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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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Mission:8 ルインとアクセル

モニタールームでリディプスと通信をするためにエックス達が集まっていた。

ガウディルが通信機のブーストを上げればリディプスとの通信が可能になるかもしれないと言うので、早速頼んでみたのだ。

「通信機のブーストを上げてみたぞ。これで、通信妨害もちょっとはマシになるはずじゃ」

「ナナ、頼む」

早速試してみようと、リディプスとの通信を繋ぐようにナナに指示する。

「接続しました。エックスどうぞ」

「……大佐、リディプス大佐。聞こえますか?」

ナナに促されたエックスが呼び掛けると、少しの間を置いてリディプスの姿がモニターに映る。

『エックス、ゼロ。無事か?』

「はい。仲間も増え、ギガンティス付近にいたルナと合流でき、リベリオンに対抗する戦力も整いつつあります。」

『そうか、こちらにも良い報せがある。ギガンティスA6ポイントで、ルインらしき反応をキャッチした』

ルインの名前が出てきたことにエックスとゼロ、ルナとソニアが目を見開いた。

「ルイン!?ルインが生きていたんですか!?」

「あいつ…やはり生きていたか…」

「ほらな、あいつがそう簡単に死ぬわけねえだろ」

[お母さんが生きてるんだ!!]

それぞれが喜色を浮かべてルインの生存を喜ぶ。

『A6ポイントで…一瞬…ルイン…確かだ…』

徐々にモニターにノイズが走り、音声も聞こえなくなる。

[お父さん!早くお母さんに会いに行こうよ!ねえってば!!]

「わ、分かった。分かったから落ち着いてくれ」

エックスも今すぐにでも向かいたいくらいだったが、興奮したソニアの姿に冷静さを取り戻した。

「おいおい、何の騒ぎだこりゃあ?」

ソニアの大声を聞き付けたのか、スパイダーが不思議そうな表情を浮かべて入ってきた。

「スパイダー、お前は今までどこにいた?」

「俺はその辺にいたぜ?そんなことより何かあったのか?」

ゼロの問いにスパイダーは軽く答えると、スパイダーも何があったのかを尋ねる。

「ああ、ルインが…ルインが生きているかもしれないんだ!」

「それにしてもエックス、ゼロと同じS級のイレギュラーハンターの仲間か…仲間になってくれるのなら心強いな」

「マリノさんにルナにシナモンに…どんどん仲間が増えていくな。ルインにも会えるといいな」

「ああ、ルイン…どうか無事で…」

ルインの無事を案じながらエックスは早速仲間と共にルインがギガンティスA6ポイントにあるウルファト生産工場に向かうのであった。

[私も行くよー!]

「駄目だ」

「お前は大人しく留守番をしていろ」

「俺と一緒にな」

[ケチーーーッ!!]

向かう直前に共に向かおうとしたソニアはエックス達によって却下され、ルナと共に留守番となった。

「あ、そうだゼロ!こいつを渡しとくよ」

「剣……随分とでかいな」

転送装置に乗り込む直前にルナがゼロに特殊合金のフォースメタルを埋め込んだ大剣を渡してきた。

「ゼロの武器になりそうなの全然ないだろ?Zセイバーを改造しようにもパーツがないし…だから基地にあった金属とフォースメタルで造ってみたんだ。その剣はソウルセイバーって言って、ゼロが受けたダメージを攻撃力に変換する機能があるんだ。ダメージを受けてなくてもそこらの武器より一撃の威力はでかいぜ」

「そうか、すまないな…ありがたく使わせてもらう…思ったよりも軽いな」

受け取ったソウルセイバーはゼロの身長を越える長さだが、思ったよりも軽いことに驚く。

ウルファト生産工場に侵入したエックス達だが、少し先に進んだ直後に警報が鳴る。

「あ…私達見つかっちゃったんでしょうか?」

「いや、違うね。」

「いくら何でもタイミングが良すぎる。第一、ここには警備システムの類がない。恐らくは俺達以外の侵入者がいたか」

「まあ、今更後戻りは無しだよ。エックスの奥さんの顔も見てみたいしね♪」

「確かに、賞金稼ぎの時は天敵であまり会いたくねえけど。今なら会ってみたいかもな。結構な美人さんらしいし」

イレギュラーハンターのエックスとルインの組み合わせは有名でギガンティスでもそれなりに知られているらしい。

「ルインさんってどんな人なんですか?怖い人じゃないですよね…?」

「い、いや、そんなことはない。ルインは優しい人だからきっと君とも仲良くなれるはずだ」

世間知らずなところがあるシナモンはルインについてはあまり知らない。

有名なエックスとゼロのことを知らない時点でお察しだが。

扉を潜ると広い場所に出たが、妙な音が聞こえる。

「ん?この音は何だ?」

「動くな!」

ゼロが叫んだ後、周りが赤く染まり、警備用メカニロイドが動き出す。

「どうやら、一定時間を過ぎると周りが赤くなって警備用メカニロイドが動くって仕組みのようだな」

ゼロが停止したメカニロイドを見つめながら分析する。

「だが、それさえ分かれば怖くはないぞ!は~っはっはっは…(動かなくて良かった)」

「なあ、お前ら」

スパイダーがマリノとマッシモに気付かれないように小声で話しかけてくる。

「どうした?」

エックスもまた小声で返す。

「マッシモとマリノだけ残して先に行こうぜ」

「え?どうしてですか?」

疑問符を浮かべるシナモンにスパイダーは悪戯な笑みを浮かべる。

「なあに、ちょっとしたお節介さ…それじゃあ俺は先に行くぜ。ハイパーモード・トリックスター」

ハイパーモードを発動して、警備システムに引っかからないように先に進むスパイダー。

「…仕方ないな、それでは先に行かせてもらう。マリノ、マッシモを頼んだ」

「へ?」

「ステルスビームマフラー起動!!」

アーマーの背部から赤い帯のステルスビームマフラーが伸び、その状態で先に進む。

「俺はこう見えても0部隊の隊長なんでな。先に行かせてもらう、シナモンは俺と一緒に向かうぞ」

「はい!ありがとうございます!」

スパイダーのお節介の協力のためにマリノとマッシモを置いて、先に進むエックス達。

「何だよ、自分達だけ先に行って…それにしてもエックスのあれは便利だね。どこで手に入れたのか後で聞こうっと」

「(あれ?これってもしかしてマリノさんと2人っきり?ええええ!?)」

赤面しているのがアーマーによってバレないで済むから今回は本当に良かった。

「マッシモ、どうしたのさ。固まって」

「あ、いや…その…何でもありません…」

「ふうん、そう言えばあんた、勇者マッシモの一番弟子らしいね。あんたは私みたいな泥棒といて平気なのかい?」

勇者マッシモの人柄は一言で言うなら正義の味方だ。

そんな男の一番弟子であるはずのマッシモは怪盗である自分と一緒にいて平気なのだろうか?

「あ、い、いえ!あ、あの…その…マリノさんが、心優しい人だというのは、今までのことで分かっています。そ、それに、マリノさんは私利私欲でそのようなことをしているわけでもないし…だから…その…あの……」

マッシモの態度を見ていて可笑しかったのか、マリノは吹き出しながらマッシモの手を掴む。

「え!?マ、マリノさん!?」

「あんた、警備システムの潜り方なんか分からないだろ?私が進ませてやるよ」

「あ、ありがとうございます……(マッシモ師匠…我が人生、一片の悔い無しとは正にこのことなんですね…)」

今は亡き師に言いながら幸せそうな表情でマリノと共に進む感涙したい気分のマッシモであった。

「遅いぞ」

マリノとマッシモが追い付くと、先に進んでいたゼロ達はずっと待っていたのか少し不機嫌そうだ。

「言うねえ、私らを置いてさっさと行った癖に」

「……で?どうだったマッシモ。マリノと2人っきりの時間は?」

「俺の今までの人生でこれほどまでに幸せだった瞬間はないと断言出来るよ……」

拳を握り締め、我が人生に一片の悔い無しと言いたげな表情で天井を見上げた。

「そうかい、そいつは良かったな。さて、目的の人物はどこに行るのかね?」

エックス達は奥にある扉に向かう。

そして扉の奥では、ウルファト生産工場に侵入者が来たらしいとのことで、警備員や警備用メカニロイドが走り回る中、1体のレプリロイドはコンテナの影に身を潜めていた。

「侵入者か…参ったな……」

この施設のリベリオン幹部が倒されたらどうしようとかそう言う意味で言ったのではない。

「もう少し情報を手に入れたいと思っていたのに……ついてないな…仕方ない。おさらばするかな…おっと…」

気配を感じ、ただ者ではない感じは恐らくこの通路に入ってきた例の侵入者達だ。

気配を消し、侵入者達を見遣ると見慣れた姿がいることに目を見開いた。

「エックス…ゼロ……!?」

レプリロイドはコンテナから飛び出して、床に着地するとエックス達は武器を構えた。

「やあ、エックス。それにゼロも」

「俺達のことも気付かれていたようだな」

「ああ…」

全員がレプリロイドに攻撃しようとした時、武器を向けられたレプリロイドは慌てる。

「ま、待って!」

慌てながらレプリロイドが光を放ち、その光から1体の少年レプリロイドが姿を現した。

「僕だよ。久しぶりだね、エックス、ゼロ。」

「アクセル!?」

「アクセルじゃないか!」

「へえ、あれがエックス達と同じ伝説のイレギュラーハンターのアクセルか…」

「本当にルナ以外にもコピー能力を持つレプリロイドがいたんだねえ!」

「エックスさん、この人がアクセルさんなんですか?」

「ああ、それにしてもどうしてここに?」

「あ、うん。このギガンティスのどこかで僕と同じコピー能力を持ったレプリロイドが秘密裏に造られてるって噂を聞いてね。この生産工場が怪しいと思って調べてたんだけど…」

「そうか、調べようにもリベリオンが反乱を起こした今では…」

「うん、全然収穫は無し。まあ、造られてないならそれはそれで良いんだけどさ」

「コピー能力を持ったレプリロイドか…確かにそんな噂は聞いたことはあるけどな」

賞金稼ぎをしていた時にコピー能力を持ったレプリロイドの噂はスパイダーも聞いたことはあったが、実物は見たことはない。

「あれ?あんた…」

「何だ?」

「あんた僕とどっかで会った?」

「残念ながら初対面だ。俺は賞金稼ぎなんでね、あんたらとは基本的に会わないように気を付けてるのさ」

「え?じゃあ、僕の勘違いかな?まあ、休暇はこれで終わりにして、ハンター業務に戻るよ…ギガンティスの今の状況は大体把握してる。僕も協力するよ」

「そうか、すまないアクセル。お前の協力は本当に助かる。ところで、アクセル。ここでルインを見かけなかったか?」

「ルイン?ルインってあのルインかい?」

アクセルが改めてエックス達を見るとゼロはいるが、ルインが見当たらない。

「ああ、俺達はここにお前とルインがいると聞いてここに来たんだ。」

「うーん、悪いけどルインは見てないね。もしかしたら、ルインは僕達とは別ルートで侵入したのかも…」

少し唸りながら言うとエックスは落胆し、そんなエックスの肩を軽く叩くアクセル。

「大丈夫だよルインなら、きっと今頃イレギュラーをバカスカ薙ぎ倒してるよ。僕も協力するから大丈夫さ」

「ああ…」

「それにしても見慣れない人達がいるね。」

「それについては…」

エックス達の事情についてあまり知らないアクセルにエックスが自分の知る情報をアクセルに伝える。

「なるほどね、今まで大変だったねエックス、ゼロ。」

「だが、アクセルまで揃ったんだ。ルインと合流出来ればリベリオンとも渡り合えるようになるだろう」

「そうだね…えっと、黒いアーマーのがスパイダー、女の人がマリノさん、緑のアーマーの人がマッシモ。それで君が」

「シナモンです。初めましてアクセルさん。お友達になってください」

「うん、勿論だよ。よろしくねシナモン。」

握手を交わすアクセルとシナモン。

やはりシナモンはアクセルと設定年齢が近いからなのか、会話がしやすいようだ。

「あんたも新世代型?」

「そ、そうだけど?元が付くし、プロトタイプだけどね」

マリノの獲物を狙うような視線に引くアクセル。

「ふ~ん…いいなあ、コピー能力。あると便利だし」

「コピーチップを移植すれば出来るようになると思うけど、あんまりオススメはしないよ?コピーすること前提で造られた僕達はまだしも、マリノさんみたいなタイプのレプリロイドが使ったら人格に変調が来すかも」

あくまで最初からコピーチップに対応するように造られている自分やルナとは違ってオーソドックスなタイプのマリノがコピーチップを移植して使うのはオススメ出来ないようだ。

「げっ、それは困るね」

「実際に新世代型レプリロイドの製作中にプロトタイプには変身中、コピー元のレプリロイドの人格になってしまうなんてこともあったらしいからね。」

「まあ、諦めろよマリノ。コピー能力が無くてもあんたならやってけるだろ、凄腕の怪盗さん?俺としても少し残念だな、コピー能力があれば敵に変身して内側からぶっ潰すことも出来る…アクセルやあのお嬢ちゃんが敵じゃなくて良かったぜ」

「だね…はあ、コピーチップは諦めるしかないか」

渋々諦めるマリノに苦笑するエックス達。

「それにしてもエックス達も大変だったね。まあ、僕もいるし、ルインとも合流するから何とかなるでしょ」

「そうだな、行くぞ!」

「リベリオン幹部のマッハ・ジェントラーの場所まで案内するよ。もしかしたらルインもそこに…」

「そうか、だったら急ごう。手遅れにならないうちに!!」

扉を潜り、しばらく走ることになるエックス達。

そしてパーツ搬入のためのベルトコンベアのある場所に出ると、プレオン・ソルジャーとプレオン・シールダー、プレオン・ナースとプレオン・ガンナーが立ち塞がる。

「あらら、どうやら雑魚のお出ましのようだね」

凄みのある笑みを浮かべながらバーニアを噴かしてプレオンの群れに突撃するアクセル。

「危ない!!」

シナモンからすればそれは無謀な行動に見えただろう。

しかしアクセルは背部の可変翼を展開するとホバーで一気に上昇、プレオン達の背後を取る。

「乱れ撃ちだ!!」

背後からのアクセルバレットでの乱れ撃ちを受けたプレオン達は次々と倒れていく。

「新しい剣の試し斬りをさせてもらう!!」

ソウルセイバーを横薙ぎし、それなりの耐久力を持つはずのプレオン達を数体両断する。

「あいつめ、なかなかの物をくれたな」

プレオンの装甲がまるで豆腐のように両断出来る切れ味をゼロは気に入った。

リーチも長いためにZセイバーでは出来ない戦い方も可能になるだろう。

「ハイパーモード・Xファイア!Xコレダー!!」

ハイパーモードを発動したエックスがコレダーで殴り飛ばし、プレオン達を溶鉱炉に落としていく。

3人の猛攻によって次々にプレオン達がその数を減らしていく。

「ヒュ~♪やるねえ」

「流石、伝説のイレギュラーハンター達だね。ここは私達に任せて先に行きなエックス!!」

「え?」

「プレオン・シールダーとプレオン・ソルジャーにはバスターが効きにくい。ここであんまりハイパーモードを使うんじゃないよ。こいつら相手には私らの出番ってこと」

「まあ、相性の問題だな。マッシモ、いいとこ見せろよ」

「おう!!」

早速プレオン・シールダーがカウンターシールドのエネルギーを放ってくる。

「残念!カウンターバリアはこっちにもあるんだ。カウンターカード!フォーチュンカード…デスハウス!!」

「行くよマッシモ!」

「はい!」

スパイダーに続くようにマリノとマッシモもそれぞれの武器を構えながら向かっていく。

「あんたらシナモンを任せたよ!」

「すまない!」

エックス、ゼロ、アクセル、シナモンがマリノ達にこの場を任せて先に進む。

扉を潜って次のパーツ配送ラインに出ると、またプレオン達が行く手を阻む。

「チッ、仕方ない。ここは俺に任せろ。お前達は先に行け!」

「私にも手伝わせて下さい!ルナさんから貰ったにゃんこグローブがあるから大丈夫です。え~い!!」

シナモンがにゃんこグローブを振るうと、そのグローブから発せられた衝撃波がプレオン数体を粉砕した。

「す、凄いな…流石はルナの作品と言うべきか…」

「あれ、ルナが造ったんだ…もうちょっとマシなデザインは思い付かなかったの?」

ファンシーな見た目に似合わぬ凄まじい破壊力にアクセルは驚き、そして呆れた。

「行ってこいエックス、アクセル」

「ありがとう、ゼロ。」

「絶対にルインと合流するから!」

「待ってください!エンジェリックエイド!!」

癒しの光がアクセルを包み込み、アクセルが負っていた僅かな傷を癒していく。

多分、プレオンに突撃する時に負った物だろう。

「ありがとう。助かったよ!行こうエックス!!」

「よし、行くぞアクセル!!」

先に進むエックスとアクセル。

プレオン達が追いかけようとするが、ゼロ達が立ちはだかる。

エックスとアクセルは無事にルインと合流し、このウルファト生産工場のリベリオン幹部、マッハ・ジェントラーを倒せるのだろうか?

貨物リフトのあるエリアに辿り着いたエックスとアクセルだが、そこにはかなりの数の警備員達が機能停止していた。

「うわあ、こりゃあ凄まじいね。あの壁の傷ってもしかしなくてもチャージセイバーじゃないの?」

「チャージセイバー……多分、ルインだ。行くぞ!」

「了解!!」

貨物リフトに乗り込むエックスとアクセルはルインが無事であることを祈りながら上へ昇っていく。

そして、この生産工場の製造ラインモニタールーム前の通路でリベリオン幹部の1人であるマッハ・ジェントラーが指示を飛ばしていた。

「侵入者をここに入れるな!食い止めるんだ!!」

『駄目です。突破されます…うわあああ!!』

部下の断末魔が上がり、次の瞬間に扉が吹き飛んだ。

翡翠色の輝きを放つZXセイバーと呼ばれるエナジーセイバー。

しかしそれは状況に応じてバスターに変わることをジェントラーは知っている。

美しい金色の長髪を靡かせながらこちらに歩み寄る朱いアーマーを纏う女性型レプリロイドのS級ハンター・ルイン。

「どうやらあなたがこの生産工場のリベリオン幹部らしいね、元政府軍、マッハ・ジェントラーさん?」

「ルイン、貴様だったとはな。シャドウの攻撃で転落して死んだと聞いていたが?」

「お生憎様。私はそう簡単に死ねない体質でね。エックス達と再会してイプシロンを倒すまでは簡単には死なないよ」

「威勢がいいな。だがな、貴様は総帥様の元までは辿り着けん。我が工場で暴れまわった報いを受けるがいいわ!」

「そっちこそ、イレギュラーハンターでありながらイレギュラーに与した報いを受けろ!!」

ジェントラーをチャージセイバーで斬り裂こうとするが、ジェントラーはルインのセイバーを容易くかわした。

「(速い!?)」

「私を今まで貴様が倒してきた雑魚共と一緒にしないでもらいたいな。リベリオン幹部としてフォースメタルで限界まで性能を高めている。」

「そう、それは大したモンだね。今すぐ叩き落としてあげるよ!!」

ZXバスターに変形させてチャージショットを放つが、ジェントラーはバーニアを噴かしてチャージショットをかわす。

「(速いね、この空中機動力はそこらのとは全然違う。)」

これは容易な相手ではなく、機動力の高い相手に攻撃を当てるのは少し難しい。

一応有効打はあるのだが、確実に当てられなければ意味がない。

強力な一撃でも当たらなければ軽い一撃にも劣る。

「考え事をしている暇があるのか?」

「!?」

そして次の瞬間、ルインの体が不意に床を離れ宙に浮き、見れば何時の間にかルインの背後に回ったジェントラーが彼女を羽交い絞めにして宙を飛翔していたのだ。

「喰らうがいい!」

そのまま加速したジェントラーはその勢いのまま床に向かってルインの全身を叩きつける。

「ぐっ!」

「スマッシュ!」

倒れたルインに急降下タックルを喰らわせるジェントラー。

まともに喰らったルインは数回バウンドして、壁に叩きつけられる。

「くっ…」

勢いよく叩きつけられたルインは咳き込みながら、視線をジェントラーに遣る。

「ふん、もう終わりか、さっきの威勢はどうした?」

「くっ…この…」

受けたダメージが深刻で立ち上がれないルインを見てジェントラーは嘲笑を浮かべた。

「ふん、ではとどめを刺してやろう」

「チャージショット!!」

「当たれ!!」

「ぬおおっ!?」

チャージショットと無数のショットを喰らったジェントラーが吹き飛んだ。

「え…?」

自分を守るように立つ蒼いアーマーのレプリロイド。

誰よりも会いたかった存在が目の前にいた。

「ルインは…彼女はやらせない!」

「エックス…!」

久しぶりに見聞きしたエックスの姿と声に、張り詰めていた糸が緩み、双眸から涙が溢れ出た。

「エックスだけじゃないよルイン!」

「アクセルまで…!」

エックスと並び立つアクセルはルインを見遣ると親指を立てて、安心させるように笑みを浮かべた。

「貴様ら…」

「S級ハンターの3人を相手に勝てるかな?後少しもすればゼロとスパイダー達も来るだろうね。年貢の納め時だよイレギュラー!!」

「ゼロも…勝てる…これなら!マッハ・ジェントラー。あなたもここまでだ!!」

「己…!」

ジェントラーがバーニアを噴かして浮上すると真上の通気口らしき場所に入り、脱出した。

「あらら、逃げられちゃった。」

飛行能力を持つアクセルなら通気口のシャッターを破壊して追い掛けられるが、単独で勝てそうにないために今追うのは諦めた。

「エックス…」

「ルイン…生きていたんだな…!良かった…」

「エックス!」

感極まったルインがエックスの胸に飛び込む。

「エックス…会いたかったよ…!」

「ルイン…良かった…君が無事で…っ!」

飛び込んできた彼女の華奢な体を抱き締めたエックス。

あの日、ラグラノ廃墟で転落した彼女の身をずっと案じていたためにこうして無事な彼女と再会出来たエックスの心中は容易に察することが出来る。

普段ならアクセルも久しぶりの再会ということでそっとしておいてあげるのだが、ここは敵地である。

「あのさ、お2人さん…久しぶりの再会で嬉しいのは分かるけどさ。今はそれどころじゃないよ!」

「え?あ、す、すまない…」

「ご、ごめん…」

アクセルに叱られたことで赤面しながら離れる2人。

昔はアクセルが無茶やらをして叱られていた側だと言うのに今ではこれである。

どことなく甘さを含んだ空間に室内アナウンスが鳴り響いた。

『警告…警告…各位に通達します。ただいまからデュボアが起動します。繰り返します。ただいまからデュボアが起動します。起動エネルギー確保のため、施設機能が一部停止しますので、注意して下さい』

「デュボア?一体どうなってるんだろう?」

「多分、ジェントラーが何かしたんだよ。何をする気か分からない。急ごうエックス」

「ああ、行こう!」

デュボアのあるコンピュータールームに向かうエックス達。

貨物リフトから降り、最初は通れなかった扉を潜ってデュボアの存在するコンピュータールームに辿り着くと、そこには巨大な装置を前に大笑するジェントラーの姿があった。

「来たか」

自信に満ち溢れた笑みを浮かべながら追いかけてきたエックス達を見遣る。

「もう逃げられない。観念しな!」

エックス、ルイン、アクセルがそれぞれの武器を構えてジェントラーを睨み据えるが、ジェントラーは嘲笑を浮かべる。

「馬鹿め、観念するのは貴様等の方だ!さあ、デュボアよ!お前の力で、奴らを葬り去ってしまえ!全てはリベリオンの理想のために!リベリオン幹部、マッハ・ジェントラー参る!出でよプレオン!」

勢いよく飛翔するジェントラーがデュボアに命令を下すと、プレオンが数体出現する。

「なるほどね、デュボアってのはプレオン生産機みたいなもんか…そんなもんで僕達を倒せると思ってるのかな?流石は低レベルなイレギュラーだね!」

「小僧、その発言。後悔しないことだ」

「エックスとルインはプレオンを、こいつは僕が!」

可変翼を展開し、ホバーでジェントラーに突撃するアクセル。

「ほう?貴様も飛行能力を持っていたとはな」

「あんたの専売特許だと思った?このオートバレットで蜂の巣にしてやるよ!」

普段アクセルが使っているバレットよりも連射性能に特化したオートバレットを構えると凄まじい弾幕が張られた。

「ぬうっ!?」

凄まじいショットの嵐にかわしきれずに何発か喰らってしまう。

「何という連射性能だ…まともに受けるわけにはいかんな」

ジェントラーは軽装甲のレプリロイドなので、軽い一撃でも致命傷になりかねない。

「僕はやっぱりパワーはエックスやゼロやルインより下だからね。足りないパワーを補うために手数で攻めるのさ!」

オートバレットの超連射によって瞬く間に周囲のプレオンも蜂の巣にしていく。

「凄いよアクセル!」

「僕も遊びでギガンティスに来た訳じゃないからね。これくらいの装備はしているよ…かなりぼったくられたけどね…」

苦々しい表情を浮かべるアクセル。

ギガンティスで手に入れた武器だが、あまりの値段の高さに諦めようとしたが、連射性能の高さが魅力的だったので購入したのだ。

しばらくギガンティスの商売人は見たくないと思うアクセルである。

デュボアから生産されていくプレオンは段々と生産数が増えていく。

「チャージショット!!」

「チャージセイバー!!」

エックスとルインもチャージショットとチャージセイバーで反撃するものの焼け石に水だ。

「はっ!こんなメカニロイドみたいな奴らの力を借りないと戦えないわけ!?」

「何とでも言うが良い。プレオン・タンク!放て!!」

プレオン・タンクが液体をエックス達に浴びせ、液体の正体に気付いたエックス達は目を見開く。

「まさか、これはオイル!?」

「まずい!」

エックスがジェントラーの狙いに気付いて距離を取ろうとしても間に合わない。

「地獄の豪華に焼かれて死ぬが良い!ゲヘナフレイム!!」

ジェントラーの杖から放たれた巨大な火炎がエックス達を襲う。

「くっ…」

咄嗟にハイパーモードを発動して、ある程度威力を緩和した程度ですぐにエックスは負荷を減らすためにハイパーモードを解除する。

「エックス、大丈夫?アクセルは…アクセル?」

ルインが辺りを見回すとアクセルの姿がなく、最悪の想像が脳裏を過ぎた直後だった。

誰もいない場所からのショットの連射を受けたプレオン達が破壊されていく。

「なっ!?馬鹿な、奴は奴はどこにいる!?」

ジェントラーが辺りを見回しても攻撃しているはずのアクセルの姿はどこにもない。

「それは…あんたの後ろさ」

「な、何時の間に!?」

ジェントラーを羽交い締めにすると、そのまま勢いよく落下してジェントラーを床に叩き付ける。

「光学迷彩ハイパーモード・ステルスモード。変身能力の応用さ、ようやくあんたを引き摺り下ろせたよ。飛んでいないあんたなんか怖くない。これをたっぷり喰らいな!!」

オートバレットを構えるとジェントラーに連射し、放たれたショットはジェントラーの体を容易く射抜いていく。

「ぐああああああああ!?」

「今だ!」

「ルイン!」

「OK!」

体勢を崩したジェントラーに突撃してエックスとルインがハイパーモードを発動する。

動けないジェントラーにとどめを刺すためにXファイアとLXアーマーの必殺技が炸裂する。

「チャージコレダー!!」

「フリージングドラゴン!!」

チャージしたコレダーのエネルギーを叩き込み、その直後に氷龍に喰らいつかれたジェントラーは膝をついた。

「ば、馬鹿な…この私が…これが…伝説のイレギュラーハンターの力か…だが、私が死ねば、デュボアのコントロールが失われる。大量のプレオンを相手にして、無事に生き残れるかな…?」

それだけ言うとジェントラーは爆散し、直後に警報が鳴るとデュボアのコントロールが失われた。

直後に大量のプレオン達が生産されていく。

「やばっ!!」

即座にオートバレットによる一斉掃射で撃破するが焼け石に水であり、どんどんプレオンは生産されていくのだった。

一方、ゼロ達もスパイダー達と合流してエックス達の元に向かおうとした直後に警報が鳴り、エックス達同様に無数のプレオン達に襲われていたのだ。

「零式波動斬!!」

ソウルセイバーを床に突き刺すと、それによる衝撃波でプレオンを吹き飛ばす。

「はっ!ていっ!とりゃっ!」

ビームチャクラム装備のマリノの連続攻撃が1体のプレオンを破壊する。

「マリノさん!ゼロ!下がるんだ!ベルセルクチャージ!!」

プレオンの大軍にマッシモが高出力レーザーを放つが、数が減るどころか増えていく。

「あいつら…何体いるのさ…ゴキブリじゃないんだからさ…」

「文句言う暇はないぜ…フォーチュンカード…デスハウス!」

「え~いっ!!」

全員がプレオン達を迎撃するが数が多すぎる。

生き残ったプレオン・ガンナー達が一斉射撃を繰り出す。

「俺の後ろに来い!」

ソウルセイバーを盾にして銃撃をやり過ごす。

この剣の大きさが役に立った瞬間である。

「こんな所で…俺は…鋼鉄の…」

「畜生…」

「やれやれ…こんなことになるとは…恨むぜエール…」

「シナモン、いざとなったらお前だけでも逃げ帰れ。今の俺達でも時間稼ぎくらいは出来るだろう」

「ゼロさん…」

再び行われたプレオン・ガンナー達からの一斉射撃によって全員が死を覚悟した瞬間であった。

「………あれ?」

何時まで経っても痛みが来ないことにマッシモが閉じていた目を開くとシナモンの体が光り輝き、自分達の周りにバリアが張られていた。

「シナモン…あんた…」

「皆さん達は絶対に死なせません。私は皆さん達みたいに強くないし、武器がないと戦うことも出来ません。でも……」

「………」

「皆さんを守りたいって気持ちは誰にも負けません!ハイパーモード・アイアンメイデン!!」

シナモンのアーマーが漆黒に変わり、メイド服を思わせる物に変化した。

「ん?おい、エネルギーが…」

「…これもフォースメタルジェネレータの力の1つなのか?大した物だ。」

笑みを浮かべながら立ち上がるゼロ。

そうだ、諦めている場合ではない。

つい最近まで戦いとは無縁だった少女が勇気を振り絞って自分達を守ってくれている。

彼女の勇気に応えなければ。

「さっさと片付けてエックス達と合流するぞ!」

【おう!!】

ソウルセイバーを握り締め、ゼロは突撃するとマリノとマッシモもそれに続き、スパイダーとシナモンは援護に徹する。

そして、エックス達も疲労困憊でありながらも諦めてはいなかった。

「エックス、ルイン。まだやれる?」

「勿論、ここまで来たんだから、絶対に諦めない!」

「俺達は帰るんだ。仲間と、ルインと一緒に!」

「エックス達が持ちこたえているうちに何とかしないと…デュボアはジェントラーでないと操作出来ない…なら僕があいつになれば!変身、マッハ・ジェントラー!!」

アクセルはDNAコアを回収してジェントラーに変身して飛翔するとアクセルは即座にデュボアに指示を出す。

「デュボアよ、攻撃を中止せよ!直ちに攻撃を中止するのだ!!」

アクセルが叫ぶと、少しの間を置いてデュボアとプレオン達の動きが停止した。

「止まった…」

「2人共、早くデュボアを!」

デュボアの破壊は2人に任せる。

「「っ!」」

2人は駆け出してルインはチャージセイバーで斬り裂き、エックスがチャージショットを放つと、デュボアは完全に破壊された。

デュボアが破壊されたことにより、メカニロイド同然のプレオン達は完全に停止した。

「よっと」

安全を確認したアクセルが床に軽やかに着地した。

「我ながらナイス判断。そう思うでしょ?エックス、ルイン…」

「それにしても、本当に無事で良かったよ。ルイン……」

「うん、お互いにね。エックスも無事で良かった………離れ離れになっちゃって寂しかったよ…」

「うん…その…俺もだよ……でも、もう大丈夫だ。これからはずっと一緒だ…もう寂しい思いはさせない」

「エックス…ありがとう……」

「はいはい、お2人さん。そう言うのは後にしようね」

「あ、ああ。さあ、基地に戻ろう。改めて仲間達を紹介するよ」

こうしてエックス達は工場を後にしてゼロ達と合流して基地に戻ることになったのであった。

[お母さーん!!]

「ふみゅ!?」

基地に戻って早々にルインはソニアに顔面に張り付かれたのは言うまでもない。 
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