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猫のきおく

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シーン23

 向かいの家の桜がこぼれんばかりに咲きだした。隣の家のもブロック塀の上を塞いでいるようだ。あの時戦ったクロスケはあれから見ないでいる。今朝からすずりチャンとお母さんが何やらバタバタとしていた。

 ソファーがある部屋の隣、俺は入ったことのないところだ。頭の左側から花の飾りが垂れている。薄いピンクに大きな花がいくつか描かれている着物を着て、可愛らしくすずりチャンが立っている。お母さんは追って細かな花の着物を着ている最中だ。

 俺に向かって、すずりチヤンが両手を広げて、「どう」って言ってクルリとまわって見せた。唇も少しいつもより紅い、ずっと大人になったすずりチャンに見えた。多分、眩しくて俺の瞳は縦に一本になっていたのではないだろうか。

「プチを抱くんじゃぁないわよっ、毛がつくから」って後ろから声が掛かってきた。お父さんも出てきて、すずりチャンに見とれて、しばらく声が出ない様子で口を半分開けたままだった。かけるもこの日は普段とは違う恰好をしていた。

 四人が揃って、お父さんの運転で出て行った。俺は閉め出されたが、乾いた魚を皿に入れ、「独りで留守番しててね」って言って、バイバイされた。神社へお礼参りに行ったみたい。行ってらっしゃい、本当に良かったねと見送った。
 
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