そっくりな姉妹でも

　ここでだ、母は閃いた。それで二人だけでなく父にも言った。
「お母さん閃いたわ」
「閃いた？」
「閃いたっていうと」
「あんた達入れ替わりなさい」
　自分の娘達をびしっと指差して告げた。
「いいわね」
「入れ替わりって」
「どういうこと？」
「お母さんも正直それぞれの人達はどうかって思ってるわ」
　娘達にお見合いを申し出てきた彼等はというのだ。
「性格を見てくれてはいいにしても」
「それでもよね」
「その人間性はね」
「二人共駄目ね、どうしようもないわ」
　そうした者達だというのだ。
「だからね」
「お母さんにしてもなのね」
「お断りということで」
「そう、けれどお見合い自体は断れないから」
「それでなの」
「私達がなの」
「入れ替わってお互いになりすまして」
　そうしてというのだ。
「あんた達それぞれの地を出すのよ、美佐子は美里子になって美佐子の地を出すのよ」
「美里子って言って私のままでお見合いするのね」
「そう、そして美里子は美佐子になって」
　今度は美里子に言った。
「美里子の地を出すの」
「そうすればいいの」
「そう、相手は自分が思っていたのと正反対の性格だって知ったら」
　その時はというのだ。
「わかるわね」
「ええ、もうね」
「嫌になるわね」
「そう、あんた達を外見で見分けられるのは至難の技だから」
　そっくりなだけにというのだ。
「お父さんだって中々だったのに」
「そうだな、子供の頃は本当に見分けがつかなかった」
　その父も言ってきた。
「だからな」
「いけるのね」
「それで」
「ああ、初対面で見分けがつくものか」
　父は娘達に対して言い切って答えた。
「母さんの言う通りだ、それでいってみろ」
「それじゃあね」
「お見合いの時は入れ替わって私達の地を出すわね」　
　娘達も答えた、そして実際にだった。
　姉妹はそれぞれ入れ替わってお見合いに出席した、そこでそれぞれの地を出すと相手は両方共だった。
　思っていた性格と違う、こう言ってだった。