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絢と僕の留メ具の掛け違い・・そして 結末

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2-⑵

 夏休みになって週に2日とか3日、絢と図書館で待ち合わせをして勉強した。だいたい午前中で別れたが、時たまパンと牛乳を買ってきて昼からも続けた。

 ある日、絢が「明日は私、お弁当作ってくるネ、いいでしょっ」

「うん」と言ったものの少し戸惑っていた。

 そんなこと初めてだったから・・・。それに、いつもは髪の毛を束ねているんだけど、今日は違って銀色の飾りでまとめてそのまま後ろに流していた。普段と違う絢を見た。
 
 次の日、お昼になって

 絢が「公園に行ってお弁当食べよっ」って言ってきたので、

 近くの公園に行ったのだが、二つあるベンチには先客が居た。

「駄目だね、芝生でもいいか」と言って向かうと、

「私、日向は苦手」と返してきたので、木陰を探してその下で座った。

 小さなタオルを絞ったものをポリ袋から取り出して、

 絢が広げて僕に「ハイっ」と手渡して、お弁当を広げていた。
中はサンドイッチと横にハムとかブロツコリーとか。

「どうぞ、味は文句いわないでネ」って言ってきたけど、

 箱が一つだったので、何か手を出しづらかった。でも目の前まで差し出してきたので、一つ、つまんで食べたが、なかなかおいしかった。

 その後も食べ続けたんだけど、絢と交互に手を出すからそれが恥ずかしかった。だんだん慣れてしまったけど・・・。
 
 食べ終えて、初めてお互いの家のことなどを話し合った。彼女のお兄さんは年が離れていて、大学を中退してアメリカで勉強のためと言いながら放浪の旅をしているらしい。あと、自分は会社の人達から、いとはんと呼ばれているが、そんなに立派な家の育ちでも無いのに、その呼び方を嫌っていることなど、初めて聞くことばかりだった。

 最後に、自分の中では学校の授業に、まるで興味がわかなかったこと、風景の絵を描くことだけが好きなこと(確かに彼女の書いた絵は鉛筆なんだけど、細かなとこまで描いてあって上手だなと感じたことがあった)、だけど勉強することに興味がわいてきたこと、

「モト君が居てくれて良かった、あの時、声をかけてくれて本当にうれしかったの」と下を向いて、
相変わらず頬を紅くしていた。
 
 彼女の頭に、落ちた木の葉が付いていたので、気づいて僕は取ってあげたが、その時、初めて彼女の髪の毛に触れた。とても細くて柔らかい。僕はドキドキしてしまった。

 彼女はもっと、頬を紅くして「ありがとう」と言って
下を向いたままだった。

 この時から二人の留メ具が掛かってしまったのかもしれない。 
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