かよ子はまる子と友蔵が寝坊している様を見ていた。
「ももこちゃん!!起きてよ、ご飯だよ!」
 のり子がまる子を半ば強引に起こした。
「ええ?ああ~」
 まる子は寝ぼけていた。
「もう、寝坊しないでよ!」
「ごめん、ごめん・・・」
 まる子は謝った。
「おい、友蔵さん、起きてください!もう朝ですよ」
 椎名も友蔵を起こす。
「うう・・・、朝、か・・・。ああ、いい気持ちじゃのう・・・」
 友蔵が起きた。そしてまる子が朝食の献立でがっかりする。
「はあ〜、鮭かあ・・・。ハズレだな・・・。李があればなあ〜」
「ああ、夜に落としてしもうたからのう・・・」
 まる子と友蔵は集めた李を蔡京の襲撃で全て落としてしまったのである。
「そうだ、かよちゃん、杖で何とかしてよお〜」
「え?」
「山田かよ子、仕方あるまい。こやつの我儘に付き合ってやってくれ。李ならお主らも集めたであろう?」
 次郎長が確認する。
「う、うん・・・」
 かよ子は己の李とおたまを出しておたまに杖を向けた。料理を美味しくする能力を持った杖を李に向ける。李がヨーグルトに変わった。
「これなら美味しいねえ〜」
「どれどれ・・・?」
 かよ子も李味のヨーグルトを嗜む。
「李のヨーグルトも美味しい・・・!!」
「美味しいブー!」
「それじゃ、もう一回李狩りじゃ!」
「駄目だよ!藤木君の所に行かなきゃ!」
 かよ子は友蔵の提案を却下した。
「そうか・・・」
 朝食の食器が下げられ、かよ子は出発の支度に入った。
「それじゃ、行くよ!」
 かよ子は羽根を上昇させ、一行は李の森を出るのだった。

 妲己がレーニンの元から自分への屋敷に戻って来た頃には朝になっていた。
「お帰りなさいませ、妲己様。随分とお疲れのようですね」
 門番が出迎えた。
「ええ、休ませていただくわ。馬も休ませておあげ」
「はっ、畏まりました。」
 妲己は己の部屋に戻り、状況を確認した。
(付近にはまだ来ていない・・・、か)
「妲己、大丈夫かね」
 紂王が部屋に入って来た。
「ええ、寝不足でございます。お休みにさせて下さい」
「ああ」
 妲己は寝台で横になった。

 ある少年は一人の遊女と楽しく喋りながら朝食会場に向かっていた。話し相手の遊女は明るい感じの女子だった。
「ねえねえ、茂様。その『すけーと』って面白いんですかー?」
「うん、僕はいつも滑ってたよ」
「私にできるかなー?」
「教えてあげるよ」
「ありがとうございます!もし私が茂様のお嫁になれたらなー、いつでも一緒にすけーとしに行きます」
「ありがとう」
 朝食の場に皆集まったが、妲己の姿はなかった。
「紂王様、妲己様はどうされたのですか?」
「ああ、妲己なら昨日レーニンの所に行って疲れているから休んでいるよ」
「そうですか」
 この日の朝食も和洋と関係なく楽しめる豪華な朝食だった。
「ああ、そうだ、茂様。妲己様がその『すけーと』とかいうのに使う靴を持ってきたとの事です。雪の降る山にて氷の張った湖がさらに北の方にあります。明日、楽しんでみてはいかがでしょうか?」
「そうだね、そうするよ!」
 そして兵を務める男性が入って来た。
「皆様、妲己様が氷の上を滑る遊びに使う靴をご用意されました。食後に大きさをお確かめくださいとの伝言です。それでは失礼致します」
「ありがとうございます!」
 兵は出て行った。少年達は食後に大広間に行く。多くの靴が箱の中に入っていた。
「凄い!」
 少年は足のサイズを確認する。
「丁度いいのがあった」
「よし、これで明日楽しみましょう!」
「うん!」
 少年達はスケートの日を楽しみにするのであった。

 寒さに震えながら笹山は登校していた。すると、前を歩く女子二人の会話を耳に挟む。
「ねえねえ、今度の土曜久々にスケートしに行かない?」
「いいね!スケート教室以来かな?」
「うん!」
「上手く滑れるかな?」
「他に誰か誘おうかな?男子にも声掛けて皆で行くともっと楽しいよ!」
 笹山はスケートという言葉で思い出した。
(スケート、か・・・。藤木君、スケート得意だったっけ・・・)
 笹山はまたあの失踪した男子の事を思い出すのだった。

 すみ子達「義元」は華やかそうな西洋の街並みに突入していた。街自体は美しいものの、恐ろしい胸騒ぎが止まらない。つまり、ここには敵勢力が住んでいる地という事になる。
「この地・・・。まるで昔のフランスのようですわ・・・」
 エレーヌが呟いた。
「昔のフランスでやんすか?」
「はい。中世の我が国は貴族が贅沢で豊かな暮らしをしている一方で、一般の民は非常に貧しい暮らしを強いられていたのです」
「となると、強い奴がここに潜んでいるって訳だな・・・」
「殲滅に入ろう!」
 ジャンヌが一声挙げる。
「よっしゃ!」
 川村がバズーカを発砲する。街中を煙に変える。ジャンヌも姿を変える。大天使・ミカエルの力を借りたジャンヌは街に火を舞った。
「おおおーーー!!!」
 その街の住民と思われる人物が悲鳴を挙げる声が聞こえた。
「よし・・・!!」
 すみ子が銃を発砲した。周囲の膜が皆を包んで浮遊する。膜は炎の中に入って行くが、皆は膜の力で守られた為、燃える事はなかった。
「よし、手当たりで攻撃するぞ!」
「おう!」
 山口が様々な矢を放つ。火薬と化して建物を爆発させ、川村もまたバズーカで建物を次々と吹き飛ばす。ヤス太郎も手当たり次第にパチンコの玉を飛ばして殲滅に加勢した。
「降伏しなさい!ここの者達!この地は平和を司る世界の物へと返させて貰います!」
 エレーヌが布告する。その時、一部の炎に大きく砂が被さり、消火された。
「出たな、我らの敵め!」
 一人の女性が現れた。
「お前がこの街の女王か!?」
 山口が問答する。
「生憎だが、女王は逃がした。このシュヴルーズ公爵夫人が相手しよう!」
 組織「義元」とシュヴルーズ公爵夫人の戦いが始まる。 
 

 
後書き
次回は・・・
「陰謀主義の公爵夫人」
 シュヴルーズ公爵夫人と交戦する事になったすみ子達は街の女王は逃がしたという事を公爵夫人の口から聞かされる。公爵夫人はどこに異能の能力(ちから)を出す機械を仕込んでいるのか。そしてその女王はどこに行ったのか・・・!? 
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