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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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外伝~彷徨える霊姫~ 前篇

2月14日――――――



~クロスベル帝国・月の僧院~



「ここが”月の僧院”か……」

翌日、ヴァイスの要請(オーダー)を受けたリィン達はクロスベルに向かった後マインツ方面の外れにある遺跡――――――”月の僧院”の上空にレヴォリューションを滞空させると、僧院を攻略するリィン隊の精鋭部隊と鉄機隊が転位によって僧院の前に次々と現れている中リィンは月の僧院を見つめて呟いた。

「……これはどういう事だ……?ここに転位した時から”悪寒”のようなものを感じ続けているが……」

「わたくしもですわ……この辺り一体から感じる禍々しい霊力は一体……?」

「霊感に疎い私達ですらも、感じられる程の禍々しき気配………この地に”異変”を起こしている”元凶”は間違いなくあの遺跡の中にいる事だけはわかります。」

「あの遺跡は一体何なのでしょう……?寺院のようなものに見えますが………」

クルトとアルフィンは自身が感じる悪寒や禍々しい霊力を感じると周囲を警戒したり不安そうな表情で周囲を見回し、禍々しい気配を察知していたオリエは静かな表情で月の僧院を見つめ、セレーネは不安そうな表情で月の僧院を見つめながら疑問を口にした。



「――――――”月の僧院。””星見の塔”、”太陽の砦”と並ぶクロスベルに古くからある遺跡ですね。去年の”クロスベル動乱”でも外敵からクロスベルを阻む”至宝”による”障壁”を展開させる為に利用されていたとか。」

「え………そういえば、デュバリィ先生達もクロスベル動乱に関わっていたと話は聞いていますが……」

アルティナが口にした情報を聞いたエリスは呆けた声を出した後デュバリィ達に視線を向け

「ええ。ですが私達”鉄機隊”とマスターの担当は”星見の塔”で、”月の僧院”の担当はNo.0――――――”道化師カンパネルラ”でしたから、ここを訪れるのは私達も初めてですわ。」

「まあ、クロスベル動乱が始まる前も”道化師”が余計な事をして、”特務支援課”の手を煩わせるような事をしていたらしいけどね。」

「それとヨアヒム・ギュンター――――――例の”D∴G教団”がまだクロスベルで暗躍していた頃にも似たような現象が起こっていたとの事だ。」

エリスに視線を向けられたデュバリィは頷いた後当時の説明をし、デュバリィに続くように話を続けたエンネアは苦笑し、アイネスは真剣な表情を浮かべて更なる情報をリィン達に教えた。



「つまり、この僧院では今回で”4度目の異変”が起こったという訳ですか……」

「ふふ、ミシェラムの”ホラーハウス”を体験するよりも先に”本物のホラーハウス巡り”をしてしまう事になるなんて、皮肉な話ですわね。」

アルティナ達の話を聞いたステラは静かな表情で呟き、ミュゼは苦笑しながら僧院を見つめ

「フン、確かに間違いなくいるな。――――――それも相当な数が。」

「ええ。――――――死してもなお、この世に留まり続けている哀れな魂達が。」

鼻を鳴らして呟いたベアトリースの言葉に頷いたルシエルは厳しい表情で僧院を睨んだ。



「例のクロスベル動乱で思い出したが……動乱時、確かエリゼちゃんが例の”神殺し”一行と”月の僧院”を攻略したんだったよな?」

「はい。それと”西ゼムリア通商会議”の際も私の目を盗んでグロリアスから抜け出したリフィアがこの遺跡を探索しましたから、リフィアの捜索の時にもリフィアの捜索の支援要請を受けて頂いた”特務支援課”の方々と共にこの遺跡内を探索しました。」

フォルデに訊ねられたエリゼは答え、エリゼの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ふふ、さすがはリフィア殿下。噂に違わぬご活躍ぶりですわね♪――――――そういえば、姫様の話ですとオリヴァルト殿下も”西ゼムリア通商会議”の際にクロスベル市内で”ご活躍”されたとか♪」

「ええ………お兄様ったら”みっしぃ”と一緒に踊った事もそうだけど、お兄様の捜索を頼まれた”特務支援課”の方々からヴァイスハイト陛下と協力して何度も逃亡した事を自慢げに語っていたわ。」

「殿下の捜索を依頼したのは間違いなく兄上でしょうね……」

(お父様……一体何をしていらっしゃっているのですか……)

ミュゼに話を振られたアルフィンは困った表情で答え、アルフィンの話を聞いたリィン達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クルトとリィンの中にいるメサイアはそれぞれ疲れた表情で頭を抱えた。



「コホン。リィン少将、今回の要請(オーダー)――――――”月の僧院”に起こった”異変”解決の件に関して、クロスベル側が雇った傭兵達との共同作戦との事ですが、もしかしてその傭兵達とは以前のルーレの件の彼らの事ですか?」

「俺も詳細は聞いていないが多分そうだと思う。今のクロスベルで”傭兵”として活動している勢力と言えばジェダルさん達しか思い当たらないからな。」

咳払いをして緩みかけていた空気を正そうとしたルシエルに訊ねられたリィンが答えたその時

「――――――一応俺達もクロスベルからは”傭兵”として扱われているのだがな。」

女性の声が聞こえた後、セリカ、ロカ、サティア、リタ、ナベリウスがトンネルへと続く山道から現れてリィン達に近づいた。

「あ、貴方達は確か”2度目のアルスター襲撃”の際に”劫焔”と戦った………」

「げげっ!?ま、まままままま、まさか今回の件で私達と協力するクロスベルが雇った”傭兵達”とやらは貴方達の事ですの!?――――――”嵐の剣神”セリカ・シルフィル!!」

「まさかも何も今の状況を考えれば、”そういう事”なんでしょうね。」

「ハハ、其方程の尋常ならざる使い手を”傭兵”として雇うとは、”黄金の戦王”も中々剛毅な事をするものだ。」

セリカ達の登場にセレーネが目を丸くしている中デュバリィは声を上げた後動揺した様子でセリカを見つめ、エンネアとアイネスは苦笑しながらセリカを見つめた。



「”セリカ・シルフィル”………!兄上の話に出てきた剣士としての技量は間違いなく”双界最強”としか思えない程の超越した使い手……!」

「フフ、なるほど。話に聞いていた通り――――――いえ、それをも遥かに上回る凄まじい剣士のようですね。」

「あ、その名前はわたくしもお兄様から聞いた事がありますわ!何でも”本命”の女性である女神様がいながら、多くの女性達から慕われている”双界一のプレイボーイ”でもあるとか♪」

「ひ、姫様!?そのような事はご本人の前で口にするべきではありませんよ……!」

一方セリカの名を聞いたクルトは目を見開き、オリエは興味ありげな表情でそれぞれセリカを見つめ、アルフィンは驚いた後からかいの表情を浮かべてセリカを見つめ、アルフィンの発言に驚いたエリスは表情を引き攣らせてアルフィンを注意し、その様子を見たセリカ達は冷や汗をかいて脱力した。

「………おい、エリゼ。そいつらはなんなんだ。そいつらの親族は俺の事を知っているような口ぶりだが。」

「蒼銀の親子のお二人はミュラー・ヴァンダール少佐にとって”継母”と”弟”に当たるお二人で、私のようにメイド服を身に纏っている金髪の女性はオリヴァルト皇子殿下の妹君です。」

我に返ったセリカはエリゼに訊ね、訊ねられたエリゼは静かな表情でクルト達の事を説明した。



「あ、それじゃあそちらのお三方はミュラーさんとオリビエさんのご家族の方々なんですね。」

「おおー………二人………家族……偶然………」

「……あの皇子の妹姫か。道理でどことなく奴を思い出す訳だ。」

「もしかして例の”影の国”という場所で共に協力した仲間の事かしら?」

「ええ。――――――そして、貴方がリィン・シュバルツァーね。」

エリゼの話を聞いたリタは目を丸くし、ナベリウスは静かな表情で呟き、セリカは呆れた表情でアルフィンを見つめ、ロカの疑問に頷いたサティアは静かな表情でリィンを見つめた。

「は、はい。あの、貴女は……?」

「――――――私の名前はサティア・ブライト・シルフィル。”アストライア”の生まれ変わりと言えばわかるかしら?」

「!貴女がアイドスの話で出てきたアイドスの……」

サティアの名前を知ったリィンは驚いた後真剣な表情でサティアを見つめ

「ふふ、あの娘の”契約者”である貴方とは機会があれば話したいとは思っていたけど……残念ながら今はその時ではないようね。」

「ああ。――――――いつまで、姿を消しているつもりだ。」

リィンに見つめられたサティアは微笑んだ後僧院へと視線を向け、サティアの言葉に頷いたセリカが目を細めてサティアと同じ方向に視線を向けて声をかけると、観念したのか黒衣の少女が突如リィン達の目の前に現れた!



「……引き返して、ください。」

「あれ?もしかして貴女………」

少女がリィン達を見回して忠告している中少女を見て何かに気づいたリタは目を丸くした。

「引き返して、ください。ここには何もない。特に――――――人間が足を踏み入れるのは見過ごせないのです。」

「”人間が足を踏み入れるのは見過ごせない”、ね。」

「フム、まるで自分は”人間”ではないような口ぶりだが……彼女も異種族の類なのだろうか?」

「いいえ。あの者は”生者ですらありません”。」

「な、なななななななっ!?せ、”生者ですらない”ということはまさか、目の前の娘は……!」

「幽霊……の類なのでしょうか?」

少女の忠告を聞いたエンネアは真剣な表情を浮かべ、アイネスの疑問に答えたルシエルは厳しい表情で少女を見つめ、ルシエルの答えを聞いたデュバリィが慌てている中、エリスは不安そうな表情で推測を口にした。



「そうだ。――――――とはいっても、”死霊”にしては随分と珍しいがな。」

「リタ……みたいな……死霊………滅多に……いない……」

「そうね。”理性がある死霊”なんてリタ以外に見たことがないわ。」

「……俺達はその建物に起こった異変を解決する為にここに派遣されたから、理由もなく引き返すことはできないんだが……よければ、俺達に忠告する理由を説明してくれないか?」

エリスの推測に答えたベアトリースは興味ありげな表情で少女を見つめ、静かな表情で呟いたナベリウスの言葉に頷いたロカが目を丸くして少女を見つめている中、リィンは少女に問いかけた。



「ここは『怨恨の谷』と呼ばれた地から何者かの転移術によって転移させられた魂が彷徨う寂しい場所です。人間が期待するような財宝や薬草の類は何もありません。あなたさま達のような、人間が進んではいけない。どうか引き返してください。」

「生憎だがそれはできない。ここからそう遠くない場所に鉱山町――――――人里もあるのだから、この地を納める人達にとってはこの”僧院”で起こった”異変”をそのままにしておくことはできないんだ。」

「……ここは生きる事を諦めていない死者が、その霊魂が彷徨う場所……生者を妬ましく思い、その肉体を手に入れようともがく憐れな魂が集っている……可哀そうな場所。ですから、人間の方達は引き返してください。」

「わざわざ警告されていながら、申し訳ないが俺達も退くことはできないし、例え俺達が退いても、ヴァイスハイト陛下達――――――クロスベル帝国はこの”僧院”で起こった”異変”を解決する為の人達を派遣する事になるだろう。」

少女の警告に対してリィンが静かな表情で反論すると少女はじっとリィンを見つめ、悲しそうに瞳を閉じる。再び瞼を開いた時には、全身から魔力が漏れ出ていた。



「………警告はしました。それでも歩みを止めないと言うのならば、強硬手段に出るまで……あなたさまの、お名前は。」

「リィン・シュバルツァーだ。君の名は?」

「私は『アンリエット』――――――死者に寄り添い、その魂を慰める力無き霊体です……リィン、その名は忘れません。あなたさまが死者へと変じた際は、その身に寄り添いましょう。」

そう告げた少女――――――アンリエットはふっと姿を消した。



「消えた……まるで霧が消えるかのようだったが……」

「恐らく転位術かと。消え際に魔力も感じました。」

「……少なくてもこの近辺には反応はありません。――――――とはいっても、クラウ=ソラスのセンサーに”幽霊”のような非現実的な存在が反応するかどうかも不明ですが……」

「――――――?」

アンリエットが消えた後周囲を見回しているクルトの疑問にエリゼが答え、アルティナは報告した後不安そうな表情を浮かべ、クラウ=ソラスは謎の機械音を出して機体を傾けていた。

「……逃げられたか。去り際に敵意を感じた。次に相まみえる時は攻撃してくるだろうな。」

「ええ。それに先程の死霊――――――アンリエットの口ぶりから察するに、恐らく彼女がこの地に彷徨う多くの死霊達を纏めている者なのでしょうね。」

ベアトリースとルシエルはそれぞれ目を細めてアンリエットが消えた場所を睨み

「ふふ、それにしても『その身に寄り添いましょう』だなんて、幽霊にすらも一目惚れさせるなんて、さすがはリィン少将ですわ♪」

「クク、言われてみればそうだな。俺達の事はほとんど眼中になかったみたいだからな、あのアンリエットとかいう死霊は。」

「まあ、彼女がリィンさんに話しかけたのは私達を率いているリーダーらしき人物がリィンさんであると目星を付けたからかもしれませんが……」

ミュゼとフォルデはからかいの表情でリィンを見つめ、二人の話を聞いたステラは苦笑していた。



「………とりあえず、今回のこの僧院で起こった”異変”を解決する為には先程の死霊をどうにかする必要がある事だけはわかったな。」

「ええ。ただ、アンリエットは通常の死霊と違って理性もある上、わざわざ警告までしてくれたのですから、できれば手荒な事はしたくないのですが………――――――そういえば、エリゼから聞いた話では確かセリカ殿の仲間の中に”リタ・セミフ”という名前の”理性がある死霊”がいるとの事ですが……」

「あ。それは私の事ですね。」

静かな表情で呟いたセリカの言葉に頷いたリィンは考え込んだ後ある事を思い出してセリカに訊ねるとリタが申し出た。

「ええっ!?そ、それじゃあ貴女も先程のアンリエットさんという方と同じ……」

「はい、私も彼女と同じ”幽霊”ですよ。ほら、この通り。」

リタの申し出を聞いてリタの正体を知って驚いているアルフィンの言葉に頷いたリタは自分自身の姿を消して槍だけを宙に浮かし、それを見たリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「えっと、お兄様。今のこの状況でリタさんの事を聞いたという事は、もしかしてリタさんにアンリエットさんの説得をしてもらおうとお考えなのでしょうか……?」

「ああ。同じ”幽霊”――――――それも、双方”理性”があるから、”生者”の俺達よりは耳を傾けてくれると思うんだが……」

セレーネの疑問に答えたリィンは考え込み

「うーん……期待している所申し訳ないですが、多分説得には応じないと思いますよ。彼女――――――アンリエットは”死者に寄り添って、慰める事がアンリエットの存在理由”みたいな言い方をしていましたから、それを否定するような事は絶対に受け入れてくれないと思います。」

「ん……説得……難しい……」

二人の話を聞いたリタは困った表情で答え、リタの答えにナベリウスは静かな表情で頷いた。



「――――――とにかく、まずは僧院内を漂う霊体の掃討を開始しましょう。それが私達が受けた要請(オーダー)内容でもあるのですから。」

「そうだな……―――――これより、僧院内の死霊の掃討を開始する。作戦開始前にも説明したように死霊―――――”霊体”には通常の武装による物理攻撃は通らない。各自、それぞれに支給した”対アンデッド用の武装”で挑むことを絶対に忘れないように。」

「イエス・コマンダー!!」

ルシエルの言葉に頷いたリィンはセレーネ達を見回して号令をかけ

「――――――それではセリカ殿。改めてになりますが、ご協力の方、よろしくお願いします。」

「ああ。」

号令をかけたリィンはセリカに声をかけた後仲間達と共に僧院へと入った。



「ここは……」

「どうやら礼拝堂みたいですけど………」

僧院内に入り、礼拝堂らしき場所に到着したクルトとエリスは周囲を見回して呟いた。

「!全員、迎撃態勢を!」

「来る――――――!」

一方敵の気配を逸早く察知したルシエルとベアトリースがそれぞれの武装を構えて警告すると、リィン達の目の前にローブを身に纏い、全身が骸骨になっている幽霊らしき存在や人の顔らしき部分を無数に付けた巨大な何かの塊が現れた!

「あ、あの魔獣――――――いえ、魔物らしき存在はまさか……!」

「!?目の前の存在はセンサーが全く反応していません……!」

「――――――!?」

「や、やっぱり、ぼ、ぼぼぼぼぼぼ、亡霊ですの……!?」

「フフ、例の”教団”にいた頃に見かけた”本物の悪魔”よりは実力は劣っていると思うから、そんなに怖がる必要はないと思うわよ。」

「とはいっても、”亡霊”等結社時代でも戦った事がない”非現実的な存在”だから警戒するに越したことはないな。」

初めて見る亡霊達を目にしたアルフィンは信じられない表情を浮かべ、アルティナはクラウ=ソラスのセンサーに何の反応もない事にクラウ=ソラスと共に驚き、デュバリィは表情を青褪めさせて混乱し、デュバリィの様子を見たエンネアは苦笑し、アイネスは警戒の表情で自身の武装を構えた。



「”死魂霊”に”魂の狩人”か。」

「”魂の狩人”達は私達が相手をするわ!貴方達は”死魂霊”の相手を!」

「了解しました!――――――これより迎撃を開始する。行くぞっ!!」

「おおっ!!」

一方敵の正体がわかっていたセリカは静かな表情で呟き、ロカは自分達が担当する相手を口にし、ロカの言葉に頷いたリィンは号令をかけて戦闘を開始した。亡霊達の数は多かったが今までの経験で成長していたリィン達の敵ではなく、またセリカ達の加勢もあったので、危なげなく現れた亡霊達全てを殲滅した。



「ふう……何とか終わりましたね。」

「ま、厄介な”魂の狩人”は”助っ人”の連中が全て相手してくれたおかげで、大分楽だったがな。」

戦闘を終えたステラは一息つき、フォルデはセリカ達に視線を向けて呟いた。

「今のが”本物の亡霊”………”ローゼングリン城”にも”亡霊”に似た魔物達はいましたが、全然違いましたわね……」

「よく御伽話等では亡霊は”光”が弱点のようにされていますが、その点に関してはまさにその通りでしたわね。実際、空属性の魔法(アーツ)がよく効いていた事もそうですが、エリゼさんやルシエルさんが扱う光の魔術にも相当効き目があったようですし。」

「ええ、ですから”光陣営”の神々を信仰している神官の方達もそうですが、”神聖属性”の魔術を得意とする天使族の方達は亡霊にとって”天敵”に当たるのです。」

「――――――何にしても”この世ならざる存在”への対抗手段が今の私達には十分ある事が先程の戦いでよくわかりましたね。」

セレーネは不安そうな表情で呟き、ミュゼの言葉にエリゼは頷いて説明を捕捉し、オリエは静かな表情で呟いて武器を納めた。

「リィン少将、今回の要請(オーダー)はこの僧院内を巣食う亡霊達の”掃討”なのですから、二手に分かれて探索・掃討した方が効率的かと思われます。」

「そうだな………――――――セリカ殿、先程俺達の前に現れた亡霊達を纏めている存在と思われる亡霊の少女――――――アンリエットがいると思われる場所に心当たりはありますか?」

ルシエルの提案に頷いたリィンはある事をセリカに訊ねた。



「恐らく礼拝堂の裏側の隠し扉の奥にある”儀式の間”らしき場所だろう。去年の”通商会議”の時もそうだが、リタの話では最初に起こった”異変”――――――”特務支援課”との調査の時もそこで悪魔達が現れたらしいからな。」

「ちなみに隠し扉はこの礼拝堂の左右の扉からそれぞれ続いている区画にある”仕掛け”を解く必要があります。」

「了解しました。……という訳だから、今から二手に分かれて亡霊達の掃討を行いつつ、仕掛けを解き、二手に分かれたチームが合流してからアンリエットの元に向かう。セリカ殿達はどうされますか?」

セリカとリタの話を聞いて頷いたリィンはセレーネ達を見回して今後の方針を伝えた後セリカに確認し

「俺達もそれぞれ二手に分かれて、それぞれお前達と共に亡霊達を掃討する。――――――とっとと終わらせるぞ。」

確認されたセリカは静かな表情で答えた。その後リィン達は二手に分かれて亡霊達の掃討を行いつつ僧院内を探索してそれぞれ仕掛けを解いて礼拝堂の裏側にある隠し扉を開いて扉の中へと入ると、そこにはアンリエットが多くの死霊達と共に待ち構えていた――――――

 
 

 
後書き
という訳でコンキスタの続編で登場したアンリエットが新登場ですwwまあ、前回の予告で幽霊系のキャラを出すような事は言いましたからアンリエット登場はほとんど確信されていたでしょうね。そもそも幽霊系キャラは元々エウシュリーキャラの中でも非常に少ないですし(苦笑) 
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