| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある3年4組の卑怯者

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

31 友達(ほりこずえ)

 
前書き
 「ちびまる子ちゃん」のスピンオフ作品「永沢君」オリジナルキャラの堀さんなのですが、彼女を登場させる事を考案していた段階では藤木のいる学校に転校して藤木がまた惚れるという展開でした。しかし藤木の学校には既にリリィが転校生として登場しており、短期間で二人も同じクラスに編入してくるのは不自然に感じた為、みどりちゃんが通う学校の転校生として登場させる事にしました。そして、みどりちゃんは藤木に好意を寄せているものの、当の藤木は彼女の想いを迷惑がっている事もあり、そうなるとみどりちゃんの出番は少なくなります。その為、彼女の出番を増やす為にもみどりちゃんを主人公にしたエピソードを執筆しようと思いました。ところが、みどりちゃんは自分の学校には友達がいない為にそのままでは話が作成できません。その為、堀さんがみどりちゃんの友達になるという展開が生まれました。 

 
 日曜になった。みどりは堀の家に向かった。その時、堀の言葉が彼女の頭の中に蘇る。
《一緒に皆とも仲良くなろうね》
 みどりは自分以外にも堀に招待されたクラスメイトがいるのだからこれを機に彼らとも仲良くなりたいと思っていた。
 堀家に着くと、みどりはインターホンを鳴らした。
「こんにちは、吉川みどりです」
「あら、いらっしゃい」
 堀の母が出迎え、そして居間に通された。堀がいた。先に泉野も来ていた。
「こんにちは」
「いらっしゃい、吉川さん」
「おお」
 やがて、矢部やクラスメイトの保谷翔介(ほやしょうすけ)日山(ひやま)えつ()がやって来た。この6人で遊ぶことになった。
(私もこの中に入れるかな・・・?)
 みどりは己を非常に心配した。
「まず何しようかね?」
 保谷が聞いた。
「そうね、せっかくだから学校じゃできないことやりたいわね」
「んじゃ、堀さんが前に住んでいた場所の話聞いてもいいかな?」
 日山が頼んだ。
「もちろんいいわよ」
 堀が承諾した。
(堀さんが前に住んでいたところ・・・、気になる!)
 みどりも興味を持った。
「私は山梨県に住んでいたけど静岡県(ここ)と同じように富士山が見える所だったの。周りには葡萄畑もあって近所の農家の人からたまに葡萄を貰ったこともあるわ」
「そういや山梨県ってブドウが旨いんだったね」
 泉野が思い出すように言った。
「ええ、もちろん、他にも桃や林檎を栽培しているところもあったわ」
「うわ、フルーツ王国だね!いってみたいわ!」
 矢部が感激した。
「うん、私も皆を誘いたいわね!」
 堀も笑顔で言った。みどりも山梨県に行ってみたいと思っていた。 
「そういえば、ウチの従妹も山梨に住んでんだけど、水もウマいって聞いたことあるな」
 泉野が言った。
「そうね、富士山や南アルプスから天然水が取れるからね。すごく美味しいわよ。あと温泉もあるわ」
「わあ、ますます行きたくなっちゃう!」
 日山が手を当てて感激した。
「フフッ、私の話はこれくらいかな。みんなでトランプやらない?私持って来るわ」
 そう言って堀は一旦居間から出て行った。しばらくしてトランプを持って戻ってきた。
「まずババ抜きからやろうか」
「賛成~!」
 こうしてトランプが始まった。みどりもゲームできるなら皆と楽しめると思った。
 ババ抜きが進んでいく。だが、みどりがババになってしまった。
「う、そんな、う、う・・・」
 みどりが泣き出しそうになる。堀を除く4人はまた厄介な事になると感じた。
「あの、吉川さん、泣かないで!もう一回やろう、ね!!」
 堀が慌ててみどりを慰めた。
「あ、はい・・・」
 もう一度ババ抜きをやる6人。そして、みどりが再びジョーカーを引いてしまった。みどりが再び悲しみの表情を見せる。結果的にはなんとかババを回避したが。
「よかったね、吉川さん!次は別のやろうか。7並べどうかな?私好きなの」
 堀が提案する。反対はなかったが、堀は泣きそうな表情のみどりが気になってしょうがなかった。
 7並べを行う間、みどりは泣くのは止まったが、沈んだ表情だった。みどりは今度は負けなかった。それどころか1位になれたのだ。
「あの、良かったわね、吉川さん!」
 堀が拍手をしてみどりを祝福した。そして、矢部が口を開く。
「堀さん、随分吉川さんに気を使うわよね。疲れるでしょ?」
「うん、でも私、吉川さん友達いないのが可哀想だから、ここで皆にも仲良くなろうって決めたの。吉川さん、そうよね?」
「は、はい・・・」
「だから、泣いてばかりいないで、皆と仲良くなろうよ!出ないと、ずっと友達出来ないよ!頑張って!」
「堀さん・・・」
 みどりは堀に檄を飛ばされていることに感じた。そして今までを顧みた。そういえばいつも都合が悪くなったり、思い通りに行かなくなると、泣いていた。それで皆から遠ざけられ、友達ができなかったと。さらに堀と友達になるために、泣き虫を治したいと思った。なのに、ここでまた泣いてばかりで皆に迷惑かけている。
(そうだ、私堀さんと約束したんだった。堀さんと共に皆と仲良くなっていくと・・・。だから自分でも泣き虫を治したいと・・・)
 みどりはこれまでの自分から脱却しなければならないことを思い出した。
「そうですね。泣くのをやめます。せっかく堀さんや他の皆さんと仲良くなれるチャンスなのに・・・」
 みどりはハンカチを出して顔を拭いた。
「吉川さん・・・。じゃあ、次はみんなでかるたやろう!」
「おう、いいね!」
 保谷が賛成した。こうしてみどりは堀や他のクラスメイトの輪の中に入れた。かるたでは堀が読み上げ係を担い、皆が取る係となった。みどりは負けてしまったが、泣いてはならないことを思い出し、「負けてしまいました」と照れくさく言った。こうしてかるたをもう一度やって遊んだ。このときは、クラスメイトたちもみどりが堀によって泣き虫を治そうと頑張っていることを見直したのだった。

 こうしてみどり達は帰ることになった。
「みんな、ありがとう。とても楽しかったわ」
 堀は礼を言った。
「こっちこそ楽しませてくれたよ」
 保谷が答えた。
「さよなら~」
 こうして皆は帰る。途中、みどりは日山に話しかけられた。
「吉川さん、今日は頑張ったのね」
「え、何がですか?」
「泣かないように頑張ったじゃない」
「そうだな、もし泣き虫を治っていけば、堀とも皆とも仲良くなれるぜ!」
 泉野が励ました。
「は、はい、ありがとうございます!あの、皆さん、私も泣かないように頑張りますから、私と友達になってもよろしいでしょうか?」
 みどりが頼んだ。
「そんな事ならもちろんさ!」
 保谷が答えた。
「俺もだよ」
「私も!」
「私もなるわ!」
 友達が増えてありがたく思うみどりだった。
「あ、ありがとうございます!!」

 翌日、みどりは登校中に堀と遭遇した。
「あ、堀さん、おはようございます」
「おはよう」
「あの、昨日はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「いいのよ、吉川さんは昨日は頑張って泣かないよう努力してたんだもん。昨日は来てくれてありがとう。楽しかったわ」
「あ、はい、あの、あの後皆さんと友達になれました。私泣かないように頑張ります!もっと友達作るために・・・」
「そうね、頑張ろうね!私にとって吉川さんは大切な友達だもん、応援するわ!」
「あ、ありがとうございます」
 みどりは堀に励まされた事、そして大切な友達と言われた事が何よりも嬉しかった。 
 

 
後書き
次回:「遊園地」
 共働きの藤木の両親はたまには息子に家族で出かけることをしてやりたいと思い、家に届いた遊園地の招待券で遊園地に行くことにする。そこで藤木が出会ったのは・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧