| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Fate/WizarDragonknight

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

神との対峙

 
前書き
モブ1「うわーん! このままムー大陸がぶつかってきて、僕たち死んじゃうんだ!」
モブ2「地球が壊れてしまうなら、もうこんなところに避難しても仕方がないよ……もう終わりだ……」
モブ3「あの訳の分からない連中が頑張ってるみたいだけど、あんな奴らに何ができるっていうの……? ああ、こんなことならもっと早くお嫁に行っておくべきだったわ」
モブ4「何てことだ……警察は、自衛隊は何をやっているんだ!?」
まどか「……皆、どうしてそんな自分勝手なことを言っているんですか!? 今この瞬間も、えっと……ウィザードたちは、一番危険なところで頑張っているのに!」
モブ4「そんなこと言われても、私達に何ができるっていうんだ!?」
モブ2「地球が破壊されるのを待つ。僕たちに残された道はこの一つしかないんだよ!」
モブ3「私達が助かる可能性なんて……」
???「助かる可能性は限りなくゼロに近いかもしれないけど、希望を捨てたら、そこで終わりじゃない? 情けない大人たち」
まどか「え? さ、さやかちゃん!?」
さやか「ムー大陸の中で、その訳の分からない連中は必死に頑張っているのに、アンタ達はもう絶望するの? 絶望からは、何も生まれないよ?」
まどか「そ、そうだよ! ハル……みんなが頑張っている間は、希望を捨てちゃだめだよ!」
さやか「だから、あるんじゃない? 今の私達にできることが」
モブたち「……」 

 
 あたかも生き物のように、それは鼓動を続ける。
 ラ・ムーは、その深紅の眼差しでウィザード、ビースト、響を見下ろしている。

「行くよ……」

 ウィザードの言葉を合図に、三人は走り出す。
 しばらくの間、ラ・ムーは何もせずにそれを眺めていた。
 そして。

「な、なにあれッ!?」

 響が声を尖らせる。
 見上げれば、ラ・ムーの両腕がドリルとなっていた。

「なっ!?」
「やれ!」

 ブラジラの命令とともに、ドリルが発射される。
 ムーの神殿を抉りながら、ドリルはウィザードたちへ迫っていた。

「おいおい、コイツ……防御できねえぞ……!」

 尻餅をついたビーストが、抉られた跡を見ながらそう評する。

「避けるのが前提だけど……こんなのを避けながらの攻撃をしないといけないのか……」
「二人とも! 前を見なさい!」

 神殿の入り口付近で未来を保護しているリゲルが声を荒げる。
 彼女の言葉に従い、前を向けば、ラ・ムーの両腕は、ドリルからマシンガンへと変化していた。

「蜂の巣にしてやろう……!」

 ブラジラの声とともに、リボルバーが回転。無数の弾丸が放たれる。

『ディフェンド プリーズ』
「コウスケ! 俺の後ろに!」
「すまねえ!」

 ビーストが、障壁を張ったウィザードの背後に回る。
 一方、響はその拳だけで銃弾の雨の中へ飛び込んでいく。弾丸一つ一つを回避し、蹴り飛ばし、一気にラ・ムーとの距離を縮めていく。

「響ちゃん!?」

 ウィザードが声を上げる。
 すでにラ・ムーの目前に躍り出た響は、その右足を高く突き上げていた。

「我流 空槌脚!」

 足のパーツを極限まで伸ばしたかかと落とし。それは、ラ・ムーの片腕のリボルバーを反らした上、本体への接近を可能にした。

「うおおおおおおらああああああああああああああああ!」

 響は大音声とともに拳を突き出す。背中のブースターにより、彼女はあたかも黄色の流星となり、ラ・ムーの胸元へ激突した。

「やった!?」
「いいえ、ダメよ」

 ウィザードの楽観を、リゲルが打ち消した。

「反応に変化がない……あの怪物には、アレ程度では効果がないわ」
「だったら……」

 ウィザードは、別の指輪を使おうとするが、それをビーストが制する。

「待て。お前は魔力を温存したほうがいい。ここはオレが!」
『ファルコ ゴー』

 オレンジの魔法陣とともに、ハヤブサのマントを纏ったビーストは、ウィザードの頭上を飛行。そのまま、響の隣でダイスサーベルへ指輪を差し込んだ。

『3 ファルコ セイバーストライク』
「うおりゃ!」

 三羽のハヤブサが、ラ・ムーの各所を攻撃する。響をリボルバーで狙撃しようとしていたラ・ムーは、そのせいで狙いが逸れた。

「おのれ、目障りな! ラ・ムー!」

 ブラジラの命令に、ラ・ムーは吠える。リボルバーをドリルに戻し、祭壇の上を縦横無尽に狙い撃つ。

「させない!」
『フレイム シューティングストライク』

 飛んでくるドリルに対し、ウィザードは炎を集めた銃弾を発射する。ドリル一つと相殺し、破壊した。

「今だッ!」

 見かねた響が、ラ・ムーの胸元へ再び飛び上がる。雷光の閃きとともに、その姿がサンダーベルセルクとなる。

「我流・超雷電大剣(サンダーボルトブレイド)!」

 一回り巨大化したイナズマケンが、雷鳴とともにラ・ムーの胸元に炸裂する。
 発生した大爆発が、ウィザード、ビースト、リゲル、未来を飲み込んだ。

「今度こそやったのか!?」
「いいえ、まだよ!」

 またしてもウィザードの喜びをリゲルが否定する。
 爆炎の中より、まずは響が姿を現した。
 だが、無事な姿ではない。巨大な腕___ラ・ムー腕に掴まれている響の姿だった。

「響!」
『バッファ ゴー』

 響を助けようと、バッファローマントを付けたビーストが駆ける。だが、その前を無数のドリルがミサイルのように行き交い、思わずビーストも足を止めた。

「あれは……!」

 爆炎を切り裂き、現れたラ・ムーにウィザードは息を呑む。

「フハハハハハ! たかだかオーパーツ一つ程度の力で、ラ・ムーを止められるものか!」

 ブラジラの声とともに出現した古代の神。胸元のムーの紋章を破り、全ての力を解放した姿だった。その胸元には、シノビとダイナソーのオーパーツが輝いている。
 ラ・ムーはそのままマシンガンにした左手をウィザードたちへ向ける。

「! リゲル! あと君も!」

 ウィザードはリゲルと未来を抱え、ジャンプ。ビーストもドルフィンを使い、地面の中へ潜水する。
 マシンガンを一通り発射した後、笑みを崩さないブラジラは指をならした。

「!?」

 安全圏である階段まで退避したウィザードは、慌てて体を反らす。
 すると、ウィザードのボディを剣が貫いた。

「っ!」

 ダメージに構わず踏ん張り、ウィザードは攻撃してきた対象を睨む。
 エランド。
 ムー大陸の兵士であり、動かない石像となっていたはずの存在が、次から次へと、床に出現する黒い穴より湧いてくる。

「こいつ等は……!?」
「皆まで言うな! バングレイがブライの記憶から作った兵士だ!」

 振り向けば、ビーストもまた次々に出てくるエランド兵たちに苦戦している。さらに、ブラジラが近いこともあって、ビービ兵まで攻撃に混ざってくる。

「おい、コウスケ! またドリルが来るぞ!」
「はあ!?」

 ウィザードの忠告どおり、ラ・ムーはドリルを発射。それも、先ほどまでとは数も速度も大違いだった。

「なら、私が!」

 それに対し、リゲルが前に出た。ボロボロの体ながら、何とか右手に巨大な砲台を装備。ゴーグルで、エランドたちの姿をロックオン。

「オールレンジ! 発射!」

 リゲルの光線は、全てのエランド、およびドリルに命中。破壊していく。

「よし……うっ!」
「リゲル、大丈夫か?」
「もともと無理してるのよ。でも、これで……」

 無数のエランド兵が、リゲルへ光線を発射する。

「!」
『コネクト プリーズ』

 コネクトで開けた魔法陣は、エランドたちの頭上に続く。エランドが自らの技で全滅したが、また黒い穴より浮かび上がってきた。

「どういうこと……一体、何体出てくるのよ……?」
「無駄な足掻きはよせ。ガンナー」

 嘲笑う声を、ブラジラが発した。

「ラ・ムーは、全てのムーの電波体の親。エランドなど、いくらでも作り出せる」

 その言葉を証明するように、祭壇一面を覆いつくす量のエランドが現れる。

「だとしても……ぐああああああああああ!」
「響いいいいいいッ!」

 さらに、ラ・ムーに締め上げられる響の悲鳴も続く。未来の声も、彼女には届かない。

「さあ、暴れろラ・ムーよ!地球を破壊する、その時まで!」

 ブラジラの言葉に従い、ラ・ムーは、まず手に握った響を床に叩きつける。祭壇の床に亀裂が走るほどの威力は、響の顔を大きく歪ませた。

「やめろおおおおおおおお!」
『ビッグ プリーズ』

 ウィザードの魔法陣から、巨大な腕が出現する。ラ・ムーの腕を掴み、響を解放しようとするが、巨大化した腕へ、ドリルが投げられた。

「っ!」

 巨大化の魔法は魔法陣ごと破られ、動きが鈍ったウィザードへマシンガンが炸裂。大ダメージで、大きく体が吹き飛んだ。

「まだ……まだ……!」
「ウィザード!」

 膝が折れるウィザードを、リゲルが支えた。

「っ!」

 だが、二人に休息はない。次々にラッシュとばかりに攻め込んでくるエランドたちへ、リゲルは大砲を放つ。

「ふむ。一つだけとは言え、オーパーツを取り込んだランサーは、速めに始末した方がいいか」

 ブラジラの言葉に、ウィザード、ビースト、そして未来に戦慄が走る。
 ラ・ムーは響を壁へ投げつける。祭壇の、ほとんどが破壊された壁、そのごくわずかに残っている部分へ、サンダーベルセルクの響を張り付けた。
 大の字になった響へ、ラ・ムーは頭を下げた。

「あれは……っ!」

 ラ・ムーの動きを見た瞬間、ウィザードはその仮面の下で血相を変えた。ラ・ムーの頭頂部にみるみるうちに光が溜まっていく。

「まずい……響ちゃん!」
「響!」
「響ッ!」
「だと……してもおおおおおおお! 我流・超雷電大剣(サンダーボルトブレイド)ッ!」
「さあ、再び見せてやろう! ムーの雷を!」

 ウィザードたちが止める間もなく、ラ・ムーの光は発射された。
 その、大きな光線の前では、雷の剣など、本当に小さく、儚く見えた。
 響を含めた祭壇の一角を洗い流すムーの雷。
 やがて、響はサンダーベルセルクどころかガングニールそのものを解除し、生身の姿で茫然と立ち尽くしていた。

「響!」
「響……響!」

 ビーストと未来が、祭壇より落下しそうになる響の腕を捕まえる。だが、ボロボロに力の抜けた彼女を持ち上げることは、満身創痍のビーストにも難しいようだった。
 ウィザードとリゲルも駆けつけようとするが、無数のエランド、そしてなにより、ラ・ムーのマシンガンがそれを阻む。



 ラ・ムーの一撃により、体にすでに力が入らない。
 ビーストが掴む右手がなければ、すでに響は、この高い祭壇よりムーの地表まで落ちていた。

「おい、響! 悪い、引っ張り上げられねえ! 登ってくれ!」
「響!」

 ビーストと未来が響を引っ張り上げようとする。少しずつ、上昇していく体の中、響ははっと表情を変える。
 ビーストと未来の頭上に現れる、板のようなもの。その周囲に刻まれる刃から、それがラ・ムーの剣だと察した。

「っ! 危ないッ!」

 響は左手で胸のガングニールと、その内側のイグナイトモジュールを同時に起動。赤い光とともにもたらされた運動性能で、空中へジャンプした。

「イグナイトモジュール、抜剣!」
「「響!?」」

 ビーストと未来を見下ろしながら、響は笑みを浮かべる。

「はっ!」

 響は、二人へ掌底を放つ。圧縮された空気により、二人は大きく投げ飛ばされる。

「響……!?」

 ラ・ムーの剣が振り下ろされる直前、響と未来の目があった。
 長く語る必要などない。ほほ笑みながら、響はそう感じていた。未来は首を振りながら、涙目で何かを訴えている。
 一方、ビースト。これは、彼の令呪が繋げているのだろうか。全く動かない彼の思考が、伝わってきた。「やめろ」「逃げろ」彼がそう語っているのは、果たして響の勘違いだろうか。

「ううん。未来を助けられなかった、私だから。今度は、ちゃんと助けたいんだ」
「やめろ……やめろ! 響!」
「ううん。これで、私の命で、未来を助けられるのなら……例えそれが、偽物でも……未来の命を奪った私にできる、最大の償いなんだ」
「違う! んなこと誰も望んでねえ! 未来だって……それに、お前は今生きている! だったら!」
「……!」
「だから……そんな、諦めたような目をするな!」

 そして。
 彼はきっと気付いていまい。自らの右手にある令呪が、輝きを放ちだしていることに。

「生きるのを、諦めるな!」

 彼が……ビースト(コウスケ)がそれを知っているはずがない。偶然とはいえ、その言葉を聞けたことで、響の心が少し安らいだ。
 そして、令呪の一画が消える。それは、彼の命令となったのだった。
 ラ・ムーの剣が、響の体を穿つ。イグナイトにより強化された肉体とはいえ、その一撃は響を変身解除させるほどに重く、またその意識も朦朧とさせた。
 そのまま、二度目の死の足音が聞こえてきた時。響は、その足音を消す唱を唄った。

『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl』



「何だ?」

 突如流れてきた歌声に、ウィザードは顔を上げた。
 ラ・ムーの圧倒的な力に、ウィザードもリゲルも地に伏せていた。だが、その歌声が持つ暖かさに、思わず痛みを忘れた。

「耳障りな……何が聞こえている?」

 一方、ラ・ムーの頭上のブラジラも唱の事態に動揺を隠せない。周囲を警戒し、発生源を探る。

「どこから聞こえてくる……この不快な……唱……歌だと……?」
「歌ッ……!?」

 その言葉に、ウィザードはリゲルを見やる。
 すでに分析を終えたのか、リゲルはゴーグルを収納し、ほほ笑みながら頷いた。
 そして。

『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl』

 歌が終わる。
 ムーの神殿に沈黙が流れる。
 ラ・ムーの鼓動音さえもうるさい今。祭壇の外から、眩い光が漏れだした。
 ウィザードは、目を覆う。その光に、何も見えなかった。
 ただ、ブラジラの声が聞こえてきた。

「まだ戦えるのか? 何を支えに立ち上がる? 何を握って力と変えている? ……お前が纏っているものは何だ? 心は確かに折り砕いたはずだ! なのに、何を纏っているッ!? それはこの星が作ったものか? お前が纏うそれはなんだッ!? 何なのだ!?」

 光が収まっていく。
 ようやく視界を確保したウィザードは、ムー大陸の上空___そこで白い光を纏う、翼を生やした人物を見た。
 装備は大きく変化しているが、それは間違いない。
 それは。

「シンフォギアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! エクスドラアアアアアアアアアアア‼」

 白く、輝く。立花響の姿だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧