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おっちょこちょいのかよちゃん

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161 羽根の強化

 
前書き
《前回》
 杖を狙う稲目と馬子の念仏攻撃に苦戦するかよ子達。しかし、彼女達の前に玄奘という僧が現れ、彼の仏法によって形勢逆転する。そしてかよ子の杖の火薬を操る能力で二人の撃破に成功する。同じ頃、さり達も護符を狙おうとするアブー・アブドゥッラーの撃破に成功した!! 

 
 かよ子は己の杖を奪った因縁のある蘇我氏の一族を滅ぼし、次へ行こうとしていた。そして倒す為の手助けをしてくれた法師・玄奘にも礼をする。
「玄奘さん、本当にありがとうございました。私達はこの先へ進みます」
「はい、お気をつけて・・・、と言いたいところですが・・・」
「え?」
 かよ子はまだ玄奘が何か言いたい事があるのかと思った。
「貴女のその羽根は・・・?」
「ああ、フローレンスさんから貰った羽根です」
「そうですか、しかし、そのフローレンスの羽根は単に皆を乗せて飛ぶだけの能力のようですね」
「え?は、はい・・・」
 かよ子が冬田と共に貰ったこの羽根は確かに単に飛行する為の移動手段でしかなかった。本部からの出発の際は、自分の羽根は冬田と異なり、一切の強化はなされていない。
「それでは、その羽根に私の法力を与えましょう」
 玄奘は自分の右手に巻物を出現させ、それをかよ子の羽根に乗せた。その時、羽根が緑色に光り出した。
「こ、これは・・・?」

 アブー・アブドゥッラーを倒したさり達は清正の力を確認していた。
「尾藤君はそのボールを清正から貰ったのね?」
「はい」
「如何にも」
「それでその槍は?」
「我が槍はそれぞれ時と空間を操作する槍である。であるからして先程の奴が何処へ姿を消しようと空間の槍はあやつの持つ道具を貫く事ができたのである」
「そうなのね・・・」
「あ、清正。一つ聞くけど、この尾藤君のお母さんが私のいた清水って所の生まれなの。日本を襲った空襲って覚えてる?」
 さりは質問する。
「如何にも、その情報はフローレンスやイマヌエルから聞いておる」
「その時、孤児になってた尾藤君のお母さん達は親戚の家に引き取られることになったんだけど、不思議な感じがしてたんだって。何か心当たりあるかしら?」
「ああ、お主の母上がその護符を使用して十次と言う者をそちらの世に召喚した事から始まる。十次は戦災孤児とやらの救済の為に日本の政府にGHQとやらに頼んで孤児の救済に尽力したとな。まあ、お主の護符とかは我々のこの世界でも秘密の事項だあるが故、このくらいしか聞いておらんのだが・・・」
「そっか、それで、尾藤君は私の護符やかよちゃんの杖に不思議な予感を覚えたのね。その十次って人は今も元気にしてるのかしら?」
「う・・・、すまぬ、実はその十次とやらは既に倒されてしまった・・・」
「倒された!?」
「ああ、殺戮を正義とする世界の者でベニートというやらと交戦したのであるが、敗れて殺められたと聞く・・・」
「そんな、そうだったんだ・・・。お母さんにも会わせたかったのに・・・」
 さりは落ち込んだ。
「その仇、私が取るわ・・・」
「俺もいくと!」
「うむ、お主らのその気があれば十次もきっと喜ぶであろう」
 さり達はもう一つの目的を持ち始めた。

 その頃、紂王と妲己の屋敷。一人の少年は昼寝していた。
(・・・)
 いつもは学校で午後の授業に眠気に耐えながら受講しているのだが、ここに来てからはそのような苦痛はなくなった。何と快楽な地だろうと少年は思っていた。その時、誰かに手を握られた。
「え?」
 少年は起き上がった。いつの間にかこの屋敷の一人の少女が添い寝をしていた。
「あ、すみませんでした・・・。私、茂様に夢中になってつい・・・」
「いや、いいよ、気にしないでさ・・・」
 少年は女の子と寝るなど生まれて初めての事でとても驚いた事ではあるのだが、少し嬉しくもあった。もしかしたらこの子を好きな子にしても「あの世界」のように卑怯な事をしても愛想を尽かされる事や、遠くに住んでいるからという理由で別れが必ず来るという事はないだろう。
(えへへ・・・)
 少年は顔がにやついた。
「茂様、嬉しそう・・・」
「あ、いや、そんな・・・」
 その時、別の女性が入って来た。
「茂様、よく寝られま・・・、な、何をしているのですか、不届き者!」
「も、申し訳ございません!」
 添い寝した遊女は思い切り寝台の外へ出た。
「いいよ、僕は気にしてないよ!」
「まあ、茂様がそう(おっしゃ)るのであるならば・・・」
 入って来た女性は気を取り直して言葉を続ける。
「一緒に御遊びになりませんか?本日は茂様の住んでいたという国から取り寄せた玩具があるのです」
「うん、行くよ!」
 少年は部屋を出た。

 別のとある場所。ヴィクトリア女帝はクローマー伯爵の軍が壊滅したとの情報を耳にしていた。
「コノート公に続いてクローマー伯爵もやられた・・・!?」
「はい、倒したのは杖の所有者、そして嘗て我々の植民地化に反対したラクシュミーという王妃です」
「杖の所有者、ラクシュミー・・・!!」
 女帝は怒りで手が震えた。
「その者が動く目的は?」
「はあ、それは今の所不明です。しかし、方角からして中華の街に向かっています」
「どちらも抹殺しなさい。向こうの街の人間とも連絡を取り合って杖を頂く計画も立てるのよ」
「はい」
 女帝は軍の調整を図り出した。

 玄奘が出した巻物によってかよ子の羽根が緑色に光り出した。
「こ、これは・・・?」
「私の仏法の法力を貴女の羽根に流し込みました。この羽根があれば時には結界を張って守ってくれるでしょう。但し、結界も絶対の壁という訳ではございません。あまりいないとは思いますが、私以上の強力な仏法を持つ者には耐え得る事はできません。また、異教の能力(ちから)を得ている者との戦いとなりますと、私自身は何とか対処する事はできたのですが、その相手に対しては効くかどうか微妙な所です。しかし、それでも何も施しがされていないよりはましですが」
「玄奘さん、ありがとうございます・・・!!」
「所で皆様の目的は?」
「私達はこの世界に消えて行った友達を助けに行くんです」
「そうですか。この先はもっと険しく、恐れ多い道となるでしょう。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「はい!」
 かよ子達藤木救出班は玄奘の法力を得た羽根に乗ってその場を去った。
「はて、あの者達が進む道は、私が進んだ道と同じくらい、いや、それ以上の危険なる道であろうか・・・」
 玄奘は呟いた。

 かよ子達藤木救出班は先へ進む。
「ところで、あの玄奘って人、なんか『西遊記』の三蔵法師みてえな人だったな」
 大野が玄奘に対する感想を述べた。
「確かに、インドへ向かうってところが似てるブー」
「ああ、確かあの人がモデルになったらしいな・・・」
 椎名はそう言った。
「そうなんですか。なら凄い人ですね・・・」
 そして一行は先へと向かった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「放課後に現れた女性」
 アブー・アブドゥッラーの撃破に協力した清正と行動する事にしたさり達。長山は清正から自身もまた赤軍に狙われている身である事、その理由を知らされる。そして清水の地に立ったフローレンスはある「少女」への接触を試みる・・・!! 
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