異生神妖魔学園
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ファーストフード恋愛疑惑!?
紺子と一海が目を覚ましたのは午前6時半過ぎだった。
紺子「ん……もう朝か………」
一海「出雲姐ちゃんいじってるうちに、いつの間にか寝ちゃったみたいだね…」
紺子「上手い具合に私の上に乗っかりやがって……」
お互いベッドから起き上がり、伸びた後、紺子は新聞を取りに外へ、一海は顔を洗いに洗面台へ向かう。
リビングに戻った紺子は新聞と遠呂智が置いていったいなり寿司入り容器、そして封筒を持っていた。
一海「ん?それ何?」
歯を磨きながら持っているものを見てみる。
紺子「新聞取りに行ったらポストに入ってたんだけど」
一海「これは……いなり寿司!?」
紺子「いなり寿司だけじゃねぇ。手紙も入ってたぜ」
一海「誰から?」
紺子「草薙遠呂智って書いてたな。倒れた私のために持ってきてくれたんだろうな」
一海「草薙遠呂智って……え、嘘でしょ!?まさかあの遠呂智さん!?」
驚きのあまり床に歯ブラシを落とす一海。封筒をもぎ取り、それを開封してみる。
一海「カフェ『EVOLUTION SPACE』のマスターが何で…!」
紺子「私が龍華を大回転させたからじゃね?あいつ体育の時間からずっと保健室にいたし」
一海「大回転させたとかマジで何したの!?」
紺子「話せば長くなるぞ?」
一海「あっ…………じゃあ、いいや」
そのまま手紙を読んでみる。
カズミンへ。
お前んトコの紺子、ずいぶんひでぇ目に遭ったみたいじゃねぇか。
龍華も早く寝ちまったし、喫茶店もあいつのせいで営業時間減って閉店しなきゃならなかったし、こっちもこっちで最悪だぜ。そこで俺が差し入れとしていなり寿司買ってきてやったぜ。
俺もいなり寿司作ってやりたかったが、昔から料理下手なんだよなぁ。だからいつもダークマターになっちまう。龍華に頼みたかったが、あいつ具合悪いとか言ってたからなぁ…だからコンビニので我慢してくれ。マジですまん。
夜食に食ってもいいし、紺子が起きたら食わせてもいいし、好きにしていいぞ。そんじゃあな。休日だからしっかりリラックスするんだぞ。
草薙遠呂智
PS.たまにはEVOLUTION SPACEに来てくれよ?いつでも美味いコーヒーおごってやるからな。
紺子「……そういえば遠呂智先輩が作る料理、マジでダークマターだったっけ」
一海「知ってるの?」
紺子「私行きつけの店だからな。ナポリタン注文した時なんかもう最悪だったな。イカスミパスタより黒かったし、もはやパスタじゃないし、笑うしかなかったよ。結局諦めてコーヒーだけにしたけど」
一海「いやいや、何をどうしたらそんな料理になるの?」
紺子「わかんねぇ。でも料理下手なのは自覚してるし。最初コーヒーだけで商売してたけど、龍華が来てから繁盛してるし」
一海「龍華があそこで働いてるのも気になるけど、出雲姐ちゃんが龍華に何したか一番気になるんだけど」
紺子「尻尾使って竜巻にしました」
一海「いや、出雲姐ちゃんとことんバカ!?そりゃ遠呂智さんが代わりに持ってくるわ!!」
2人は朝食として遠呂智が買ってきたいなり寿司を食べた。
手紙にあったように今日は休日。紺子が着替えたのはいつも着ている服ではなく、狐のイラストがプリントされた長袖とネイビーブルーのチノパン。一海はいつものチョーカー、夕日がプリントされたTシャツ、黒いチノパンだった。
紺子「今日は休日だからどっか遊びに行きてぇなぁ…」
一海「ゲームセンター寄らない?あっ、あと買い物もいいね」
紺子「うーん……そうだな。私もその気分だったし」
一海「奇遇だね!よし、決定!」
紺子(休日だからって油断できないと思うのは私だけ?また変な騒ぎ起きたりして………)
シャワーを浴びた後、部屋の掃除をする、食器を洗うなどして、それが終わったのは午前9時頃。
出かける準備を終え、紺子が鍵をかける。それぞれ自転車に乗ると、そのまま街へ向かっていった。
紺子「結構時間かかったけど、やっと人間の街に……キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」
一海「そんなに大声出さないでよ!変な目で見られるでしょ!」
2人が到着した時間は午前10時前だった。
普通の人間たちがたくさん歩き回り、車も走り回っている。
紺子「時間もちょうどいいし、どっか開いてる店あるかなー?」
一海「全然聞いてない…!ていうか人って休日になるとこんなにテンション上がるの!?」
すっかり元気になったというのも理由に入る。そういえばこの2人、バイトしているのだろうか。
紺子「まずどこに行こうかな?」
一海「とりあえず…買い物しよっか。欲しい服あるし」
紺子「お、マジで!私も前から欲しかった服あるんだ!」
いつも口の悪い紺子だが、こう見えても今時の女子と同じ一面もある。特にかわいい服には目がないのだ。
見ると、紺子の目はキラキラ輝いていた。
一海「ちょうどいいところにいい店が……」
紺子「うおおおおおお!!ここ私の好きな店じゃねぇか!ナイスタイミング!ほらカズミン、早く行こうぜ!」
一海「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!引っ張らないでよ~!」
腕を引っ張られながら店内へ入っていった。
しばらくして紙袋を持った紺子と一海が出てきた。持ちきれないものは腕と尻尾に引っ提げていた。
紺子「いや~、買った買った!今日が半額セールだったなんてびっくりだよ!」
一海「出雲姐ちゃんより僕の方が一番荷物持ってない!?」
紺子「そりゃお前、尻尾9本あるし。荷物持ちとかとても便利じゃねぇか。文句言うなよ」
一海「文句も何もさ、自転車どうすんの?両手塞がってるから乗れないじゃん」
紺子「…………あ」
一海「バカだーっ!!これじゃ帰れないじゃん!!マジでどうすんの!?」
紺子「私としたことが全っっ然考えてなかったよぉ……」
一海「誰か手伝ってくれる人いたらいいけど………いるわけないか………」
手伝ってくれる人とはこの街に遊びに来ているクラスメイトか先輩である。
しかしここに来ている者などいるのか?辺りを見回していると。
???「やあ。紺子とカズミンも来てたんだね」
紺・一「「牙狼(君)!」」
見覚えのある銀髪の少年がロードバイクを押しながら近づいてきた。3年の牙狼だった。
紺子「びっくりしたぁ…こんなところで会うなんて…」
牙狼「僕もここにたまたま遊びに来たんだけど…君たちもここにいるなんて僕もびっくりしたよ」
一海「そりゃ僕たちも休日満喫したいよ。出雲姐ちゃんなんかテンション高くてさぁ……」
牙狼「……あ~、だからこんなに服買ったんだね」
紺子「持ちきれないから尻尾とかに引っ提げてるんだけど、おかげで自転車に乗れなくなっちまった……」
一海「半額セールだからって調子乗ってたんだよね」
牙狼「うーん………強いて言えば紺子の方が悪いかな」
紺子「はぁぁ!?おいテメェ!カズミンの味方する気かよ!?」
荷物を持ったまま牙狼につかみかかろうとするが、文字通り腕に荷物を引っ提げたままなので思うように腕が上がらなかった。
圧力がかかり、ちぎれそうなほどの痛みが走る。紺子は痛みを紛らそうとしゃがむ。
紺子「イテェ……腕も尻尾もマジでイテェ……」
一海「ほら、それだもん。牙狼君の言う通り出雲姐ちゃんが悪いよ。半額セールだったからってさぁ…」
紺子「うるせーよ…ホントこれマジで重いし痛いし………」
牙狼(なんかかわいそうに見えてきたな………)
しゃがんだ紺子に牙狼が近づく。
牙狼「重いんでしょ?そんなに無理しちゃって、骨折れたらどうするの?」
紺子「牙狼……」
牙狼「君もカズミンもずっと持ってたら怪我するかもしれないし、こういうのは僕も協力して持った方がいいと思うんだ」
一海「え……」
牙狼「ほら、無理しないで。僕も持ってあげるから」
紺子「でも…私たちの荷物結構多いぞ?大丈夫なのか?」
牙狼「平気だよ。慣れてるし」
紺・一「「牙狼(君)…………/////」」
赤面する紺子と一海。口が悪い紺子も一人称が《僕》の一海も女子。先程みたく手伝ってやると言われると嬉しくなってしまう。
今の2人の状況はまさにその通りだった。特に紺子は嬉しさのあまり言葉が出てこない。
紺子「………………っ/////」
一海(どうしようどうしよう……何て言ったらいいかわかんない………/////
牙狼「ん?どうかしたのかい?」
紺子「どうかしたも何も………嬉しすぎて言葉出ねぇんだよ………//////」
一海「僕も………//////」
牙狼(僕何か変なこと言ったかな…)
紺子と一海が赤面してから10分後、ようやく落ち着きを取り戻した。荷物持ちは牙狼も手伝ってくれることになり、いくつか持ってくれた。
周りの人間はほとんどが気にしなかったが、その中である人間が見つめていた。
???(ヘッヘッヘッ、人外か……人外が通う学園があったと聞いたが、あいつらがその生徒だとはな………)
その男の名は『砂道 焔』。ドレッドヘアーでサングラスをかけ、黒い肌に無精髭を生やした大柄な体格をした、まさにヤクザと言ってもいいような風貌である。
焔(あいつらの仲間を人質にするにゃあちょうどいい……ゲーム感覚で弱い奴から順に捕まえて殺し、海に捨てりゃあ俺様は人外殺しの英雄になれるんだからなァ……)
だが焔の考えている英雄とはほど遠い。このヤクザ、一体何がしたいのだろうか。
やがて昼近くになり、紺子がスマホで時間を確認する。
紺子「もう12時近いな。お前ら腹減ってない?」
一海「あ、もうそんな時間?いい感じにお腹鳴ってるよ」
牙狼「どこかいいレストランあればいいんだけどなぁ……」
牙狼が見回すと、ある店に目が入った。
牙狼「あっ、ファーストフード店『フォック』だ」
一海「フォック?」
紺子「昼飯食べれるんならどこでもいいや。私そこ行きてぇ」
牙狼「いい店があってよかった……そこで食べるとしますかね」
一海「うん」
だがそこで思いもよらない出来事に遭遇するとは夢にも思わなかった。
そんなこととは露知らず、3人はフォックに入っていった。
店員「お待たせしました。こちらビッグフォックセットが2つ、チーズバーガーセットが1つになりまーす」
食べたいものを頼んだ3人だが、紺子と牙狼がビッグフォックセット、一海がチーズバーガーセットだった。
紺・一・牙「「「いただきまーす」」」
紺子「あ~、やっぱここのハンバーガー美味いわ~♡」
一海「メニューも豊富だからいろいろ楽しめるよね」
牙狼「ビーフステーキもいいけどハンバーガーも悪くないや」
紺子「ビーフステーキ?ああ、お前のお気に入りのレストランにある好物か」
牙狼「今度君たちにもおごるよ。いつになるかわからないけど」
一海「いいよいいよ。そのレストランに行ったらまた君に会えるかもしれないし」
紺子「滅多にないと思うぜ?私たち家で食べる派だし」
一海「でも会えたら嬉しいじゃん」
牙狼「はいはい、その話はおしまい。早く食べないとポテトも冷めるし、シェイクも溶けて変な味になっちゃうよ」
一海「うん(ポテトって何で冷めたらパサパサになるんだろ?)」
紺子「………ん?」
ポテトを口に入れようとした紺子だが、ある人影に目を向ける。
牙狼「どうしたの?」
紺子「なんか……あれ?あの2人、どっかで見たことあるんだけど……」
後ろ姿だが、紺子には見覚えがある。
座っていたのはブカブカの白衣を着た少年、灰色の犬耳と尻尾が生えた女性だった。
紺子「嘘だろ…あれ野人先生と大狼先生じゃねぇか……」
牙狼「え…先生までいるの?」
観察を続けていると、座っていたのはやはり野人と大狼だった。
野人はポテトを手にし、それを掲げる。大狼はポテトを見上げながら口を開ける。
牙狼(嘘だろ!?やっぱり野人先生と大狼先生だった!!何でいるの!?え、ホントに何で!?)
一海(まるでペットにおやつあげる飼い主みたいだな……)
大狼「ワンッ!」パクッ
野人「あーダメだ!僕身長低すぎるからすぐ食べられちゃう!もっと身長高ければなぁ…」
大狼「もっとくださいよ~。ね~え、野人せんせ~」
甘えるような目をし、野人は再びポテトに手を出す。
野人「仕方ないですね……はい、あーん…と見せかけてっ!」
大狼「きゃうんっ!」
野人がポテトを動かしながら口に入れ、期待していた大狼は転ぶ。
野人「『きゃうんっ!』って……ククッ……い、犬みたいな声出してっ……プフッ…か、かわいい………」
大狼「笑わないでくださいよぉ…痛いじゃないですかぁ…」
野人「す、すいませんっ…プククッ……」
笑いをこらえる野人だったが、これを見ていた紺子は。
紺子「こ、これはまさか……もしかすると……もしかするとぉ………!?」
一海「どうしたの出雲姐ちゃん?」
紺子「れ………れ………れっ………」
牙狼「れ?」
紺子「恋愛ィ!!?」
たまらず大声を出してしまった。周りの客はもちろん、ぎょっとした野人と大狼も紺子たちの方を向く。
野人「うわああああああ!!!う、うちの生徒たちがなぜここにィィィィ!!?」
大狼「知りませんよぉ!!ていうか私たちの行動全部見られてたかもしれないですぅぅぅ!!」
文字通り大パニックになる2人。困り果てた野人が立て続けに叫ぶ。
野人「皆さんホントに勘違いしないでください!!別に私たちは恋愛とかそういったものでここに来たんじゃありませーん!!自分の身長とかそういうのについて話してただけなんですー!!!そして大狼先生は狼より犬に見えたのでその気分で大狼先生にあーんさせてただけなんです!!!これホントにホントなんです!!!お願い信じてー!!!」
大狼「伊佐先生落ち着いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
野人「ゴファ!?」
叫びすぎが原因か、野人は吐血してしまった。
紺子「え?これ全部私のせい?」
一海「そりゃそうでしょ!!」
牙狼「伊佐先生叫びすぎて血まで吐いたんだよ!?『恋愛ィ!?』とか言っちゃってさ!さすがにないよ、それは!」
紺子「やっぱり……」
口から血を流した野人が紺子に近づく。吐血して満身創痍なのにまだ叫ぶのかと思っていたが。
野人「出雲君……お願いだ…今日君たちが見たこと……全部…内緒にしてくれないか………?」
息も絶え絶えになり、顔色も悪かった。だがその表情からは必死という文字が浮かんでいた。
野人「このことが他の生徒たちや……先生にバレたら……我々はもう教師として生きていけない…………」
紺子「…………」
野人「頼む………ホントにお願い………」
紺子「あ、ああ…わかったよ」
野人「ダメだ………め、目の前………に………は、花畑………が…………………………」
野人の意識はここで途絶えた。
大狼も必死に懇願して紺子もそれにうなずくと、倒れた野人を抱えて店を出ていった。
紺子「な、なんかちょっと……複雑な気分……」
その頃の異生神妖魔学園。辰蛇はまだ放送室内で逆さ吊りの状態だった。
辰蛇「フゴォォォォ!ホゴォオオオオオオ!」
いつの間にかボールギャグを噛まされており、その穴からよだれを垂らしながら必死に助けを求めていた。
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