| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

伴装者番外編

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ラボ組ハロウィン!(IFきりしら世界)

 
前書き
ハッピーハロウィン!!

というわけでTwitterでのリクエストにより、今年はIFきりしら&大野兄弟のハロウィンをお届けいたします!! 

 
日付は10月31日。世間がハロウィンでワイワイ賑わっている頃。
ここ、都内の片隅にある秘密研究所は、いつもより騒がしい雰囲気で充ちていた。

「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ、発情期ですかコノヤロー」
「うわっ、結構似てる!?」
「ほぼ本人といっても差し支えないクオリティ……」
「博士すごいデース!クリソツデース!」
「そうですか?いや~、そう言ってもらえると、気合い入れた甲斐がありますねぇ」

教え子達に褒められ、少年のような笑みを浮かべているのは、この研究所で最年長のウェル博士。僕達の先生だ。

ちなみに、仮装は某漫画雑誌の顔役だったとあるギャグ漫画の主人公だ。
元々銀髪で甘党なので、コスプレしてみたら驚くほどに違和感がない。しかも声真似がほぼ完璧だったので、街を出歩いたら絶対に注目を集めることだろう。

「日本のハロウィンは想像以上にフリーダムですねぇ。モンスターのみならず、アニメキャラ、果ては『地味ハロウィン』という仮装なのかどうかすらあやふやなものまで許容範囲だなんて、想像性が豊かでとても面白いですね」
「フリーダム過ぎて、ハロウィンの定義が崩れてる気もするけど……」
「皆で楽しめるならそれでいいんじゃない?」
「そうデスよ。楽しんだもん勝ちデース♪」

苦笑いする僕の隣に立つフランケンは、弟の流星。
ちなみに本人曰くただのフランケンではなく、羽織っているサメパーカーのフードをかぶる事で『フランケンジョーズ』になるらしい。
……いや、そうはならないだろ!?

ちなみに僕、大野飛鳥の仮装はヴァンパイア。付け牙とカラコンで、見た目もいい感じ。
本当は某ロボットアニメのパイロットもアリかと思ったけど、流石に博士とジャンルが被ってしまうのはハロウィンらしくないので来年に流した。

「じゃじゃーん!トリック・オア・トリート、デース!」

そして金髪ロングな研究所一番のムードメーカー、暁切歌の仮装は……普段と変わらない服装だった。

「切歌……その……それはどの辺が仮装なんだ?」
「ふっふ~ん、どうやら気付いていないようデスね!」

なにやら自信満々な様子の切歌。
なんだ?特に普段と変わった部分は無いし……地味ハロウィンか?

「ではでは……切歌~、来るデスよ~」
「はいデ~ス!今行くデ~ス!」

首を傾げる僕らの前に、なんともう1人の切歌が顔を出す。
見た目や服装全く同じだが、髪型は金髪ショート。まるで瓜二つな彼女の名前は切歌ロイド。切歌を模して作られたアンドロイドだ。

「どうやら全然気付いてないみたいデスね!」
「フッフッフ~、アタシたちの作戦勝ちデース!」
「どういう事だ?」

したり顔でハイタッチを交わす2人の切歌。

訳が分からず困惑する僕の方へ、2人は悪戯っ子の笑みを向ける。

「飛鳥さん、引っかかったデスね!」
「それではそれでは、タネ明かしデース♪」

そう言って2人は、それぞれ自分の髪を鷲掴む。
次の瞬間、2人の頭髪が丸ごとズルリと頭から外れ、代わりに切歌と切歌ロイドの髪型が綺麗に入れ替わっていた。

「え?……えぇぇぇぇ!?」

驚きのあまり、思わず叫んでしまった……。

「まさかのヅラ……」
「ヅラじゃない、カツラだ」
「うるさいよドクター」
「流星くんは手厳しいですねぇ」

なんと2人は互いの髪型を模したウィッグをかぶり、入れ替わっていたのだ。

「さっきまで飛鳥さんと話してたのがアタシ、切歌ロイドで……」
「今出てきたアタシが、本物の切歌デース!」
「全く気づかなかった……」

2人の外見はほぼ寸分違わない。肌の質感さえ、人工皮膚でしっかりと人間に近づけているので、細かく観察しないと分からない。
しいて違いを上げるなら髪型と、関節部の硬質感、あとは服の下の胴体くらいだ。

殆ど仮装じゃない気もするが、アリかナシかで言われればアリだろう。まさかこんなイタズラを仕掛けてくるなんて……これは一本取られたようだ。

夕食の後にするつもりだったけど、仕方ない。買ってきたお菓子は2人に──

「というわけで、気づけなかった飛鳥さんには~」
「問答無用でイタズラするデース!」
「え?お菓子は!?」

てっきりお菓子をねだりに来るものと想定していた僕は、面食らってしまう。

「だって、ハロウィンなんだからお菓子が貰えるのは当然デス!」
「でもアタシ達はイタズラもしたいのデス!」
「だから、アタシと切歌ロイドを見分けられなかった飛鳥さんには、イタズラ確定デース!」
「覚悟するデース!額に落書きしてやるデース!」

……前言撤回。ハロウィンだからって甘やかそうと考えた僕がいけなかったようだ。

「イタズラする悪い子にあげるお菓子は無い」
「「なんデスとー!?」」

キッパリと、ハッキリと、厳しく断言された2人は、あたふたと慌て始める。

「せっかくお菓子用意してたんだけど、要らないんだな?」
「「ガーン!」」
「そんな~!殺生デース!」
「勘弁してくださいデース!飛鳥さん!」
「謝るデス!許してくださいデース!」
「お菓子くださいデース!ちゃんと合言葉も言うデスよ~!!」

あわあわ、オロオロと表情をコロコロ変えながらお菓子を求めてくる2人の切歌。
まったく、これだからこの悪戯っ子は……

「しょうがないな。やり直しは一回だけだぞ?」
「「やったデース!」」



そう言って切歌ちゃん達を微笑ましく見つめる兄さんは、なんだかとても楽しそうだった。

「いやー、これもまた『愛』ですねぇ……」
「またそこで愛?」
「ええ、愛ですよ」
「じゃ、僕はこの辺で」
「やっぱり辛辣ですよね流星くん!?調さんに似てきました!?」

慌てて僕を呼び止めようとするドクター。
この人リアクションがいちいち面白いから、弄ってて楽しいんだよなぁ。

「調ちゃんを連れて来ないといけないので」
「ああ、なるほど……」

ドクターは納得したように手を叩いた。

この研究所の主任である調ちゃんは、今日も自室に籠って研究している。
世間のイベントより自分の研究。面倒臭い事には手を出さず、自分の気の向くままに過ごすのが彼女の方針だ。

まぁ、研究者としては間違ってないんだけど……流石に不健康だ。僕だって空いてる時間はなるべく研究にあてたいけど、息抜きだって大切だ。

なので、無理矢理にでも部屋から出てもらおうと思う。
そうでもしないと、また夜中までエナドリをキメて研究を続けるマッドサイエンティストになりかねない。

「お手伝いしましょうか?」
「ドクターが居ると余計に出てこないと思う」
「う゛っ゛……痛い所突かないでください。泣きますよ?」
「大の大人が歳下に泣かされないでよ……」

半分冗談だろうとは思うけど、調ちゃんにド突かれて半泣きになってる事あるからなぁ……。
まあ、恩師の脛を容赦なく蹴飛ばしたり、足を容赦なく踏みつけたりしてる調ちゃんも大概だけどさ。

「お菓子、先に出しておきますからね」
「オッケー」

そして僕は紙袋を手に、調ちゃんの部屋へ向かった。



「調ちゃん、トリックオアトリート」
「お菓子なら他を当たって。わたし、忙しいから」

案の定、予想通りの答えが返ってきた。
薄暗い部屋でPCに向かって数値を入力している調ちゃん。暗がりに光るメガネがまさしくマッドな輝きを放っている。

まあ、こう返されるのは予想通りだったので、このままプランAを続行しよう。

「じゃ、イタズラしちゃうね」
「……は?」

一拍空けて、メガネを頭に上げながらこちらを振り向く調ちゃん。
何言ってるの、と言いたげな顔だけど気にしない。これはハロウィンのルールだからね。

「お菓子がダメならイタズラする。ハロウィンなんだから、当然だよね」
「なんでわたしも参加しないといけないの。面倒臭い」
「じゃあ調ちゃん、今週どのくらいお仕事してた?」

僕の問いに、調ちゃんは暫く考え込んで……

「徹夜はしてない」
「でもずっと仕事してるでしょ?」
「ご飯はちゃんと食べてるじゃん」
「お風呂は?着替えは?」
「……チッ」
「舌打ちしない。ほら、結局休んでないじゃん」

かつては意識不明に陥った切歌ちゃんを助ける為の研究だったけど、今じゃすっかりライフワークになって、研究第一のガサツな娘になってしまった調ちゃん。
これではいけない。16歳でこんなハードワーカーって、流石に危なすぎる。

「はい、というわけで調ちゃんも参加してね」
「しつこいなぁ……」
「衣装は僕の方で用意したから。それに、ちゃんと息抜きしないと、また切歌ちゃんに心配かけちゃうよ?」
「うっ……」

さすがの調ちゃんでも、切歌ちゃんの名前を出されると弱い。
考え始めたところで、追い打ちを仕掛ける。

「それに、ハロウィンでお菓子を集められれば、生活費の節約にもなる。主にドクターのお菓子代がね」
「確かに……」

実利を示して更に説得力を上げる。
この時点で既に半分ほど乗り気になってくれているだろう。

それじゃ、最後のひと押しだ。

「それになにより──」

部屋の明かりを付けると、調ちゃんの顔を真っ直ぐに見つめる。

こちらを見上げる調ちゃんの瞳をじっと見つめながら、彼女の方に手を伸ばす。

「僕と一緒に楽しい思い出、作りたくない?」

眠そうな目を見開く調ちゃん。

それから数珀の間があり、やがて彼女は口を開く。

「はぁ……わかった」

そう言って彼女は、僕の手を取った。

「勘違いしないでね。そろそろ休憩したかっただけだから」
「分かってるよ」

椅子から立ち上がらせると、紙袋を手渡す。
中には黒猫のネコミミカチューシャと、尻尾付きのドレスが入っている。

きっと調ちゃんに似合うだろう。
その姿を想像して、僕の胸は高鳴った。

なので……紙袋の中身を確認している調ちゃんに、僕は言っておかないといけない。

「それ、着替える前にお風呂入ってね。ちょっと臭うよ」
「……ウソでしょ?」
「いや、割と……」
「……反省する」

調ちゃんの生活習慣は、やっぱり僕に懸かっているらしい。 
 

 
後書き
短編は常にネタ切れなので、読者の皆さんのアイディアには毎回助けられています。
イベントが近づくとTwitterで募集かけているので、お題なりリクエストなり投げてくれれば幸いです。

それでは、ハッピーハロウィーン!
来月は未来さんの誕生日。こっちはネタが決まってますので、お楽しみに! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧